弁護士コラム 離婚・男女問題SOS

日韓夫婦や在日韓国人同士が離婚する手続き方法|日本法・韓国法

  • 離婚
  • 韓国
  • 離婚
更新日:2024年04月18日  公開日:2024年04月18日
日韓夫婦や在日韓国人同士が離婚する手続き方法|日本法・韓国法

日本国内で結婚している日韓夫婦(日本人と韓国人の夫婦)、または在日韓国人同士の夫婦が離婚するときの手続きは、日本人同士の夫婦が離婚するときよりも複雑です。

その理由は、日本には日本の法律があり、韓国には韓国の法律があるように、まずは自分たちがどの国の法律に従って離婚することになるのか、準拠法の確認から始める必要があるからです。

本コラムでは、日韓夫婦または在日韓国人同士の夫婦が離婚するときの手続き方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、日韓夫婦や在日韓国人夫婦の離婚は、どの国の法に従う?

日韓夫婦または在日韓国人同士の夫婦が離婚するときは、まずは、日本か韓国か、どちらの国の法に従って離婚手続きを進めるべきなのかを確認しなければなりません。

日本で結婚している方が国際離婚をする場合、従うべき法(=準拠法)は「法の適用に関する通則法」という法律に従って決まります。ご自身の状況に照らして、どの国の法が適用されるかを確認しましょう。

  1. (1)国際離婚のルールは準拠法に従う

    いずれか一方または両方が日本人ではない夫婦が、国際離婚をする(日本における婚姻関係を解消する)ときには、どの国の法に従って離婚手続きを進めるべきかが問題となります
    このとき、離婚手続きについて従うべき法を「準拠法」といいます

    日本での離婚に関する準拠法は、「法の適用に関する通則法」に従って決まります。これは、略称である「通則法」と呼ばれることが多いです。
    日本において離婚手続きを進める際には、日本の通則法に従った準拠法を確認しましょう。

    なお、日韓夫婦や在日韓国人夫婦は、日本だけでなく韓国でも婚姻しているケースがあります。日本の通則法はあくまでも、日本における離婚の準拠法を決めるものです。
    韓国の地で婚姻関係を解消するためには、韓国法に基づいて決まる準拠法に従う必要がある点にご注意ください。

  2. (2)離婚における準拠法の考え方

    日本の通則法では、離婚の準拠法について、以下の2つの条文を定めています。


    <婚姻の効力>
    第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

    <離婚>
    第二十七条 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。


    通則法第27条では、「第二十五条の規定は、離婚について準用する」と定めています。通則法第25条は婚姻の効力の準拠法について定めたものですが、このルールを離婚に読み替えて適用します。

    また通則法第27条では、「ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による」という例外が定められていることにも注意しなければなりません。

    これらのルールをまとめると、国際離婚での準拠法の考え方は、以下のようになります。


    【夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人である】
    準拠法は日本法です。

    【夫婦の両方が、「日本に常居所を有する日本人」にあてはまらない場合】
    ① 夫婦の本国法が同一であるケース
    準拠法は夫婦の本国法(国籍地の法律)です。

    ② 夫婦の本国法が同一でないケース
    • 夫婦の常居所地法(相当長期間にわたって居住する地の法律)が同一である
      準拠法は夫婦の常居所地法です。
    • 夫婦の常居所地法が同一でない
      準拠法は夫婦にもっとも密接な関係がある地の法です。


    なお、夫婦が保有する財産の取り扱い(=夫婦財産制)は、通則法第26条において準拠法の決め方が定められています。夫婦財産制も原則として、婚姻の効力(離婚)と同様のルールが適用されます(通則法第26条第1項)。

    ただし、夫婦財産契約を締結し、その中で準拠法を定めていた場合には、契約締結時以降の財産関係は契約上の準拠法に従うことになります(通則法第26条第2項)。

  3. (3)日韓夫婦・在日韓国人夫婦の離婚におけるケース別の準拠法

    日韓夫婦、または在日韓国人同士の夫婦が離婚するときは、通則法のルールに従うと、準拠法は以下のように決まります。


    【日韓夫婦の離婚】
    ① いずれも日本在住であるケース
    準拠法は日本法です。

    ② いずれも韓国在住であるケース
    準拠法は韓国法です。

    ③ 韓国人が韓国在住、日本人が日本在住であるケース
    準拠法は日本法です。

    ④ それぞれが国籍とは別の国、かつ、夫婦2人が別の国で別居しているケース
    夫婦にもっとも密接な関係がある地の法が、準拠法です。日本での在住期間が長かった場合は、日本法になる可能性があります。

    【在日韓国人同士の夫婦の離婚】
    準拠法は韓国法です。


    準拠法が日本法である場合は「2、【日本法】日韓夫婦・在日韓国人夫婦の離婚手続き」をご参照ください。
    準拠法が韓国法である場合は「3、【韓国法】日韓夫婦・在日韓国人夫婦の離婚手続き」をご参照ください。

2、【日本法】日韓夫婦・在日韓国人夫婦の離婚手続き

日本で婚姻の届出をしている場合は、協議離婚・離婚調停・離婚裁判のいずれかによって離婚を目指します。スムーズに離婚手続きを進めるため、日本法弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

  1. (1)協議離婚

    協議離婚とは、夫婦やその代理人間で話し合いを行い、当事者同士での合意に基づいて離婚する手続きです。

    協議離婚の話し合いでは、親権・養育費・面会交流・財産分与・慰謝料などの離婚条件を取り決めます。

    離婚の合意が得られたら、協議の内容をまとめた合意書(離婚協議書)を作成しましょう。その後、日本の市区町村役場に離婚届を提出すると、協議離婚が成立します。

    協議離婚では、離婚条件のことで揉めてしまうケースがよくあります。ご自身の権利が損なわれないように、弁護士を代理人として相手と交渉することがおすすめです。

  2. (2)離婚調停

    離婚調停とは、家庭裁判所で離婚について話し合う手続きです。

    協議離婚と同様に離婚調停も話し合いの手続きですが、調停委員が間に入る点に違いがあります。調停委員の役割は、それぞれの言い分を公平に聴き取った上で、歩み寄りを促すなどして合意成立をサポートすることです。

    離婚条件について夫婦双方が合意したら、裁判所によって調停調書が作成され、調停成立となります。離婚調停が成立したら、10日以内に日本の市区町村役場へ離婚届を提出しましょう。

    離婚調停では、調停委員にご自身の主張を理解してもらうことが大切です。弁護士を代理人として離婚調停に臨むと、ご自身の主張や財産関係などを整理してくれますので、調停委員の理解を得やすくなり、スムーズな離婚につながります。

  3. (3)離婚裁判

    離婚裁判とは、裁判所の判決によって強制的に離婚を成立させる手続きです。相手が離婚を拒否している場合は、裁判による離婚を目指します。

    裁判で離婚が認められるのは、「法定離婚事由」が存在する場合のみです(民法第770条第1項)。たとえば、不貞行為(配偶者以外との性交渉)や、暴力長期間の別居が法定離婚事由に当たります。

    離婚を認める判決が確定すると、配偶者との離婚が成立します。判決確定後10日以内に、日本の市区町村役場へ離婚届を提出しましょう。

    離婚裁判で離婚を認める判決の獲得を目指すに当たっては、証拠に基づいて法定離婚事由を立証しなければなりません。また、親権・養育費・面会交流・財産分与・慰謝料などの離婚条件についても、証拠を提出した上で主張立証し、裁判所に判断してもらうことになります。

    離婚裁判の手続きは専門的かつ複雑なので、離婚問題に詳しい弁護士のサポートを受けましょう。

3、【韓国法】日韓夫婦・在日韓国人夫婦の離婚手続き

韓国法でも日本法と同様に、協議離婚・離婚調停・離婚裁判による離婚が認められています。

ただし韓国法では、協議離婚の際、夫婦が離婚の重大性を認識しているのかなどを確認する制度が設けられています。
具体的には、居住地を管轄する韓国大使館・総領事館に申請して、離婚意思の確認を受けなければなりません。

離婚調停の場合は、協議離婚のような意思確認の手続きは不要です。日本の家庭裁判所で離婚調停が成立したら、調停調書や翻訳文などを韓国領事館に提出して、離婚を申告します。

離婚裁判は、日本法に基づく場合と同様に、離婚原因が認定された場合に限って認められます。
ただし、日本法上の離婚原因(法定離婚事由)と韓国法上の離婚原因は異なります韓国法上の離婚原因については、韓国法に精通弁護士にご相談ください

4、配偶者が行方不明になっているケースでの離婚方法

国際結婚をした夫婦のなかには、配偶者が海外に行って所在不明になってしまったなど、どこにいるのかも分からないというケースもあります。

この場合、日本から出国したことの確認や、その後の住所地の調査、当該住所への送達を行うことが前提となりますが、最終的には、「公示送達」という方法で離婚訴訟を提起し、相手との離婚を求めることが可能です(民事訴訟法第110条第1項第1号)。

公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管した上で、いつでもその書類を交付する旨を裁判所の掲示場に掲示して行われます(民事訴訟法第111条)。
相手が日本にいる場合は2週間、日本以外の国にいる場合は6週間が経過すると公示送達の効力が生じ、離婚訴訟が始まります。

離婚訴訟では、法定離婚事由の存在を立証しなければなりませんので、不貞行為や暴力、3年以上の生死不明などの事実を証拠に基づいて主張しなければなりません。

5、まとめ

日韓夫婦や、在日韓国人同士の夫婦が日本で離婚するときは、日本か韓国か、どちらの国の法に従うのかなどを確認しなければなりません。

国際離婚は、日本人同士の離婚よりも手続きが複雑です離婚条件で不利のないようにしたり、スムーズに問題を解決したりするためにも、弁護士へのご相談をおすすめします

ベリーベスト法律事務所は、国際離婚に関するご相談を随時受け付けております。日韓夫婦もしくは在日韓国人同士で離婚する方など、お気軽にご相談ください。離婚問題に知見のある弁護士が、ベストを尽くしてサポートいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

同じカテゴリのコラム(離婚)

PAGE TOP