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会社経営者と離婚するなら知っておきたい! 会社名義の資産の財産分与について

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更新日:2024年02月27日  公開日:2019年06月06日
会社経営者と離婚するなら知っておきたい! 会社名義の資産の財産分与について

会社を経営している配偶者と離婚する場合、会社名義の財産を請求することはできるのでしょうか。また、意図的に配偶者が財産の名義を会社名義へと変更しようとする場合、何か手を打つことはできるのでしょうか。

今回は会社名義の財産がある配偶者と離婚する場合の財産分与の考え方について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

1、どう分ける? 財産分与の対象になる資産や割合について

  1. (1)財産分与とは?

    財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を、離婚の際にふたりで分け合う制度です。
    そもそも、夫婦が婚姻中に共同で形成した財産は、夫婦いずれの名義になっていたとしても、実質的に夫婦の共有財産とされます。

    結婚とは、夫婦がお互いに支え合って、共同生活を営むものなので、どちらかが稼いだ収入も、もう一方の配偶者の支えによる収入と考えて、共有財産としているわけです。
    これに対して離婚とは、それまでの共同生活をきれいさっぱり清算する行為です。したがって、それまで共有で築いてきた財産も、離婚時には清算して分け合うことになります。

  2. (2)財産分与の対象となる財産

    財産分与の対象となる財産は、原則として夫婦が結婚してから作ってきた財産の全てです。名義が夫婦のどちらになっているかは関係ありません。たとえば、夫の収入で買ったマンション、妻の収入をためた妻名義の預金や有価証券、生活費を蓄えてきた子ども名義の預金なども含まれる場合があります。

    他方、夫婦それぞれが結婚前から所有していた財産や、結婚した後でも相続などによって取得した財産は、いずれも夫婦が協力して形成した財産とはいえません。
    したがって、これらの財産は、特有財産と呼ばれ、夫婦の一方の名義になっていても財産分与の対象にはなりません。

  3. (3)財産分与はどう分ける? 割合について

    財産の分与割合は、原則として2分の1ずつとされています。専業主婦で、実質的に収入を得てきたのは夫だけという場合ですと、夫側から2分の1は不公平だという主張がなされることもあります。
    しかし、夫が外で働けたのは、妻の内助の功(こう)によるものと考えることができます。現在の離婚実務では、財産形成に対する貢献度は原則として平等であるとして、2分の1の割合で財産分与を行うことが一般的です。

  4. (4)財産分与を取り決めるタイミング

    財産分与は、離婚が成立してから2年を超えると請求できなくなります。また、離婚してお互いに離れて暮らすようになると、お互いの財産状況がわかりにくくなり、きちんとした分与ができなくなるおそれが高くなります。
    離婚のときに冷静に話し合うのは大変なことですが、後回しにすると後悔や損を招くかもしれません。できるだけ離婚のときに財産分与についてもきちんと合意しておきましょう。

2、夫(妻)の財産のほとんどが会社名義。財産分与の対象になる?

  1. (1)原則として会社名義の資産は分与できない

    夫が会社を経営している場合、その資産の多くが会社名義になっていることがよくあります。この場合、妻は夫に対して会社名義の資産も含めて財産分与を求めることができるでしょうか。
    この点、会社の財産は、あくまで会社の財産として帳簿にも記載されています。したがって、いくら会社代表者で経営権があるといっても、経営者の財産と会社財産とは別のものであり、妻との共有財産だという主張は原則として通りません。

    もし、会社の資産と表示している財産が、実は個人資産だとか妻の財産だということにすると、会社の債権者や株主、従業員との関係で財産隠しになってしまうおそれがあります。したがって、夫が会社の経営者で、資産が会社や法人名義のものしかないような場合でも、原則的には会社名義の財産を妻に分けることはできないのです。

  2. (2)例外的に分与請求できる場合も

    ただし、事情によっては、ごく例外的に、会社名義の財産を離婚財産分与の対象とできる場合があります。

    大規模な会社ではまず困難ですが、零細な同族経営や個人事業に近い会社の場合では、個人資産と会社資産の区別ができておらず、客観的に見ても、会社の資産とは名ばかりで、経営者の個人資産と同視できるようなケースがあります。
    こうした特殊事情がある場合には、会社財産を夫の個人資産として、離婚時の分与財産に含めることがあり得ます。
    なお、この場合でも、すべての会社資産が分与可能というわけではなく、ひとつひとつの資産について個人資産との関係を吟味して判断することになります。
    なお、夫が会社を経営している場合には、その会社の株式を保有している可能性が高いので、その株式を財産分与の対象財産とすることができます。

  3. (3)会社経営者との離婚における財産分与が問題となった裁判例

    会社経営者との離婚における財産分与が問題となった裁判例としては、次のようなケースがあります。

    ①夫と共に経営を担っていた妻に会社資産の財産分与が認められた裁判例
    【広島高裁平成16年6月18日判決】

    この裁判例は、妻が、夫婦の財産分与にあたって、同族会社であるA社とB社名義の財産についても夫婦の協働によって得られたものであることから、財産分与の対象に含めるべきであると主張し争われた事案です。

    裁判所は、A社は、夫婦が営んできた自動車販売部門を独立させるために設立され、B社は、夫婦が所有するマンションの管理会社として設立されたものであるところ、いずれも閉鎖的な同族会社であり、A社及びB社名義の財産の取得原資は夫婦の協働によって得られたものであるから、名義にかかわらず、財産分与の対象とすべきであると判断しました。


    ②義理の母の出資持分も財産分与の対象であると判断した裁判例
    【大阪高裁平成26年3月13日判決】

    この裁判例は、夫が医師である夫婦が離婚をするにあたって、夫が婚姻後に開業医になり、その後設立した医療法人の資産も財産分与の対象になるかどうかが争われた事案です。
    裁判所は、医療法人の保有資産を財産分与の基礎財産とすることはできないと判断したうえで、出資持分について以下のように判断しました。

    裁判所は、「本件医療法人は、平成〇年〇月に開設された本件診療所が平成〇年〇月〇日に法人化されたものであり、本件医療法人設立後職員が若干増員されたものの、本件診療所における業務を継続するのに必要なものとして所有する資産や本件診療所の実質的な管理、運営実態等に大きな変化はなく、控訴人(夫)が形式上も出資持分の96.66パーセントを保有していることを考えると、本件医療法人が所有する財産は、婚姻共同財産であった法人化前の本件診療所に係る財産に由来し、これを活用することによってその後増加したものと評価すべきである」と判断し、それを踏まえて「控訴人(夫)名義の出資持分2900口のほか、形式上控訴人の母が保有する出資持分50口および被控訴人(妻)名義の出資持分50口の合計3000口が財産分与の対象財産になる」として、義理の母の出資持分も財産分与の対象に含まれると判断しました。

3、意図的に財産を隠されたり、会社名義に変更されたりした場合の対処法

  1. (1)財産分与逃れの財産隠しは違法?

    離婚を予想した夫が、妻に財産を渡したくないと思い、意図的に財産を会社名義に変更したらどうなるでしょうか。
    まず、財産分与逃れを目的として財産を隠す行為は、妻に共有財産が少ないと誤信させる行為ですから、刑法上の詐欺罪に該当する可能性があります。しかし、夫婦間での財産罪、たとえば窃盗や詐欺罪は、罰を受けないという規定(親族相盗例 刑法)があります。法は家庭に入らず、というわけです。したがって、刑法上の罪を問われることはありません。

    しかし、民法上は詐欺行為に該当しますので、夫婦共有財産はこれしかないとだまされて、それを信じて財産分与額を本来より少なく合意してしまったような場合は、相手の詐欺を理由として、財産分与の合意を取り消すことができます。また、詐欺を理由に、損害賠償を請求することも考えられるでしょう。

  2. (2)離婚後に財産隠しに気が付いた場合

    離婚後に財産隠しに気が付いた場合は、急ぐ必要があります。なぜなら、財産分与は離婚後2年以内しか請求できないという期間制限があるからです。
    この2年の制限は、通常の消滅時効と異なり、内容証明で請求や督促をしても、時効の進行を止めることができません。

    離婚から2年がたてば、無条件で権利が消滅してしまう強力なものだからです。何かおかしいと思ったら、2年以内に家庭裁判所に調停や審判を申し立てるようにしましょう。2年以内に家庭裁判所に訴えた場合だけ、それ以降に2年が経過しても財産分与を求めることが可能です。

  3. (3)相手名義の資産が把握できないとき

    財産分与は、夫婦双方の資産をすべて開示し合ったうえで、それを適切に分与する作業です。
    夫婦といえども、相手名義の資産を結婚中にすべて把握しているとは限りません。したがって、財産分与の場面では、お互いが正直に全資産を公開することが大前提です。しかし、時には、相手にはもっと資産があるのではないかと疑わしく思える場合もあります。

    このような場合、自分で相手の資産を調べることはなかなか難しいのが現状です。特に近年は、個人情報保護の観点が強化され、たとえ家族間でも、金融機関が個人の資産を開示することは到底期待できません。こういう場合には、弁護士会による照会や裁判所の調査嘱託といった手法を用いて、可能な限り調査を進めることになります

4、離婚における財産分与の問題に対して弁護士ができること

  1. (1)相手財産の調査を任せられます

    離婚時の財産分与について弁護士に依頼した場合、まず、相手財産の調査を進めてもらうことができます。財産調査を本人で行うことは大変ハードルが高いものです。もちろん、調査対象となる金融機関を絞るなど、ご本人からの聞き取りがスタートにはなりますが、その先の具体的な調査は弁護士の権限である程度まで進めることが期待できます。

  2. (2)財産の評価を適正に主張できます

    預金や現金は額面どおりの金額で分けますから評価に争いは生じません。しかし、不動産や車、有価証券、その他貴金属などの動産については、評価自体が難しく、時には双方の言い分が大きく分かれることがあります。こうした場合に、財産分与や離婚に関する経験を持った弁護士が対応することで、適正な評価で解決できる見込みが高まります

  3. (3)相手との交渉のストレスが減ります

    離婚の話し合いのストレスは非常に高いものです。ましてや、金銭の話になると、冷静なやりとりは困難になりがちです。しかし、財産分与で譲歩すると、後から悔やむことになりますし、後回しにすると、離婚後2年以内の期間制限もすぐに迫ってきます。弁護士は、財産が適正に分与されるよう、あなたの代理人として交渉します

  4. (4)調停対応を任せることができます

    特に相手財産がはっきりしない場合、家庭裁判所の調査権限を使うことも有益です。この場合、家庭裁判所に財産分与の調停・審判を申し立てる必要がありますが、この対応を弁護士に任せることはかなり意味があります。 調停では、裁判所が主導して分与を進めてくれるわけではなく、あくまで当事者が主体となって調査や主張をしていく必要があります。この対応をあなたの代理人として進めていくのが弁護士の役目なのです。

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5、まとめ

財産分与は、単純に半分に分ければいいという話では終わりません。そもそも相手がちゃんと資産を公開してくれるか、隠し財産はないのか、出された財産をどう評価すればいいのか、法的に複雑な問題がたくさん含まれています。特に、相手が会社経営者である場合は、会社資産を適正に判断し、財産分与の対象になるのかという高度な判断が必須です。

財産分与問題を残して先に離婚すると、ますます相手資産の把握が難しくなりますし2年の期間制限も問題です。一方、財産分与が解決できないために離婚がずるずる伸びるのも大きなストレスです。
ベリーベスト法律事務所では、会社経営者との離婚問題や、会社財産と個人資産が問題となる案件についてご相談をお受けしています。会社経営者との離婚でお困りの方は当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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