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共同親権とは? 日本へ導入される可能性やメリット・デメリット

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更新日:2023年08月15日  公開日:2019年05月31日
共同親権とは? 日本へ導入される可能性やメリット・デメリット

離婚を検討されている方の中には、離婚後の「共同親権」に関心を持っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

共同親権とは、父母がともに子どもに対して親権を持つ制度です。離婚後の共同親権は、欧米では多く導入されていますが、日本は父母の婚姻中にだけ共同親権が認められており、離婚後はどちらか一方が親権者となる単独親権の制度が採用されています。

しかし今現在、日本でも離婚後の共同親権の制度導入について長らく検討がなされている最中です。

本コラムでは、共同親権の制度概要やメリット・デメリット、いつから離婚後の共同親権が日本で導入される可能性があるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、政府が「共同親権」制度の導入を検討、具体的にいつから?

日本では父母の婚姻中は、原則として、父母が共同して子どもに対して親権を持つ「共同親権」制度が採用されています(民法818条3項本文)。
しかし離婚すると父母のどちらかしか「親権者」になれず「単独親権」に変わります(民法819条1項)。また「離婚後、男性は親権を取りにくい」などと言われる例も多々あります。

令和4(2022)年11月15日に行われた法制審議会では、共同親権導入と単独親権維持を併記した中間試案がまとめられたと報じられています。また、令和5(2023)年4月18日の法制審議会で「現制度(単独親権しか選べない状態)は社会情勢の変化により合理性を喪失している」という意見が多くあげられました。

このように、日本政府は離婚後の共同親権を認める方向で検討を進めていますが、共同親権導入には賛否両論あり、長い間、議論が続いている状況です。

法務省は、共同親権を導入することで両親が離婚した後もともに子育てに責任を持ち、親子がきちんと面会交流を行うことで、子どもの健全な成長をはかりたい考えでいます。
現在の民法は1896年(明治29年)に制定された古いものであり、度重なる大改正を経ても、「家制度」の名残も強い内容です。平成24(2012)年に民法が改正された際に「親権は子の利益のためのもの」とされましたが、今回はさらに一歩進んで「共同親権」まで認めようという動きになっています

実際、弁護士の中にも「離婚後いきなり単独親権となって一方の親が子どもと引き離されるのは、人権侵害であり違憲(憲法違反)」と主張し、共同親権を目指す方もいます。

近年、日本では法律の改正が相次いでいますが、これは、法律が古くなると現代社会の感覚に合わなくなるためです。
刑法が改正され、先日は債権や相続分野における民法の改正も決まりました。具体的な時期は定かではありませんが、今後は親族法の分野も改正されて共同親権が導入される可能性が高いと予想されます。

2、そもそも共同親権とは? 日本の親権制度との違いは?

そもそも共同親権とはどういった状態なのでしょうか?
これは「父親及び母親の両方が子どもに対する親権を持つ状態」です。

  1. (1)親権の内容

    親権の内容は、以下の通りです。

    子どもに対する監護と教育の権利義務(民法820条)
    子どもと実際に一緒に住んで養育し、教育を受けさせる権利と義務です。

    居所指定権(民法821条)
    子どもが住む場所を指定する権利です。

    懲戒権(民法822条)
    子どもの監護や教育に必要な限度で懲戒する権利です。

    職業許可権(民法823条)
    子どもが働くことを許可する権利です。ただし違法労働は親の許可があっても許されません。

    財産の管理権と代理権(民法824条)
    子ども名義の財産を管理したり、その他の法律行為を代理したり同意する権利です。

    共同親権の場合、父母の両方が上記の権利を持ちます。現に日本でも、夫婦の婚姻中は両方の親が上記のような権利を行使しています。
    ところが今の日本では離婚後は単独親権になるので、上記のような親権がひとりの親にしか認められません。これを、離婚後も両方の親に認めようというのが今回検討されている共同親権への法改正内容です。

  2. (2)共同親権になって変わること

    共同親権が導入されると、子どもの財産は両親が両方とも管理できますし子どもへの教育内容や仕事の許可なども両親が両方とも行えます。子どもをしつけるためにしかる権利も父母の双方に認められます。

    今の日本の制度では、「親権者になれなかった親は、その後一切子どもの教育に口出しできない。子どもをしつける権利もなく、子どもと関わるのも遠慮しなければならない」のが現実ですが、共同親権導入後はこういった風潮が大きく変わるでしょう。

  3. (3)共同親権になっても子どもと住めるのは一方の親

    ただ共同親権が導入されたとしても、離婚後に実際に子どもと一緒に住むのは父母のどちらか一方になります。これについては物理的な制限があるのでやむを得ません。共同親権が導入されている諸外国でも「子どもが両方の親と同居する」ことはありません

    ただ両親に親権が認められることにより、諸外国では日本よりスムーズかつ自然に面会交流が行われている例が多数です。離婚後の共同親権が導入されているイタリアなどでは、離婚後も毎日のように離れて暮らす親と子どもが連絡を取り合うケースも珍しくありません。
    また頻繁に両親の家を行き来して過ごす子どもたちもいます。

  4. (4)諸外国では多くが共同親権

    実際、日本以外の多くの先進国では離婚後も共同親権が認められています。
    たとえば日本民法のもととなったドイツでは、かつては日本と同様に裁判離婚後は単独親権となっていました。しかし1982年に連邦憲法裁判所が違憲判決を下したことがきっかけで1998年には離婚後の共同親権が法制度化されています。

    イタリアやフランスなどの欧米諸国や韓国などのアジアにおいても共同親権は導入済みであり、先進国では離婚後の単独親権制度をとっている国は日本くらいというのが現状です。

3、共同親権のメリット・デメリットは?

実際に日本で共同親権を導入すると、どういった効果があるのでしょうか?
メリットとデメリットの両方を確認しておきましょう。

  1. (1)共同親権のメリット

    共同親権を導入すると、以下のようなメリットがあります。

    子どもが両方の親と関われる
    日本では、両親が離婚すると子どもは親権者となった親としか関われなくなるケースが多数です。
    面会交流が行われない例も多いですし、行われたとしても最初の数回だけで、やめてしまうこともあります。親権者にならなかった方の親が「会うとつらくなるから会わない」という場合もありますし、親権者となった親が「今の生活を乱さないでほしい」と言って面会を強く断る例もあります。
    共同親権であれば両方の親に子どもを監護教育する権利があるので、同居親が一方的に面会交流を断ることはできませんし、離れて住む親も遠慮する必要はありません。自然な流れで面会交流を実施し、子どもは「両親から愛されている」という安心感を持ち続けることができます

    離婚時の熾烈(しれつ)な親権トラブルを避けられる
    日本では離婚後単独親権となるので、夫と妻の両方が親権を希望すると離婚時に激しい親権争いが発生します。協議離婚や調停離婚ができず離婚訴訟にもつれこみ、散々もめた後でようやく家庭裁判所の判決により、親権者が指定されます。
    そうなると、お互いにしこりが残り、離婚後の面会交流や養育費の支払いもスムーズに行われにくくなります。共同親権が認められるようになれば、離婚裁判などしなくても協議によって離婚し、元夫婦が協力して子どもの養育に携わっていくことが可能です。

    養育費の支払いがスムーズになる
    単独親権になると、どうしても親権者にならなかった親は疎外感を持ちます。また面会交流させてもらっていない場合には「なぜ会えもしないのに養育費だけ払わないといけないのか」と考え、養育費の支払いが滞ってしまいがちです。
    共同親権であれば、日頃から子どもと密に関わって良好な関係を築いていけるので、自発的に「養育費を払おう」という気持ちになりやすいです。

    両親が協力して子どもの養育や教育ができる
    共同親権の場合、父母の両方に子どもに対する監護教育の権利義務があるので離婚後も協力して子どもを育てていけます。
    現在の日本のように「シングルマザーとなった女性がひとりで子どもを抱えて元夫の協力も得られず疲弊する」などの状況は起こりにくくなるでしょう。

  2. (2)共同親権のデメリット

    一方共同親権には、以下のようなデメリットもあります。

    二重生活で子どもに負担がかかる
    共同親権が導入されている欧米諸国では、子どもが頻繁に父母の家を行き来して生活する例などもみられます。そうなると子どもに落ち着く場所や時間がなく、大きな負担となってしまいます。

    両親の教育方針が異なる場合にもめる
    共同親権の場合には、両方の親に教育方針を決める権利が認められます。すると、子どもの進学や習い事などを決める場面で両親の意見が合わずにもめる可能性があります。
    今の法制度なら、親権者となったら単独で子どもと相談して中学や高校を決めることができますが、共同親権制のもとでは別れた相手ともきちんと話をしなければなりません。 もともと不仲で別れた相手であれば、離婚後も子どものことでつながりが続くことにより、ことあるごとにもめる可能性も高くなります。

    両親の教育方針や文化が異なると子どもが混乱する
    離婚後、それぞれの親は実家に戻ったり単独生活をしたりして、まったく異なる生活形態となります。考え方や文化も異なるので、それぞれが子どもに違った考えや意見を言うでしょうし、相互に矛盾した言動も多くなります。 そうなると、子どもが「何を信用したら良いのかわからない」状態となり、混乱してしまいます。

    遠方への引っ越しが困難となる
    共同親権制度のもとでは、子どもを同居していない親とも積極的に会わせる必要があります。そうなると、元の配偶者と近接した地域に住む必要性が高くなります。仕事などで遠くに行きたくても、子どものためになかなか決断できない状況が生まれてしまいます。

    子どもが「居場所がない」と感じたり気を使ったりする
    共同親権下では、子どもが頻繁に親の家を行き来することにより、「自分はどちらの家の子どもかわからない」「居場所がない」という気持ちになってしまうことがあります。また、どちらの家にも良い顔をしなければならないので、子どもが気を使って疲れてしまうケースもあるようです。

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4、まとめ

共同親権導入によって子どもが両親と関わり続けられることは、たしかにすばらしいことです。ただ共同親権にはメリットだけでなくデメリットもあります。
また、たとえ共同親権となったとしても「子どもと一緒に暮らせるのは一方の親(同居親、監護者)のみ」であることには留意しなければなりません。

離婚後の子どもの親権を検討するときには、何よりも子どもの福祉を優先すべきであり、日本と他国との制度や状況の違いを理解して、丁寧に議論を積み重ねる必要があるでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、離婚問題に関するあらゆるご相談をお受けし、解決に向け、さまざまなアドバイスをしております。
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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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