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開業医が離婚を決めたら知っておきたい! 離婚の流れと財産分与

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更新日:2022年01月27日  公開日:2020年05月07日
開業医が離婚を決めたら知っておきたい! 離婚の流れと財産分与

離婚を決めた場合、取り決めをしておくべきことは多岐にわたります。
その中でも、もめごとになりやすいのが財産分与でしょう。
とくに開業医は、高額所得者であることが多いことに加えて医療法人を設立したときのお金の経緯などが関係し、離婚における財産分与の決め方について配偶者ともめてしまうことも少なくありません。

そこで本コラムでは、離婚の流れや注意点と、離婚をする際の財産分与の基本的な考え方、開業医の離婚で生じやすいトラブルについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、離婚の原因によっては不利になる? 確認しておきたい離婚事由

  1. (1)一般的な離婚の流れ

    夫婦の婚姻関係は、夫か妻いずれかの死亡または離婚によって解消します。
    民法第763条では、離婚は夫婦の合意によって認められるものとされており、これを「協議離婚」といいます。
    夫婦間での話し合いがつかず協議離婚が成立しない場合は、家事事件手続法第244条の規定により、離婚を希望する夫婦の一方が家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることができます。

    調停では、男女1名ずつの調停委員が夫婦の間に入り、離婚に向けた協議を行います。調停では夫婦が顔を合わせることはありませんので、当事者間だけで話し合いを進めていたときよりも、冷静な協議が期待できます。調停で離婚条件が合意に達し離婚が成立すると、「調停離婚」として夫婦いずれかの居住する区市町村役場へ離婚届を提出します。

    調停でも離婚条件の合意に至らない場合は、家庭裁判所の職権により離婚の審判が行われます。この審判の結果について夫婦双方が異議申し立てをせずに受け入れると、「審判離婚」が成立します。

    しかし、夫婦の一方あるいは両方から異議申し立てが行われると、離婚を成立させることはできません。この場合、離婚を希望する夫婦の一方は、人事訴訟法第2条第1項および同法第4条の規定により、家庭裁判所へ離婚の訴えを提起することができます。

    裁判では、訴えを提起する夫婦の一方が、後述する法定離婚事由を立証する必要があります。法定離婚事由を裁判所が認めると、裁判離婚として離婚が認められます。

    なお、日本では「調停前置主義」という制度があり、最初から審判または裁判により離婚を訴えることはできません。審判または裁判により離婚をするためには、原則として調停を経ていることが必要です。

  2. (2)法定離婚事由の解説

    民法第770条第1項に規定する法定離婚事由は、以下のとおりです。

    • 配偶者に浮気など不貞行為があったとき
    • 配偶者に悪意の遺棄(家出、追い出しなど保護しなければならないのに保護しないこと)があったとき
    • 配偶者の生死が3年以上不明のとき
    • 配偶者が強度の精神病に罹患し、回復の見込みがないとき
    • その他、婚姻関係を継続しがたい重大な事由があるとき


    なお、裁判所は上記のような事由やその他一切の事情を考慮しても、このまま婚姻関係を継続することがよいと判断する場合は、民法第770条第2項の規定により離婚の請求を棄却することができます。

  3. (3)不貞行為があった場合は要注意

    不貞行為とは、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことであり、民法第709条に定めた不法行為のひとつです。

    もし離婚の原因が、あなたの不貞行為によるものだったときは注意が必要です。
    なぜなら、不貞行為が原因で一方の配偶者に精神的苦痛が生じた場合、精神的苦痛を受けた配偶者は不貞行為をした配偶者に対して慰謝料を請求することができるのです。民法第710条の規定においても、不貞行為があった配偶者には損害賠償、つまり慰謝料を支払う義務があるとされています。

    慰謝料を請求されるのは、不貞行為を働いた配偶者だけではありません。
    民法上、不貞行為は配偶者と不貞行為の相手方による「共同不法行為」と考えられており、民法第719条では、共同不法行為をした当事者に対して「連帯してその損害を賠償する責任を負う」と規定しています。つまり、不貞行為は配偶者だけでなく不貞行為の相手方にも損害賠償責任を負う義務が生じるのです。

    また、婚姻関係破綻の原因をつくった責任のある配偶者(有責配偶者)からの離婚請求は、特別な事情がない限り認められないという点も留意すべきでしょう。

2、開業医が離婚するときに重要になるのが財産分与

  1. (1)財産分与とは?

    養育費や親権などと同様に、離婚条件を決めるうえで財産分与の問題は避けて通れません。

    財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で形成・維持してきた共有の財産を、離婚時にそれぞれの貢献度に応じて平等に分割することを請求できるという、民法第768条第1項で規定された考え方です。

    財産分与は、離婚の際に必ずしなければならないと法律で規定されているわけではありません。また財産分与の割合は、民法やその他の法令でも明確な規定がなく、客観的な基準がありません。したがって、財産分与の割合についても離婚時における夫婦間の話し合い、それがまとまらなければ調停・審判・裁判というプロセスで決めることになります。

    財産分与の割合は慣行や過去の判例などから、離婚成立時点または別居時点における共有財産額の「2分の1ずつ」がひとつの基準とされています。ただし、さまざまな諸事情を勘案した結果、必ずしも2分の1ずつとはならない場合もあります。
    開業医の場合では、医師としての個人の力量が財産形成に大きく影響していると考えられるため、医師ではない配偶者の財産分与割合が少なくなることも十分に考えられます。

  2. (2)財産分与の方法

    財産分与には、以下の3種類があります。

    ●清算的財産分与
    財産分与でもっとも一般的に採用されている考え方・方法です。婚姻期間中を通じて夫婦で形成・維持してきた財産は共有財産として、その名義に関係なく夫婦それぞれの貢献度に応じて離婚時に分配するという考え方です。したがって、離婚の原因をつくった有責配偶者であっても財産分与を求めることができます。

    ●扶養的財産分与
    離婚をすることで、夫婦の一方が収入がなくなり生活が困窮してしまう場合、あるいは相手方が高齢や病気であるため働くことができない場合があります。そのような場合に、相手方の生活能力などの事情を考慮し、生活費の支払いという扶養的な目的で行われる財産分与です。

    ●慰謝料財産分与
    不倫や家庭内暴力など、夫婦の一方に離婚原因があった場合に、慰謝料の支払い方法のひとつとしてとして行われる財産分与です。

  3. (3)財産分与の対象になるもの

    婚姻期間中、夫婦が実質的に共同で形成・維持してきた財産といえるものであれば、その名義によらず基本的にすべて共有財産と推定されます。これに夫婦の稼得能力は基本的に考慮されません。たとえあなたが高額所得者であり、配偶者が専業主婦だったとしても、夫婦のいずれかの名義になっている預貯金などの金融資産、不動産、自動車、生命保険の解約返戻金、ゴルフ会員権など、婚姻期間中に形成・維持してきた財産は、共有財産として財産分与の対象になるのです。

  4. (4)財産分与の対象にならないもの

    一方で、婚姻前から個人名義で所有していた財産、および婚姻期間中に相続で取得した財産については、「特有財産」として扱われます。特有財産は、基本的に財産分与の対象とはなりません。

  5. (5)なぜ、開業医の財産分与が重要になるのか

    開業医は高額所得者が多いことから、財産分与は高額になりがちです。また、勤務医とは異なり、医療施設と住宅が一体となった医院併用住宅であったり、個人資産と医療法人としての資産が混在していたり、配偶者が医療法人に出資していたりなど、財産分与のための評価が複雑になる傾向もあります。
    離婚後も安定して開業医を続けることができるように、財産分与については慎重な対応が必要といえるでしょう。

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3、医療法人の資産は財産分与の対象になる?

  1. (1)医療法人は財産分与の対象になるのか

    医療法人および医療法人名義の資産は、基本的に財産分与の対象になりません。しかし、後述する出資持分制度がある医療法人の場合は、出資持分に応じて実質的に財産分与の対象であるという見方もあります。

  2. (2)個人資産と医療法人資産が混在しているケースは要注意

    開業医の場合、個人資産と医療法人資産が混在している傾向が見受けられます。
    なぜなら、報酬の設定や出資などの方法により、個人の資産を医療法人の資産に移し替えることが可能であるためです。このため、医療法人の資産であっても実質的に個人の資産とみなされ、財産分与の対象となる可能性も否定できません。

4、離婚前に確認しておきたい開業医が離婚するときにトラブルになるケース

  1. (1)開業時に配偶者の実家から資金援助があった場合

    開業時に配偶者の実家から資金援助があった場合は、離婚時のトラブルが複雑になりがちです。なぜなら、配偶者の実家から受けた資金援助は、開業医であるあなたへの贈与なのか、貸し付けなのか、それとも医療法人への実質的な出資なのか、その性質があいまいであることが多いためです。
    配偶者の実家からの資金援助が、それにより夫婦の経済的な状態に直接的な影響を及ぼしたと認められる場合は、経緯や実態、金額の多寡を総合的に判断したうえで財産分与の算定に含めることが考えられます。

  2. (2)配偶者が出資している場合

    医療法人に配偶者が出資している場合、配偶者は医療法人そのものの財産権を保有していることになります。したがって、離婚後も配偶者の出資持分を残したままの場合、配偶者は医療法人への経営に参画する権利や、出資持分の買い取りを請求する権利を有していることになります。結婚生活が続いている状況であればともかく、離婚後は医療法人を経営するうえでのトラブルの原因になる可能性は否定できないでしょう。

    後々のトラブルを防ぐうえでは、出資持分を買い取るなどして、配偶者の出資持分をゼロにしておくことが望ましいと考えられます。

  3. (3)配偶者がスタッフとして勤務している場合

    開業医として、離婚と医療法人のスタッフである配偶者の雇用は、別のものとして考える必要があります。
    特に配偶者が医師免許などの特別な資格を有しており、そのままスタッフとして勤務しないと医療法人にとってマイナスと考えられる場合は、離婚後も医療法人を円滑に経営するうえで慎重な検討が必要です。

  4. (4)医院併用住宅の場合

    先述のとおり、保有不動産も財産分与の対象となります。しかし、保有不動産が医院併用住宅の場合は、医療施設と住宅の比率、資金を拠出した割合、推定される時価などを総合的に勘案したうえで、財産分与の割合を決定することになります。弁護士や税理士だけではなく、不動産鑑定士に依頼しなければならないケースもあるでしょう。
    なお、離婚時に不動産を共有名義にする形で財産分与をすることは、次世代以降のトラブルの原因になる可能性がありますので、おすすめできません。

5、まとめ

開業医の離婚は、財産分与を中心に複雑になりがちです。
生活と仕事が密接につながっているケースも少なくないので、離婚によるトラブルが長引いてしまうと、病院の経営にも支障をきたすことが予想されます。

もし開業医であるあなたが離婚を検討しているときは、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。
離婚や男女関係の問題解決に豊富な実績と経験のある弁護士であれば、法的なアドバイスはもちろんのこと、代理人として配偶者との交渉や調停・裁判のやり取りを行うなど、あなたをサポートするためにベストを尽くします。
すでに他の弁護士に相談されている案件について、セカンドオピニオンとしての法律相談もお受けしています(秘密は厳守します)。ぜひお早めに、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
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URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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