再婚を理由に面会交流の条件を変更することは可能?
再婚をきっかけに子どもと元配偶者との関係に変化が生じることがあります。また、今後、再婚相手との間で家庭生活を送るにあたって、離婚時に取り決めた面会交流の条件では不都合が生じることもあります。
このような場合には、一度取り決めた面会交流の条件を変更することができるのでしょうか。また、再婚をする際には、面会交流以外にどのような点に注意する必要があるのでしょうか。
今回は、再婚を理由に面会交流の条件を変更することができるのか、また、再婚と養育費との関係などについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、再婚後も元夫・妻と子どもを面会交流させる必要はあるのか
再婚をした場合には、元配偶者と子どものとの面会交流はどのようになるのでしょうか。以下では、再婚後の面会交流のポイントについて説明します。
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(1)再婚を理由に面会交流を中止することはできない
再婚によって、たとえ子どもと再婚相手が養子縁組をしたとしても、再婚を理由に元配偶者との面会交流をとりやめることはできません。
子どもとの面会交流権は、親であることに基づく権利です。再婚相手と子どもが養子縁組をしたとしても、子どもの実の親であることは変わりませんので、親として有する面会交流の権利がなくなることはありません。
また、面会交流で最も重視しなければならないと考えられているのは、親の考えや都合ではなく子どもの福祉という観点です。再婚後も実親と面会することは、離婚による喪失感を軽減して、親からの愛情を感じることができるなど子どもの健全な成長のために不可欠なものです。
したがって、再婚をしたとしても、子どもの福祉の観点からは、基本的には、元配偶者(子の実の親)との面会交流が継続して実施されるのが望ましいといえます。
もっとも、子の福祉が最も重視されることから、再婚後の面会交流によって子どもに与えられる影響によっては、面会交流を中止・制限すべき場合もありますが、その場合も一方的に中止・制限できるわけではなく、話し合いや調停などで、条件や頻度など新たな条件について合意をするか判断してもらう必要があります。 -
(2)面会交流を制限した場合のリスク
面会交流を正当な理由なく禁止または制限した場合には、以下のようなリスクがあります。
① 履行勧告
家庭裁判所の調停や審判によって面会交流の取り決めがなされた場合において、その取り決めが守られなかった場合には、裁判所から取り決めを守るように説得を受けたり、勧告されたりすることがあります。これを「履行勧告」といいます。
履行勧告は、裁判所から電話や書面などによって行われますが、強制力はありません。
② 間接強制
間接強制とは、強制執行の一種であり、債務を履行しない義務者に対して間接強制金の支払いを命じることによって、心理的プレッシャーを与え自発的な債務の履行を促す手段です。
面会交流については、裁判所が直接子どもを連れてきて面会を実現するという方法をとることができませんので、このような間接的な方法がとられています。
間接強制金としては、1回の不履行について数万円程度の支払いが命じられることになりますが、面会交流の不実施が長期に及ぶ場合には間接強制金も高額になるため、任意の履行が期待できると考えられています。
③ 慰謝料請求
面会交流を正当な理由なく拒否していると、非監護親から監護親や再婚相手に対して慰謝料を請求される可能性もあります。
裁判例でも、面会交流を妨げた監護者および監護親の再婚相手による共同不法行為の成立を認めて、監護親に対して70万円(うち30万円部分について再婚相手と連帯して)、再婚相手に対して30万円(全額について監護親と連帯して)の支払いを命じたものがあります(熊本地裁平成28年12月27日判決)。
ただし、すべての事案で慰謝料の請求が可能というわけではなく、不法行為の成立が認められるのは、違法性の高い悪質な事案に限定されるといえます。
2、面会交流の条件を変更できるケース
再婚や再婚相手との養子縁組のみを理由として面会交流を中止することは原則としてできませんが、場合によっては、面会交流の条件を変更することができることもあります。
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(1)事情変更があった場合には面会交流の条件を変更できる
一般論として、話し合いや調停、審判などで面会交流の取り決めをしたとしても、子どもの成長や状況の変化によって当初取り決めた面会交流の条件では適切な面会交流を実施できなくなることがあります。
このように面会交流の取り決め後の事情の変更(子どもの年齢、状況などに相当変化があった場合など)によって当初の面会交流の条件が不相当なものとなった場合には、面会交流の条件を変更することができます。
事情変更にあたるものとしては、以下のものが挙げられます。
① 子どもが連れ去られるおそれがある場合
面会交流中に子どもが連れ去られるおそれが生じた場合や、実際に連れ去ったという場合には、面会交流を継続することが子どもの生活環境が大きく変更して子どもの福祉に反する(可能性のある)ものと言えます。
そのため、このような場合には、面会交流自体を制限することや、面会交流の条件として第三者の立ち会いを必要とする、面会場所を限定するなどの内容に変更することができる可能性があります。
② 子どもが面会交流を拒絶している場合
子どもが成長するにつれて、徐々に親との面会に消極的になっていき、子ども自身が面会交流を拒否するようになることがあります。面会交流は、子どもの福祉を重視して行われるものですので、子ども自身が面会交流を拒否している場合には、事情の変更にあたり、面会交流の条件を変更する理由になりえます。
ただし、子どもが面会交流を拒否していたとしても表面的な言動で判断するのではなく、「なぜ面会交流を拒否しているのか」といった背景事情も踏まえて慎重に判断する必要があります。子どもの真意をくみ取ったうえで、子どもの負担を軽減することができる面会交流の条件を検討することが大切です。
③ 監護親・非監護親の一方または双方が再婚した場合
監護親・非監護親の一方または双方が再婚をしたという事情は、直ちに面会交流の条件を変更すべき「事情の変更」にはあたりません。
しかし、父母の再婚は、子どもに対して少なからず動揺を与えるものですので、再婚家庭における子どもの心身の安定などに配慮が必要になることもあります。当初の条件のまま再婚後の面会交流を実施すると新たな家庭環境での子どもの安定を阻害するなどの事情がある場合には、事情変更にあたるとして面会交流の条件を変更すべきと考えられることもあります。 -
(2)面会交流の条件の変更方法
面会交流の条件を変更する場合には、まずは、当事者同士で話し合いをして決めるという方法があります。当初の取り決めが家庭裁判所の調停や審判によるものであったとしても、当事者同士の話し合いによって変更することが可能です。
当事者同士の話し合いでは合意できない場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てます。
面会交流調停では、男女2名の調停委員が当事者双方から事情を聞き、子どもの状況なども踏まえながら合意の形成を目指した話し合いが進められます。調停でも話し合いがまとまらなかった場合には、調停は不成立となり、自動的に審判手続きが開始されます。
審判手続きでは、裁判官が一切の事情を考慮したうえで、審判によって適切な面会交流の条件を決めることになります。
3、再婚時の注意点|養育費の条件が変わることもある
面会交流の頻度や条件を変更すると、養育費の支払いが減らされたり、ゼロにされたりするのではないかと不安に思う方もいるかもしれません。
面会交流の条件が悪くなったことを理由に養育費を払い渋る方はいますが、法的には、面会交流の頻度や条件と養育費の額は連動しません。そのため、面会交流の条件変更は養育費の額の変更とセットではありません。
ただし、親権者の再婚後、子どもが置かれる状況によって、非監護親が支払うべき養育費の額が変わることもあるため、注意が必要です。以下で詳しく見ていきましょう。
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(1)再婚相手と子どもが養子縁組をした場合
再婚相手と子どもが養子縁組をした場合には、再婚相手と子どもとの間に法的な親子関係が生じ、再婚相手には子どもに対する扶養義務が生じます。他方、再婚相手と子どもとの養子縁組がなされても実親と子どもとの間の親子関係は消滅しませんので、実親も子どもに対して扶養義務を負っています。
このように子どもに対する扶養義務は、再婚相手と実親の双方が負っていますが、実際に生活を共にしている再婚相手が第一次的な扶養義務を負うと考えられています。
そのため、再婚相手と子どもが養子縁組をしたケースでは、非監護親から養育費の減額や免除を求められる可能性があり、再婚相手の収入によっては、養育費の減額または免除が認められる可能性があります。
ただし、話し合いや調停で減額や免除について合意するか、審判で減額や合意について判断されるまでは、当初の取決め額を支払うよう求めることができます。 -
(2)再婚相手と子どもが養子縁組をしていない場合
再婚相手と子どもが養子縁組をしていない場合には、再婚相手と子どもとの間には、法律上の親子関係は生じませんので、再婚相手は子どもを扶養する義務はありません。
そのため、養子縁組をしていない場合には、原則として非監護親が支払うべき養育費の額は減額・免除されません。
しかしながら、養子縁組はしていないものの、実際には子どもが再婚相手の収入によって生活しているということもあるでしょう。
養子縁組をしていなくても、再婚相手から多額の援助を得られているような場合には、非監護親からの養育費の減額請求が認められる可能性はあります。
4、再婚後の面会交流については弁護士に相談しよう
再婚後の面会交流についてお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)適切な面会交流の条件を取り決めることができる
再婚をきっかけとして面会交流の条件について見直す方も少なくありません。面会交流の条件を見直すにあたっては、将来予想できるトラブルを回避するために必要十分な内容にしておかなければなりません。そのためには、法的知識や経験のある弁護士のサポートが必要不可欠です。
弁護士がいることによって、決めるべき内容に抜け漏れがなくなり、法的にも妥当な条件で面会交流を実施することが可能になります。 -
(2)代理人として、相手と交渉してもらうことが可能
再婚後の面会交流の条件を変更するためには、まずは当事者同士が話し合って決める必要があります。しかし、離婚をした元夫婦が直接話し合いをすると、お互いに感情的になるなどして冷静な話し合いができないことが多くあります。また、離婚理由によっては、相手と顔を合わせることも嫌だという方もいるかもしれません。
弁護士であれば、代理人として相手と交渉を行うことができますので、相手と交渉をしなければならないという負担を軽減することができます。弁護士が交渉をすることによって、適切な条件で話し合いを進めることも可能となりますので、安心してお任せください。
5、まとめ
面会交流は子どもの感情にも配慮し、慎重な対応が求められます。ただ、再婚という節目で再婚相手との関係を築いていくために交流のルールを見直す必要などが生じることもあります。その場合でも、親の事情だけでなく子どもの福祉という観点も踏まえたうえで、面会交流の条件を話し合っていくことが大切です。
面会交流についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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