体調不良を心配しない夫との離婚|法的に認められる離婚理由とは
妻が体調を崩しても心配する様子もなく、それどころか不機嫌になることすらある夫。
何度も続くと精神的にも肉体的にもストレスが溜まって辛い気持ちになり、離婚を考えてしまうケースもあるものです。夫が妻を心配しないとき、離婚できるのでしょうか?
本コラムでは、体調不良の妻を心配しない夫と離婚できるのか、離婚を進める方法について弁護士がご説明いたします。
1、民法における夫婦間の義務について
結婚すると、夫婦には法的な権利や義務が発生します。具体的には、民法752条で、婚姻中の夫婦には、同居しお互いに協力扶助しなければならないと定められています。
民法752条
「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」
たとえば理由なく家出をして相手を見捨てたり、生活費を払わず相手を困窮させたりしてはなりません。病気になって一人で何もできなくなり助けを必要としている配偶者を見捨てることも夫婦間の義務に反します。
このほかにも、下記のような義務があります。
- 婚姻費用分担義務(760条)
- 日常家事債務の連帯責任(761条)
- 未成年の子の監護義務(820条)
2、法的に認められる離婚理由は5つ
では、夫が妻を心配しないことが法律上の離婚原因となるのでしょうか?
民法は裁判で離婚が認められる原因(法定離婚事由)を定めているので、その内容を確認していきましょう。
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(1)法定離婚事由について
法律にもとづく法定離婚事由は以下の5つです。
①不貞
不倫や浮気です。ただし不倫相手(浮気相手)と「肉体関係」をもったことが必要です。
②悪意の遺棄
婚姻関係を破綻させてやろうという意図の元に相手を見捨てることです。夫婦の相互扶助義務に違反して家出したり生活費を払わなかったりするケースです。
③3年以上の生死不明
相手が3年以上生死不明の状態が続いていた場合です。
④回復しがたい精神病
相手が重度な精神病にかかり、今まで献身的に介護してきた事情などがあれば離婚が認められます。
⑤その他婚姻生活を継続し難い重大な事由
上記の4つに該当しなくても、これ以上婚姻生活の継続が不可能な場合には裁判で離婚が認められます。
1章でご紹介した「夫婦の協力義務違反(民法752条)」が、裁判で「悪意の遺棄」と認められれば、離婚できます。 -
(2)話し合いや調停で離婚する場合、法定離婚事由は不要
なお法律上の離婚原因が必要なのは、裁判で離婚する場合のみです。話し合いによって協議離婚する場合や調停離婚するときには法的な離婚理由は不要で、お互いが離婚に了承すれば離婚が成立します。
3、体調不良の妻を心配しない夫と離婚は可能か?
それでは夫が妻の体調を心配しない、気遣わないとき、それが「悪意の遺棄」になるのでしょうか?
悪意の遺棄とは「婚姻関係を破綻させてやろうという意図をもって相手を見捨てること」であり、相当悪質な行為です。旦那さんが家出して浮気相手と同居し始めた、給料を全額独り占めしたいから妻にお金を渡さなくなったなどの事情があれば悪意の遺棄になりますが、「単に体調を心配しない」だけでは悪意の遺棄と言えません。
離婚したい理由がそれだけなら裁判をしても離婚が認められない可能性が高いでしょう。
ただし夫が妻を心配しないことがきっかけで、夫婦関係が著しく悪化して修復困難な状況になったら「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められて離婚できる可能性があります。
たとえば以下のようなケースでは、裁判でも離婚できる可能性が高くなります。
- 夫が妻を心配しないので妻が愛想を尽かし完全に家庭内別居状態となっている
- 夫婦関係が不和となって別居生活になり、長期間が経過した
- 夫婦がお互いに修復する意思を失っている
- 妻が体調不良で家事や育児ができないので夫が不機嫌になって暴力を振るったり暴言を吐いたりしている
4、婚姻関係が破綻していることを証明するには
妻から夫に離婚を求めると、相手はあせって「離婚は絶対にしない」と言い出すケースも少なくありません。
相手が離婚に応じないなら協議離婚や調停離婚できないので、裁判で離婚するしかありません。裁判で「婚姻関係が破綻していること」を認めてもらうにはどうすれば良いのでしょうか?
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(1)離婚原因となる事情を検討・把握する
裁判で離婚するには「長年の別居」や「家庭内別居状態」「夫婦関係の著しい不和」や「暴力、暴言」「借金・浪費癖」などの事情が必要です。まずはそれらの事実を証明するための証拠を集めましょう。
また、「相手に対して愛情を持てなくなった」や「自分は夫婦としてやり直す意思がない」などは、裁判官が客観的に判断することは難しいため、離婚理由として認められない可能性があります。そのため、前述のような婚姻関係が破綻していると証明できる証拠が重要となりますので、訴えの内容をしっかりと検討する必要があります。 -
(2)離婚原因の「証拠」を集める
裁判で何らかの事実を証明するには「証拠」が必要です。具体的には以下のようなものを集めましょう。
●長期間の別居、家庭内別居
実際に別居している場合、ほとんどのケースで相手自身も事実をも認めるでしょう。別居の開始時期が争いになる場合、別居当時のメールや賃貸借契約書などが証拠になります。
家庭内別居については証明が難しくなりがちです。相手との関わりを記した日記や写真(家族写真で相手だけが写っていないもの、夫婦で一緒に写っている写真が1枚もないなど)、子どもによる証言なども証拠になります。
●暴力、暴言
暴力を受けたときに受診した病院の診療報酬明細書、診断書、患部の写真、録音や録画の記録、日記などが証拠になります。
●借金・浪費癖
クレジットカードの利用明細や借用書・領収書などが、借金を繰り返している証拠となります。
5、体調不良の妻を心配しない夫と離婚する時の手順
妻が体調を崩しても心配しない夫と離婚するには、以下のような手順で進めましょう。
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(1)まずは離婚意思を伝える
夫婦が話し合いをしてお互い納得の上で離婚届を提出すれば離婚が成立します。この方法であれば、「法律上の離婚理由」が不要なので「悪意の遺棄」や「暴力」「夫婦関係の著しい不和」などを立証する必要がありません。
まずは夫に対し、離婚したいという意思を伝えましょう。なぜ離婚したいのか、どのような点に不満を感じて辛い思いをしてきたのか、既に信頼を完全に失って回復不可能な状態になっていることなどを伝えて説得しましょう。 -
(2)離婚協議
説得によって相手が離婚に応じる気持ちになったら、今度は離婚条件について協議しましょう。子どもがいれば親権者を決めなければなりませんし、養育費や財産分与などの取り決めも必要です。
「妻の体調を心配してくれない」という理由で協議離婚する場合には、相手に慰謝料を請求してもなかなか支払ってくれないでしょう。 -
(3)離婚届を作成して提出
離婚協議が成立したら、市区町村役場から離婚届の用紙をもらってきて作成し、役所に提出します。
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(4)公正証書で協議離婚合意書を作成する
協議離婚する場合には、「協議離婚合意書」を作成しましょう。金銭の支払いを約束してもらうときは、公正証書にすべきです。公正証書があれば、相手が将来養育費などを払わなくなったときにすぐに給料を差し押さえて回収できるからです。
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(5)離婚してくれないなら別居する
夫が離婚に応じてくれないときには別居しましょう。夫婦関係が不和となり同居が難しくなった場合には別居しても同居義務違反になりません。
ただし、別居にはリスクがあります。
夫の同意なく別居をしてしまうと、逆に相手から「悪意の遺棄」として訴えられる可能性があります。ご不安な場合は、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。 -
(6)離婚調停を申し立てる
別居したらタイミングを見計らって家庭裁判所で離婚調停を申し立てます。調停では調停委員が間に入って取り持ってくれるので、自分たちだけで話をするより離婚が成立しやすくなります。ただしうまく離婚したい理由を伝えられないと、反対にあなた自身が「離婚を思いとどまるように」説得されてしまう可能性もあり要注意です。
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(7)離婚裁判を起こす
調停でも離婚に応じてもらえない場合には、離婚裁判を起こしましょう。裁判では先に説明した「法定離婚事由」を証明しなければなりません。適切に訴訟活動を進めて離婚するには弁護士によるサポートが必須となります。
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(8)裁判の流れ
裁判の流れを簡単に示します。
①提訴
まずは訴えを提起します。
②第1回期日
約1か月後に第1回期日が開催されます。相手は出席しないケースも多数です。
③争点整理の手続き
第2回期日以降はお互いの言い分や証拠を整理する手続きが行われます。
④当事者、証人尋問
争点整理が終わったら当事者や証人の尋問を行います。
⑤判決
判決が下されます。離婚が認められれば相手が離婚に応じなくても離婚できます。
6、まとめ
夫が妻を心配してくれないという理由でも、長年、精神的に追い詰められたら本気で離婚を考えるものです。相手の心ない言葉に傷つき続けて、ついには家庭崩壊してしまうケースも少なくありません。
信頼できない夫と離婚するためにどのように行動するのが良いかわからないなら、ベリーベストの弁護士までご相談ください。それぞれの相談者様へと最適な解決方法をご提案して最大限のサポートをさせていただきます。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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