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連れ去り別居で精神的苦痛を受けた! 子どもを取り戻すことはできる?

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更新日:2024年05月21日  公開日:2024年05月21日
連れ去り別居で精神的苦痛を受けた! 子どもを取り戻すことはできる?

子どもがいる夫婦が離婚する際、子の親権で揉めるケースは少なくありません。さらに、親権に決着がつかない状況で、妻もしくは夫が子どもを連れて勝手に別居を始めてしまうこともあります。

配偶者に連れ去り別居をされれば、激しい精神的苦痛に陥り、すぐにでも子ども取り返したいと考えるのは当然といえます。しかし、実力行使による子どもの取り戻しは、犯罪行為に該当する可能性もありますので注意が必要です。

今回は、連れ去り別居をされて精神的苦痛を受けた場合の対処法や子どもを取り戻す方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、そもそも連れ去り別居とは? 精神的苦痛を受けたときにできること

そもそも連れ去り別居とはどのようなことをいうのでしょうか。また、連れ去り別居により精神的苦痛を受けたときはどのようなことができるのでしょうか。

  1. (1)連れ去り別居とは

    連れ去り別居とは、法律用語ではなく、一般に使われる言葉ですが、夫婦のどちらか一方が相手の同意を得ることなく、勝手に子どもを連れて別居をしてしまうことを指して使われることが一般的です。

    夫婦に子どもがいる場合には、離婚する際にどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。しかし、親権者をどちらにするか争いがある事案では、離婚協議中に連れ去り別居をされてしまうケースが少なくありません。

  2. (2)連れ去り別居が違法と判断されるケース

    子どもを連れ去った配偶者も子どもの親権者ですので、連れ去り別居があったからといってすべてが違法となるわけではありません。以下では、連れ去り別居が違法と判断される可能性があるケースと正当と判断されるであろうケースについて説明します。

    連れ去り別居の違法性については、連れ去りの態様や経緯などを踏まえて判断されます。

    具体的には、以下のようなケースでは、連れ去り別居が違法と判断される可能性があります。

    • 同居中に子どもを監護していなかった親が、子どもをつれて出て行って別居を開始するケース
    • 既に別居を開始した後に、面会交流後に監護親の元に子どもを帰さないケース
  3. (3)連れ去り別居が正当と判断されるケース

    お互いの合意がなく子どもを連れて別居をしたとしても、以下のようなケースであれば正当と判断される可能性が高いです。

    • 同居中に主に監護していた側が、子どもを連れて出て行って別居を開始するケース
    • 子どもに対する虐待があったケース
    • 配偶者へのDVがあり、子どもにも危害が及ぶおそれがあるケース
  4. (4)違法な連れ去り別居により精神的苦痛を受けたときは損害賠償請求が可能

    違法な連れ去り別居にあたる場合には、他方の配偶者の権利や利益が侵害されることになります。子どもを連れ去られたことにより精神的苦痛を被った場合には、子どもを連れ去った相手に対して、慰謝料などの損害賠償請求をすることができる場合があります

2、連れ去り別居された場合の注意点

連れ去り別居をされた場合には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)子どもと妻(夫)の所在を確認する

    今後、離婚の話し合いをするためにも、まず相手と子どもの所在を確認することが必要です。子どもが事件や事故に巻き込まれている可能性もあります。

    相手と連絡が取れないようであれば、相手の親族(両親や兄弟姉妹)、共通の知人、友人、などにも確認してみましょう。

    計画的な連れ去り別居の場合は、弁護士に相談している可能性もあります。その場合には、弁護士から受任通知が届くはずです。弁護士に聞いても所在を教えてもらうことはできない可能性が高いですが、ひとまず子どもの安否は確認できるでしょう。

  2. (2)別居中、婚姻費用や養育費の請求を受ける可能性がある

    離婚が成立するまでは法律上は夫婦です。そのため、配偶者の収入が自分よりも少ない場合は婚姻費用という生活費を支払わなければなりません。

    婚姻費用には、配偶者の生活費だけでなく子どもの養育費も含まれていますので、連れ去り別居をした相手から請求される可能性もあります。また、離婚すると、婚姻費用の支払い義務はなくなりますが、代わりに、子どもを監護している相手に対して養育費の支払いをしなければなりません。

    婚姻費用や養育費の金額は、家族構成や双方の収入に応じて算定されます。裁判所のホームページでは、婚姻費用算定表や養育費算定表を公表しているため、金額の目安を把握することができます。

  3. (3)警察に相談しても民事不介入の原則により刑事告訴できない場合が多い

    配偶者に子どもが連れ去られた場合、「誘拐された」として警察に相談する方も少なくありません。

    しかし、勝手に子どもを連れ去ったとはいえ、相手も子どもの親権者ですので第三者による連れ去りとは異なり、警察もすぐには動いてはくれません。多くのケースでは、民事不介入の原則により刑事告訴が認められないでしょう。ただし、連れ去った配偶者が、暴力を振るう可能性が高いなど、子どもを虐待する可能性があるのであれば、警察に相談すべきでしょう。

  4. (4)国外に連れ去られた場合は国際的な法的手続きが必要になる

    国際結婚をした夫婦だと、夫婦の一方が勝手に子どもを自国に連れ去ってしまうことがあります。このようなケースでは、ハーグ条約実施法により、外務省を通じて相手の居住国への働きかけを申請することができます。

    このような国際的な法的手続きは、国際離婚問題の実績がある弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。

3、連れ去り別居された子どもを勝手に取り返してよいのか?

連れ去り別居をされると子どもをすぐにでも取り戻したいと考えますが、勝手に子どもを取り返しても問題はないのでしょうか。

  1. (1)勝手に子どもを取り戻すと犯罪行為に該当する可能性がある

    連れ去り別居をされたからといって、法律上の手続きによらずに子どもを取り戻そうとしてはいけません。子どもの取り戻し行為は、態様や経緯によっては、未成年者略取罪(刑法224条)という犯罪に該当する可能性があります。

    両親による子どもの奪い合いという状況は、子どもにも悪影響が及びます子どもを取り戻すためには、必ず法的手続きに基づいて行うようにしましょう

  2. (2)家庭裁判所による親権や監護権の判断において不利になる可能性がある

    子どもの監護者や親権について話し合いで決まらないときは、家庭裁判所の判断に委ねることになります。

    その際、子どもを相手から取り戻したという行為が、監護権者および親権者としてふさわしくない事情として考慮され、監護権や親権の判断で不利になる可能性があります。離婚後も子どもと一緒に暮らしたいのであれば、一時的な感情で行動するのではなく、法の手続きによって進めていくことが大切です。

4、連れ去られた子どもを取り戻す方法は?

連れ去られた子どもを取り戻すには、以下の方法が考えられます。

  1. (1)子の引渡し調停、審判

    連れ去り別居をされてしまった場合には、家庭裁判所に「子の引渡し審判」の申立てを行います。調停という話合いの手続きを行うことも可能ですが、子どもを取り戻せるかどうかは、スピードが重要です。通常は、調停を行わずに、最初から審判を申し立てます。

  2. (2)子の引渡し審判前の保全処分

    子の引渡しにおける保全処分とは、審判の結果が出る前に、裁判所の暫定的な判断として子どもを引き渡してもらえる処分です。

    審判で結論が出るまでには、通常、数か月以上も期間がかかります。連れ去り別居の状態が長くなればなるほど、現状を変更するのが難しくなります。

    そこで、審判前に子どもの引渡しを仮に認めてもらうために、子の引渡し審判前の保全処分も申し立てることができるのです。保全処分の申立ては、審判の申立てと併せて申し立てます。

  3. (3)監護者指定の審判

    離婚前の夫婦は、双方が子どもの親権を有していますので、子の引き渡しを求めるには、どちらが子どもと一緒に生活するのかを決めなければなりません。

    そのため、子の引渡し調停・審判とセットで監護者指定の調停・審判の申し立ても行うのが一般的です。監護者に指定されれば、離婚時に親権を獲得できる可能性も高くなりますので、しっかりと争っていく必要があります。

  4. (4)人身保護請求

    上記の方法によっても子どもの引き渡しを実現できない場合には、人身保護請求を利用することも考えられます。

    人身保護請求とは、違法に身体の自由を拘束された人を保護するための手続きです。連れ去り別居により、子どもが虐待されていたり、危害が及ぶおそれがあったりする場合には、人身保護請求が認められる可能性があります。

5、まとめ

連れ去り別居をされてしまうと、すぐにでも子どもを取り戻そうと行動してしまう方も少なくありません。

しかし、そのような行動は、犯罪行為に該当するおそれがあり、親権者や監護権者の判断において不利になるおそれもあります。まずは、子どもと妻(夫)の所在を確認し、連れ去り別居された場合でも感情的に子どもを取り返そうとしないことが大切です。

連れ去りが明らかになった際は、すみやかに、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。離婚や親権トラブルの実績がある弁護士が、問題解決のために手を尽くし、親身にサポートいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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