長年連れ添った夫婦が離婚を決意するのは、どんなときなのでしょうか。近年増えつつあると言われる熟年離婚。熟年離婚を決意する妻の事情・夫の事情とは。熟年離婚の原因やそのメリットやデメリットなど、熟年離婚で後悔しないために知っておきたいポイントについてまとめました。
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熟年離婚とは
熟年離婚という言葉を聞くことが珍しくなくなってきましたが、熟年離婚に定義があるわけではありません。熟年離婚というと、熟年者の離婚を意味するにも聞こえますが、一般的には、結婚して一定の長い期間連れ添った夫婦が離婚することをいい、およそ20年以上結婚生活の後に離婚することを指すと言われています。
厚生労働省の統計(「人口動態統計月報年計(概数)の概況」)によると、離婚件数は、平成14年をピークにやや減少傾向ないし横ばいに推移していますが、同居期間ごとの離婚件数をみると、同居年数が20年以上の夫婦の離婚件数は横ばいないし増加傾向にあります。
熟年離婚の原因
女性側から見た熟年離婚の原因
女性が熟年離婚を検討し始める理由の一つに、定年後に夫が家にいるという点があります。夫からすればショックな話ですが、それまでは平日の夜と休日しか家にいなかった夫が、ずっと家にいるために、これまで気にならなかった夫の性格や生活習慣が妻のストレスになるということが妻に離婚を考えさせるきっかけになるのです。
また、当然、熟年離婚においても、通常の離婚と同様、夫の浮気や浪費等が問題になることがありますが、それまでであれば子どものことを考えて離婚にまで踏み切れなかったのが、子どもが成人していることから離婚に踏み切りやすくなるというのも熟年離婚の特徴といえるでしょう。
男性側から見た熟年離婚の原因
熟年離婚といえば、夫が、長年連れ添った妻から突然離婚も求められて途方にくれる、というイメージがあります。しかし、近年は夫から熟年離婚を切り出すことも珍しくありません。夫が妻との熟年離婚を検討するきっかけで特徴的なのは、妻の些細な言動にその原因があることが多いということです。
妻が自分を思いやってくれない、文句しか言わない、子どもばかりに興味があって自分の方を見てくれない、家庭内で居場所がない等、自分が妻から大切にされていないのではないかという不安から、老後の人生について考え直しはじめるということが夫に熟年離婚を検討させるきっかけとなるのです。
特に、夫の場合、離婚しても経済的な不安が少ないということが、離婚を後押しすることにもつながっているようです。
熟年離婚のメリット
熟年離婚の最大のメリットは、結婚生活による悩みから解放されることにあるでしょう。
結婚生活は、赤の他人が同居するわけですから、多かれ少なかれどのカップルにも悩みはると思います。夫側への不満・悩みとしてよくあるのは、浮気や家庭内暴力、浪費等、また、妻側への不満・悩みとしてよくあるのは、家事をやってくれない、女性らしくなくなった、金銭的に管理される等です。
熟年離婚を検討される夫婦の場合、子どもが成人していることが多いことから、このような配偶者に対する様々な悩みや不満から解放され、その後の人生を、自分らしく自由に生きることができるという点に熟年離婚のメリットがあります。
また、熟年離婚のメリットとして、配偶者に対する直接の関係だけでなく、配偶者の親族との関係にも悩まなくてよくなるという点も挙げられます。熟年離婚を検討する夫婦は、その親の介護等の問題を抱えていることが少なくありません。配偶者の親の介護という点からも解放されることも、熟年離婚のメリットといえるでしょう。
さらに、これは熟年離婚に限る話ではありませんが、離婚後は自由に恋愛したり再婚したりすることができるようになります。熟年離婚が増えてきている昨今、熟年者同士の恋愛の場も増えてきているようですから、新たな出会いを求めることも不可能ではなくなっているようです。
熟年離婚のデメリット
離婚後の生活面における孤独感
熟年離婚のデメリットの一つが、離婚後に孤独感を感じることが多い、ということが挙げられます。熟年離婚の場合、子ども成人していることが多く、既に独り立ちしていることが多いため、離婚して配偶者と別居すると一人で生活することになります。
仕事を持っている方であればまだ良いのですが、定年退職された方や専業主婦であった方が熟年離婚すると、一人で生活することになって自由な反面、孤独を感じることも多くなってしまうのです。
若いうちであれば、独身の友人等も多いと思いますが、熟年離婚の場合、友人は家庭を持っている場合も多いことから、なかなか普段友人と一緒に出掛けたりすることが難しくなってきます。特に、趣味がない方や、もともと友人が少ないという方は、熟年離婚後に孤独感を感じることが多くなってしまうというデメリットがあることに注意が必要です。
離婚後の経済的な問題
これまで専業主婦であった女性やパートでしか働いていなかった女性が熟年離婚した場合、離婚した後の生活に困ることも少なくありません。
離婚後に、正社員やフルタイムの仕事に就こうとしても、特に正社員としての経験や資格などがなく、一定の年齢を重ねている場合、求人の幅は極めて少ないのが現実です。ですから、熟年離婚をする場合には、離婚時の財産分与や年金分割、離婚後の仕事の確保等について事前にしっかり準備をすることが大切です。
離婚後の家事の問題
特に男性に多い熟年離婚のデメリットが、離婚後に家事が全くすすまない、という点です。
長年、妻に家事を任せきりにしてきた男性が突然離婚によって一人暮らしを余儀なくされると、食事や洗濯、掃除等の家事が滞ってしまうという事態に陥ってしまうのです。
熟年離婚と子ども
熟年離婚の場合、夫婦間に子どもがいても成人している場合が多く、離婚に伴って親権や養育費等が問題になることはほとんどありません。
しかし、だからといって子どもに何の影響もないとはいえません。
特に、離婚によって、両親のいずれかの生活が立ち行かなくなってしまうと、子どもに負担をかけてしまいます。また、離婚した両親に介護が必要になった場合、両親が同居していれば、もう一方の親がまず介護をすることが多いと思いますが、両親が離婚している場合に、どちらかの親に介護が必要になると、子どもにその負担がかかってしまうという可能性もあるでしょう。
熟年離婚の準備と手続き
熟年離婚も通常の離婚と同様、まずは、相手方と協議の上、協議離婚という形をとるのが原則です。しかし、熟年離婚の場合、夫婦の一方は離婚を切り出されたこと自体が寝耳に水で、協議に応じてくれないということも珍しくありません。
夫婦間で協議が整わない場合は、家庭裁判所における調停、または、裁判によって離婚するかどうかを決めることになります。
前述のように、熟年離婚においては、子どもが成人していることが多く、子どもの親権や養育費が問題とならないかわりに、財産分与が問題となることが多いといえます。ただ、離婚において、財産分与の合意ができていることは必須条件ではなく、離婚成立後に財産分与の請求をすることも可能です(ただし、離婚後2年以内に限られます)。
熟年離婚においては、早く新たな生活の一歩を踏み出すことも大切ですから、まず離婚を成立させることを優先させ、財産分与は離婚成立後に請求するというのも一つの方法です。
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