浪費妻と離婚したい夫必見! 離婚前に知っておくべき基礎知識
高額な商品の買い物にキャッシング……。
日常生活を圧迫するほどの浪費を妻が行う場合、これを理由に夫は妻と離婚することができるのでしょうか。また、もしも妻が夫に隠れて多額の借金をしていた場合、夫はその借金を肩代わりする義務があるのでしょうか。
今回は、妻の浪費癖をきっかけに離婚したいと考えている方に向けて、離婚の進め方や財産分与、親権の獲得方法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、妻の浪費を理由に離婚することはできる?
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(1)浪費癖の特徴
ひとことで浪費といっても、その実態はいろいろです。一時的な出費であれば許容できる場合もあるでしょう。しかし、無駄遣いがやまず、多額の出費に借金など、家計に支障が生じるような場合は、もはや一緒に生活することが苦痛に感じられてくるでしょう。
具体的な浪費癖の特徴としては、次のようなものが挙げられます。
・衝動買いやご褒美買いが多い
お金を計画的に使うことは、浪費を防ぐ基本です。衝動買いや、自分へのご褒美と称したぜいたくな買い物が頻繁にあるとすれば、浪費癖の傾向がみられます。
・ブランド品好き
ブランド品が好きだからと言って直ちに浪費癖があるとは言えません。しかし、収入とのバランスを失い、高額すぎるブランド品を買い集めたり、必要もないのに他人に見せびらかしたくて購入を続けるようであれば、浪費癖につながる可能性があるでしょう。
・クレジットカードで多額の買い物をする
たとえ出費を重ねても、財布の中の現金だけに頼っていれば、少なくとも借金をすることにはなりません。しかし、クレジットカード決済では、手元に現金がなくても買い物ができてしまいます。クレジットカード利用をきっかけに、借金が膨らんでいく人は多いものです。身の丈に合わない買い物をしているようなら、浪費癖を疑いましょう。
・リボ払い・キャッシングをしている
クレジットカード利用の中でも、商品を買った際のリボ払いと現金を引き出すキャッシングに手を出しているならば浪費癖の有力なサインです。リボ払いもキャッシングも高額な金利を払う負担が生じます。これを繰り返すと借り入れと返済に追われ、首が回らなくなるリスクが高まります。
・ギャンブル癖
ギャンブルから借金につながるケースはよくあります。競馬や競輪だけでなく、最近はインターネット上で課金を繰り返したりギャンブル性の高いゲームで気づかぬうちに多額を費やしたりすることもあります。自制心をコントロールできない点で、浪費癖の特徴のひとつと言えるでしょう。 -
(2)浪費や借金を理由に離婚することはできる?
信頼し合って結婚した相手に浪費癖があったとしたら、その衝撃は大きいものです。自分がせっかく稼いだお金が湯水のように無駄遣いされるとすれば、縁を切りたいと思うのも自然な気持ちです。
しかし、浪費を理由に離婚が認められるのは実は困難です。もちろん、妻が離婚に応じれば協議離婚をすることができます。
しかし、妻が離婚を拒めば、法律上の離婚原因がなければ離婚は認められません。法律上の離婚原因は、民法で以下のとおり決められていますが、この中に「浪費」はありません。つまり、原則としては、浪費を理由とした離婚は認められないのです。
民法770条
1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。- 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
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なる場合がございます。
2、妻が離婚に合意しない場合の離婚手続きの進め方
妻が浪費を繰り返す場合、まずは夫婦でよく話し合うべきでしょう。浪費の裏には、精神的なストレスや不満がある場合もあります。こうした妻のストレスを夫婦で解消できれば、浪費癖も離婚も回避できる可能性があります。離婚を考える前に、一度は話し合いを試みるべきでしょう。
それでもどうしても妻の浪費が止まらない、話し合いもできないという場合は、離婚を検討することになります。
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(1)浪費癖を指摘して離婚を進めるために用意しておくべきもの
・浪費の証拠を押さえる
単純に浪費癖があるというだけでは、最終的に裁判まで行ったとしても離婚は認められません。
浪費があまりにひどく、夫婦間の信頼関係を崩壊させるほどに至っていることまで主張立証する必要があります。そのために、妻の金遣いの荒さを示す証拠(クレジットカード明細、高額商品購入の領収書、借金の明細や履歴など)をできるだけこちら側で確保しておく必要があります。原本がなくても、写真やデータでもいいので、できるだけの証拠を押さえましょう。
また、浪費のほか、妻が家庭を顧みない態度やけんかが絶えないといった事情があれば、それを示す証拠もできるだけ残しておくほうが望ましいです。こうした事情ひとつひとつは、直接の離婚原因にはなりませんが、複数の事情が重なれば合わせ技で離婚を認めてもらう事情になる可能性があるわけです。
・妻の借金額と財産分与について整理する
夫婦が結婚してから築いた財産は、どちらの名義であっても共有財産として扱われます。貯金や生命保険の返戻金、自宅など不動産も共有財産です。
したがって離婚の際には、それを分け合って清算するのが原則です。これを財産分与と言います。
財産分与の割合は双方2分の1です。たとえ妻が専業主婦であっても、内助の功(こう)を理由に半分ずつとするのが一般的な取り扱いです。
もっとも妻の浪費により2人の財産が極端に減ってしまったような場合は、その点を主張して妻に渡す分与額を減らすように主張するべきです。この主張が認められるかどうかは、夫も妻の借金を負うのか、妻の浪費したお金の使い道や金額、生活費の規模などによって判断が分かれますが、夫としては主張はしてみるべきでしょう。
「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。
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(2)離婚までの流れ
実際に、相手に離婚を申し出る場合の流れを見てみましょう。
・話し合う
まずは、相手に直接、離婚したいという気持ちを伝えます。面と向かって理由もきちんと説明したほうがいいでしょう。この場合、離婚の意志は固いということ、もう気持ちが戻ることはないことをはっきり伝えるほうが進みやすいです。
もちろん離婚にあたって決めなければならないこと、たとえば、子どもがいる場合の親権や養育費、面会、財産分与や家をどうするか、といった点も、きちんと自分の考えをまとめたうえで、相手に伝えましょう。そして譲れるところは譲ったうえで、早期に離婚できるように協議を進めることがポイントです。
・調停を申し立てる
夫婦間の話し合いでは離婚が進まないときは、家庭裁判所の離婚調停を申し立てましょう。
現行の民法では、いきなり離婚の裁判を申し立てることは認められていません。裁判に打って出る前に、調停の場でもう一度よく話し合ってごらんなさい、というのが法の考え方なのです。
調停は、調停委員という男女1名ずつがひとつの事件を担当します。夫婦は同じ日に呼び出されますが、直接意見を言い合うわけではありません。交互に調停室に呼ばれ、1人ずつ自分の言い分を調停委員に伝えます。
待合室も別に用意されており、原則としては、顔を合わせなくて済むように配慮されています。
調停はあくまで裁判所で行う話し合いの機会です。したがって、双方の意見が食い違い、離婚の合意に至らなければ、調停は成立しません。
何度か調停を行っても、合意が得られそうになければ、調停は不成立に終わります。参考:離婚調停をお考えの方へ
・離婚裁判する
調停でも離婚が成立せず、それでもどうしても離婚をしたいならば、いよいよ離婚裁判を提起します。
離婚裁判とは、裁判所に対して離婚を認めるように主張する機会です。主張が認められるためには証拠が重要です。
この時点ではすでに別居しているかも知れませんし、紛争が表面化していますから、妻も自分に不利な証拠は隠す可能性が高いです。
したがって離婚を考え始めたら早く証拠を押さえにかかる必要があるのです。
3、妻の借金は支払う必要がある? 財産分与と慰謝料請求について
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(1)妻の借金を夫が支払わなくてもよい場合
浪費が激しくなるとキャッシングやリボ払い、または消費者金融などからの借り入れなど、借金に及ぶ場合があります。夫としては、この借金を妻に代わって自分が負わされるリスクがあるのか重要なところです。
この点については、基本的には夫婦といえども別人格ですから、妻の借金はあくまで妻のものです。したがって、原則としては、妻の借金は夫が負うことにはなりません。 -
(2)妻の借金を夫が支払う義務が生じる場合
もっとも、その借金が日常生活維持のために必要だった場合には、日常家事債務(民法761条)として、夫婦が共に支払い義務を負うことになります。つまり、妻が作った借金でも夫が支払い義務を負う可能性があります。
日常家事債務にあたるかどうかは、その家庭の財産状況や生活レベルによって異なります。いずれにしても明らかに給料の範囲を超えたひどい浪費であれば日常家事債務とはいえず、夫は責任を負いません。
また、妻の借り入れについて夫が保証人になっている場合は、当然に夫も保証人としての支払い義務を負います。
このように、妻の借金を夫が支払う場合はこの点を考慮して財産分与額を調整するなどの可能性があります。もっとも日常家事債務にあたるのであれば、その借金は夫婦で作ったといえるわけなので、減額が認められるかは微妙なところです。
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4、子どもの親権は夫が取ることができるか
妻の浪費癖が激しい場合、子どもを妻に預けるのは心配でしょう。親権をこちらに取りたいと思うのももっともです。とはいえ、日本の離婚では、実に9割以上は妻が親権を取得しています。
親権は、あくまで子どもにとってどちらが親としてふさわしいか、という観点から判断されます。したがって、単に浪費癖があるというだけではなく、浪費のために子どもの生活が脅かされるとか、子どもを顧みない態度などが見られれば、それを理由として、親権を父に認めることができるのです。
以下、どんな基準で親権が判断されるのかご説明します。
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(1)親権の判断基準
親権の判断にあたっては、以下の5つの原則が用いられています。
①母性優勢の原則
特に子どもが乳幼児のときに重視されます。母親とは限らず、子にとって養育的な立場をとってきた親が親権者としてふさわしいという考え方です。したがって、父親が主に子育てを担当してきた場合は、父に母性的地位がある可能性があります。
②監護の継続性の原則
子どもの安定した成長のためには、精神的動揺や不安はできるだけ避けるべきです。その観点から、以前から子育てを主に担当してきた人に離婚後も養育を継続させようという考え方です。
③きょうだい不分離の原則
兄弟姉妹は、お互いに影響を与え合って成長する大切な関係です。特に離婚の際には、きょうだいの存在が助けとなることがあります。そのため、できるだけきょうだいを引き離すことなく、一緒に育てさせる傾向があります。
④子の意思の尊重
子ども自身の気持ちも重要です。法律上も、15歳以上の子には裁判所が意見を聴取するように明記されています。15歳未満でも、家庭裁判所の調査などによって、できるだけ子ども本人の気持ちを尊重する運用がなされています。
⑤寛容性の原則
離婚して親権を失ったほうの親も、親であることに変わりはありません。子どもの成長にとって、離婚後に離れた親と良好な関係を築くことは、子どもの心に良い影響を与えることが知られています。
また、離れてしまった親にとっても自分の子どもと交流することは権利として認められています(面会交流権)。そこで、親権者となる親は、子どもと相手とを面会させる心の寛容さが大事なポイントだとされているのです。
5、まとめ
信頼して結婚した妻が自分の知らないところで浪費を繰り返していたら、長い一生を共に生きていこうという気持ちが一気に冷めるのもやむを得ないところです。
もちろん夫婦である以上、できるだけの話し合いをするべきといえます。しかし、話し合ってもどうしてもうまくいかない場合は、離婚を前提とした検討に入りましょう。浪費癖は耐え難いものですが、離婚原因としては不貞や暴力に比べると弱い点が難しいところです。
浪費妻との離婚を進めていくには、証拠や主張の組み立て方が重要になりますので、弁護士などに相談するメリットは大きいと言えます。
ベリーベスト法律事務所では、浪費癖のある配偶者に関する離婚相談も多数お寄せいただいております。妻の浪費で離婚に悩み始めたら、お早めにご相談ください。集めるべき証拠のアドバイスや離婚に向けたサポートなど、知見のある弁護士が最後まで寄り添います。
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