弁護士コラム 離婚・男女問題SOS

夫婦間の“価値観の違い” 離婚理由として認められる?

  • 離婚
  • 価値観の違い
  • 離婚
  • 理由
更新日:2022年11月01日  公開日:2022年04月15日
夫婦間の“価値観の違い” 離婚理由として認められる?

夫婦が離婚をしたいと考える理由には、さまざまなものがありますが、『価値観の違い』で離婚を考える夫婦は少なくありません。

元々は他人同士なので、多少の価値観の違いは当然にあるものといえますが、価値観の相違によって家庭生活に重大な支障を生じるような場合には、配偶者と婚姻を継続していくのが難しくなるでしょう。

今回は、価値観の違いが離婚事由と認められるのか、そして離婚を決断した場合の進め方について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、価値観の違いは離婚理由となるのか?

そもそも、価値観の違いを理由に離婚をすることができるのでしょうか。まずは、価値観の違いを理由とする離婚について、一般的な考え方を解説します。

  1. (1)お互いが同意をすれば離婚は可能

    離婚をする場合、まずは夫婦で離婚をするかどうか、どのような条件にするのかを話し合います。これを「協議離婚」といいますが、夫婦がお互いに離婚に同意することができれば、離婚理由がどのようなものであっても離婚をすることができます。

    つまり、価値観の違いが離婚理由であったとしても、夫婦がお互いに離婚に同意していれば、離婚をすることは可能です。

  2. (2)裁判では法定の離婚事由が必要

    夫婦の一方が離婚に同意してくれない場合や離婚条件に争いがある場合には、協議離婚を進めることは困難ですので、最終的に裁判によって離婚を進めることになります。
    ただし、裁判離婚は協議離婚とは異なり、『法定の離婚事由』が存在しなければ離婚は認められません

    法定の離婚事由とは、民法770条1項各号に規定されています。

    ① 不貞行為
    不貞行為とは、配偶者以外の人との間で肉体関係を持つことをいいます。一般的に『不倫』や『浮気』と呼ばれる行為が該当します。
    ただし、不貞行為とは肉体関係を持つことを指しますので、単に異性と食事やデートをしただけでは不貞行為にはあたりません。

    ② 悪意の遺棄
    悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、夫婦の同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。たとえば、生活費をいれてくれない、勝手に家を出て行ってしまい戻ってこない、理由なく同居を拒むなどが悪意の遺棄にあたります。

    ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでない
    配偶者の生死が3年以上明らかでない場合には、離婚が認められます。単なる別居や所在がわからないというだけでは生死不明にはあたりません。

    ④ 強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
    配偶者が回復の見込みのない強度の精神病にかかってしまった場合、夫婦の協力扶助義務の履行も困難になるため、離婚事由となります。
    ただし、離婚事由となるのは、あくまでも『強度の精神病』に限られます。たとえば、病院で統合失調症などの診断を受けたとしても、それだけでは離婚は認められません。

    ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
    上記の離婚事由に該当しない場合でも、総合的にみて夫婦関係を維持することが困難だと認められれば、離婚が認められます。

  3. (3)価値観の違いは離婚事由とは認められにくい

    価値観の違いは、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続が難い重大な事由」に該当すると考えるかもしれません。しかし、「その他婚姻を継続が難い重大な事由」とは、民法770条1項1号から4号までに匹敵するほどの事情があることが必要になります。

    価値観の違いは、夫婦であれば多かれ少なかれ存在することです。そのため、それだけを理由に夫婦関係を維持することが困難な事情だとはいえず、離婚事由に該当すると認めてもらうのは難しいでしょう。

2、価値観の違いが離婚事由と認められる可能性

単に価値観が違うという理由だけでは、裁判で離婚を認めてもらうのは難しいといわざるを得ませんが、具体的な問題が発生している場合には、「婚姻を継続し難い重大な理由」と認められる可能性があります

  1. (1)性に関する価値観の違い

    性に関する価値観の違いとしては、セックスの内容やモチベーションに関する価値観の違いが生じ、夫婦のどちらか一方が性交渉を拒絶している状況になっている場合などが挙げられます。

    夫婦がお互いに若く、健康で性交渉をすることに支障がないにもかかわらず、一方的に性交渉を拒絶する状況が長期間続くと、正常な夫婦関係を維持することが困難と認められます。このようなケースでは、「婚姻を継続し難い重大な理由」と認められる可能性があります。

    他方、高齢で性交渉に積極的ではなくなった場合や病気で性交渉が困難という事情がある場合には、性交渉を拒絶したとしても直ちに離婚事由とはならないと考えられます。

  2. (2)宗教的な価値観の違い

    宗教的な価値観の違いについても、深刻なものについては、「婚姻を継続し難い重大な理由」と認められる可能性があります。

    憲法でも信教の自由が保障されており、どのような宗教を信仰するかについては本人の意思に委ねられています。したがって、配偶者が特定の宗教を信仰していたとしても、それだけでは離婚事由には該当しないのが原則です。

    しかし、宗教活動にのめり込んだ結果、仕事や家事を全く行わなくなった、宗教活動に多額の資金を投入し生活に支障を及ぼしているなど、宗教活動が婚姻生活に対して重大な悪影響を与えて、正常な婚姻生活を送ることが困難な状況になった場合には、「婚姻を継続し難い重大な理由」に当たるとして、離婚が認められることがあります。

  3. (3)金銭的な価値観の違い

    単なる金銭感覚の違いには収まらず、生活費を一切渡さないなどの事情がある場合は、「悪意の遺棄」という離婚事由に該当する可能性があります。
    また、浪費やギャンブルで散財し家庭生活に支障が生じるなど、婚姻関係を継続していくことが困難と認められる問題がある場合には、「婚姻を継続し難い重大な理由」と認められる可能性があります。

  4. (4)著しい価値観の違いが生じ精神的苦痛が生じている場合

    夫婦の価値観の違いは、その内容によっては、夫婦間に深刻な対立を生む可能性がありますが、「婚姻を継続し難い重大な理由」に該当するかどうかは、総合的に判断されます。
    ひとつの事情だけでは離婚事由に該当しないような場合でも、さまざまな事情を積み上げていくことによって、婚姻関係の継続が困難な状況と認められることもあります。

3、価値観の違いにより生じる問題を緩和するための相談先

夫婦間の価値観の違いにより生じる問題は、専門的・客観的な第三者が間に入って話し合いをすることによって離婚に至らずに問題が解決する可能性もあります。

  1. (1)カウンセラー|離婚するべきか迷っているケース

    価値観の違いによって夫婦関係に亀裂が生じたとしても、離婚だけが解決手段とは限りません。夫婦といっても他人同士です。多かれ少なかれ価値観の違いが生じるのは避けて通ることはできないでしょう。そのため、お互いに歩み寄って夫婦関係の修復を目指すというのも、ひとつの方法です。

    夫婦関係を改善したい場合や、離婚するべきか迷っているような場合は、夫婦問題を専門として扱うカウンセラーに相談すると良いでしょう。冷静な第三者の立場からアドバイスをもらうことで、問題点などがクリアになり、解決の糸口がみつかる可能性があります。

  2. (2)弁護士|離婚する意志が固いケース

    離婚することに迷いがない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
    弁護士に相談をすることによって、離婚の進め方、離婚条件(親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割、面会交流など)について、具体的なアドバイスがもらえます。しっかりと準備をしたうえで離婚協議に臨むことで、スムーズに離婚が成立する可能性も高まります。

    また、価値観の違いにより夫婦間に深刻な対立が生じている場合には、当事者同士の話し合いでは感情的になってしまい、協議が停滞してしまうケースもあるでしょう。その点、弁護士に依頼をすれば相手との交渉を一任できるので、精神的なストレスも軽減できます。

    離婚問題は、トラブルになってしまうと長期化する傾向にあります。そのため、離婚を決めた段階で相談することが、重要なポイントといえます。

4、離婚を決断した場合の流れ

離婚を決断した場合、どのような流れで離婚手続きを進めることになるのでしょうか。

  1. (1)協議離婚

    離婚を決断した場合、まずは相手に離婚したい意志を伝え、離婚をするかどうかと離婚をする場合の条件などを決めていきます。
    価値観の違いは、前述したように基本的には法定離婚事由に該当しにくいので、相手が強固に離婚を拒否している場合には、離婚条件を譲歩するなどして協議離婚の成立を目指すということも必要になることがあるでしょう。

  2. (2)調停離婚

    夫婦の話し合いで離婚に合意できなかった場合は、家庭裁判所の調停手続を利用して離婚成立を目指すことになります。
    離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入り、夫婦間の紛争の解決に向けて調整をしてくれます。当事者同士が直接顔を合わせる必要はないので、冷静に話し合いを進めることができるというメリットがあります。
    ただし、調停離婚も話し合いの手続きです。夫婦の一方が離婚を拒否している場合には、調停で離婚を成立させることはできません。

  3. (3)裁判離婚

    離婚調停が不成立となった場合には、最終的に離婚訴訟を提起して、判決による離婚を目指すことになります。しかし、すでに説明したとおり、裁判で離婚をするためには民法が規定する法定の離婚事由が存在することが必要となります。
    そのため、単なる価値観の違いだけが理由の場合、裁判では離婚が認められない可能性が高いと言えます。

    参考:離婚までの流れと離婚の種類

5、まとめ

『価値観の違い』を理由に離婚することは可能です。ただし、法定離婚事由に該当すると認められる可能性は低く、裁判になってしまうと離婚ができなくなってしまう可能性が高いため、協議離婚や調停離婚で離婚成立を目指すのが望ましいと言えます

夫婦の間に、解決し難い価値観の違いがあり、離婚をしたいと考えている場合は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
離婚問題の対応実績が豊富な弁護士が、しっかりとお話に耳を傾けたうえで、最善の対応策をアドバイスします。離婚成立まで、二人三脚でサポートしますので、ぜひ安心してお任せください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

同じカテゴリのコラム(離婚)

PAGE TOP