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離婚時の年金分割に必要な「情報通知書」とは? 請求手続きや流れ

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更新日:2024年02月14日  公開日:2020年12月03日
離婚時の年金分割に必要な「情報通知書」とは? 請求手続きや流れ

「長年連れ添った配偶者と、もう別れたい」「この先は配偶者に縛られずに自由に過ごしたい」このように考えて、熟年離婚を選択する方は少なくありません。

熟年離婚において、専業主婦(主夫)や相手の扶養に入っていた方にとって、年金分割はとても重要です。年金分割するには、「年金分割情報通知書」という書類を入手しなければなりません。

本コラムでは、年金分割情報通知書とは何か、またその書類が必要な理由や入手方法、どのようにして年金分割の手続きを進めれば良いのかなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、離婚時の年金分割とは? 種類と請求期限

まずは、離婚時の年金分割とはどのようなものなのか、基本を確認していきましょう。

  1. (1)離婚時の年金分割とは

    離婚時の年金分割とは、夫婦が婚姻期間中に払い込んだ年金保険料を分け合って、将来の受給年金額を調整する手続きです。

    婚姻中は夫婦が助け合って生活しており、年金の原資となる年金保険料もふたりの協力によって払い込んでいるものです。離婚時には将来、年金を受け取るときのために、金額が配分されるようにするのが公平といえるでしょう。そのための手続きを、年金分割といいます。

    年金分割は、受給額の少ない方の配偶者が多い方の配偶者へと請求することが可能です。専業主婦(専業主夫)の場合だけではなく、共働きで収入格差がある場合にも年金分割できる可能性があります。

    また年金分割の対象となるのは厚生年金(旧共済年金含む)のみで、国民年金は対象外です。

    参考:熟年離婚とお金/専業主婦の場合、共働き夫婦の場合の年金分割

  2. (2)年金分割制度の種類

    年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

    ①合意分割
    合意分割とは、夫婦が合意によって行う年金分割であり、分割割合は0.5(半分)までの範囲で自由に定めることが可能です。この場合、基本的に離婚後にふたりで年金事務所に行って手続きをする必要があります。
    適用されるケースは以下のとおりです。

    • 2008年(平成20年)3月以前の年金分割
    • 3号被保険者(被扶養者)でない場合の年金分割


    ②3号分割
    3号分割とは、婚姻期間中に請求者が「3号被保険者(被扶養者)」である場合に適用される年金分割です。3号分割では相手の合意が不要なので、妻(年金分割請求者)がひとりで年金事務所へ行って手続きをすることができます。
    分割割合は当然に0.5となります。

  3. (3)年金分割請求の期限

    年金分割は、離婚後2年以内に行わなくてはなりません。相手の合意を得ている、3号分割の権利を持っている、という状態だったとしても、2年が経過すると分割を受け付けてもらえなくなってしまいます。
    年金分割を受けたい場合には、早めに手続きを済ませましょう。

2、年金分割には年金情報通知書が必要!請求する方法とは?

年金分割をするときは、「情報通知書」という書面が必要です。詳しく確認していきましょう。

  1. (1)年金分割情報通知書とは

    年金分割をするには、事前に「年金分割情報通知書」を入手しなければなりません。

    年金分割情報通知書とは、年金分割に必要な情報が記載されている書類で、以下のような内容が書かれています。

    • 請求する人と請求される人
    • 年金加入期間、分割対象期間
    • 年金分割の下限


    なお、50歳以上で「老齢基礎年金」の受給資格が認められる方が年金分割情報通知書を取得する場合、受け取ることができる「老齢厚生年金の見込み額」も知らせてもらうことが可能です。

  2. (2)年金分割情報通知書が必要な理由

    年金分割情報通知書がないと「そもそも年金分割できる事案か」ということがわかりません。そのため、年金分割についての内容を含めた公正証書を作成する場合や、裁判所で調停を申し立てる場合、事前に年金分割情報通知書を取得しておく必要があります。

    なお、公正証書とは、公証役場で作成される公文書のことです。たとえば養育費の支払いとそれに伴う強制執行承諾文言を記した公正証書を作成し、相手が滞納した場合、公正証書の文面をもとに、財産の差し押さえをすることができます。

    また、先述のとおり、年金分割情報通知書には「年金分割割合の下限」が書かれています。合意分割の際には割合をどこまで下げられるのか、情報通知書を見て確認しなくてはなりません。

    合意分割のケースでも3号分割のケースでも年金分割情報通知書は必要となるため、早めに年金事務所へ申請しましょう。

  3. (3)情報通知書を請求するために必要な書類

    年金分割情報通知書は、年金事務所へ申請して発行してもらうものです。
    その際以下の書類が必要です。

    ●年金分割のための情報提供請求書
    年金事務所に書式があるので、必要事項を記入して提出しましょう。

    ●請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
    自分で用意しましょう。

    ●婚姻期間を確認できる書類
    戸籍謄本または戸籍抄本を用意しましょう。離婚によって除籍した場合は、除籍前の(元配偶者の)戸籍謄本または戸籍抄本となります。

    ●内縁関係の場合、その事実を確認できる書類
    「未届の妻(夫)」などと記載されている住民票の写しなどが必要です。

    ●第3号被保険者加入期間証明書
    3号分割する場合には3号被保険者期間を証明しなければなりません。健康保険組合などに申請して用意しましょう。

    上記の書類をそろえて年金事務所へ申請すれば、2週間程度で自宅宛てに年金分割情報通知書が郵送されてきます。
    申請に必要な書類の取得についてお困りの場合は、弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

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3、年金分割の基本的な流れ

年金分割のための基本的な手続きの流れについて、説明いたします。合意分割と3号分割で手続き方法が異なるため、それぞれ見ていきましょう。
なお、手続きにあたっては想像以上に時間が掛かることもあるため、時間のない方は弁護士に相談することがおすすめです

  1. (1)合意分割の場合

    合意分割の場合、手続きは以下のように進みます。

    ①情報通知書を入手する
    まずは年金事務所へ申請して「年金分割情報通知書」を送ってもらいましょう。

    ②話し合って合意する
    情報通知書を見て年金分割できることを確認できたら、相手と話し合いをして年金分割の合意をとりつけます。その際「分割割合」も決めなくてはなりません。
    分割割合は年金分割情報通知書に書かれている「下限」から0.5までの範囲で決めることが可能です。

    ③公正証書を作成する
    合意ができたら、公正証書を作成しましょう。
    公正証書があると、請求者が単独で年金分割の申請を進めることができます。離婚後、相手と一緒に年金事務所に行く必要がないので日程調整しやすく、ストレスが軽減されるでしょう。

    ④年金事務所で「標準報酬改定請求書」を提出する
    公正証書にしたかどうかにかかわらず、離婚後に年金事務所に行って「標準報酬改定請求書」を提出しなくてはなりません。
    公正証書があれば請求者がひとりで手続きすることが可能ですが、公正証書がない場合はふたり一緒に年金事務所へ行く必要があります。

    ⑤合意できなければ家庭裁判所で「年金分割調停」を申し立てる
    当事者同士で話し合っても合意できなければ、家庭裁判所で「年金分割調停」を申し立てましょう。調停では2名の調停委員を間に挟んで相手と話し合います。

    ⑥年金分割審判で決定される
    調停でも相手が年金分割に同意しない場合には、手続きは審判に移行します。審判では、裁判所が年金分割の方法を決定し、通常は0.5の割合による年金分割が認められます。

    ⑦年金事務所で「標準報酬改定請求書」を提出する
    年金分割の合意や審判が完了したら、年金事務所へ行って標準報酬改定請求書を提出しましょう。

    ⑧標準報酬改定通知書が届く
    その後、年金事務所から標準報酬改定通知書が届いたら、年金分割手続きの完了となります。

  2. (2)3号分割の場合

    3号分割の場合の手続きは、以下のとおりです。

    ①情報通知書を入手する
    まずは年金分割情報通知書を入手して、年金分割できるのかどうかを確認しましょう。

    ②離婚する
    離婚届を提出し、離婚します。

    ③ひとりで年金事務所へ行き、「標準報酬改定請求書」を提出する
    請求者がひとりで年金事務所へ行き、「標準報酬改定請求書」を提出します。

    ④標準報酬改定通知書が届く
    しばらくすると、年金事務所から標準報酬改定通知書が届きます。これで年金分割の手続きは完了です。

4、年金分割の調停や審判を行うときに弁護士に相談すべき理由

合意分割の場合、相手の同意がなければ年金分割ができないのが原則です。ただ家庭裁判所で「調停」や「審判」をすれば年金分割できるので、あきらめる必要はありません。

相手が合意しない場合や裁判所で調停や審判を行うことを検討している場合、弁護士に依頼しましょう。

  1. (1)合意をとりつけやすくなる

    妻が自分で夫に年金分割を請求しても、夫がかたくなに応じないケースが少なくありません。
    「拒否していればあきらめるだろう」と軽く考えていたり、妻が専業主婦の場合、会社に勤めている夫からすれば、「自分が稼いでいることで年金が支払われるのに、なぜ分割しないといけないのか」と思ったりすることもあるからでしょう。

    弁護士に依頼して弁護士が夫に年金分割を求めることで、妻の正当な権利だと理解でき、夫も真剣に受け止めてくれると期待できます。

  2. (2)調停や審判を有利に進められる

    弁護士は、年金分割調停や審判を行う場合にも役立ちます。

    調停を有利に進めるには、調停委員を説得しなければなりません。審判になったら審判官(裁判官)へ主張を行い、自分の正当性を認めてもらう必要があります。

    自分ではうまく説明できない方も、弁護士がついていれば弁護士が代わりに主張や資料提出を行うので、不利益を受ける心配がありません。有利に調停・審判を進め、適切に年金分割してもらえる可能性が高まるでしょう。

  3. (3)公正証書作成の支援

    調停や審判が不要な場合でも、公正証書を作成しておくと便利です。

    公正証書がない場合、離婚後に夫婦が年金事務所へ行って標準報酬改定請求書を提出しなければなりません。先述のとおり、公正証書があれば、請求者がひとりで年金事務所へ行って手続きをすることができます。

    また、公正証書は養育費の取り決めなど、離婚時に決めておくべきさまざまな内容を定めておく書面です。弁護士に依頼すると、公正証書の作成にあたって、必要な条項の確認や段取りまで整えられるため、年金分割だけでなく、離婚後の生活もスムーズに営めると期待できます。

  4. (4)離婚時のトラブルについてもアドバイスを受けられる

    夫婦で離婚について話し合うとき、年金分割以外の点でもめてしまうケースも少なくありません。熟年離婚では、年金分割以上に財産分与がトラブルの要因となる可能性が高くなっています。
    離婚条件でもめてしまったときにも、味方になってくれる代理人弁護士がいれば、安心感が高まります。常にアドバイスを受けていれば不利益を受けにくいですし、相手による財産隠しも防止しやすくなるでしょう。

    離婚トラブルで困ったときには、ひとりで抱え込まずに弁護士に相談することをおすすめします。

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5、まとめ

年金分割は、専業主婦(主婦)のように婚姻中に相手から扶養されていた方や、相手より収入の低かった方が、将来年金を受け取るために必要な手続きです。この先の生活に困らないよう、必ず手続きを行いましょう。

年金分割をするためには、「年金分割情報通知書」が必要です。もし書類の取得方法がわからない場合は、弁護士にアドバイスを受けることがおすすめです。

また、特に熟年離婚する場合など、年金分割や財産分与が重要なポイントとなるケースが多々あります。

離婚に伴い、適切に年金分割や財産分与を進めたいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。知見・経験豊富な離婚専門チームの弁護士が親身に寄り添いながら、最善の解決に至るようにサポートいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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