離婚してシングルマザーになる前に知っておきたいこと
毎日毎日、子育てだけじゃなく、夫の面倒も見なければならないのが辛い。家庭を顧みない夫だから、今でも実質シングルマザー状態……。離婚したほうがいいのでは……?
子どもが生まれ、家事や育児に追われる毎日を過ごすうちに、ふと離婚という選択肢が脳裏をよぎることはありませんか?
かつてと比べ、シングルマザーという選択がさほど珍しいことではなくなったこともあり、人生における選択肢のひとつとして考える方は珍しくありません。実際に、総務省による国勢調査からみても、ひとり親家庭は増加傾向にあり、令和2年度調査では500万3000世帯が「ひとり親と子どもから成る世帯」であることがわかっています。
しかし同時に、シングルマザーの貧困も耳にします。実際に、「夫と離婚したいけど、シングルマザーって大変そう」「ひとりで子どもと家庭を守る覚悟ができているのだろうか」と悩む女性は少なくありません。
本コラムでは、離婚してシングルマザーになる前に、準備しておくべきこと、離婚の手順など、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
あなたの人生において幸せな選択とは何か、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
1、シングルマザーを選択した人の離婚原因は?
シングルマザーとなった人には配偶者との死別のため、自ら選択した結果ではない人もいます。一方で、自ら配偶者との離婚を選択し、シングルマザーとなった、という人もいます。
結婚していれば夫の収入があるのだから、生活は安定するだろうと思われるかもしれません。ではなぜ、その安定を捨ててまで離婚を選んだのでしょうか。
令和4年度に公表された司法統計の「婚姻関係事件数-申し立ての動機別」から、女性が離婚を決意した理由をみてみましょう。
<女性の離婚原因ランキング>
2位 生活費を渡さない
3位 精神的に虐待する
4位 暴力を振るう
5位 異性関係
「離婚する人は我慢が足りない」などと言う方もいます。たしかに、パッとランキングだけをみれば、性格が合わないだけで……と思うかもしれません。しかしながら、2位以降から離婚原因は、経済的虐待、精神的暴力、物理的な暴力から浮気と続き、そもそも安定した生活が送れない状況だったために離婚を希望していることが明確になっています。
離婚したい理由は、離婚に向けて行動するうちに、何度も問いかけられることになる命題でもあります。まずはあなた自身が「なぜ離婚したいのか」について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
2、シングルマザーになるメリット・デメリット
離婚してシングルマザーになるというと、親しい人からは心配され、反対されることが多いでしょう。反対に、実際にシングルマザーとして自立している方からは賛成されることもあるかもしれません。
シングルマザーになるということには、場合によっては極端ともいえるメリットとデメリットがあるのです。
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(1)シングルマザーになるデメリット
シングルマザーになれば、あなたが大黒柱となって働き、同時にこれまでと同様に子育てや家事をこなしていく必要に迫られます。
このことから、これまでの生活で金銭的な不自由なく、専業主婦として子育てに専念していた場合、経済的に苦しいと感じることになる可能性が高まります。特に、これまで専業主婦で特別な資格や技術もなければ、就労にも苦労するかもしれません。
また、労働するということは、これまでのように子どもだけに注力できる状況ではなくなるということです。これまで夫婦で力を合わせて子育てをしていたのであればなおさら、子どもに寂しい思いをさせてしまうこともあるでしょう。
さらに場合によっては、無理解な周囲からの「シングルマザーだから」というような偏見の目にさらされることもあり得ます。地域によっては、シングルマザーは賃貸の部屋を借りづらいというようなこともあるようです。これらの偏見に、親子で立ち向かっていく必要があります。 -
(2)シングルマザーになるメリット
もっとも大きなメリットは、夫との関係のストレスがなくなるということです。ひとりで子育てすることも、子どもより手のかかる夫の顔色を見てご機嫌を取りながらの状況下よりは、よほど精神的に楽と感じている方は少なくありません。
特にDVやモラハラに苦しんできた方にとっては、大きな違いであることは明らかです。女性関係に苦しまされた場合も同様です。夫がいなければ、女性関係で思い苦しむことはなくなります。
また、夫が経済面でも家庭に貢献しようとしなかったケースにおいては、扶養家族がひとり減る分、生活そのものが大幅に楽になる可能性もあります。
子どものことだけを考え、働き、生活できるようになるという点は、シングルマザーの特権ともいえる大きなメリットです。また、離婚に伴い独身に戻りますので、よいお相手に出会えれば再婚できるという点もメリットだと感じる方もいるかもしれません。
3、シングルマザーになる前に準備しておきたい5つのこと
状況によってメリットもデメリットもあるシングルマザーになることを見据えた離婚。
実際にプラスになるかどうかは、離婚に至るまでの準備によって結果が大きく変わることは少なくありません。何も決めずに衝動的に離婚をしてしまえば、子どもの将来に悪い影響を与えることもあり得ます。
シングルマザーとなることを目指して離婚する場合は、どのような準備をしておけばよいのでしょうか。
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(1)ひとりで子どもと家庭を守る覚悟
シングルマザーになるにあたり、何よりも欠かせないものは、精神論だと思うかもしれませんが『覚悟』です。
結婚しているときは、困ったことや子どものことを決めるときは、配偶者に相談できました。おそらくひとりですべて判断するということはなかったでしょう。
しかし、シングルマザーになったら、直面するすべてのことをひとりで背負い、決断をしていかなければなりません。しかもあなたが下した決断には、責任も伴います。子どものことであればなおさらです。
仕事をして収入を得ることも、今後の貯蓄額も、親が子どもに与えてあげられることも、すべてあなたが行った選択の結果となります。それだけの自立心と覚悟がなければシングルマザーとして生きていくことは難しいかもしれません。 -
(2)安心して長く住める住まい
離婚後も、今住んでいる場所に住み続けられれば問題ありません。しかし、離婚後は家を出なければならない、新たな住まいを見つけなければならないという方もいるでしょう。
安定した住環境は子どもを育てていくにあたり、欠かせない要素です。仮住まいで転々としていく生活だったり、実家などで居づらい状況が続いたり……といった落ち着かない状況では、子どもも友達を作りづらくなってしまいます。
もしこれから住居を探すのであれば、あなたが働く予定となっている会社の場所を考慮するとともに、自治体のホームページをチェックしてみましょう。
シングルマザーへの支援は、自治体によって内容が異なります。自治体によっては、シングルマザーであれば公的住宅に優先的に入居できることもあります。できるだけ厚い支援を受けられる自治体を選択するのもひとつの手です。
安定した住環境を得るために必要なものは、世知辛いようですがやはりお金です。賃貸住宅を借りる場合でも、引っ越し費用を含め、家賃の5倍程度のお金が必要だと言われています。保証人を頼める人がいない場合は、保証会社を利用することになるので、もう少しお金が必要です。離婚を視野に入れているのであればなおさら、あなた自身が自由になるためのお金を少しでも多く積み立てておきましょう。 -
(3)安定した収入を得られる仕事
言うまでもないことですが、生きていくためにはお金がかかります。さらに子どもを育てるわけですから、安定した収入は必要不可欠です。
現在専業主婦の場合は、必ず仕事を探しておきましょう。生活のめどが立たずに離婚してしまうと、近い将来、子どもを抱えたまま立ち往生をしてしまうことになります。
また、「(2)安心して長く住める住まい」でも解説したとおり、新天地で子どもと生活するためにもお金が必要です。離婚する前から働き始め、半年から1年は貯金だけでも生活ができる程度の貯蓄ができればベストです。 -
(4)子どもの預け先を決めておく
子どもが小さければ、預け先がなければ働きに出ることは難しくなります。在宅で仕事をする場合でも、大黒柱となって一家の生活を支えるだけの仕事をするためには、子どもの相手をしながら働くことは難しいものです。
あらかじめ、離婚後も利用できる保育園などの預け先を確保しておいた方が安心です。
あなたの親などを頼るという手もありますが、やはり互いに都合があるでしょう。長く甘えることによってトラブルが起こることも少なくありません。可能な限り、離婚前にリサーチをしておき、シングルマザーとなったらすぐに預けられるようにしておくか、離婚をしていない今のうちから保育園に慣れさせておくことも考えたほうがよいでしょう。
また、保育園があるうちはいいのですが、意外と小学校低学年のタイミングは預け先に苦労するという声が多くあります。放課後保育などの実施は自治体ごとに異なり、どこにでもあるわけでも、いつでも利用できるわけでもないというケースも多々あります。さまざまな状況を視野に入れ、あらかじめリサーチしておくことをおすすめします。 -
(5)もらえるお金はもらっておくための証拠集め
お金より愛だ、といいたいところですが、やはり子育てにはお金がかかります。離婚に伴い、もう何もいらないからとにかく縁を切りたいと思うかもしれませんが、シングルマザーとなるわけですから、もらえるものはしっかりもらっておきましょう。
離婚に伴い、受け取ることができる可能性のあるお金は、以下のとおりです。- 財産分与
- 養育費
- 慰謝料
特に重要なのは、養育費です。月に数万円ずつだとしても、子どもが成人して社会人となるまでしっかり払い続けてもらえれば、大きな金額になります。
毎月の振り込みにすれば、通帳にその履歴が残ります。このことによって、子ども自身が父親から忘れず愛情をかけられているという証拠にもなり、金銭面だけでなく、子どもの心の支えにもなり得るのです。養育費はあなたのために支払われるお金ではなく、子どものためのお金です。しっかり請求しましょう。
また、慰謝料については、あなたの夫が不倫をしていた、生活費を払わないなど悪意の遺棄があった、DVがあった、などが認められれば請求可能です。性格の不一致など、どちらに離婚原因があるとは言い難いケースでは請求できませんし、あなたが離婚原因をつくった有責配偶者である場合は請求できません。
離婚に伴い受け取ることができるお金を請求するためには、やはり準備が必要です。
収入や離婚原因などは家庭ごとに異なり、一律ではないためです。まずは収入状況がわかる給与明細や通帳のコピー、婚姻後に購入した不動産や株があればそれらの状態がわかる書類も集めておきましょう。夫の不倫や暴力などがあって慰謝料請求をするのであれば、自分の主張を裏付ける証拠も集めておくことをおすすめします。
なお、以下の「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。
4、シングルマザーになるべく離婚するときの手順
離婚さえすれば、晴れてシングルマザーとなるわけですが、離婚はあなたひとりの意志ではできません。
原則として相手の合意が必要となり、財産分与や親権について話し合うことになります。合意されない場合は最終的に裁判で争うことになるのです。
どのような手順で離婚まで進めることになるのか、あらかじめ知っておきましょう。
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(1)まずは協議離婚を目指す
結婚するとき、話し合って結婚したのと同じように、離婚するときも話し合いは欠かせません。話し合いで成立した離婚のことを「協議離婚」と呼びます。現代の日本でもっとも多い離婚の種別です。
しかし、離婚に関しては、複雑な問題が絡むため、話し合いが泥沼化しやすいものです。特に相手が子どもに対する愛情が深い場合は親権や面接交流について争うことになりますし、財産分与や養育費など、金銭面でこじれることもあります。
ふたりだけでの話し合いだけで離婚を成立させてしまうと、今後払ってもらう約束をしていたお金を反故にされてしまうこともありえます。中立な立場の第三者に立ち会ってもらい、約束したことは離婚協議書として残しましょう。
養育費などのお金の支払いが長期にわたる場合は、万が一のときに備え、離婚協議書を直ちに強制執行をすることができる形の公正証書にして作成しておくことをおすすめします。このような形式にしておけば、相手が支払いをしなくなってしまったときなどには、すぐに相手の給与や預金口座の差し押さえなどの手続きを進めることができます。
離婚は合意したけれども、養育費などの条件で合意できないときもあるでしょう。そのようなときに、「とりあえず離婚する」のだけは避けてください。離婚後は話し合いが難しくなり、子どものために必要なお金の話し合いもままならなくなる可能性が高まります。シングルマザーとなる覚悟をお持ちでしたら、ここは交渉の条件で合意できるまでぐっと我慢をしましょう。
弁護士に依頼することで、スムーズに話が進むことも多々あります。シングルマザーとなるまでに時間をかけたくない方は、ぜひ検討してみてください。 -
(2)調停離婚をする方法とは?
話し合いで結論を出せない、折り合わない、もしくは話し合いができないなどの状況に陥って離婚できない場合は、離婚調停を申し立てることになります。調停を通じて離婚することが「調停離婚」です。
調停では、家庭裁判所内の一室で、ひとりずつ個室に呼び出されてそれぞれが自分の主張をします。DVなどの被害に遭っていた場合は、相手の顔を見ることなくあなた自身の主張ができる点が大きなメリットとなるでしょう。
調停委員は、聞きとったそれぞれの主張をまとめ、要望の落としどころを提案してくれます。ここで合意すれば、決めた内容すべてを、裁判所がまとめた調停調書が作成され、離婚が成立します。調停調書は公的な書類として強い効力を持ちます。なくさないように保存しておきましょう。 -
(3)裁判離婚となったときはどうする?
調停の場に相手が出席しなかった場合や、調停でも話し合いが決着しなかった場合は、裁判で争うことになります。裁判を通じて成立した離婚のことを「裁判離婚」と呼びます。
裁判ともなれば、手続きや進行に法律的な知識が求められるようになります。迷わず弁護士に依頼してください。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
5、シングルマザーが利用できる手当・支援
国や各自治体では、シングルマザーに対する支援制度が用意されています。
所得などの条件によって受けられる支援制度は異なりますので、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。場合によっては電話で問い合わせてみてもよいでしょう。
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(1)生活費や子育てに関して受けられる助成金
離婚届を提出したり、引っ越しに伴う異動手続きを行ったりした後、役所の窓口でシングルマザーであることを告げると、次のような支援を案内してくれるはずです。もし案内がなければ総合窓口に問い合わせましょう。
- 児童手当
- 児童扶養手当
- 母子家庭の住宅手当
- 母子家庭(ひとり親家庭)の医療費助成制度
- 子ども医療費助成
- 国民年金や国民健康保険の軽減・減免(免除)
ただしこれらの助成金は、申請日や支払日が決まっているものが多く、必要なときに必要なだけ受け取れるという性質のものではありません。また、それだけで生活ができるだけの金額を支援されるわけではないので、必ず仕事を探しておきましょう。
病気などの事情で働けないなど、生活費に困っている場合は、迷わず福祉課へ足を運び、生活保護の申請を行ってください。「母子父子寡婦福祉資金貸付金の貸付け」制度など、生活を立て直すためにお金を貸してくれる支援を行っている自治体もあります。必要に応じて相談してみることをおすすめします。 -
(2)受けられるサービス・支援
金銭面の直接的な支援以外でも、シングルマザーであれば受けられるサービスや支援があります。お住まいの自治体によっても異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
<シングルマザーが受けられるサービス・支援(東京都新宿区の場合)>
●就労に関する相談、資格取得のための支援- ひとり親家庭自立支援促進事業
- 自立支援教育訓練給付金
- 高等職業訓練促進給付金
- 求職者支援制度
●子どもの教育費に関する支援
- 高等学校等就学支援金(公立/私立)
- 高等学校等授業料軽減助成金(私立)
- 高等学校等奨学給付金(公立/私立)
- 受験生チャレンジ支援貸付金
- ステップアップ塾(小中学生向け学習支援・区後援事業)
●その他生活面で受けられるサービスや支援
- 都営交通無料乗車券
- 上下水道の減免制度
- 粗大ごみ等処理手数料の減免制度
- ひとり親家庭休養ホーム
- JR定期券の割引
6、まとめ
離婚に伴い、シングルマザーになる前に準備しておいたほうがよいこと、知っておくべきことは多数あります。
離婚は夫婦間だけの問題です。子どもに罪はありません。その一方で、シングルマザーの貧困率は高く、子どもにもその連鎖があることを指摘されています。できるかぎり子どもに影響しないようにするためにも、準備は大切です。
もし、離婚してシングルマザーとなることを考えている場合は、勢いで離婚してしまう前に、離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士に相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、初回相談60分無料となっております。あなた自身はもちろん、子どもにとっても将来にわたって有利な条件で離婚できるよう、離婚専門チームの弁護士が法律の側面からサポートします。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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