専業主婦が離婚するためには、事前にどのような準備をしておけばよいでしょうか?
- 離婚したい専業主婦が離婚するリスク
- 離婚するために事前にどのような準備を
しておけばよいか - 離婚の切り出し方はどのようにしたらいい?
- 別居したら婚姻費用分担請求!
- 離婚のタイミングで請求できるお金は?
- 子どもの親権を取れるか?
- 養育費を確保する方法
- 離婚協議書
- 離婚調停
- 再就職の方法は?
- シングルマザーには様々な助成金がある
- 子育てのポイントは?
離婚したい専業主婦が離婚するリスク
専業主婦が離婚すると主に次のようなリスクがあります。
- 仕事をしたことがないか、ブランクがあるため、仕事を見つけにくい
- 小さい子どもがいれば、なおのこと、仕事を見つけにくい
- 年金の額が少ない
離婚するために事前にどのような準備をしておけばよいか?
どちらが子どもの親権をもつべきかについて考える
子どもをもつ夫婦が離婚を検討するうえでもっとも大切なことは子どもの親権をどちらがもつかということではないでしょうか。子どもと離れたくないというエゴで親権を主張してはいけません。どちらが親権を持つのが子どもにとって最善かという点がすべてです。
子どもが自分でしっかりと考えて発言できるくらいに成長にしている場合は、最終的に子ども自身の希望を聞いたほうがよいですが、準備段階のタイミングでは尚早でしょう。
この段階では、自分自身でどちらが親権をもつことが子どもにとって最善かを考えたり、自分が親権をもつべきであると考える場合はその理由を整理したり、夫も親権を主張してきた場合に夫をどのように説得するかを考えたり、子どもにどのタイミングでどのように離婚について話すかということを考えたりします。
有責性の検討と証拠の収集・保全
不貞行為等の法定離婚原因となる行為はどちらかにありましたか?離婚協議を進めるうえで、どちらに破綻の責任があるのかという点が重要ですので、はじめに整理しておきましょう。また、夫に原因がある場合、その証拠を収集し、保全しておきましょう。
離婚費用の算出
引っ越し費用、別居後の当座の生活費、弁護士費用等の離婚に必要な費用を算出し、自分のたくわえで間に合うかどうか、足りない場合はどのように捻出するか等について考えましょう。
財産の把握
自分の単独所有財産と夫婦の共有財産のそれぞれ把握しておきましょう。相続財産や結婚前から所有している財産は単独所有です。財産に関する書類はコピーをとって控えておきましょう。例えば、不動産の登記簿謄本、自動車検査証、保険証書、年金証書、通帳、有価証券、ローン契約書、賃貸借契約書等が該当します。
夫の収入の把握
源泉徴収票などで夫の年収を把握しておきましょう。可能であればコピーをとっておいたほうがよいでしょう。
夫に請求する内容(金額)について考える
請求できる可能性のあるものとして、財産分与、慰謝料、養育費、婚姻費用(離婚前別居時)、年金分割があります。
財産分与については、夫婦の共有財産を折半するかたちで行われます。不動産などの分けにくいものが財産の半分以上の価値を占めている場合は、多くのケースでは、離婚後その不動産等を所有する方がもう一方に対して金銭を支払うことによって調整しています。不動産をとるのかお金をとるのかといった選択も必要になります。
慰謝料は法定離婚原因を作った有責配偶者が、もう一方に対して支払います。ある程度相場は決まってきますが、有責性や受けた精神的被害の程度によって金額は変わってきます。
離婚後の家計のシミュレーション
離婚後に経済的にやっていけるのか、事前にシミュレーションしておくことが必要です。毎月の支出と収入を計算しましょう。仕事をどうやってみつけるか、どのくらいの期間でみつけられそうか、いくらぐらいお給料をもらえそうかという点についても考えておきましょう。
離婚の切り出し方はどのようにしたらいい?
離婚話は相手の状況をみて切り出しましょう。相手が落ち着いて話をできないタイミングで切り出していけません。相手も自分も、時間にゆとりがあって、平常心の状態で、アルコールが入っていないときに切り出しましょう。突然の告白にショックを与え過ぎないように、「大切な話がある」、「落ち着いて聞いてほしい」と前置きし、間を取りましょう。話し始めたら、感情的にならずに話すことを心掛けましょう。
また、離婚の動機が、不貞行為等の明らかに相手に非があることなら別ですが、性格の不一致等のどちらに非があるか一概にはいえないようなことである場合は、相手を批判してはいけません。
離婚したい理由を尋ねられたら、簡潔に伝えることを心掛けましょう。あまり具体的な話になると、愚痴を言っているような感じになり、そこから口論に発展し、肝心な離婚話が頓挫してしまいます。
そして、相手の気持ちを尋ねましょう。相手が話しているのを遮って、反論してはいけません。反論するにしても、相手が話し終わるのを待ちましょう。また、相手の主張に反論したくなっても、自分の離婚の意思が堅ければ、むやみに反論すべきではありません。相手の主張にも一定の理解を示したうえで、離婚の意思は堅いことを伝えましょう。
関係修復の余地があるのであれば、離婚ありきで切り出すべきではありません。相談ベースで話し始めるべきです。また、初回の話し合いで、無理に結論を得ようとしても概してうまくいきません。話が堂々巡りになる前に、一旦、話を切り上げて、次回に持ち越しましょう。その間に、相手も気持ちが大分整理できるでしょう。
また、切り出す前の下準備も大切です。相手に不貞行為等の離婚原因がある場合は、その証拠を押さえておきましょう。また、財産の状況や相手の収入についても、通帳等の財産関連の書類のコピーを取っておくなどしておきましょう。切り出した後では、警戒されて、隠されてしまうこともあり得ます。
別居したら婚姻費用分担請求!
別居したら婚姻費用の分担を請求できる場合があります。婚姻費用とは、家族の生活費や子どもの学費といった通常の社会生活を維持するために必要な費用のことです。別居すると別々に生計を立てることになるので、両方の生活が成り立つように、経済的にゆとりがない方がある方に対して、費用の分担を請求することができます。
婚姻費用の分担金の算定については、裁判所の交渉する算定表を用いて算定することができます。
なお、裁判では必ずしも杓子定規にこの表の通りに算定されるわけではなく、特別な事情がある場合は、その事情を考慮して算定します。婚姻費用の分担は請求した時から認められます。
後から請求する前の婚姻費用の分担を遡って請求することは難しいので、別居後なるべく早く請求したほうがよいでしょう。なお、同居時においても十分な生活費を受け取っていない場合等は請求することができます。
一方、別居の原因が請求者にある場合は、請求が認められないこともあります。
▼以下の動画で、婚姻費用請求に関するポイントや婚姻費用分担請求の方法についてわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください
離婚のタイミングで請求できるお金は?
離婚のタイミングで請求できるお金には、財産分与と慰謝料があります。
財産分与
財産分与とは、基本的には、離婚の際に夫婦の共有財産をそれぞれの資産形成への貢献度に応じて分配することをいいます。このような財産分与を清算的財産分与といい、財産分与にはこのほかに、扶養的財産分与と慰謝料的財産分与があります。
扶養的財産分与とは、離婚をした夫婦の片方が清算的財産分与を受けてもなお生活に困窮してしまうという事情がある場合に、その生計を補助するという扶養的な目的により財産が分与されることをいいます。慰謝料的財産分与とは、慰謝料と財産分与の内訳を区別せずに、まとめて財産分与とした場合の財産分与のことをいいます。
清算的財産分与を請求するうえで重要なことは、共有財産がどれだけあるかということと、自分の資産形成の貢献度はどれくらいかということです。
共有財産に当たるかどうかは、名義などの形式ではなく、婚姻中に夫婦の協力により形成・維持されたものどうかという実質によって判断されます。婚姻中に取得された財産は、共有財産であることが推定されます。また、保険解約返戻金や退職金なども財産分与の対象となりえます。財産分与の対象は、原則として別居時を基準に確定されます。そのため、離婚前であっても、別居後に取得された財産については、財産分与の対象にはなりません。
婚姻前から片方が持っていた財産と、婚姻中に夫婦の協力とは無関係に取得した財産は、原則として財産分与の対象となりませんが、取得には無関係でも維持に関する貢献があった場合は、その貢献度に応じて財産分与を受けることができることがあります。
また、専業主婦で収入がなくても、家事や育児を行うことによって夫が安心して労働できる環境を整え、夫婦の資産形成に貢献したと考えられるため、財産分与を請求することができます。
慰謝料
慰謝料とは苦痛など精神的損害に対する賠償金のことで、離婚にかかわる慰謝料は次の2つに分類されます。
- 離婚の原因行為によるもの
- 離婚をすることそれ自体(=配偶者の地位を失うこと)から生ずる精 神的苦痛に対するもの
離婚の原因行為を相手方と共同して行った者がいる場合は、その者にも慰謝料を請求することができます。例えば、離婚の原因行為が不貞な行為である場合は、相手方の不貞相手にも請求することができます。
ただし、相手方と不貞相手から損害額を超えて二重取りすることはできません。なお、不貞行為が離婚の原因ではない場合(例えば、不貞行為前に夫婦関係が破綻していた場合や、不貞相手が、相手方が婚姻していることを知らず、かつ、知りようもなかった場合)は、不貞相手に対して慰謝料を請求することはできません。
子どもの親権を取れるか?
親権者としてどちらが適当かの判断は、子どもの意思、子どもの年齢・性別・状況、子どもへの愛情、経済力、親などの緊急時の代替監護者の有無と監護能力、兄弟と同居できるか、住宅・学校などの環境、離婚前の環境との変化の度合いなどを考慮して総合的に行われます。
子どもが幼ければ幼いほど、母親が適任と判断される傾向にあり、また、15歳以上の子どもの親権を審判や訴訟で定める場合は、子ども本人の意思を聴くことになっており、子どもの年齢が高ければ高いほど、子どもの意思が重視される傾向にあります。
なお、不貞行為等の離婚原因の作ったかどうかは、親権者の判断には関係ありません。もっとも、離婚原因が親権者としても不適格な事情を表すものである場合はこの限りではありません(子どもにも知られるような方法で不貞行為をはたらいた場合等)。
養育費を確保する方法
養育費の額は、子どもの数や年齢、双方の年収などによって異なります。婚姻費用の項目で紹介した算定表で養育費も計算することができます。婚姻費用と同様、裁判では必ずしも杓子定規にこの表の通りに算定されるわけではなく、特別な事情がある場合は、その事情を考慮して算定します。
また、離婚をする前に、養育費についてしっかりと取り決めておくべきですが、離婚後でも養育費を請求することはできます。双方で協議し、協議が調えば、その内容を公正証書にしておきましょう。協議が決裂した場合は、養育費請求調停を申し立てるとよいでしょう。2名(通常は男女)の調停委員が間に入って、調停が進められます。
調停が不成立に終わった場合は、自動的に審判手続が始まり、裁判官が一切の事情を考慮して審判を下します。
離婚協議書
協議離婚が成立した場合に、財産分与、慰謝料、養育費等の条件を決めておくことは勿論のこと、その決まった条件を書面にしなければ、後々、条件を巡って水掛け論になりかねません。このようなトラブルを避けるために、書面にしておくことが必要なのです。なお、このような書面のことを一般に離婚協議書といいます。
離婚協議書には、通常、次のような項目を記載します。
- 夫婦の双方が離婚に合意したこと
- 離婚届を夫婦のどちらがいつまでに提出するか
- 未成年の子どもの親権者
- 未成年の子どもの監護者
- 非監護者の面接交渉(子どもへの面会)について頻度などの取り決め
- 養育費の金額、支払期間、支払方法
- 入院等、子どもの養育について特別の支出があった場合にどうするか
- 慰謝料の金額、支払方法
- 財産分与の内容、支払方法
- 持ち家をどうするか
- 残りのローンをどうするか
- 生命保険についての取り決め内容(受取人を子どもへ変更、解約・変更する際の条件)
- 学資保険をどちらが引き継ぐか
- 年金分割についての取り決め内容
- 引っ越した際の通知義務の有無
離婚協議書さえ作成しておけば安心かというと、そういうわけではありません。離婚協議書だけでは、その内容を元の夫が守らない場合に、すぐに強制執行をかけることができません。
裁判で離婚協議書を証拠して提出し、それが認められ、勝訴判決をもらい、それが確定してはじめて強制執行をかけることができます。裁判には長い月日がかかってしまいますし、費用もかかります。このようなはめにならないように、離婚協議書の内容を公正証書に執行認諾文言をいれておくべきです。
執行認諾文言付の公正証書にしておけば、裁判を経なくとも強制執行をかけることができます。
離婚調停
離婚協議が調わず、なお、離婚の意思が変わらない場合は、離婚調停を行うことになります。離婚調停は、夫の住所地か夫婦が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。男女二人の調停委員の下で調停は進められます。調停が成立すれば、調停調書が作成され、離婚が成立します。調停が不調に終わり、なお、離婚の意思が変わらない場合は、離婚の訴えを提起し、裁判で争うことになります。
再就職の方法は?
小さい子どもがいる場合は、保育園や学童保育に預けたほうが就職しやすいでしょう。在宅でできる仕事もありますが、資格や経験が必要だったり、初心者でもできるものは十分な収入にならないこともあります。
また、親の協力が得られそうなら、実家やその近くに住んで、子どもが熱を出した時などに親に見てもらえる環境を整えておくとよいでしょう。履歴書上や面接時に仕事に支障が出ないことをアピールできます。
また、各自治体(都道府県、政令指定都市、中核市)が母子福祉団体等に委託し、就職支援講習会を実施したり、就職情報を提供する等しています。詳細は、各自治体の児童(母子家庭)福祉主管課でお尋ねください。なお、問い合わせ先については、厚生労働省のこちらのページで確認することができます。
シングルマザーには様々な助成金がある
離婚してシングルマザーとなった場合に受けられる助成金や、公的な減免・割引には、主に以下のものがあります。
児童扶養手当
児童を扶養するひとり親家庭を対象とする地方自治体から支給される手当で、支給額は次の通りです。児童扶養手当の額は、物価の変動などによって変動します。
また所得によっても支給額が変わります。
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子どもが1人の場合
全部支給:月額42,330円
一部支給:42,320円~9,990円(所得に応じて決定されます) -
子ども2人目の加算額
全部支給:最大で月額10,000円
一部支給:9,990円~5,000円(所得に応じて決定されます) -
子ども3人目以降の加算額(1人につき)
全部支給:最大で月額6,000円
一部支給:5,990円~3,000円(所得に応じて決定されます)
平成28年8月から「児童扶養手当法」の一部が改正され、児童扶養手当の第2子の加算額および第3子以降の加算額が変更されました。厚生労働省ホームページはこちら。
所得制限があり、高所得者には支給額が減免されます。
手当を受けたい場合は、お住まいの市区町村の役所で申請してください。
児童育成手当
18歳(になった最初の3月31日)までの児童を扶養するひとり親家庭が対象で、児童一人につき月額13,500円が支給されます。こちらも所得制限があります。お住まいの市区町村の役所で申請してください。
母子家庭の住宅手当
未成年の子どもがいるひとり親で、月額10,000円を超える家賃を払っている家庭等が対象です。各自治体で支給の条件が付されているので、お住まいの市区町村の役所でご確認ください。
ひとり親家族等医療費助成
扶養されている未成年の子どもか、扶養されていなくても18歳になる年度の末日までの子どもがいるひとり親の家庭が対象です。適用を受けるためには、健康保険に加入して、所得が制限を超えていない必要があります。詳しくは、お住まいの市区町村の役所でご確認ください。
寡婦控除
再婚するか、すべての子どもの所得が38万円(令和2年分以後は48万円)を超えるまで、または夫と死別した後再婚をしていない合計所得金額が500万円以下の人を対象に27万円か35万円の控除を受けることができます。
交通機関の運賃割引
公共交通機関の多くは母子家庭の人に対して運賃の割引を行っています。各交通機関にお問い合わせください。
粗大ごみ等処理手数料の減免
児童扶養手当の受給世帯を対象に粗大ごみ等処理手数料の減免を行っています。お住まいの市区町村の役所にお問い合わせください。
上下水道の減免
こちらも児童扶養手当の受給世帯が対象です。お住まいの市区町村の役所にお問い合わせください。
保育料の減免
多くの自治体では母子家庭を対象とした保育料の減免の制度があります。お住まいの市区町村の役所にお問い合わせください。
生活保護
離婚して仕事が見つからず生活が困窮した場合、生活保護制度を利用することも考えられます。
生活保護制度を利用すると、生活を営むうえで必要な各種扶助を受けることができます。
たとえば、食費や光熱費などの生活扶助、家賃といった住宅扶助、教育・医療・介護といった様々な扶助を生活保護では受けることができます。
ただし、離婚して生活保護を受けるには一定の条件があり、それらの条件をクリアしなければ申請しても許可されないことがあります。
具体的には、「助けてくれる親や親せきがいない」「病気やけがで物理的に働けない」「売却できる財産がない」などです。
生活保護の相談や申請は、お住まいの地域を所管する福祉事務所が担当しています。
生活保護の申請条件や申請方法については、福祉事務所の生活保護担当までお問い合わせください。
子育てのポイントは?
母子家庭は、優先的に保育所に預ける等、各自治体で子育て支援を行っています。お住まいの市区町村の役所で相談してください。しかし、子どもの急な発熱時等のいざという時に本当に頼りになるのは、やはり親でしょう。シングルマザーの子育ては想像以上に大変です。親の協力が得られるのであれば、頼らない手はないでしょう。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。