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在宅時間が増えてつらい! 離婚を相手に伝える前に検討すべきこととは

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更新日:2022年01月27日  公開日:2020年06月18日
在宅時間が増えてつらい! 離婚を相手に伝える前に検討すべきこととは

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府や都道府県知事より外出自粛が呼びかけられ、在宅勤務やテレワークが広がりました。今まであまり平日の日中は顔を合わせる機会が少なかった家族が在宅勤務などで同じ屋根の下にいることが増えたというご家庭も多いでしょう。また、在宅が推奨され、かつ不織布マスクが手に入りづらい時期に危機感もなく出掛けてしまう夫(妻)に価値観の違いを感じるなどのケースもあるようです。

そのためか、コロナ禍をきっかけに離婚することになったと考えられるいわゆる「コロナ離婚」という言葉がメディアなどを中心に取り上げられるようになっているようです。そこで今回は、夫婦の在宅時間が増えたことがきっかけで離婚を考え始めたとき、夫(妻)に伝える前に検討すべきことについて、弁護士が解説します。

1、離婚を選択する前に知っておくべきこと

夫婦の在宅時間が増えたことがきっかけで、ストレスのあまり離婚を考えるようになった方は少なくないと考えられます。そこでまずは、離婚を検討するとき、あらかじめ知っておくべきことについて解説します

  1. (1)離婚のメリット

    離婚するメリットはいろいろありますが、まず夫(妻)の言動によるストレスから解放されることが挙げられます。たとえば、DVやモラハラがあるなどのケースでは、それによるストレスからは確実に解放されます。これは大きなメリットです。夫(妻)の言動で心身に不調をきたしていたときは、回復も期待できるでしょう。

    また、相手を気にせず、自分の好きなことにお金や時間を使ったり、新たな出会いや再婚を考えられたりすることも離婚によって得られるメリットのひとつであるといえるでしょう。

  2. (2)離婚のデメリット

    一方、離婚にはデメリットもあります。

    今まで夫(妻)と家事を分担していた場合は、離婚すればひとりで家事をすべてこなさなければなりません。ただし、在宅勤務や自宅待機のため、昼食の準備などの家事負担が増えた、家にいても育児に協力しなかった、などのケースであれば、あまり離婚する前と変わりがない可能性があるでしょう。

    また、自分が専業主婦(夫)だった場合は、自分が大黒柱にならなければならないというプレッシャーが生じることは間違いありません。金銭面については、最大のデメリットとなりえます。のちに解説しますが、離婚を相手に告げる前の段階から入念な準備をしておいたほうがよいでしょう。

    さらに、子どもがいる場合は、父親(母親)と離ればなれになるため、少なからず心理的に影響を及ぼすことも考えられます。子どもの年齢や精神状態にもよりますが、しばらくはいつも以上に気をかけてあげるなどのケアが必要になることがあります。

  3. (3)離婚後に起こりうるトラブル

    離婚しても、相手方とスパッと縁が切れるわけではありません。離婚後には以下のようなトラブルが起こることもあるためです。

    離婚前の段階から、これらのトラブルに備えることが重要になります。

    • 慰謝料や養育費などのお金が振り込まれない
    • 子どもに会えない
    • 離婚後妊娠が発覚してしまう
    • 財産分与や年金分割の取り決めをしていなければ調停や裁判になる   など

2、夫婦関係は破綻している? 離婚の際問われる法定離婚事由

協議離婚であれば、当事者同士が合意した時点で離婚することが可能です。しかし、裁判になると、法律に定められた「法定離婚事由」があることを認められなければあなたの意思だけで離婚することはできません。

裁判では、在宅時間が長時間にわたることによる相手方へのストレスという理由で、相手が離婚に合意していなくても離婚できるのでしょうか。

  1. (1)法定離婚事由とは

    前述のとおり、民法で定められた離婚事由を「法定離婚事由」といいます。民法では、法定離婚事由として以下の5つが定められています。

    1. ①配偶者に不貞行為があったとき
    2. ②配偶者から悪意の遺棄があったとき
    3. ③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
    4. ④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
    5. ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき


    「離婚したい」と思った理由がこのいずれかにあてはまっていれば、配偶者が離婚をいやがっていても、裁判を行うことで離婚が成立する可能性が高いと考えられます。逆に言えば、このいずれにも該当せず、配偶者が離婚を拒んでいる場合は、一方的に離婚することは難しいでしょう。

    参考:法定離婚事由について詳しくはこちら

  2. (2)法定離婚事由があれば慰謝料請求できる可能性も

    法定離婚事由のいずれかにあてはまれば、不法行為責任が成立するため、配偶者に対して慰謝料が請求できることがあります(民法第709条)。

    たとえば、不貞行為をはたらいた配偶者に対しては、配偶者や浮気・不倫相手に慰謝料を請求できます。夫が愛人をつくったうえに愛人と別れるよう再三求めた妻に対して暴力を振るうようになったケースでは、裁判所が夫に200万円、愛人に100万円の支払いを命じています(水戸地裁昭和51年7月19日判決)。

  3. (3)「コロナ離婚」は法定離婚事由になるか

    では改めて、「コロナ離婚」が法定離婚事由になりうるかを考えてみましょう。コロナ離婚は、主に在宅勤務などで長時間家にいることでストレスがたまり、それによって引き起こされた行動が原因と考えられます。もしくは、これまで我慢をしていて、見て見ぬふりをしてきたことに耐えられなくなったケースもあるかもしれません。

    たとえば、長時間在宅することでストレスがたまって夫が妻や子どもに暴力を振るうようになれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められるでしょう。一方、夫が在宅しているのに家事・育児に協力しない、夫(妻)が感染リスクを顧みずに外を出歩くことが耐えられない、などのケースであれば離婚が認められる可能性は低くなるかもしれません。

3、「離婚したい」と配偶者に伝える前にすべきこと

離婚したいと思ったら、その意思を配偶者に伝える前に、少し立ち止まってみましょう。一度「離婚したい」と口に出してしまったら、もう後に引けなくなる可能性があるからです。ここでは、離婚の意思を配偶者に伝える前にすべきことについて解説します。

  1. (1)「本当に離婚すべきか」を今一度考える

    相手に「離婚したい」と伝える前に、一度冷静になって本当に離婚すべきかどうかを考える時間を持つことをおすすめします。

    離婚を考えるようになったのは、単に外出自粛により在宅時間が長くなったことがストレスになっただけかもしれません。特に専業主婦(夫)の場合は、離婚すれば自力で生活費を稼がなければならなくなるので、今後の生活のことを考慮に入れ、今、急いで離婚すべき事態なのかどうかを改めて検討するとよいでしょう。

  2. (2)夫婦関係を修復してコロナ離婚を回避したいときはどうする?

    もし、考え直して夫婦関係を修復してコロナ離婚を回避したい場合は、以下のようなことを心がけてみましょう。

    ●感じることを正直に相手に伝える
    夫(妻)は、妻(夫)がなぜいつもイライラしているのか、その原因に気づいていないかもしれません。「在宅勤務をしながら家事も育児もひとりでしなければならなくてつらい」など、日頃から感じていることを正直に打ち明け合うこともひとつの手です。お互いの気持ちが理解でき、お互いに思いやれるようになることが、関係修復の第一歩です。

    ●家事の分担を決める
    特に家事や育児などの仕事は、夫婦ともに在宅勤務をしていても、どうしても普段から主に対応している側の負担が重くなってしまうものです。そこで、やるべき家事を洗い出して、「ゴミ出しと洗い物は夫」「〇曜日と〇曜日は夫が夕食の支度をする」など、分担をはっきり決めておくとラクになるかもしれません。夫婦二人とも在宅勤務をしていて忙しいときは、週に数回テイクアウトを利用するなど、適度に手を抜くことも必要でしょう。

    ●ひとりになれる時間をつくる
    ストレスがたまるのは、ずっと家族で過ごす時間が長くなっているからともいえます。そこで、ときどきは気分転換をかねてひとりになれる時間をつくりましょう。部屋に閉じこもって好きな映画のDVDを観たり、人の少ない時間帯に近所を散歩したりすると、リフレッシュできてストレスも軽減するのではないでしょうか。

  3. (3)離婚すると決意したら始めたい3つの準備

    夫婦関係を修復する意思はなく、「もう離婚する」と決めたら次の3つの準備を始めましょう。

    ①当面の生活資金を準備する
    離婚したら、自力で食べていかなければなりません。子どもがいる場合は、子どもも養っていく必要があります。

    専業主婦(夫)だった場合は仕事を見つけるなどして、まずは生活資金を用意しましょう。引っ越し代金や生活費として、100万円ほどあればひとまず安心ではないでしょうか。

    ②離婚理由を考えておく
    自分の離婚理由が法定離婚事由のいずれかにあたる場合は、その裏付けが必要となります。調停や裁判になったときに備え、自分の主張をまとめるとともに、証拠を集めておきましょう。

    ③請求できるお金をリストにまとめる
    財産分与や年金分割、養育費など相手方に請求できる可能性のあるものは、コピーを取るなど証拠を残すとともに、すべてリストにまとめておくことをおすすめします。相手方が不貞行為やDV行為をしていた場合は慰謝料も請求できます。また、離婚前に別居する場合は別居開始時から離婚が成立するまでにかかった婚姻費用も請求できるでしょう。

    参考:専業主婦の方が離婚を検討する際に知っておくべきポイント

4、離婚を進める際、弁護士に相談したほうがいい5つのケース

離婚に向けた話し合いや手続きは、実のところ個人でも対応できるものです。しかし、その場合でも離婚協議書を作成し、長期にわたる支払いを求める場合などは作成した協議書を公正証書にしておくなどの対応をしておくことを強くおすすめします。

他方、次に挙げる状況に陥りそうなときは、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談したほうがよいでしょう。

  1. (1)夫婦仲が破綻していて会話ができない

    同居していても夫婦仲が破綻していてまともに会話ができない、すでに別居しているなどの場合は、弁護士に対応を委任することができます。

    弁護士を介して相手方と話をすることによって、相手も対応せざるを得なくなりますし、あなた自身も感情的にならず冷静に話し合いを進めることができます。

  2. (2)DVやモラハラを受けている

    夫(妻)からDVやモラハラを受けているなど、心身に危険が及んでいる場合は、自治体や肉親などの支援などを頼り、家を出ることを優先してください。ムリに話し合おうとすることで、事態が悪化してしまう可能性があるためです。

    まず自分や子どもの身の安全を確保したのちに、弁護士を通じて離婚に向けた話し合いを進めることを強くおすすめします。まず、弁護士から話をすることで、妻には威圧的な態度に出る夫も、弁護士にはまともに話をしてくれる可能性があります。また、相手方が代理人弁護士との交渉も拒絶する場合は、弁護士を通じて調停や裁判などへ素早く移行することが可能です。

  3. (3)できるだけ多くの慰謝料を請求したい

    慰謝料の請求を自分でしようとすると、相手方にのらりくらりと言い逃れされて結果的に思うような金額を獲得できないことも考えられます。弁護士を通じて請求することで、法的根拠をもって自分の主張を相手に伝えることができます。結果、より適切な慰謝料をもらえる可能性を高められるでしょう。

  4. (4)親権や養育費の争いが起きそう

    経済的にまだ自立していない子どもがいる場合、親権をどちらが持つのか決めなければ、離婚届を役場に受理してもらえません。そのため、親権のことは早々に決める必要があります。しかし、夫(妻)と親権や養育費をめぐって争いが起きることがあります。勝手に連れ去られてしまった、養育費について合意できないなどの事態も起こりうるでしょう。

    親権争いや養育費について合意できないときも、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、状況に適したアドバイスを行ったり、あなたの代理人として交渉したりすることができます。

  5. (5)分与すべき財産が多い

    車や不動産などを所有していて夫婦の共有財産が多いとき、相手方ともめるかもしれません。相手方の言うとおりに受け取ると、かえって損をしてしまうこともありえるでしょう。

    あらかじめ弁護士に相談しておくことで、夫婦それぞれの収入や資産状況からどのように分与すべきかを判断し、適切な財産分与を行うことができるようになります。争いとなった際の対応を任せることも可能です。

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5、まとめ

コロナ禍がいつおさまるのか先が見えない中で、在宅勤務になった夫婦がお互いにストレスを募らせて離婚を考えた、というケースも決して少なくないでしょう。そういうときは、まずは冷静になり、なぜ離婚したほうがよいと思うのかを改めて考えてみてください。

もし、離婚したいと思う決意が揺るがず、どのような対応をすべきかわからないときや、争いになりそうなときは、ひとりで悩まずに、ぜひベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。あなたの状況に適したアドバイスを行います。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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