不貞裁判の尋問は何を聞かれる? 答え方と注意点を弁護士が解説

不貞裁判の尋問に出る際、「どのようなことを聞かれるのか」「答え方で注意する点はあるのか」など、不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、不貞裁判の尋問で何を聞かれるのかをあらかじめ把握しておけば、当日の尋問で失敗するリスクを最小限に抑えることが可能です。また、尋問で聞かれること以外にも、答え方の注意点、マナーや当日の雰囲気なども確認しておくことで、少しでも不安を解消して尋問に臨むことができるでしょう。
今回は、不貞裁判の尋問の流れや目的、実際によくある質問例、答え方の注意点、尋問前にできる準備や対策などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、不貞裁判で尋問がなされる理由と流れ
不貞裁判では、「尋問」と呼ばれる手続きが行われることがあります。以下では、尋問を行う目的と、かんたんな流れを説明します。
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(1)不貞裁判で尋問をする目的は「証言の信頼性」と「矛盾点」の確認
不貞裁判では、主に不貞行為の有無や頻度、期間などについて争点となります。その際は、当事者からの主張立証に基づいて事実認定を行います。
動画や写真、LINEのやり取りなどの物的証拠があれば、不貞行為があったことが認められる可能性が高いでしょう。一方、十分な物的証拠がない場合には、当事者の尋問の結果が裁判の勝敗を左右することがあります。
不貞裁判の尋問は、当事者とその代理人、裁判官が法廷で当事者に不貞に関する質問を直接投げかけることで、書面では確認できない微妙なニュアンスや感情の動き、証言の矛盾などの確認が行われます。尋問により証言が信用できると判断されれば、事実認定において有利に働くことになるため、万全の準備をして臨まなければなりません。 -
(2)不貞裁判の尋問は裁判の終盤に行われる
不貞裁判の尋問は、訴状・答弁書・準備書面や証拠の提出といった主張立証が出尽くして、争点整理がすべて終了した段階で行われます。つまり、尋問は裁判の終盤にあたるタイミングで実施されることになります。
なお、多くの場合は、尋問を実施する前に裁判所から和解勧告がなされて、それでも合意に至らない場合に尋問へと進む流れになります。 -
(3)弁護士に依頼すれば出廷負担を軽減できる
裁判に自分一人で対応する場合、すべての期日に出廷しなければなりません。
しかし、弁護士に依頼すれば、尋問期日以外の手続きは弁護士のみの出廷で対応できるため、精神的・時間的負担を軽減することが可能です。
尋問当日も弁護士が同席するため、心理的な支えがある状態で尋問に臨むことができます。
お悩みの方はご相談ください
2、不貞裁判の尋問では何を聞かれる? よくある質問例
不貞裁判の尋問では、不倫の事実関係や当事者の認識について聞かれます。以下では、不貞裁判の尋問でよくある質問例をいくつか紹介しましょう。
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(1)交際のきっかけや交際の始まりはいつか
まず、どのようにして知り合い、交際が始まったのかという経緯が問われるでしょう。
どちらが主導的な立場だったのかによって、不貞の悪質性が変わり、最終的な金額にも影響するため、交際のきっかけや経緯(偶然の出会いだったのか、職場やSNSなどの関係性から始まったのかなど)を明確に説明する必要があります。 -
(2)どのくらいの頻度で会っていたか
週に何回会っていたか、宿泊を伴っていたかなど、会っていた頻度についても問われます。不貞行為の回数や頻度は、不貞の悪質性を判断する要素のひとつであり、慰謝料額にも影響を与える重要な項目です。
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(3)どこで会っていたか
不倫をするために会っていた場所(ホテル、自宅、外出先など)についても、詳しく聞かれます。
これは具体的な場所が、不倫関係の存在を裏付ける材料になるからです。 -
(4)配偶者の存在を認識していたか
相手に配偶者がいることを知っていたかどうかは、故意・過失の有無を判断するうえで大きな要素となります。
配偶者がいることを知っていた場合だけではなく、注意すれば配偶者がいることに気付けたはずなのに、不注意により気付けなかった場合でも、法的責任が発生します。そのため、「既婚者だとは知らなかった」などと主張している事案では、過失の有無に関する事情も詳しく聞かれることになるでしょう。 -
(5)肉体関係があったかどうか
不貞裁判では、肉体関係の有無が不貞の成立に直結します。
肉体関係があったかどうか、どの程度の頻度だったかなど、踏み込んだ質問がなされるため、そのつもりで心構えしておきましょう。 -
(6)相手との現在の関係性
現在も連絡を取っているか、交際が継続しているか、関係は解消しているかといった、現在の状況について確認されます。
現在も交際を続けていると、慰謝料が増額される事由になるため、不貞がバレてしまった時点で、不倫相手とはかかわらないようにすべきでしょう。
3、不貞裁判の尋問で嘘をついたらダメ? 答え方や注意点
不貞裁判の尋問では、答え方によっては不利な判断がなされるリスクがあります。そのため、以下の点に気を付けて答えるようにしてください。
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(1)嘘の証言は不利な判断を招くリスクが高い
尋問では、これまでの期日で提出された書面や証拠と、矛盾がないかどうか確認されます。
尋問で嘘の証言をしてしまうと、これまでの主張や証拠と矛盾が生じてしまい、証言の信用性が大きく低下してしまいます。また、当事者は尋問の際に宣誓をしますが、宣誓したうえで嘘の証言をすると、10万円以下の過料に処されるリスクもあります(民事訴訟法第209条第1項)。
そのため、不利な事項であっても、事実に即して正直に話すことが大切です。 -
(2)厳しい質問や挑発的な発言に対しても冷静さを保つ
尋問では、相手方から厳しい口調で責められることや、挑発的な質問をされることがあるかもしれません。どのような状況でも冷静に対応することが重要です。
感情的になってしまうと、論理的な受け答えができなくなり、気づかないうちに自分に不利な発言をしてしまうおそれがあります。相手方は、あなたを動揺させて不利な証言を引き出そうとしてくる可能性もあるので、それにつられることなく、冷静に対応するようにしてください。 -
(3)一貫性のある証言をする
不貞裁判の尋問では、過去の書面や陳述書などの内容と、証言内容に矛盾がないかどうか確認されます。証言に矛盾があると、信用性が損なわれる原因になるため、過去の書面や陳述内容と整合性の取れた回答をするよう意識しましょう。
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(4)あらかじめ弁護士と対応・方針を整理しておくことが重要
弁護士に依頼している場合も、尋問は自ら答える必要があります。尋問に向けて、想定される質問や回答の方針を、弁護士と打ち合わせておくことが大切です。
初めての尋問であれば、緊張や不安からうまく受け答えができないこともあるでしょう。できる限り準備をしておくことで、少しでも当日を落ち着いて迎えられるようにしてください。
4、尋問の前にできる準備・対策
以下のような準備や対策をしておくことで、安心して尋問に臨むことができます。
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(1)裁判前に話し合いによる解決ができないかを検討する
不貞行為が発覚すると、いきなり裁判になるわけではなく、まずは当事者同士の話し合いによる解決を目指すのが一般的です。
不倫相手の配偶者から、不倫の事実を指摘する内容などが記載された内容証明郵便が届いたら、話し合いで解決できないか相談をしましょう。裁判に進む前に当事者同士の話し合いで解決できれば、尋問に臨む必要もありません。結果として、時間的・経済的・精神的負担を軽減することができます。 -
(2)尋問当日の雰囲気やマナーを事前に把握しておく
尋問は、厳粛な雰囲気の裁判所で行われます。さらに、裁判官、相手方弁護士、書記官などの前で話すことになります。発言する際は緊張するかもしれませんが、裁判官を見ながら、落ち着いて丁寧に話すことが大切です。
また、服装には特別な決まりはありませんが、スーツのように清潔感がありフォーマルなものが好ましく、だらしない印象を与えないよう注意しましょう。言葉遣いはもちろん、態度によっても裁判官の心証に影響を与えるため、礼儀正しく、誠実な対応を心がけてください。
弁護士に依頼すれば、尋問の雰囲気やマナーについてより詳しくアドバイスを受けることができます。 -
(3)事前の模擬尋問で不安や緊張を和らげる
尋問に向けて準備をしていても、当日になると緊張してしまうことがあるでしょう。少しでも不安なく尋問に行くことができるよう、リハーサルを行うこともあります
弁護士にリハーサルを依頼すれば、実際の質問を想定して答える練習を行い、回答内容を確認・修正することも可能です。弁護士からのフィードバックを受けることで、回答の改善点が明確になり、自信を持って当日を迎えられるでしょう。 -
(4)弁護士に相談する
先述のとおり、弁護士に相談することで、尋問の流れやポイントを事前に把握できるため、初めての尋問でも安心して臨むことができます。
また、法的な立場からアドバイスを受けられるので、法廷での受け答えにも説得力が増します。さらに、弁護士が同席することで心理的な支えとなり、予期せぬ質問にも冷静に対応することができます。
このように、弁護士に相談するとさまざまなメリットがあるため、不貞行為で訴えられたときは早めに弁護士に相談するようにしましょう。
お悩みの方はご相談ください
5、まとめ
不貞裁判の尋問では、交際の実態や認識、肉体関係の有無・頻度などについて詳細に問われます。答え方によって、裁判官からの印象も大きく変わるため、不利な判断を避けるためにも、事前準備と誠実な対応を心がけるようにしましょう。不貞裁判の尋問に少しでも不安がある方は、弁護士に相談をしてみてください。
また、そもそも早期に和解ができれば、尋問を回避できる可能性もあるため、まだ不貞裁判が決まっていない方は、和解の検討も視野に入れることが望ましいです。
不貞裁判に関して不安がある方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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