結婚をやめた方がいいサインは? 婚約破棄のリスクと慰謝料を解説
交際や婚約を経て、「本当にこの人と結婚して大丈夫だろうか」と不安になる人もいるでしょう。付き合っている相手の言動や価値観に違和感を抱いたとき、それは「結婚をやめたほうがいいサイン」かもしれません。
ただし、相手と別れることを決断したとしても、状況によっては婚約破棄として慰謝料請求のリスクが発生する可能性があるため、念入りに準備をしてから相手に切り出すことをおすすめします。
本コラムでは、結婚を決める前に知っておきたい危険なサインや、結婚すべきか悩んだときの判断基準、婚約破棄に関する注意点や慰謝料リスクについて、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
目次を
1、本当にこの人でいいのか不安! 結婚をやめたほうがいいサイン
結婚が近づくにつれ、「この人を選んで本当に良かったのか」と不安を抱く方もいるでしょう。このような不安や違和感を放置したまま結婚すると後悔するおそれがあるため、立ち止まって考えてみてもよいかもしれません。以下では、結婚をやめたほうがいいサインとして、いくつかの例を紹介します。
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(1)日本の離婚率は? 結婚前に立ち止まる重要性
厚生労働省が公表する令和5年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和5年の離婚件数は18万3808組で、離婚率は人口1000人あたり1.52人でした。また、同居期間別にみた離婚件数では、同居期間が5年未満の夫婦がもっとも多いことから、一定数の夫婦が結婚後すぐに離婚に至っていることがわかります。
結婚は人生の大きな転機であり、法的にもさまざまな責任が生じます。そのため、「不安や違和感があるけど、なんとかなるだろう」と結婚を強行するのは危険です。
違和感を抱いた時点で立ち止まり、自分の気持ちや相手との関係性を見つめ直すようにしましょう。 -
(2)結婚をやめたほうがいいサインとは? よくある5つの兆候
結婚を考えている相手に次のような兆候がみられた場合、結婚についてもう一度考え直す機会と捉えてもよいかもしれません。
① 価値観が合わない
食べ物の好み・お金の使い方・趣味・生活リズムなど、日常生活における価値観が大きく異なる場合、結婚後も大きなストレスとなるおそれがあります。
② 怒りっぽい
ささいなことで怒鳴る、物に当たる、自分の思い通りにいかないと不機嫌になるなど、感情の起伏が激しい相手が当てはまります。怒りっぽい気質の方は、結婚後にあなたに暴力をふるうようになるリスクも考えられます。
③ モラハラ気質
あなたに対して言葉で傷つける、見下す、交友関係を制限するなど、精神的な支配を行う方と結婚をすると、将来さらにモラハラ被害を受けるリスクがあります。
④ お金や時間の使い方の感覚が違いすぎる
ギャンブルをする・浪費する・貯金ができないなど、お金にルーズな相手と結婚すると、生活が不安定になりやすくなります。時間の使い方も、あなたの生活に影響を及ぼすため、すれ違いが増えるほど結婚生活に疑問を感じやすくなるでしょう。
⑤ 親との関係性が悪い・親への依存度が高い
親から自立できていない、何でも親に報告・相談する、親の意見に逆らえないといった傾向がある場合、結婚後の生活や出産・育児について、相手の親が過剰に介入してくるリスクがあります。 -
(3)結婚をやめた方がいいサインを見逃して結婚した場合のリスク
交際中や婚約後に感じた不安や違和感を甘く見て結婚すると、近い将来、離婚を決断することになるかもしれません。さらに、離婚にあたって以下のような問題が発生する可能性が高まるでしょう。
- 精神的ストレスや身体的被害
- 離婚時の財産分与や慰謝料トラブル
- 子どもの親権・養育費をめぐる争い
このようなリスクを回避するためにも、結婚をやめたほうがいいサインに気づいたときは、結婚について見つめ直してみてください。
2、彼氏・彼女と結婚すべきか悩んだときの判断基準
以下では、相手との結婚に悩んだ際、本当に結婚すべきかどうかを見極めるための6つのチェックポイントを紹介します。
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(1)価値観が一致しているかを見極める
先述のとおり、日常生活での価値観が極端に異なると、結婚後もストレスが積み重なっていきます。たとえば、「お金があればすぐ使いたい」と考える方と、「お金は将来のために貯めたい」と考える方が一緒に生活を送るのは容易ではありません。
金銭感覚や生活における趣味や家事の優先順位など、譲れない部分が一致しているか確認しましょう。 -
(2)将来設計の方向性にズレがないか
子どもが欲しいかどうか、仕事を続けたいか、どこに住みたいのかなど、共通の感覚を持ちたい項目は、結婚前に必ず話し合っておくべきです。
将来設計の方向性にズレがあり、話し合いでも溝が埋まらなければ、結婚してもさらにストレスを抱えることになるでしょう。 -
(3)家族に対する考え方や距離感が合うか
結婚をすると、相手の家族とも一定の関わりが生まれます。それぞれが家族に会いに行く頻度や、一緒に挨拶に行くタイミングなどは、婚約してから相手と相談しやすくなるはずです。結婚に進む前にすり合わせをしておきましょう。
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(4)暴力や支配的な態度がないか確認する
口論しているときに手をあげる、暴言を吐く、無視する、何をしても「お前が悪い」と責任転嫁する、といった行動に出る方は要注意です。
結婚後にDVやモラハラに発展するおそれがあるため、迷わず距離を取りましょう。 -
(5)話し合いで問題を解決できる関係性か
意見の食い違いがあった際、冷静に話し合えるかどうかは、結婚生活を続けるうえで非常に大切です。
相手が話し合いを避けようとするのはもちろん、話し合いをすると不機嫌になる傾向がある場合も、今後の結婚生活でトラブルがあったときに問題が深刻化する要因になりかねません。 -
(6)迷ったときは第三者に相談する
悩みをひとりで抱え込むと、視野が狭くなり冷静に判断ができなくなることがあります。そのようなときは、信頼できる家族や友人に相談してみましょう。
また、婚約破棄をするとトラブルが起こりそうな場合は、法律の専門家である弁護士に相談することも有効です。
3、婚約破棄をするときに知っておきたい注意点
婚約破棄を検討しつつも、「婚約破棄を切り出すと、相手から訴えられるのでは?」と心配される方もいるかもしれません。以下では、そのような不安を解消するために、婚約破棄をする前に知っておきたい知識と、実際に切り出すときの注意点を説明します。
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(1)婚約破棄は法的に可能である
婚約破棄とは、結婚の約束(婚約)を一方的に解消することをいいます。婚約した男女には、結婚に向けて一定の法的拘束力が生じますが、結婚を強制することはできないため、婚約を破棄することも法的には可能です。
ただし、正当な理由なく婚約を破棄した場合、相手から損害賠償請求をされるリスクがあります。 -
(2)婚約破棄が認められる条件と正当な理由
婚約破棄を申し出た際、以下のような正当な理由がある場合には、相手から損害賠償請求をされる心配はありません。
- 相手に浮気・不貞行為があった
- 相手からDVやモラハラなどの暴力・精神的虐待を受けていた
- 相手に金銭トラブルや借金を隠されていた
- 相手が結婚に対して誠実でない(音信不通・入籍準備をまったくしないなど)
- 両者の合意による婚約の解消
婚約破棄を検討中の方は、上記のような正当な理由があるかどうかを確認するようにしましょう。
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(3)婚約破棄に踏み切るときの注意点
「気が変わった」「やっぱり好きじゃないかも」など、一方的な理由だけで婚約を破棄すると、相手から損害賠償請求をされるおそれがあります。
婚約破棄による損害には、精神的苦痛に対する慰謝料以外にも、結婚式場のキャンセル費用、新婚旅行のキャンセル費用、婚約指輪・結婚指輪の購入費用、新居関連費用などが含まれます。
そのため、タイミングによっては高額な賠償金を負担しなければならない可能性があることに注意が必要です。
4、婚約破棄で慰謝料を請求されないための対応方法
婚約破棄をした際に、すべてのケースで慰謝料が発生するわけではありませんが、状況によっては金銭負担を覚悟しなければなりません。以下では、慰謝料が発生するかどうかの判断基準や相場、トラブル回避のための具体的な対処法について説明します。
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(1)婚約破棄で慰謝料が発生するケースと発生しないケース
婚約破棄で慰謝料が発生するかどうかは、先述のとおり、婚約破棄に正当な理由があるかどうかが重要なポイントです。たとえば、相手が不倫をしていた、暴力をふるったなどのケースは、正当な理由となります。
一方、以下のようなケースでは、婚約破棄に正当な理由がないとして、相手から慰謝料を請求される可能性があります。- あなたが浮気・不貞行為をしていた
- 相手に対してDVやモラハラなどの暴力・精神的虐待をしていた
- あなたが金銭トラブルや借金を隠していた
- あなたが結婚に対して誠実な対応をしていない
- 明確な理由のない婚約破棄
- 両親の反対による婚約破棄
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(2)婚約破棄の慰謝料相場
婚約破棄の慰謝料相場は、ケースによって大きく異なりますが、一般的なケースであれば50~200万円程度が相場と言えます。
具体的な金額については、以下のような要素を踏まえて判断されます。- 婚約までの交際期間や経緯
- 婚約成立後の期間や経緯
- 婚約破棄の原因
- 婚約破棄の時期
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(3)婚約破棄による慰謝料トラブルを防ぐための対応方法
婚約破棄による慰謝料トラブルを防ぐには、以下のような方法が効果的です。
① 証拠を残しておく
婚約破棄の理由や、相手の問題行動があった場合は、それを示す客観的な証拠を残しておきましょう。
たとえば、LINEやメールのやりとり、録音、日記やメモなどは、法的証拠として有効です。特にモラハラやDVは、証拠の有無が婚約破棄の正当性を左右することもあります。
② 感情的にならず冷静に対応する
婚約破棄を切り出す際は、相手を責めてしまいたくなるかもしれません。しかし、事実と感情は切り分けて冷静に説明することが重要です。
一方的に連絡を絶つ、怒鳴る、暴言を吐くといった行動は、相手から「精神的苦痛を受けた」と主張される要因になり、婚約破棄できなくなったり、条件が不利になったりするおそれがあるため避けるべきです。誠実な態度を保つことで、相手も冷静に受け止めてトラブルを避けやすくなります。
③ 弁護士に相談する
婚約破棄をするべきか悩んでいる方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、証拠の整理や相手への伝え方、慰謝料請求に発展するリスクの有無などを法的に判断し、あなたにとって最善の対応策をアドバイスしてくれます。
また、弁護士が相手とのやり取りを代行することで、精神的な負担を減らすことも可能です。
お悩みの方はご相談ください
5、まとめ
結婚は人生の重大なイベントです。不安を感じながら無理に結婚を進めるのではなく、一度立ち止まり、自分の気持ちや将来を冷静に見つめ直しましょう。
もし婚約破棄を検討している場合は、まず家族や信頼できる友人などに相談することが大切です。そのうえで、トラブルを避けるためにも、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
法律的なサポートを受けながら、自分にとって最善の選択を見つけたいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。当事務所での弁護士相談については、お近くの事務所で対面、もしくはZoomなどを活用したオンラインで行うことが可能です。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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更新日:2025年12月03日 公開日:2025年12月03日
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