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不倫した配偶者に財産分与は必要か? 慰謝料の請求方法も併せて解説

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更新日:2024年02月27日  公開日:2020年09月03日
不倫した配偶者に財産分与は必要か? 慰謝料の請求方法も併せて解説

夫の不倫(不貞)が原因で離婚することになったのに、夫から財産分与を請求されれば、妻は納得がいかないことでしょう。法的に、このようなケースはどのように対応すべきなのでしょうか。

一般に、離婚する際、配偶者の一方は他方に対して財産の分与を請求できます(民法768条1項)。また原則として、夫婦が共同生活中に形成した財産は平等に1/2ずつ分配されます。

しかし、財産分与は離婚後の生活や子育てにも大きく影響するため、相手に不倫などの原因がある場合は、慰謝料も含めて適切な金額を請求することが重要になります。

そこで今回は、夫の不倫が原因で離婚する場合の財産分与について、慰謝料との関係も併せて弁護士が解説します。

1、財産分与とは

  1. (1)財産分与の3つの意義

    財産分与とは、離婚の際、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を分配することです。財産分与には大きく分けて3つの意義があります。清算的財産分与扶養的財産分与慰謝料的財産分与です。

    ●清算的財産分与
    離婚における財産分与は、清算的財産分与が主な争点となります。清算的財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた共同財産を、それぞれの寄与度(どの程度貢献したか)に応じて公平に分配することです。この場合、財産の名義は問われません。

    なお、寄与度とはいっても、清算的財産分与の分配の割合は、原則として夫婦1/2ずつとなるケースが多いでしょう。専業主婦の場合も同様で、これは他方が働いて収入を得られるのは、家庭を引き受ける相手の寄与によるものと考えられるからです。

    ●扶養的財産分与
    扶養的財産分与とは、夫婦の一方が経済的に自立するのが難しく、離婚後に生活に困窮してしまう事情がある場合に、他方が生計を補助するために財産分与をすることです。

    たとえば、長年専業主婦であった妻が、離婚後すぐに仕事を見つけて短期間で経済的に自立することは容易ではありません。

    そのため、離婚した妻の生計を補助するために、子どもが成人するまで等の一定期間を定めて、夫が定期的に金銭を支払うのが扶養的財産分与です。

    ●慰謝料的財産分与
    慰謝料的財産分与とは、慰謝料を含めて財産分与をすることです。

    そもそも慰謝料とは、相手が被った苦痛を金銭的に賠償するものです。不法行為については民法709条、財産以外の損害賠償については民法710条などに基づいて定められています。

    一方、財産分与は、民法768条に基づいて夫婦の共同財産を分配する制度であり、財産分与と慰謝料は厳密には異なる制度です。

    しかし、実質的には離婚慰謝料分を含めて財産を分配することが可能なことから、慰謝料的財産分与が行われる場合があります。

    たとえば、配偶者以外の異性と浮気をし、継続して肉体関係を持った夫が離婚するにあたって、妻に慰謝料の意味合いとして、1/2よりも多い割合で財産分与をするなどです。

  2. (2)財産分与の対象となる財産

    夫婦の財産は、財産分与の対象になる共有財産と、財産分与の対象にならない特有財産(固有財産)に分かれます。

    財産分与の対象になる共有財産は以下の通りです。

    • 現金、預貯金
    • 家財道具
    • 不動産
    • 自動車
    • 有価証券
    • 価値のある絵画や骨董品
    • 保険料の払戻金
    • 退職金

    など

    一方、財産分与の対象にならない特有財産として、以下のものがあります。

    • 婚姻前にそれぞれがためていた金銭
    • 婚姻前に実家から持ってきた家財
    • 自分の親から相続や贈与によって得た財産
    • ギャンブルや浪費が原因の借金など、個人的な負債


    注意点は、預貯金などのプラスの財産だけでなく、個人の借金を除くマイナスの財産も財産分与の対象になるということです。婚姻中に借り入れをした住宅ローン、子どもの教育ローン、生活や養育のための借金などです。

    たとえば、プラスとマイナスの財産がある場合を見てみましょう。

    1. ①プラスの財産(預貯金・不動産など)の合計が1000万円
    2. ②マイナスの財産(住宅ローンなど)の合計が600万円


    この場合、以下のように、プラス財産からマイナス財産を差し引き1/2ずつ分与した額がそれぞれの受取額となります。
    (1000万円-600万円)÷2=200万円


    また、離婚をする前に夫婦が別居していた場合は、どの時点からの財産が分与の対象になるかも押さえておきたいポイントです。

    ポイントは、夫婦の経済的な協力関係がどの時点で消滅したかです。たとえば、別居後も夫の経済的援助を受けて子どもを養育している場合などは、経済的な協力関係が消滅したとはいえず、離婚時が基準になる可能性があります。

    参考:財産分与についての基礎知識

2、不倫(不貞)した配偶者へ財産分与は必要か

  1. (1)有責配偶者とは?

    有責配偶者とは、夫婦の婚姻関係が破綻した原因について、主な責任のある配偶者のことであり、慰謝料請求の支払い義務を負います。

    有責配偶者とみなされる理由として多いのが、不貞行為、いわゆる不倫をした場合です。不貞行為とは、婚姻関係にある男女のどちらかが、配偶者以外の異性(不貞相手)と自由意志に基づいて継続的に肉体関係を持つことです。

    したがって、キスやデート、一度きりの肉体関係は法的な不貞行為に該当しないので注意が必要です。

    また、有責配偶者は法的に何の権利もないわけではありません。たとえば、有責配偶者であっても親権を請求する権利はあります。そのため、裁判所が親権者を決める場合、どちらが親権者になるかは子どもの福祉の観点から決まります。

  2. (2)不倫をした配偶者への財産分与

    財産分与は婚姻中の夫婦の共同財産を公平に分配する制度です。したがって、不貞行為をした有責配偶者であっても、原則として1/2の割合で財産分与が認められます。

    ただし、夫婦で話し合って協議離婚をする場合は、どのような割合や内容で財産分与をするかは夫婦の自由です。

    そのため、協議離婚にあたって双方が合意すれば、慰謝料的財産分与として、1/2以上の割合で財産分与をすることも可能です。

3、できるだけ多く財産を獲得するには

  1. (1)正しく財産を把握する

    まずは分与の対象となる財産を正しく把握することが重要です。

    場合によっては、財産を隠されてしまう可能性もあるため、どのような財産があるかを洗い出してチェックする必要があります。しかし、金融機関に対して個人で調査することは非常に困難といえるでしょう。

    もし相手が財産を明らかにしなければ、裁判所を通じて照会することができます。その場合は弁護士に依頼し、裁判まで法的手続きを進めていく必要があります。財産の把握が難しい、相手が提示した内容が怪しいと感じたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

  2. (2)扶養的財産分与の請求

    財産分与において、清算的財産分与だけでなく扶養的財産分与を請求できるケースもあります。

    たとえば、妻に持病があり就労することが困難な状況である、子どもが高額な学費の私立学校に通っている、妻が高齢である、などです。

    ただし、裁判離婚で扶養的財産分与が相当と認められるには、厳密な立証が必要になります。一方、協議離婚では、双方の合意さえあれば扶養的財産分与の金額を決めることが可能です。

  3. (3)慰謝料の請求

    配偶者の不貞行為などで精神的な苦痛を被った場合、慰謝料を請求することができます。

    注意したいのは、慰謝料的財産分与として財産分与を受け取っていた場合、すでに相当の慰謝料を支払われたとみなされたり、慰謝料を減額されたりする可能性があることです。

    また、有責配偶者の行った行為(不倫なのかDVなのか等)や財産分与の割合等によって、慰謝料の相場は異なってきます。慰謝料と慰謝料的財産分与、どちらを請求すべきか迷ったら、離婚問題に経験豊富な弁護士に相談することでより有利な方法を選択することができるでしょう

  4. (4)慰謝料を決める要素

    前述の通り、さまざまな要素を考慮して慰謝料の金額が決まりますが、不貞行為における慰謝料の金額に影響する主な要素は、不貞行為の回数、不貞行為の期間、不貞行為に至った経緯、子どもの有無などです。一般には、不貞行為の回数が多く期間が長いほど、慰謝料の金額が高額になりやすくなります

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4、財産分与の流れと注意点

  1. (1)財産分与の流れ

    協議離婚の場合、夫婦が合意すれば、基本的にどのような内容の財産分与であっても可能です。

    協議離婚において、財産分与の決着がつかない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員の仲介のもとで夫婦が話し合いをします。

    財産分与の調停において、合意できない場合は調停が不成立となり、裁判所が審判という形で判断します。

    離婚と共に財産分与を求めたときに合意できない場合は、最終的に裁判という形で財産分与の方法を決めることになります。

  2. (2)財産分与の内容は離婚協議書に残す

    協議離婚において財産分与の内容を決める場合、離婚協議書に残しておくのが重要です。

    離婚協議書とは、財産分与、養育費、慰謝料など、協議離婚において決めた事柄について記載する夫婦間の契約書です。離婚協議書を作成しておけば、離婚するにあたってどのようなことを夫婦が合意して決めたかを、客観的に証明することができます。

    ただし、公文書ではないため、さらに公正証書にすることが大切です。公証役場で離婚協議書を公正証書にすると、相手が養育費の支払いをしなくなった場合に、裁判の手続きをすることなく、財産の差し押さえ等の強制執行ができます

    離婚協議書の書き方や公正証書にするには一定のルールがあり、個人で作成する場合には煩雑と感じる方も少なくありません。不安がある場合は、弁護士に作成を依頼することも検討しましょう。

    参考:公正証書にするメリットとデメリット

  3. (3)財産分与の請求権には期限がある

    相手に財産分与を求める権利を、財産分与請求権といいます。民法768条により、協議離婚に基づく財産分与請求権は、離婚届が受理されて離婚が成立してから2年が経過すると請求できなくなります。

    もっとも、相手が任意に応じる場合は2年が経過した後でも請求できます。

5、まとめ

不倫をされたにもかかわらず財産分与を請求されれば、納得がいかないのは当然の気持ちです。しかし、法律上、不貞行為をした有責配偶者でも財産分与を請求することができ、その割合は1/2ずつが一般的です。

ただし、不貞行為をした相手に対して、財産分与とは別に慰謝料を請求することができます。注意したいのは、慰謝料を含む慰謝料的財産分与を受け取った場合は、その分だけ請求できる慰謝料が減額される可能性があるということです。

夫の不貞行為が原因で離婚をお考えの場合は、離婚問題の経験豊富な弁護士が在籍するベリーベスト法律事務所にご相談ください。的確な財産分与の方法や慰謝料請求に向けて、全力でサポートいたします。

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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
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URL
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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