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離婚で家を出るタイミングは? 不利にならないための別居の進め方

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更新日:2023年12月25日  公開日:2019年09月19日
離婚で家を出るタイミングは? 不利にならないための別居の進め方

離婚を考えたとき、まずは配偶者と別居をしてから話し合った方が良いのか、別居するなら家を出るタイミングはいつが良いのかなど、離婚や別居についてお悩みの方は少なくありません。

別居後の生活費について、不安に思っている方もいるでしょう。

離婚するにあたって、夫婦には同居義務があるため、別居したことが不利にならないように注意する必要があります。

本コラムでは、離婚に向けて家を出るタイミングや別居中の生活費、注意点、手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。

1、離婚で家を出るタイミングはいつ?

離婚時には、「自分が先に家を出ると不利になるのか」「家を出ると不利になるから我慢して同居を続けるべきか」「家を出るタイミングをいつにすべきか」などと迷ってしまうものです。
最初に、早急に別居すべきケースや家を出るタイミングを中心に解説します。

  1. (1)離婚前に家を出ると不利になるのか?

    そもそも離婚前に家を出ると不利になるのでしょうか?
    法律上、夫婦には「同居義務(民法752条)」がありますし、同居義務違反になると相手から「同居調停」を起こされる可能性もあります。

    しかし、相手が別居を了承している場合や別居に正当な理由がある場合には、家を出ても同居義務違反になりません。正当な理由とは、相手による暴力やモラハラ、浮気、夫婦の著しい不仲などです。

    同居義務違反になるのは、「正当な理由」がないのに一方的に家を出る場合です。特に一家の大黒柱である夫が家を出て、専業主婦の妻に対して生活費を払わなくなったら、同居義務違反となります。また、別居をして浮気相手のところに行ってしまうことも、同居義務違反となる可能性があります。これらのケースでは、相手に対する慰謝料支払い義務が発生します。

    なお、同居義務違反になってもならなくても、家を出たからといって無理矢理家に連れ戻されることはありません。同居義務を果たさせるためには、家庭裁判所で「同居調停」を申し立てて話し合いを行うことができますが、裁判所が同居を強制することは実際にはできないからです。

    以上のように離婚の際に家を出ても、正当な理由があれば不利にはなりませんし、相手から同居調停を起こされても家に連れ戻される心配もありません

  2. (2)家を出るタイミングは別居の準備が整ったとき

    離婚時に家を出るタイミングを考えるとき「別居の準備が整ったかどうか」が重要です。別居するには引越し費用もかかりますし、別居後離婚までの期間に自活していくための生活費も必要です。荷物も整理しなければなりませんし、子どもを連れて行くなら子どもへの説明や説得もしなければなりません。また別居したら離婚に関する資料集めができなくなるので、同居中に財産分与や慰謝料請求のための証拠も集めておくべきです。
    これらすべての準備を終えたときが「家を出るタイミング」です。

  3. (3)相手が離婚に同意してくれない場合が家を出るタイミングになることも

    自分が離婚を望んでも、夫がどうしても離婚を受け入れないケースがあるものです。
    そういった状況であれば、いったん配偶者と別居して物理的、心理的な距離を置くと相手の気持ちが変わるケースが多々あります。

  4. (4)DV被害に遭っている場合は早急に別居をするべき

    家を出るタイミングとして、「DVやモラハラの被害を受けている場合」があります。暴力を受け続けていると命に関わるケースもありますし、教育上、子どもに対する悪影響も考えられます。
    DV夫(妻)、モラハラ夫(妻)に対して「離婚したい」と言っても応じないケースが多数です。
    >DVやモラハラの被害に遭っているなら、ご自身や子どものことを第一に考えて早急に家を出ましょう。

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2、家を出ていく場合の家賃や住宅ローンは? どちらが出ていくべき?

  1. (1)夫婦のどちらが家を出るべきか?

    離婚前に別居する場合、夫婦のどちらが家を出るべきなのでしょうか?
    これについて、ルールはありません。相手との結婚生活に耐えられなくなった側が家を出るのが通常です。ただし自分が家を出るのではなく、話し合いによって相手に家から出て行ってもらう場合もあります。

  2. (2)賃料や住宅ローンは誰が払うのか

    別居後よく問題となるのが、家賃や住宅ローンです。
    賃貸借契約の名義人や住宅ローンの名義人となっている配偶者が家を出たら、その人はもう払わなくて良くなり、家に残された配偶者が賃料やローンを払うのでしょうか?

    実際には、そのようなわけにはいきません。賃貸人は名義人と契約していますし、金融機関は名義人にローン貸付をしています。家を出たからと言って払わなくなったら契約違反となり、督促されたり裁判を起こされたりする可能性もあります。
    家を出たとしても、名義人を変更できないなら賃料やローンを払い続けなければなりません。別居先での家賃も発生するので二重生活となり、かなり出費が増えてしまうケースもあるので注意が必要です。

3、別居中の生活費はどうする?

家を出るタイミングで問題になりやすいこととして「別居中の生活費」があります。
特に専業主婦の方などの場合、自分に収入がないので別居して夫が生活費を支払ってくれなくなったら死活問題となります。

民法は、夫婦に「婚姻費用の分担義務」を定めています。婚姻費用とは夫婦それぞれの生活費です。夫婦にはお互いに扶助義務があり、相手にも自分と同等の生活をさせなければなりません。相手が困窮していたら、自分の生活を削ってでも生活費の援助をしなければならないのです。婚姻費用の支払いは、離婚前の別居期間中ずっと継続します。

共働きの夫婦の場合そこまでインパクトが大きくないのですが、妻が専業主婦の場合などに別居すると、夫は家を出るタイミングで自分の生活費と相手の生活費の両方の負担すべき状態になります。
家を出るタイミングでは「別居後自分の生活費と相手に支払う生活費がどのくらいになるか」しっかり試算した上で収入状況も勘案し、離婚までの期間、やりくりを続けられるかどうか検討しましょう。

なお離婚後は婚姻費用の支払いが不要となりますが、子どもが成人するまでの間、養育費の支払い義務が発生します。

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4、子どもがいる場合の別居について

家を出るタイミングでは、子どものことも考えておかなければなりません。
相手が「絶対に親権は譲らない」などと言っている場合、無理矢理子どもを連れて別居すると違法な「連れ去り別居」と解釈されて、「未成年者略取(刑法224条)」に該当する可能性があります。
(連れ去り別居という法律用語はありません。別居の態様を表す言葉として使用しています。)
以下では家を出るタイミングで子どもを連れて行くと違法になるケースと違法にならないケースをご紹介します。

  1. (1)子どもの連れ去りが違法となるケース

    以下のような場合、家を出るタイミングで子どもを連れて行くと違法と評価される可能性があります。

    • 普段子どもの面倒をみていないのにいきなり子どもを連れて行った
    • 子どもが「今の家に住みたい」と言っているのに無理矢理連れ去った
    • 子どもの保育園や幼稚園に迎えに行き、泣き叫ぶ子どもを車に乗せて走り去った
    • 子どもを連れ去るとき、相手配偶者や子どもに暴力を振るった
  2. (2)子どもを連れて家を出ても違法にならないケース

    一方、以下のような場合には家を出るタイミングで子どもを連れて行っても違法にはなりません。

    • 同居中、相手が子どもを虐待していた
    • 自分が相手から暴力を振るわれており、子どもも怯えていた
    • ある程度年齢の大きくなった子ども自身が「家を出たい」と言っていた
    • 普段から子どもを養育している人が子どもを連れて出た

    いずれにしても子どもの親権者は「どちらが子どものためになるか」という観点から決めるべきであり、夫婦の意地や見栄などの理由で決めるべきではありません。
    たとえ寂しくても、相手が親権者になった方が子どもにとって良好な環境を築けるのであれば、相手に譲る姿勢も必要となります。

5、家を出るタイミングで行うべき手続きについて

離婚を前提に別居するなら、家を出るタイミングで以下のような手続きを行いましょう。

  1. (1)郵便物の転送届

    まずは「郵便物の転送届」を出しましょう。別居しても郵便物は以前の住所に届いてしまいます。すると、相手に勝手に郵便物を開けられていろいろと詮索されたり嫌がらせをされたりするおそれがあります。
    転送届の手続きは、郵便局に転送届を提出する方法でもできますし、ネットから転送届を出すことも可能です。

  2. (2)住民票の転出・転入届

    家を出るタイミングで、住民票の異動も行いましょう。
    同一市区町村内の引っ越しなら市区町村役場で簡単にできますが、他の市区町村に移る場合には、少々複雑な手続きが必要です。まずは今住んでいる市区町村の役場に行って「転出証明書」をもらい、その後引っ越し先の役所で「転入届」を提出して住民票を異動させます。
    またDVを受けていて相手に住所を知られたくない場合などには、相手があなたの住民票や戸籍附票を閲覧出来ないようにしてもらう方法もあります。役所に申出をして身を守るための対応をとりましょう。

  3. (3)子どもの児童手当の受取人変更

    小中学校の子どもがいる場合、行政から児童手当を受けとっているものです。児童手当は「世帯主」に振り込まれるので、多くのケースで夫名義の口座に入金されています。
    妻が家を出ても当然には妻の口座に変更してもらえないので、児童手当を受けとるためには変更の手続きをしなければなりません。 住民票の異動などと同時に児童手当受取人の変更も申請すると良いでしょう。

  4. (4)生活保護などの相談

    収入の無い女性の方などが子どもを連れて別居した場合、夫がすぐに生活費を払ってくれずにたちまち生活に窮してしまうケースがあります。
    すぐに働けない場合は、福祉事務所で生活保護の相談をして、生活保護費を受給しましょう。
    生活保護を受給していても子どもの親権者にはなれるので、心配せずに行政福祉を頼ることをおすすめします。

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6、まとめ

離婚前、家を出るタイミングをいつにすべきか迷っていると、決断が遅れて望まない結婚生活が長引き、今よりもさらに苦しむ結果となってしまう可能性があります。

また子どもにとっても、不仲な親の様子を見せ続けてしまうのは悪影響です。

自分自身や子どものことを考えたとき、きっぱりと離婚をして、新たな人生を始める方が得策といえるケースも多いでしょう。

離婚で困ったときには弁護士が力になりますので、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。ベストな条件で離婚できるように、知見・経験豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。

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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
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[ご相談窓口]0120-663-031
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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