離婚するとき弁護士は必要?費用を抑えるポイント
「離婚をしたい!」
思い立ち、最初にすることは、配偶者にその希望を伝え、財産分与や養育費、慰謝料などを話し合うことです。
その後、スムーズに話し合いが進み、離婚できれば良いのですが、多くの場合、希望どおりに事を進められるとは限りません。
「顔を合わせての話し合いが難しい」
「離婚そのものを拒否されてしまった」
「金額交渉で決裂してしまった」
「調停や裁判になりそう……」
そんなとき、弁護士に依頼したほうが良いか迷う方も多いでしょう。弁護士料金は高いというイメージから、依頼をためらう方も少なくないかもしれません。
そこで今回は、離婚するときに弁護士へ依頼することのメリットとデメリット、依頼したほうが良いケース、それから、気になる弁護士費用についてお送りします。
1、離婚について弁護士を依頼するメリット
多くの方が弁護士の力を借りず、離婚することを選択しています。しかし、状況によっては調停や離婚裁判に至り、弁護士へに依頼する必要に迫られるケースや、依頼したほうがよい結果を得られただろうというケースも少なくありません。
まずは弁護士に依頼するメリットをみてみましょう。
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(1)法的知識・経験に頼れる
離婚に関する話し合いや手続きと一口に言っても、家庭状況や経済状況などによって内容が異なります。多くの場合、離婚手続きは初めて体験することですし、離婚という状況に精神的に疲弊しているものです。そんなとき、法律的なことや、今後の長きにわたる生活面まで視野に入れて、冷静に動ける方は少ないでしょう。
そんなとき、弁護士がいれば、法的知識を活かして、より良い条件で離婚をできるよう、導いてくれます。たくさんの離婚の現場に立ち会ってきた実績があるので、冷静な目で状況を判断し、様々な状況にうまく対応できますし、交渉においてまま起こる「取り返しのつかない失敗」を、事前に防ぐことができます。 -
(2)時間の節約ができる
離婚に伴う手続きは、大量の書類が必要となり、入手や作成に手間のかかるものも少なくありません。調停や裁判になれば、裁判所に出頭する必要も出てきます。仕事をしていたり、小さなお子さんを抱えていたりする場合は、これらのために時間をつくることもなかなか難しいでしょう。
契約内容により範囲はかわってきますが、弁護士を依頼すれば、弁護士が裁判所等に提出する書面を作成しますし、裁判所にも本人の代わりに出頭します(調停の場合には、本人の出頭が原則になりますので、弁護士の判断により本人の出頭をお願いする場合も多いです)。 -
(3)精神的負担を軽減できる
当人同士で話し合いを進める場合、話が堂々巡りとなり、何度話し合ってもらちが明かないというケースは少なくありません。このように離婚に進みたいのに一歩も進めない状況に陥っている場合には、弁護士の交渉力が有効です。本人間での交渉が行き詰っている場合に、弁護士が介入することで解決するという場合もありますので、いつまでも離婚できないという精神的な負担を軽減することができます。
また、顔を合わせて話し合いをするのが苦痛な場合、体調不良で話し合いの場に出向けない場合も、弁護士が代わりに交渉の場に出向き、本人同士で顔を合わせないですむようにすることができますので、この意味でも、交渉による精神的負担を軽減することができます。 -
(4)意志の強さを伝えられる
当人同士で話し合いを続けても、相手によっては、一時の気の迷いだと受け止められたり、普段の夫婦喧嘩の延長線上であると受け止められたりする場合があります。その場合、建設的な話し合いは一切できないばかりか、時間ばかりがムダに過ぎてしまうことになります。
しかし、弁護士を依頼することで、あなた自身が本気で離婚を考えていることが相手に明確に伝わります。交渉から弁護士に依頼してしまえば、揉めて泥沼となる現場にあなた自身が立ち会う必要もなく、離婚に向けた話し合いや手続きをを着実に進めることも可能です。
2、離婚について弁護士を依頼するデメリット
「最大のデメリットは、弁護士費用がかかることです。具体的な金額は以下の「4. 離婚の際、弁護士に依頼した場合にかかる費用と相場」でご紹介しますが、財産が少ない場合、弁護士費用が負担になってしまう場合もあり得ます。
しかし、弁護士費用が払えないときも、条件さえそろえば「弁護士費用立替制度」を利用できますので、状況によっては費用の負担を少なく抑えることが可能です。また、弁護士を依頼したことによって得られるメリットは、上記に挙げたように金銭的なメリットには限られないので、離婚により得られる金銭が少なかったとしても、費用倒れになるとは言い切れないと思います。
もうひとつデメリットがあるとすれば、弁護士に依頼することによって、自分のスケジュールだけでなく、弁護士のスケジュールも影響してくることになります。この点については、自宅や職場、裁判所に近い弁護士を依頼することで、大きな問題にはなりません。
3、弁護士を依頼したほうが良いケース
結論から言ってしまえば、スムーズに互いが納得できるよい条件で離婚ができれば、弁護士に依頼する必要はありません。しかし、不動産などの資産がある場合や、話し合いがスムーズにいかない場合など、以下に当てはまるケースに陥ってしまった場合は、依頼を検討してみることをおすすめします。
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(1)財産分与などの金額が大きい
財産が多い場合には財産分与の額が大きくなり、所得が多い場合には養育費の額が大きくなります。その場合に、法的知識がないまま同意してしまうと、取り返しのつかない失敗になることがあります。 たとえば「本来受け取れるはずの金額を受け取れなかった」ということや、逆に、「払わずに済むはずのお金を払ってしまった」なども起こりえます。予想外のところで手数料や税金などのお金や、手続きなどで、大変な手間や時間がかかってしまうケースは少なくありません。
あらかじめ弁護士に依頼すれば、これらのトラブルを事前に防ぐことができます。 -
(2)忙しくて法的手続きを行う時間がない
離婚は、婚姻のときとは異なり、様々な手続きが発生します。また手続きを行う場所も、地区町村の役所はもちろん、場合によっては裁判所にも、足を運ばなければなりません。調停や裁判になれば、離婚に至るまで時間もかかります。
仕事が休めない、子どもが小さいな、体調が悪いどの理由で、何度も手続きや調停・裁判のために役所や裁判所に足を運ぶことが難しいという方も少なくないでしょう。 そんなとき、あらかじめ弁護士に手続きなどもすべて含めて依頼すれば、調停の申立て等なども弁護士が行います。 -
(3)DVがある、相手がストーカー化している
DVによって離婚をしたいケースや、離婚の話し合いがこじれた結果、相手が自分の職場や実家までやってきて、離婚を撤回させようと強硬に迫ってくるというケースも少なくありません。離婚を切り出した途端、相手が突然執着し、ストーカー化するということもあり得ます。
このようにDVが伴っている場合や相手がストーカー化している場合は、相手と面と向かって一人で対応することは危険です。その場合も、弁護士に依頼しておけば、相手への対応の窓口となってくれます。あなたの居場所を相手に伝える必要もないので、安心して離婚へ向けた準備を進めることが可能です。 -
(4)自力での交渉に不安がある
離婚を有利かつ迅速に進めるカギは、話し合いにあります。しかし、あなた自身が話すのが苦手だったり、精神的にダメージを受けていたりすれば、冷静に話をすることが難しいこともあるでしょう。裁判になっても離婚できるだけの証拠があったとしても、相手のほうが話術に長けている場合は、有利な条件で離婚することが難しくなることもあります。
しかし、弁護士は法的知識だけでなく交渉のプロです。あなた自身の主張を整理してわかりやすく相手に伝えてくれるだけでなく、相手方を説得してくれることも期待できます。これは、調停や裁判の場面はもちろん、個人間の交渉でも大きな戦力になるはずです。
4、離婚の際、弁護士に依頼した場合にかかる費用と相場
離婚に関する案件を弁護士に依頼すると、一般的に次のような費用がかかります。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 日当
- 実費
具体的な金額は、相談内容やそれぞれの事情、また協議離婚を目指すのか、調停や裁判になるのかなどでも変わります。弁護士にどこまで対応してもらうかという契約内容によっても異なるので、まずは相談をしてみるとよいでしょう。
離婚に伴う弁護士費用は、弁護士事務所・弁護士ごとに異なります。
以前は日本弁護士連合会(日弁連)が弁護士報酬の基準を決めていましたが、平成16年4月に弁護士報酬が自由化され、報酬を自由に決めてよいことになったためです。
では、具体的に離婚にまつわる弁護士費用の一般的な相場をみてみましょう。
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(1)相談料とは
弁護士に相談するときは、基本的に料金がかかります。これが「相談料」と呼ばれるものです。相談料の相場は、1時間あたり1万円程度が一般的ですが、初回相談に限り1時間まで無料としている弁護士事務所も少なくありません。
弁護士への相談は、限られた時間の中で、専門的な知識を駆使してアドバイスをもらう機会です。できる限り聞きたいこと、教えてほしいことはもちろん、ご自身の状況をメモ書きし、相談のし忘れや時間のムダがないようにして相談をすることをおすすめします。 -
(2)着手金とは
弁護士に相談後、依頼することになったときに発生する費用です。弁護士は、着手金が支払われてから依頼された事件に着手します。相場は20万円~50万円で、解決したい問題の内容によって費用は異なります。
なお、一度支払った着手金は、事件処理の結果に不満があったとしても、依頼者が途中で弁護士を解任したとしても、原則として返金されません。
交渉で依頼して調停や裁判に進んだ場合や、調停で依頼して裁判に進んだ場合には、別途着手金の支払いが必要になります。新たな段階に進む際の着手金の相場は20万円~40万円です。 -
(3)成功報酬はいくら?
成功報酬とは、事件終了時点で弁護士に支払う費用です。事件を無事終了させたことに対する報酬のほか、得られた利益により算出する報酬があります。不倫相手への慰謝料請求は自分で行うとか、依頼内容を削ることで少なくなる場合もありますので、ご依頼の際に弁護士と相談されるのがよいでしょう。
- 基礎報酬
基礎報酬とは、事件を終了させたことに対する報酬です。これは結果がどうなるかを問わず支払うことになります。20万円~30万円が相場です。 - 離婚成立・離婚阻止についての報酬
離婚成立という結果に対する成功報酬は、基本報酬に含めている事務所もありますが、別途成功報酬を設けている事務所もあります。相場は10万円~20万円程度です。 - 親権の獲得・その阻止についての報酬
こちらも、基本報酬に含めている事務所と、別途成功報酬を設けている法律事務所があります。別途設けている場合、相場は10万円~20万円です。 - 経済的利益に対する報酬
経済的利益に対する報酬とは、財産分与、慰謝料、養育費及び年金分割を得られたないし得られることを阻止した場合の報酬のことを指します。財産分与や慰謝料に対する報酬は、得られた金額の10%程度が相場です。養育費や年金分割については、1~2年分の10%が相場です。
- 基礎報酬
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(4)日当、交通費及び実費について
契約により、長距離の移動が発生した場合の日当や、交通費や相手方への郵便物を送付した場合の切手代等の実費の支払いが必要になる場合がありますので、契約をする際は、支払いの有無を確認するとよいでしょう。日当の相場は、半日で3万円程度、1日で5万円程度です。
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(5)支払いが難しいときは?
「弁護士の力が必要だけれど、費用の支払いが難しい!」という方もいるでしょう。その場合は、法テラス(日本司法支援センター)に相談してみましょう。一定の条件を満たす場合には、「弁護士費用立替制度」が利用できます。法テラスがあなたに代わって弁護士費用を立て替えて支払い、あなたが法テラスに分割で費用を返済する、という制度です。詳しくは法テラスへ問い合わせてみてください。
法テラス
5、弁護士の探し方・選ぶポイント
弁護士に依頼したくても、どうしたらいいのかわからない方も多いようです。
弁護士の探し方としては、以下のような方法があります。
②弁護士会・法テラスへ相談する
- 日本弁護士連合会
TEL:0570-783-110 - 法テラス
TEL:0570-078-374
親類や知人からの紹介の場合は、知り合いのつてがある分、丁寧な対応をしてくれるかもしれません。ただし、その弁護士が離婚を専門としていない場合もあるので注意が必要です。
弁護士会や法テラスへ問い合わせたり、市区町村などで実施している法律相談を利用したりすることも一つの手です。また、インターネットで検索して、離婚を専門に扱っている弁護士事務所に相談してみるのもよいでしょう。インターネットで検索する場合、費用も確認できる場合が多いので、一緒に確認しておくとよいでしょう。
実際に弁護士に依頼するときは、何人かの弁護士に会ってみることもよいでしょう。信頼できる弁護士に出会うことが、離婚への第一歩です。
そのほかについては、以下のポイントを中心に比較検討するとよいでしょう。
- 離婚関係の弁護を行った経験値
- 会話をしやすいかどうか
- 法律の意味や内容をわかりやすく説明してくれるか
- あなたが不利な点もきちんと指摘してくれるか
弁護士との相性や専門性によって、あなたが受けられるメリットは大きく変わるものです。伝えたいことが言いづらい、違和感がある、離婚を専門とした弁護士ではない場合は、正式な依頼は少し考えてみたほうが良いかもしれません。
6、まとめ
今回は、離婚に関して弁護士に依頼するメリット・デメリットと、報酬の相場についてお送りいたしました。弁護士報酬は、相談内容や法律事務所ごとに大きく変わるものです。依頼する前に必ず確認しておきましょう。また、現在もかつての弁護士報酬規程を基準にしている弁護士事務所・弁護士も少なくありません。旧報酬規程は以下のリンクより確認いただけます。
旧規程について
費用は多少かかりますが、スムーズにかつ有利な条件で離婚したいのであれば、弁護士に依頼することもよいでしょう。まずは無料相談などを活用して、検討してみてはいかがでしょうか。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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