「性格の不一致」で離婚するには? 具体例や離婚方法を解説
「なんであんな言動をするのかが分からない」「こういうときはこうして欲しいのに考え方が合わない」といったように、配偶者の価値観などについて悩んだことはありませんか。日本人が「離婚したい」と考える際に、もっとも多い動機は「性格の不一致」です。
確かに、パートナーと生活習慣や基本的な考え方が合わないと、同じひとつ屋根の下で結婚生活を継続するのも難しくなるでしょう。しかし、ただ単に「性格が合わないから」というだけでは、必ず離婚できるとは限りません。
本コラムでは、性格の不一致の具体例や離婚するための手続きの流れについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
配偶者との性格の不一致が原因で離婚を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
1、性格の不一致とは? 具体例を紹介
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(1)性格の不一致とは
性格の不一致とは、価値観や生活習慣、ものの考え方や取り組み姿勢などの違いです。
不貞行為(不倫)やDV、精神的な虐待(モラハラ)、家出などの明確な離婚理由がないけれど、相手と離婚したいケース全般を意味すると考えましょう。 -
(2)離婚原因は「性格の不一致」がもっとも多い
裁判所が公表する令和4年度の「司法統計」によると、「性格の不一致」で離婚を希望する方がもっとも多くなっています。
●男性
令和4年度、男性側からの離婚調停申立総数は1万5176件でした。そのうち、「性格の不一致」によって離婚を希望する数は9127件で、他の理由と比べて圧倒的多数となっています。
●女性
一方、女性側からの離婚調停申立総数は4万1886件でした。そのうち、「性格の不一致」は1万6151件で、やはり最多となっています。
このように、日本では男女ともに「性格の不一致」によって離婚を希望する人が極めて多いのが現状です。
引用元:裁判所 司法統計
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(3)性格の不一致の具体例
性格の不一致は、ささいなすれ違いから大きな溝までいろいろな状況を含む言葉です。具体的には、以下のようなケースが該当するでしょう。
- 食事やあいさつなど、マナーについての考え方の違い
- ファッションに対する考え方の違い
- 居住場所、環境に関する考え方の違い
- 時間にルーズか、きまじめか
- 子どもの教育方針の不一致
- 政治思想の不一致
- 宗教観の違い
- アウトドア派かインドア派かなど、趣味の違い
- 仕事に対する取り組み姿勢の違い
- 結婚後、相手の性格が変わった
- 妻の稼ぎの方が多くてストレスがたまる、夫の稼ぎが少なくてストレスがたまる
- 相手が実は整形していた
上記のような性格の不一致により、離婚を決意するくらい、ストレスをためてしまう方がたくさんいます。また性格の不一致が原因で、けんかが絶えない状態となり、我慢できなくなるケースもあるでしょう。
2、性格の不一致で離婚をする方法は2種類
性格の不一致に我慢できないとき、離婚できる場合とできない場合があります。離婚できるのは、「協議離婚」と「調停離婚」の2つのケースです。
以下で、離婚手続きの種類とともにご説明します。
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(1)離婚手続きには3種類がある
日本における離婚手続きには主に「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類があります。
●協議離婚
協議離婚とは、夫婦が話し合いをして離婚する手続きです。お互いに「離婚すること」と「親権者」について合意すれば、離婚できます。方法としては離婚届を作成して、役所へ提出するだけです。
●調停離婚
調停離婚は、家庭裁判所で話し合って離婚する方法です。2人の調停委員と調停官の3名からなる調停委員会を介しながら、離婚の話を進めます。
自分たちだけでは感情的になってしまうなど、話を進めにくいケースでも、調停委員が間に入り話し合いを進めることで、合意できる可能性が高くなります。
●裁判離婚
裁判離婚は、離婚訴訟によって、裁判所に離婚を認めてもらう手続きです。自分たちだけでは合意できない場合でも、裁判所が離婚を認めた場合には、離婚が成立します。
ただし、裁判で離婚が認められるには、法定離婚事由が必要です。法定離婚事由とは、民法が定める5つの離婚原因です。そのいずれかに該当することを証明できないと、離婚訴訟を申し立てても棄却され、離婚は成立しません。
なお、離婚訴訟は、原則として調停離婚ができなかった場合の可能であることも注意しましょう。 -
(2)性格の不一致で離婚できるのは、協議離婚・調停離婚
性格の不一致で離婚できるのは、基本的に「協議離婚」と「調停離婚」の2種類と考えましょう。「性格が合わない」だけでは「法定離婚事由」にならないためです。
協議離婚や調停離婚であれば、お互いが離婚することにさえ合意すれば成立します。 -
(3)性格の不一致で離婚する流れ
●相手と話し合う
性格の不一致を理由に離婚したいなら、まずは協議離婚を目指しましょう。
協議離婚を成立させるには、相手と「離婚」について合意する必要があります。折を見て「離婚したい」と話を持ちかけ、話し合いを開始するところから始めてください。
未成年の子どもがいる場合には「親権者」も決めなければなりません。後のトラブルを避けるため、財産分与や慰謝料などの離婚条件も取り決めましょう。
●協議離婚合意書を作成し、離婚届を提出する
相手と話し合って離婚することや離婚条件について合意できたら、合意内容をまとめた協議離婚合意書を作成しましょう。
単なる合意書ではなく「公正証書」にしておくと、後々にトラブルが起こりにくくなります。合意書ができたら「離婚届」を作成し、役所へ提出すると離婚が成立します。
●合意できなければ離婚調停を申し立てる
話し合っても合意に至らない場合には、家庭裁判所で「離婚調停」を申し立てましょう。
調停では、2名の調停委員が間に入ってくれるので、相手と直接話をせずに離婚に向けての話し合いができます。
相手と顔を合わせて話をするのが苦痛なら、調停は非常に有効な対処方法になるでしょう。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
3、離婚裁判で必要な「法定離婚事由」とは
2章でお話ししたとおり、離婚裁判となった場合に裁判所に離婚を認めてもらうためには、法定離婚事由が必要です。本章では法定離婚事由とは何か、また性格の不一致がきっかけでも、裁判離婚が可能なケースについて紹介します。
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(1)裁判離婚には法定離婚事由が必要
調停でも合意できなかった場合には、離婚訴訟(裁判)で離婚を認めてもらうしかありません。ただし、そのためには「法定離婚事由」が必要です。
法定離婚事由は以下の5種類となっています。- 不貞
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復しがたい精神病
- その他婚姻関係を継続し難い重大な事由
このうち、「性格の不一致」は上記に入っていないため、単なる「性格の不一致」だけでは裁判をしても離婚が認められません。
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(2)性格の不一致を理由に裁判離婚できるケース
ただし、以下のような状況なら、性格の不一致がもともとの不仲の理由でも、離婚が裁判で認められる場合があります。
●性格の不一致がもとで別居し、長期間が経過した
そもそもの夫婦関係不和の原因が、性格の不一致であったとしても、別居して長期間が経過すると「婚姻関係の破綻」が認められる可能性が高くなります。
だいたい別居期間が5年も経過すると、裁判で離婚が認められやすくなっています。
●相手から暴力を受けている
性格が合わないという理由で、相手から暴力を受けているなら、婚姻関係の破綻が認められて離婚できます。この場合には慰謝料も請求可能です。
●相手が不倫している
性格が一致せず、相手が不倫をした場合にも裁判離婚が認められます。
●相手が家出した、生活費を払ってもらえない
性格が一致しないので相手が不満をためて家出をしたり、嫌がらせで生活費を払ってもらえなくなったりした場合にも、裁判離婚が認められやすい状況といえます。 -
(3)裁判離婚をするためには「証拠」が必要
裁判で離婚が認められるには「証拠」が必要です。別居、暴力、不倫、家出など状況に応じて立証資料を収集しましょう。
たとえば、家出されたなら、お互いのやり取りのメールが証拠となります。不倫なら、不倫相手とのLINEやメールでの会話、写真や動画、探偵の調査報告書などが立証資料となるでしょう。暴力を受けているなら、診断書やけがした部位の写真などを集めましょう。
自分ではどういった証拠を集めれば良いかわからない場合、弁護士までご相談ください。
4、弁護士に離婚を相談するメリット
性格の不一致を理由に離婚をお考えなら、弁護士に相談されることをおすすめします。
以下では、弁護士に相談した場合のメリットについて解説します。
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(1)慰謝料を請求可能か確認できる
性格の不一致による離婚のケースでは、必ずしも慰謝料請求できるとは限りません。離婚慰謝料が発生するには、相手に有責性(婚姻関係を破綻させた責任)が必要だからです。
性格が合わないから離婚したいという理由だけでは、どちらが悪いともいえないため、慰謝料を請求することは難しいでしょう。
ただし不倫された場合や暴力を受けている、生活費を払ってもらえないといった場合には慰謝料請求も可能です。
弁護士は、個別の状況をお伺いし、慰謝料が請求できるか判断できます。また、慰謝料が請求できる場合には、慰謝料の相場がいくらになるか、お伝えすることも可能です。 -
(2)裁判になっても安心
性格の不一致が理由で「離婚したい」と思っても、スムーズに相手の同意が得られるとは限りません。協議離婚も調停離婚もできないケースもあります。
その場合、離婚訴訟によって解決するしかなくなるでしょう。
離婚訴訟を提起する際には、必ず弁護士によるサポートが必要です。協議を始める前から弁護士に依頼していれば、交渉が決裂し裁判をすることになっても安心です。 -
(3)交渉代理を依頼できる
性格の合わない配偶者と、自分ひとりで交渉するのは大変なストレスになるものです。
相手のちぐはぐな対応に、いちいちイライラすることもあるでしょう。また感情的に対立すると、離婚できるものもできなくなります。
弁護士に交渉を依頼すれば、その後は自分で対応せずとも離婚協議を進められるため、ストレスを大きく軽減できます。有利な条件を設定し、スムーズに離婚を実現できる可能性も高まるでしょう。 -
(4)離婚に関するアドバイスを受けられる
離婚を決意した場合でも、親権を獲得できるのか、財産はどう分けるのか、離婚後の生活はどうすればよいのかなど、決めるべきことが山積みです。
弁護士に相談すると、離婚のさまざまなポイントについて、的確なアドバイスを受けられるので、安心です。後悔のない離婚を実現するため、専門家の力を頼りましょう。
お悩みの方はご相談ください
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5、まとめ
性格の不一致で離婚を考えたら、まずは相手との協議や離婚調停を進めましょう。
しかし、ひとりで相手と交渉しても必ずしも離婚できるとは限らず、慰謝料も請求できるケースとできないケースがあります。
弁護士は、有利に離婚するためのアドバイスをすることも、交渉や調停の対応をすることも可能です。
離婚をお考えの方は、ひとりで悩まずにベリーベスト法律事務所までご相談ください。ベリーベスト法律事務所は離婚専門チームを設けており、離婚問題の経験豊富な弁護士が親身になって、離婚に向けたサポートをいたします。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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