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未婚シングルマザーは子どもを認知してもらうべき? 認知の必要性とは

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更新日:2024年05月27日  公開日:2019年02月18日
未婚シングルマザーは子どもを認知してもらうべき? 認知の必要性とは

「不倫相手との間に子どもができてしまった」「結婚する気のない相手との間に子どもができてしまった」……このように、妊娠したとしても、すべてのケースが結婚につながるとは限りません。
なかには、「子どもの認知はするけど結婚はしない」と言われた方もいるでしょう。

子どもを認知してもらうかどうかは、とても重要な問題です。なぜなら、認知によって養育費を請求することができる・戸籍の父親欄を空欄にせずに済むなど、シングルマザーのあなたや子どもにとって、いくつかのメリットが考えられるからです。

本コラムでは、未婚の状態のまま子どもを産もうと思われている方や認知を迷われている方に向けて、父親に認知してもらう方法や認知によって得られる権利、子どもへのメリットなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、「認知をする」とはどういうことか

  1. (1)「認知をする」とは

    認知とは、戸籍上の結婚をしていない男女間に生まれた子どもを、自分の子どもであると法的に認めることをいいます。そもそも、母親と子どもとの関係は、母親が結婚しているか未婚かに関係なく、ただその母からその子どもが生まれたという事実だけで、母子関係が認められます。したがって、母と子どもとの間に、原則として、認知の問題は生じません。

    その一方で、父と子どもの関係は、その父が母と法律上結婚しているかどうかによって変わります
    具体的には、婚姻成立の日から200日経過後、婚姻解消の日から300日以内に出生した子どもは、夫の子と推定されます。そのため、通常、認知は問題になりません。しかし、婚姻解消の日から300日以内に別の男性と再婚し、かつ子どもを出産するケースでは、再婚相手が子どもの父親として推定されます。このように、法律上の夫婦の間に生まれた子どものことを、嫡出子(ちゃくしゅつし)と呼んでいます。

    他方で、法律上の結婚をしていない男女の間、つまり未婚の母から生まれた子どもの場合、たとえ、血のつながりがあったとしても、生まれた時点では実の父とは他人であって、子どもには法律上は父親がいない状態です。このとき、戸籍の父親欄は空欄になっています。
    この場合に、特定の男性が子どもの父親であると法的に認めるのが「認知」という手続です。

  2. (2)認知をすると戸籍に記載される

    認知をすると、認知をした父親と子どもとの間に法律上の親子関係が生じます。ただし、父母は結婚しておらず、未婚状態です。

    この場合、夫婦間に生まれた子どもとは違って「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」または「婚外子(こんがいし)」と呼ばれる立場になります。嫡出と非嫡出の違いは、単に両親が既婚か未婚かというだけの話であり、親子関係には違いはありません。
    したがって、父親の戸籍には認知をした子どもが名前とともに記載されます。そして、子どもの戸籍の父親の欄には(それまでは空白だったところ)、認知をした父の名前が記載されることになります。

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2、認知で得られる権利やメリット・デメリット

  1. (1)認知による3つのメリット

    このように、認知をすると、母は未婚のまま、父と子との間に、出生の時にさかのぼって法律上の親子関係が生じます。つまり、親子としての権利義務関係が発生します。
    これによって得られる子どものメリットとしては、主に以下のものが考えられます。

    ①養育費の請求が可能になる
    非常に大きなメリットとして、養育費が請求できるようになることが上げられます。 そもそも、親は子を扶養する義務があります。その扶養義務を具体化したものが養育費の支払いです。
    養育費の実際の金額は、話し合い、または、家庭裁判所の調停や審判といった手続きによって、父親の収入と母親の収入、そして、子どもの人数や年齢などの様々な事情を基礎として決定されます。

    ②相続権が認められる
    認知により法律上の親子関係になるわけですから、仮に父が亡くなった場合、子どもには、その遺産を受け取る権利、つまり、相続権も発生します。
    なお、以前は同じ親から生まれていても嫡出子と非嫡出子で法定相続分に差が設けられていましたが、憲法違反であるとの判断が最高裁によって出された結果、現在は区別することなく、同じ割合で遺産を受け取る権利が認められています。

    ③父親を親権者として定めることができる
    認知をすると父と子どもとの間に父子関係が生まれるわけですが、それによって、父親に親権が生じるわけではありません。父親が認知した子どもに対する親権は、父母の協議で父親を親権者として定めることができます
    何らかの理由で、母親が親権者となることが難しい場合には、父親を親権者とすることもできるわけです。

  2. (2)認知による2つのデメリット

    一方、認知のデメリットとしては次のようなものがあります。

    ①手続きや費用が大変
    まず、手続きの問題があげられます。相手男性がすんなりと認知をしてくれればよいのですが、そうはいかない場合がしばしばあります。結婚していない女性との間にできた子どもはできれば認めたくない、という人も少なくありません。

    このように、相手が認知にためらっている場合には、認知してほしいことを相手に伝えたり、交渉すること自体が大きなストレスになります。さらに、認知の訴えなど裁判手続きになれば、どうしても金銭的・時間的な負担があります。

    ②将来、父親の介護を求められるかもしれない
    親子関係というと、親が子の面倒を見る点に目が行きがちです。しかし、時がたてば親は年老いていき、子どもは成人して経済的に自立していきます。
    ここで問題なのは、親子間の扶養義務はお互いに負うもの…つまり、子が親の面倒を見ることも、その義務に含まれるという点です。したがって、認知により父となった相手に対して、子どもが面倒を見る義務が生じるわけです。
    もっとも、この場合は、養育費のように具体的な基準額があるわけでもなく、現実的にはさほど大きな問題とはならないことも多いでしょう。

3、認知の種類と認知を求める方法

認知には、任意認知と強制認知の2種類があります。

  1. (1)任意認知

    任意認知とは、父親が自分の意思で自発的に子どもの父親であることを認めることをいいます。
    任意認知は、父親自身が市町村役場に「認知届」を出して行います。

    なお、認知は妊娠中でもできますが、出生前に認知する場合には母親の承諾が必要です。 また、子どもが成人している場合は、その子本人の承諾が必要です。

    さらに、子どもがすでに亡くなっている場合も認知ができます。ただし、子どもの直系卑属(父親から見れば孫やひ孫など)がいる場合に限ります。認知によって法律上の親子関係が生まれれば、その孫などに相続権が移り財産を残すことができます。

  2. (2)強制認知

    強制認知とは、父から任意に認知をしてもらえない場合に、裁判所を通じて強制的に認知させる制度です。
    強制認知の手続きは、家庭裁判所に認知を求める調停を申し出ることから始まります。

    調停では当事者同士で話し合いを行い、合意に至れば審判という形で終了します。相手がどうしても認知を拒み、合意が得られない場合は裁判に進みます。この裁判を「認知の訴え」といいます。

    認知の訴えでは、当事者の関係、妊娠の経緯といった事情に加えて、最近ではDNA鑑定がしばしば用いられています。父子関係があるという鑑定結果が出れば、判決で父子関係が認められる可能性が高まります。

  3. (3)死後認知

    父親が亡くなった後でも認知をする方法があります。具体的には、父親自身が行う遺言認知、父親以外の者が申し立てる強制認知の2種類があります。

    ①遺言による認知
    遺言による認知は、父親自身が認知をしたかったけれども、生きている間には妻や家族の手前できなかったような場合に用いられます。遺言に「○○を自分の子として認知する」旨の文言を入れれば効果が生じます。
    遺言による認知の場合、遺言を作った本人が亡くなった時点で効力が生じますから、子は父の死亡とともに法律上の父の子となります。子は父の相続人の地位を取得するので、遺産を求める権利が得られます。

    ②死後の強制認知
    また、父が認知をせずに亡くなった場合でも、死亡から3年に限って、子どもの側から認知を求めて裁判を起こすことで相続できる可能性があります。
    なお、認知の訴えは、本来は父を被告として訴えます。しかし、亡くなってしまった人間を被告にすることはできません。この場合は、検察官を被告として訴えることになります。

    参考:子どもの認知に関するお悩みやトラブルでお困りの方はご相談ください

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4、未婚のシングルマザーなら押さえておきたい「養育費」のこと

  1. (1)養育費の相場

    認知によって法律上の父子関係が生まれれば、その父親に養育費を請求できます。養育費は、父と母双方の収入と子の年齢や人数といった事情に基づいて決まります。お互いが収入を開示することが前提ですが、仮に相手が収入を隠すような場合は、賃金センサス(平均賃金)を基準として計算することも視野に入れましょう。
    令和元年に公表された算定表によれば、たとえば、父の給与年収が600万円、母親の給与年収が120万円、2歳の子どもひとりを母親が育てている場合の養育費は、月額6~8万円程度が相場です。

    参考:【無料計算ツール】 養育費、あなたはいくら受け取れる?

  2. (2)養育費が決まったら公正証書に残すべき

    当事者間で話し合って養育費について取り決めができた場合、口約束で済ませてはいけません。書面に残す必要があることはもちろんですが、この場合は、公正証書という書面にすべきです。

    なぜなら、単なる書面の取り決めだと先々相手が支払わなくなった場合、強制執行をするためには、裁判を起こす必要が生じます。しかし、公正証書にしてその中に強制執行を認める文言を入れておけば、裁判にすることなく、すぐに強制執行にとりかかることができるのです。
    養育費は、未婚の母と子の生活と将来のために重要なものです。手間がかかるとしても、必ず公正証書にしておきましょう

5、まとめ

認知をしてもらうことで、養育費の請求ができるようになったり、相続権が認められたり、さまざまなメリットがあります。ただし、ひとくちにシングルマザーといっても、認知や養育費に関するご事情はひとりひとり大きく異なります。

認知や養育費について迷ったら、あなたのためにも、子どものためにも、ひとりで悩まずにぜひ弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所では、今抱えていらっしゃるご不安に寄り添いながら、お客さまに合った解決策をともに考えてご提案することが可能です。

また、ご来所が難しい方のために、Zoomなどを活用したオンライン相談も受け付けております。知見・経験豊富な弁護士が親身になって対応いたしますので、ベリーベスト法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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