離婚の際に決めなければならない3つのこと
離婚は、結婚したときと同様、双方の合意さえあれば、役所で手続きするだけで成立します。しかし、「ただ離婚する」だけでは、のちのち大きなトラブルに巻き込まれる原因になりかねません。
「離婚届を提出すればすぐ終わり」というわけにはいかないことも多く、話し合いがうまくまとまらず、実際に離婚が成立までに時間がかかってしまうケースは少なくありません。
そこで今回は、養育費や財産分与など離婚の際に決めなければならない項目と、離婚できるまでにかかる期間について、離婚問題に詳しい弁護士が詳しく解説いたします。
ここで紹介する内容は、離婚するためには欠かせない基礎知識です。ぜひ、話し合いに臨む前に知っておきましょう。
1、離婚の際に決めなければならない3つの項目を知っておこう
独身だったふたりがひとつの家族になる結婚とは大きく異なり、離婚は「夫婦が別れる」だけの出来事ではありません。
まずは、婚姻期間中、これまでふたりで築き上げてきた財産などを分けあわなければなりません。さらに子どもがいれば、その将来についても考えなければならないのです。その他にも決めておくべきことはあります。
これらのことを何も決めずに離婚してしまえば、のちのち経済的な面や子どものことで、頭を悩ませることになります。この項では、離婚の際、決めておかなければならないことを3つの項目に分けて解説します。
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(1)夫婦で築いてきたものを分けあう~財産分与、年金分割
最初に話し合って決めるべきことは、夫婦で築いてきたものを分けあうことです。
婚姻中は、住居や家具・家電はもちろん、預貯金や株券などは、共同で管理して使用していたことでしょう。しかし、離婚をすれば他人になりますから、共同で使い続けるわけにはいきません。そのため、離婚するときに分けあう必要があります。それが、財産分与です。
財産分与では、原則として夫婦で形成した財産を2分の1ずつ分けあうことになります。もし妻が専業主婦で直接お金を稼ぐ立場になかったとしても、財産の半分を受け取れる権利がある点を忘れてはなりません。
なぜなら、「妻が専業主婦として家事育児に専念したからこそ、夫は仕事に専念できた」とみなされるためです。
また、財産分与すべき財産の対象は、婚姻してから築いた「共有財産」に限定されます。つまり、独身時代に貯めていた預貯金や購入していた財産、夫婦のどちらかが相続した財産や資産は、財産分与の対象外となることに注意が必要です。
年金分割は、世帯主が会社に勤める労働者で厚生年金に加入している場合や公務員で共済年金(現在は厚生年金)に加入している場合において、婚姻期間中の納入済み年金額の報酬比例部分を按分して分割できる制度です。
将来の年金受取額が大きく変わってくる可能性もあるため、離婚するときには年金の支払い状況を必ず確認して、必要であれば忘れずに手続きしておきましょう。
「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与について詳しく解説しています。ぜひご参考ください。
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(2)子どもの将来を考えて決めておくべきこと~親権、養育費、面会交流
子どもがいる夫婦が離婚する場合は、子どもの生活環境にも変化が生じますから、当然、子どもの心や将来にも影響を受けることになる点に注意が必要です。そこで、子どもがいない夫婦以上に、入念な準備と話し合いが必要となります。
まず、話し合っておくべきことは、子どもの親権です。離婚後、どちらが責任を持って養育するかについて、あらかじめ決めておく必要があります。
子どもを育てるためには、子どものことをよく知っていなければなりません。どのような養育環境を作ることができるのか、経済的な面はどうするのかまで、しっかり話し合いましょう。
親権が決まったら、次に決めるのが、子どもの養育費と面会交流です。どちらも子どもが健全に育っていくためには欠かせない要素です。また、これらは親権を取れなかった親が子どもへの愛情を示せる、数少ないチャンスとなります。
どんな大人に育ってほしいのか、子どもに与えたい教育などによって、子どもの養育にかかる費用は大きく異なります。教育プランも含め、子どもの性格も加味してじっくり話し合い、養育費の額や面会交流の方法を決めておく必要があります。
たとえ離婚をしたとしても、子どもにとってはあなたたちが両親であることは変わりないのです。 -
(3)離婚原因を作った側が責任を取る~慰謝料
配偶者の行動によって被害を受け離婚を決意せざるを得なかった、というケースであれば、離婚要因を作った「有責配偶者」に対して、慰謝料の請求がでる場合があります。
具体的には、以下のようなケースで慰謝料請求が可能となる場合があります。- 配偶者の不貞行為(性行為を伴う継続的な交際が認められる場合)
- 正当な理由なく同居・協力義務を果たさない、悪意の遺棄があったケース(生活費を渡さない、専業主婦で健康なのに家事をしない、勝手に別居したなど)
- 暴力(DV)や暴言(モラハラ)などがあったケース
離婚原因を作った人が慰謝料を支払うことになり、受け取れる側の性別は関係ありません。妻だから慰謝料を受け取れる、夫だから慰謝料を支払う、というわけではないのです。
慰謝料とは、結婚生活を壊すきっかけを作った人が、それによって精神的苦痛を与えてしまった相手方に対して、賠償のために支払うお金です。
したがって、互いに問題があれば慰謝料は慰謝料同士を差し引きして支払う部分がなくなることもありますし、相手が有責ではない場合は、慰謝料の請求はできません。あなたが有責であれば、あなたが慰謝料を支払うことになります。
2、協議離婚の基礎知識
離婚の種類は主要なものは3種類あります。協議離婚と、調停離婚、裁判離婚です。
まず、日本では90%を占める協議離婚について知っておきましょう。
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(1)協議離婚とは
協議とは、簡単にいえば話し合うことですから、協議離婚とは、互いに話し合い納得した上で離婚するということになります。
離婚して他人になるだけであれば、互いに合意して離婚届けに必要事項を記入し、役所に提出すれば離婚が成立します。戸籍謄本があれば、本籍地でなくても提出できますし、郵送での手続きも可能です。その後、新たに戸籍を作る方が自ら手続きを行い、新しい生活をはじめることになります。 -
(2)協議離婚するためにかかる期間は?
協議離婚では、話し合いが整えば即日離婚することが可能ですが、長いと数年かかるケースもあります。一般的な期間だけでいえば、数か月で成立することが多いようです。協議離婚は、最も費用がかからず、手軽に行える離婚方法であるといえるでしょう。
しかし一方で、前項で説明した「離婚の際に決めなければならない3つの項目」を決めずに離婚してしまうと、経済面や子どものことで困るケースや、後々までトラブルを引きずってしまうことも少なくありません。離婚して他人になってしまうと、話し合いの場を設けるのが難しくなりがちです。
そのため、決めるべきことはすべて決めて、約束したことは離婚協議書を作成したり、場合によっては離婚協議書を公正証書にしたりと、しっかりと書類に残してから離婚届を提出してください。
協議離婚が成立するまでの期間は、話し合いがスムーズに進むかどうかにかかっています。そのためにも、財産のリストアップや親権に関する実績、慰謝料請求のための証拠集めなど、離婚の話し合いをはじめる前の下準備は重要です。これらの書類がしっかりそろっていればいるほど、冷静かつ理論的な話し合いができるためです。
離婚したい!と思い立ってもすぐに行動せず、焦らずじっくり離婚に向けた準備をすることをおすすめします。
3、調停離婚の基礎知識
日本では、離婚に至るための裁判を行う前には、必ず調停を行うという「調停前置主義」を採用しています。そのため、話し合いで離婚を決められない場合、まずは「調停離婚」を目指し、離婚調停を起こすことになります。
調停離婚は、離婚全体のおよそ9%程度とあまり多くはありませんが、最近は増加傾向にあります。
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(1)調停離婚とは?
調停離婚とは、その名のとおり、家庭裁判所が実施している「調停制度」を利用して離婚することです。
個人的な話し合いで決着がつかない場合は、まずは家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行うことになります。
離婚調停は、家庭裁判所内にある、男女1名ずつの調停委員が待つ個室で進行します。離婚したい夫婦がそれぞれひとりずつ個室に呼び出され、自分の要求とその根拠を伝えていきます。中立的立場である調停委員を介して話し合うことで、互いの妥協点を探ってゆく制度です。
調停を通じて結論が出て、離婚に至れば、調停離婚が成立し、調停調書が発行されます。調停調書と離婚届を持参し、市区町村の役場で手続きすれば、調停離婚が成立します。
なお、調停調書は、調停で決定した内容をまとめた書類で、公的な書類です。万が一、相手が決めたことを守ってくれず、強制執行を行う場面で必要となりますので、差し押さえる効力も持つので大切に保管しておきましょう。 -
(2)調停離婚が成立するまでにかかる期間は?
調停は、あなただけの都合で進行できるわけではありません。まずは調停を申し立ててから、実際に調停がスタートするまでだけでおよそ1か月かかりますし、調停が開催される頻度もひと月に1回程度です。さらに、1度の調停で話がまとまることはなくで、また、相手が調停に出席してくれないこともありえます。
調停を申し立ててから離婚が成立するまでの期間は、平均4~6か月です。場合によっては1年近くかかるケースもあります。
また、調停が開催されるのは平日の日中だけなので、調停に足を運ぶために、仕事を休まなければならないこともある点に注意が必要です。
4、裁判離婚の基礎知識
もし調停でも話し合いがまとまらなければ、いよいよ裁判となります。
裁判の前に家庭裁判所の判断で離婚の審判を下すことがあります。その審判のまま離婚が成立すれば「審判離婚」となりますが、すぐに異議申し立てを行うことができ、審判を覆せることもあり、あまり利用されていません。
ここでは、離婚全体の1%となる、裁判離婚について説明します。
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(1)裁判離婚とは?
家庭裁判所の法廷で、離婚を争った結果、離婚が成立すれば「裁判離婚」となります。
離婚裁判では、裁判官が双方の主張や証拠に基づいて判決を下します。下された判決には強制力があるため、これまで相手が応じなかった場合でも強制的に対応を求めることが可能となります。
もし相手がそもそも離婚に反対している場合、裁判の場では、民法770条に記載された「法定離婚事由」と呼ばれる、離婚原因の有無がまず問われます。
- 配偶者の不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者が3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある
これらの法定離婚事由がなければ裁判上は離婚が認められません。
裁判で離婚の判決が下れば、判決謄本と、判決確定証明書をもらえます。これら2点の書類と離婚届を、市区町村の役場に提出することで、裁判離婚が成立します。 -
(2)調停裁判離婚が成立するまでにかかる期間は?
まず大前提として、離婚調停が不成立とならなければ、離婚に関する裁判を起こすことができません。そのため、期間を計算するときには、調停までに話し合った時間や、離婚調停に対応した期間も加算すべきです。
ここまでで1年近くかかっていたケースは少なくなく、さらに裁判期間が追加されるわけです。
その上で、「訴状」と呼ばれる専門的な書類や証拠などを家庭裁判所に提出する必要があります。提出書類の作成には専門家の知識が不可欠となりますので、弁護士に依頼しましょう。
訴状を提出してから1か月程度で最初の裁判が行われます。以降は調停同様、ひと月に1回程度のペースで進んでいきます。調停では互いの合意が必要でしたが、裁判では裁判官による判決により離婚が成立します。
裁判がスタートしてから離婚が成立するまでは、およそ1年程度と考えておいた方がよいでしょう。ただし、訴訟が長引き、離婚裁判が最高裁判所まで進んでしまえば、2年以上かかることもありえます。
長期間相手と争うわけですから、ある程度以上の覚悟が必要となるかもしれません。
5、離婚にまつわるあれこれを弁護士に依頼するメリット・デメリット
前述したとおり、離婚に向けた話し合いや決めごとは、当事者同士だけでは結論が出にくく、さらにこじれてしまうと長期化してしまう傾向があります。
子どもが小さいうちに離婚しようと考えていたとしても、結果、乳児だった子どもが小学生になっていた、ということも、じゅうぶんありえるのです。
できるだけスムーズに話し合いを行い、法律的な手続きを確実に行いたいと考えるのであれば、弁護士に依頼することを検討してみてください。
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(1)弁護士に依頼するメリット
弁護士を依頼するメリットは多々あります。その代表的なものが以下の3点です。
- 法律の専門家である
- 専門家の立場で冷静な対処ができる
- あなたの代わりとなって交渉できる
多くの方にとって、離婚は初めての経験でしょう。しかし、弁護士は、言うまでもなく法律の専門家です。公的な書類の作成もできますし、法律に基づいた説明も行えます。また、離婚したい夫婦の親族や当事者ではないため、冷静な立場で話し合いの場に立ち会えます。堂々巡りとなりやすい口論を避け、論点を絞った協議が可能となります。
スムーズにかつ有利に離婚したいなら、弁護士に依頼しましょう。 -
(2)弁護士に依頼するデメリット
なによりも大きなデメリットは、弁護士費用がかかることでしょう。ただ、弁護士費用は立て替えてもらって分割払いできる制度もありますし、法律相談だけであればさほど費用はかかりません。法律のことを知っているのと知らないのとでは、離婚交渉も大きな差が出ます。迷うことやわからないことがあったら、まずは法律相談を利用してみてください。
弁護士を間に入れると角が立つと敬遠する方もおられるようです。しかし、弁護士が代理人として交渉したほうが、相手も真剣に対応するようになり、話し合いがスムーズに進むこともあります。調停や裁判に至る前の早いタイミングで弁護士に相談される方が、結果的に多くのメリットを得られることもあります。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
6、まとめ
今回は、離婚する際の基礎知識でもある、「離婚時に決めておかねばならないこと」と、離婚の種類ごとにかかる期間の目安などについてお送りしました。
離婚するまでに決めておくべき事項は、同時に、話し合いの際にもめてしまいがちな事項でもあります。話し合いが長期化すればするほど、事態が泥沼化することが多く、心身だけでなく、金銭的にも疲弊していくケースがほとんどです。泥沼化や裁判を避けたい、少しでも早く話をまとめて離婚したいのであれば、弁護士に依頼することをおすすめします。まずは離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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