配偶者がPTA不倫をしていたら? 離婚や親権について弁護士が解説

子どもの学校のPTA活動に参加するうちに、ほかのメンバーへ好意を抱き、不倫に陥る方もいます。配偶者がPTAで不倫をしていた場合、どうすればよいか悩むものです。
ただ、PTA不倫を理由に離婚を考えるなら、子どもの今後の学校生活をふまえて慎重に判断していく必要があります。
今回は、配偶者がPTA不倫をしていると発覚した際の離婚の進め方、親権や養育費といった離婚時に決めるべきことなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
目次を
1、配偶者のPTA不倫を理由に、離婚はできる?
配偶者がPTAで不倫をしていた場合、それを理由に離婚することはできるのか紹介します。
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(1)夫婦の合意があればPTA不倫を理由に離婚することも可能
夫婦が離婚する場合、まずは夫婦で話し合いを行い、離婚の合意を目指していきます。このような話し合いによる離婚の手続きを「協議離婚」といいます。
協議離婚では、夫婦が離婚することに合意できていれば、基本的にはどのような理由であっても離婚することができます。そのため、離婚理由が「PTA不倫」の場合も協議離婚できます。 -
(2)話し合いが決裂したときは離婚調停や離婚裁判になる
夫婦の話し合いが決裂したときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります。離婚調停は、協議離婚と同様に話し合いの手続きになりますので、どのような理由であっても、お互いが合意すれば離婚可能です。
調停でもお互いの合意が得られないときは、調停は不成立となり、最終的に離婚裁判を起こす必要があります。離婚裁判では、裁判官が離婚の可否を判断することになりますが、その際に必要になるのが法定離婚事由です。民法では、以下の5つの事由を法定離婚事由と定めています。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
裁判で離婚を目指すのであれば、上記の法定離婚事由のいずれかに該当することを主張立証していかなければなりません。PTA不倫がどの事由に該当するのか、見ていきましょう。
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(3)PTA不倫は法定離婚事由の「不貞行為」に該当する可能性あり
法定離婚事由のひとつである「不貞行為」とは、配偶者以外の人と、自らの意思により性的関係を持つことをいいます。
配偶者のPTA不倫が肉体関係を伴う不倫であった場合には、不貞行為に該当しますので、配偶者が離婚に合意してくれなかったとしても、最終的に裁判で離婚できます。
ただし、裁判で離婚を成立させるためには、不貞行為を立証する証拠が不可欠となります。PTA不倫で離婚するために必要となる証拠については、3章で詳しく説明しますので、そちらをご参照ください。
2、親権・養育費など離婚の際に決めること
PTA不倫で離婚する際には、離婚するかどうか以外にも、子どもへの影響に配慮しつつ以下のような事項を決める必要があります。
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(1)どちらが子どもの親権を持つかを決める
離婚をする際には、夫婦のどちらか一方を子どもの親権者に指定しなければなりません。まずは、夫婦で話し合いをして、どちらが子どもの親権を持つのかを決めていきましょう。
その際、配偶者に対して「不倫をしたのだから親権者にはふさわしくない」と思われる方もいますが、裁判所の判断では、不倫をしたこと自体は親権者の適格性を否定しないと考えられています。そのため、不倫をした親であっても親権者になることができます。ただし、不倫が原因で育児放棄をしたなど子どもに悪い影響が出ている場合には、親権者の不適格性を基礎づける事情のひとつとなります。相手にそのような事情があるときは、親権獲得に向けた話し合いでも有利に進められる可能性が高くなります。 -
(2)お互いの収入や子どもの人数・年齢に応じた適正な養育費を定める
離婚により親権を獲得した親は、元配偶者(非親権者)に対して、子どもの養育費を請求することができます。子どもの養育費は、子どもの健全な成長や発達に欠かせません。そのため、離婚の際にしっかりと取り決めをすることが大切です。
養育費の金額は、夫婦の話し合いで自由に決めることが可能です。決める際に相場を確認したいと思われる方も多いですが、相場を知りたい場合は、裁判所が公表している養育費算定表をご参考ください。算定表を確認しながら適正な金額を定めるようにしましょう。参考:養育費計算ツール
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(3)夫婦の共有財産について財産分与を行う
婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産がある場合には、財産分与を求めることにより、夫婦の共有財産の清算をすることができます。財産分与の割合は、基本的には2分の1とされます。専業主婦(主夫)であっても、相手に対して2分の1の割合で財産分与を求めることができます。
ただし、財産分与の割合は、夫婦の協議により2分の1とは異なる割合を定めることもできます。財産形成にあたってお互いの貢献度に差異がある場合には、それに応じた割合を定めることも可能です。 -
(4)上記を決める際には、子どもへの影響を最小限に抑えるよう配慮する
離婚は、夫婦だけでなく子どもに与える影響も大きいため、子どもへ離婚について伝える際には十分に配慮する必要があります。特に、離婚の理由がPTA不倫がある場合には、子どもの今後の学校生活にも影響する可能性があります。子どもがそのことを知った場合には、子どもとしては自分の親が同級生の親と不貞行為をしたことになりますので、ショックを受ける可能性も高いでしょう。子どもが安心して生活できるよう十分な配慮は必要です。

3、PTA不倫は、慰謝料の請求も可能!
PTA不倫があったときは、離婚だけではなく慰謝料を請求することもできます。以下では、PTA不倫を理由とする慰謝料請求で押さえておくべきポイントを説明します。
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(1)不貞行為があったときは慰謝料請求が可能
不貞行為は、法定離婚事由のひとつであるとともに、慰謝料の請求理由のひとつでもあります。不貞行為をした側は、配偶者の権利を違法に侵害したことになりますので、不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。
不貞行為を理由とする慰謝料請求は、不倫をした配偶者だけでなく、不倫関係にあった不倫相手にも請求することができます。 -
(2)慰謝料請求をするには不貞行為の証拠が必要
不倫をした配偶者や不倫相手に対して慰謝料請求をする際には、二人が不貞行為をしていたことを裏付ける証拠が必要になります。不貞行為を立証する証拠としては、以下のようなものが挙げられます。
- 二人が性行為を行っている不倫現場の動画や写真
- 裸で抱き合っている写真
- 二人でラブホテルに入っていくところの動画や写真
- 誰がみても性行為があったと想像できるメッセージのやり取り
- 夫婦間で話し合い中に配偶者が不貞行為を認めた際の録音
- 探偵事務所の調査報告書
これに対して、二人が手をつないで道を歩いている写真、一緒に食事をしている写真などであった場合、それだけでは不貞行為があったことを推認する力が弱いため、不貞行為の証拠としては弱いと言えます。
不貞行為の証拠は、ひとつだけでなく、複数を組み合わせることでより効果を発揮するものもありますので、より多くの証拠を集めることが大切です。どのような証拠が必要になるか、どのように証拠を集めればよいかわからないという場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。 -
(3)離婚や慰謝料を請求するタイミングには注意が必要
不貞行為の証拠を集める前に配偶者を問い詰めてしまうと、PTA不倫を否定されるだけでなく、証拠を隠滅させられる可能性があります。そのため、一般論としては、配偶者に離婚や慰謝料を請求するタイミングは、不貞行為に関する十分な証拠を確保できてからにすべきでしょう。

4、PTA不倫で離婚する場合、気を付けたいこと
PTA不倫を理由に離婚する場合は、以下の点に気を付けましょう。
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(1)PTA不倫が子どものいじめにつながる可能性がある
PTA不倫によって離婚する場合、学校関係者やママ友、近所の人に不倫や離婚についてうわさされる可能性があります。それにより子どものいじめにつながることもありますので、親としてはその点にも十分注意する必要があります。
子どものいじめ問題への対策として、子どもの心のケアはもちろん、学区外への引っ越しなどを検討する必要がある場合もあります。 -
(2)PTA不倫は「W不倫」になることが多い
PTA不倫の場合、不倫相手にも配偶者がいる、いわゆる「W不倫(ダブル不倫)」であることが多いでしょう。W不倫の場合、こちらが不倫相手に慰謝料を請求すれば、相手(つまり不倫相手の配偶者)からも、ご自身の配偶者に対して慰謝料請求される可能性があります。
夫婦が離婚するのであれば、財布も別になりますので、不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされたとしても、ご自身には経済的なダメージはありません。しかし、離婚をしない場合は、配偶者と財布が共通のままです。そのため、双方の不倫された側がその不倫相手に慰謝料を請求し合えば、もらえる慰謝料が実質的に減ることになります。 -
(3)不倫相手に慰謝料を請求する際には求償権に注意
求償権とは、不倫の当事者の一方が自己の負担分を超えて慰謝料を支払った場合、他方に対して超過分の支払いを求めることができる権利です。
不倫相手だけに慰謝料を請求した場合、不倫相手はあなたに支払った慰謝料の一部を、あなたの配偶者に後日請求することができます。そのため、夫婦が離婚をしない場合には、結果として家計からお金が出ていくことになりますので、実質的にはもらえる慰謝料の金額が減ってしまいます。
5、離婚を弁護士に依頼するメリットとは
PTA不倫などをきっかけに離婚を検討しているなら、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。弁護士相談・依頼には、以下のようなメリットがあります。
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(1)離婚後のトラブルを未然に防げる
親権や養育費などの離婚条件を、その場では双方が納得して離婚したとしても、将来「言った言わない」のトラブルになることがあります。また、口約束だけでなく、文書で離婚条件を残していても、内容が曖昧であったり、不備があったりすると離婚後にトラブルになることが予想されます。
弁護士であれば、適切な条件をふまえて文書を作成できるため、離婚後のトラブルを未然に防ぐことができます。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
離婚をするには、まずは配偶者と話し合いを行わなければなりません。しかし、PTA不倫が離婚原因だと、相手に対して感情的な物言いをしてしまい、当事者だけではスムーズに話し合いを進めることができない場合もあるでしょう。また、不倫した事実を知ったあとでは、配偶者と顔を合わせるだけでもストレスを感じるという方も多いはずです。
このような場合、弁護士が代わって配偶者と交渉しますので、ご自身は相手と直接会わずに離婚することができます。離婚に伴うストレスや負担を少しでも軽減するためにも、弁護士への依頼を検討してみてください。 -
(3)有利な条件で離婚できるようサポートできる
話し合いで解決できない場合には、離婚調停や離婚裁判といった法的手続きが必要になります。このような法的手続きをひとりで行うのは大きな負担といえますし、知識や経験がなければ、そもそも適切に手続きすることも難しいでしょう。
弁護士であれば、このような法的手続きが必要になった場合も対応可能です。さらに、相談者が有利な条件で離婚できるよう、法的観点からサポートすることができます。 -
(4)公正証書の作成をサポートできる
協議離婚をする際には、離婚時に合意した内容を離婚協議書にまとめる必要があります。特に、養育費、慰謝料、財産分与などの金銭の支払いを伴う場合には、離婚協議書を公正証書にしておくことで、将来の不払いのリスクを軽減することができます。
弁護士は、公正証書の作成のサポートができます。将来的にトラブルが起こらないよう、離婚条件の確認も可能です。
お悩みの方はご相談ください
6、まとめ
PTA不倫を理由に離婚する場合、学校関係者や同級生の保護者、近所の人にうわさされる可能性がありますので、子どもへの影響を最小限に抑えるよう、十分配慮する必要があります。
また、離婚時には、親権など決めるべき事項がたくさんありますので、相手とのやりとりを有利に進めたい、慰謝料請求をしたいという場合は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。PTA不倫を理由に離婚をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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