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【共同親権】既に離婚している場合はどうなる? 弁護士が解説

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更新日:2025年08月14日  公開日:2025年08月14日
【共同親権】既に離婚している場合はどうなる? 弁護士が解説

これまで単独親権が採用されていた日本でも、令和8年(2026年)5月24日までに、離婚後の共同親権を認める改正民法が施行される予定です。

改正民法の施行にあたって、既に離婚している場合の親権はどうなるのだろうかと疑問に思っている方も少なくないでしょう。愛する子どものことだからこそ、出来ることがあるなら何でもしたいとお考えの方もいるはずです。

本コラムでは、子どもがいる離婚済みの夫婦に対して、改正民法で導入される共同親権の制度がどのように影響を及ぼすのか、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。

目次を

1、既に離婚している場合も共同親権は適用される?

これまでの日本の制度では、父母が離婚した後の子どもの親権者は、父母のいずれか一方としなければなりませんでした(=単独親権)。

しかし、改正民法が施行されてからは、離婚後も父母の双方が子どもの親権者となれます(=共同親権)。親権者の決定方法は、協議離婚や離婚調停の際に、父母双方の合意に基づいて単独親権もしくは共同親権のどちらかに決定することが可能になります。離婚裁判になると、父母自身で親権のあり方を選ぶことはできず、最終的に裁判所の判断によって決められます。

改正民法の施行前に既に離婚している場合、改正民法の施行後に手続きを行わなければ、単独親権が継続することにご注意ください。なお、共同親権に変更するための手続きは今後決定されますが、現在の親権者変更と同様に調停・審判による方法になると思われます。調停で合意できなかった場合には、審判に移行して裁判所に判断されることになりますが、家庭裁判所の判断により、変更が認められないこともあります。

親権のことでお悩みの際は、弁護士にご相談ください法改正前から行動しておくべきこと、知っておくべきことなどについて、戦略的に考えるサポートをいたします

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2、単独親権から共同親権への変更が認められるかどうかの判断基準

家庭裁判所に共同親権への変更を申し立てた場合、変更の可否は家庭裁判所の判断に委ねられます。2章では、その判断基準とポイントを解説します。

  1. (1)共同親権への変更可否を判断する際の考慮要素

    共同親権への申し立てを行ったとき、家庭裁判所は、子どもの利益のために必要があると認める場合に限り、単独親権から共同親権に変更する旨の審判を行います(改正民法第819条第6項)。

    なお、共同親権に変更すべきか(子の利益のためになるかどうか)を判断するかはに当たっては、家庭裁判所は以下の事情を考慮することになっています(同条第7項)。

    • ① 父母と子との関係
    • ② 父と母との関係その他一切の事情


    以下に当たる場合には、共同親権は認められず、父母の一方を親権者と定めなければなりません。

    • ① 父又は母が子の心身に害悪を及ぼす恐れがあると認められるとき
    • ② 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(暴力等)を受けるおそれの有無や、親権に関する協議が整わない理由などを考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき


    変更を申し立てる前の親権者が、父母の協議により定められていた場合には、さらに以下を考慮することになっています(同条第8項)。

    ① 親権者を定めた父母の協議の経過
    ※特に、以下の事情を勘案するものとされています。
    • 父母の一方から、他の一方への暴力等の有無
    • 調停の有無
    • 裁判外紛争解決手続(ADR)の利用の有無
    • 協議の結果についての公正証書の作成の有無
    • その他の事情
    ② 親権者を定めた後の事情の変更
    ③ その他の事情
  2. (2)単独親権から共同親権への変更が認められないケース

    改正民法の施行により、単独親権から共同親権が新たに認められることは、上記のうち「親権者を定めた後の事情の変更」に当たると考えられます。
    そのため、協議で親権者を定めた場合にも、共同親権への変更が認められる可能性があります。
    ただし、以下のような事情があるケースでは、親権の変更は認められない可能性が高いと考えられます。

    • 親から他方の親、親から子どもへの暴力行為やひどい侮辱行為があるなど、DVや虐待によって関係性に問題が生じている
    • 長期間にわたり、別居親が合意的な理由もなく養育費の支払いを怠っていた
    • 離婚時に作成した公正証書において、「離婚後の共同親権が認められるようになっても単独親権を維持し、共同親権への変更は申し立てない」と定められている
    など


    家庭裁判所に考慮してほしい事情があれば、それを主張する人が関連資料や証拠などを提出しなければなりません。相手方が主張する共同親権への変更を拒否したい際には、上記のような事情を立証できる証拠を家庭裁判所に提出しましょう。

    親権変更に関する弁護士選びでは、これからの変更点や動き方など、しっかりと情報収集できているかどうかがポイントです。

3、既に離婚済みの父母が共同親権者になったときの親権行使の方法

共同親権と単独親権では、子どもの親権を行使する方法が大きく異なります。3章では、改正民法に従った共同親権の行使方法について、押さえるべきポイントを確認していきましょう。

  1. (1)子どもの身上監護と財産の管理を、父母が共同で行う

    共同親権者となった父母は、子どもに関する以下の事項を共同で行います。

    • 財産の管理(預貯金口座の開設、相続財産、不動産などの管理処分など)
    • 監護、教育(高校に進学せずに就職するなどの判断を含む)
    • 医療(手術・入院などの重要な医療行為、精神科通院など)
    • 住居、居所(引っ越しや転居などの指定)
    • 職業、活動(芸能活動、危険性のある労働、遠征や留学を伴うスポーツ選抜などの参加許可)
    • 法律行為に対する同意(契約締結、養子縁組、嫡出否認の訴えの代理、認知の訴えの代理など)
    • 国籍、戸籍(国籍選択、改姓・氏の変更、旅券の取得・渡航など)


    単独親権の場合は、上記の事項を親権者が一人で決めることができます。
    しかし共同親権への移行後は、原則として共同親権者が話し合ったうえで、子どもの利益になるように親権の行使方法を決めなければなりません。

  2. (2)親権行使にあたり、父母の合意が得られない場合は家庭裁判所に審判申し立て

    親権行使につき、共同親権者である父母間で意見が食い違うことも想定されます。
    父母の合意が得られない場合は原則として、家庭裁判所に対し、特定の事項に係る親権の単独行使を認める審判を申し立てることが必要です。

    家庭裁判所は、子どもの利益のために必要があると認めるときは、特定の事項に関する親権を父母の一方が単独で行使できる旨の審判を行います。審判が確定すれば、親権の単独行使が認められます。

    なお、家庭裁判所の審判で認められたもの以外の事項は、引き続き父母が共同で親権を行使しなければなりません。

  3. (3)共同親権者の一方が単独で親権を行使できるケース

    父母の共同親権であっても、以下のいずれかに該当するとき、共同親権者の一方が単独で親権を行使できます(改正民法第824条の2)。

    • ① 他の一方が親権を行うことができないとき
    • ② 子どもの利益のため、急迫の事情があるとき
    • ③ 監護および教育に関する日常の行為について、親権を行使するとき
      (例)食事、日常の買い物、心身に重大な影響がない医療、習い事、アルバイト、学校の提出物対応など
    • ④ 家庭裁判所によって親権の単独行使が認められたとき

4、民法改正による面会交流(親子交流)と養育費への影響

父母が離婚した家庭においては、単独親権から共同親権へ移行した後も、親子の面会交流(親子交流)や養育費の問題が残ります。4章では、離婚後の共同親権を新たに認める改正民法により、面会交流と養育費にどのような影響が生じるのかについて解説します。

  1. (1)離婚後の共同親権による面会交流への影響

    共同親権の場合、父母が協力して子育てをするという側面が強調されるため、単独親権の場合よりも積極的に面会交流を行うことが期待されます。

    特に元配偶者の意向で子どもとの十分な面会交流が妨げられている場合、共同親権が認められれば、子どもと会う頻度を増やせる可能性があります。
    しかし、積極的な面会交流を拒否する元配偶者が、単独親権から共同親権への移行について、すんなり同意するとは考えにくいものです。

    親権で揉めることが予想されるときは、弁護士と協力して、共同親権への移行が適切であることを示す事情を説得的に訴えましょう。

  2. (2)法定養育費と先取特権の導入による養育費への影響

    改正民法では、離婚後の共同親権のほか、養育費に関して、以下の2つが新たに導入されます。

    ① 法定養育費の制度
    父母間で養育費の取り決めをせずに離婚に至った場合でも、法令に従った最低限の額の養育費を請求できる制度が新設されます。法定養育費の金額については、追って定められる予定です。

    ② 一般先取特権の付与
    養育費が未払いとなった場合に、他の債権に優先して回収できる権利が付与されます。訴訟などで養育費の支払義務を確定させることなく、直ちに相手の財産(預貯金や給与など)の差し押さえを申し立てることができるようになります。


    改正民法の新制度を使えば、未払いの養育費を回収しやすくなるでしょう。

    養育費の未払いに悩んでいる方は、改正民法を踏まえた対応について、早い段階から弁護士に相談することがおすすめです。

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5、弁護士からのメッセージ

令和8年(2026年)5月24日までに施行される改正民法によって、離婚後の共同親権が新たに認められるようになります。
既に離婚済みだからといって、共同親権が認められないわけではありません。改正民法の施行後に家庭裁判所へ親権者変更の申し立てを行えば、単独親権から共同親権への移行が認められる可能性があります。

単独親権から共同親権に変わると、子どもの親権の行使方法が大きく変わります。父母間で協力すべき場面が増えるので、良好な関係性を築くことが何よりも大切といえるでしょう。

しかし、子育てに関する意見が食い違うなど、トラブルになるリスクは増えるかもしれません。もしトラブルが発生してしまったら、速やかに弁護士へ相談することをご検討ください。

ベリーベスト法律事務所は、離婚や面会交流、養育費のトラブルに関するご相談を随時受け付けております。なお、法改正を控えた今、最新の情報をしっかりとキャッチアップできている弁護士に相談することが非常に重要です。ベリーベスト法律事務所では、離婚専門チームの知見・経験豊富な弁護士がサポートいたしますので、まずは当事務所までご相談ください。

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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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