離婚前に別居はしたほうがいい? 別居のメリット・デメリットを解説
夫婦関係が悪化し、配偶者との離婚を検討する段階では「相手の顔も見たくない」「早く別居したい」と考える方も少なくないと思います。
しかし、離婚前の段階で衝動的に別居してしまうのは危険です。
離婚前の別居には、メリットとデメリットの両面がありますので、よく考えたうえで、かつ事前に準備を整えたうえで別居を決断してください。
この記事では、離婚前に別居することのメリット・デメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、離婚前に別居することのデメリット
険悪になった配偶者と顔を合わせるのは苦痛に感じる方もいらっしゃるでしょうが、離婚前に別居することには、以下のようなデメリットも存在します。
唐突に家を出て行ってしまうと後悔する可能性もあるので、デメリットを把握したうえで十分な検討と準備を行ってから別居を決断してください。
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(1)同居義務違反・悪意の遺棄に当たる可能性あり
夫婦には互いに同居義務が課されており(民法第752条)、勝手に家を出て行って別居する行為は、場合によっては法定離婚事由の一つである「悪意の遺棄」(民法第770条第1項第2号)に該当するおそれがあります。別居に正当な理由がない場合や、別居後に婚姻費用を支払わない場合に「悪意の遺棄」と判断される可能性があります。
無断別居が悪意の遺棄であると認定されてしまうと、別居した側からの離婚請求は、非常に認められにくくなってしまいます。
この場合、別居した側は「有責配偶者」に該当し、離婚請求が認められる要件が厳格化するためです(最高裁昭和62年9月2日判決等参照)。
また、別居が悪意の遺棄に該当する場合、配偶者から慰謝料を請求されることもあります。
このように、正当な理由がないにもかかわらず配偶者に無断で別居を開始し、その後に支払うべき婚姻費用を支払わないでいるとうと、離婚に関する争いにおいて不利になってしまう可能性があるので、十分注意が必要です。
DVを受けている場合など配偶者から離れる必要がある場合には、無断で別居しても「悪意の遺棄」には当たりませんのでご安心ください。 -
(2)収入が減って生活が苦しくなる
共働きの場合や、ご自身が専業主婦(主夫)の場合には、配偶者と別居することによって生活費の減少が想定されます。生活水準を大きく落とすことになる可能性もありますので、別居する際にはその覚悟が必要となるでしょう。
なお、離婚前の別居期間については、配偶者との間で婚姻費用を分担することになります(民法第760条)。ご自身の方が配偶者よりも収入が少ない場合や、ご自身が子どもと同居する場合には、配偶者に対して婚姻費用の支払いを請求できますので覚えておきましょう。
配偶者と話し合っても支払ってくれない場合には、調停を申し立てて請求することができます。関連記事
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(3)夫婦関係を改善するチャンスがなくなってしまう
離婚前に別居した場合、夫婦で話し合いを行い、関係を改善する機会を放棄することになります。
そのため、よほど離婚を固く決意しており、その意思が揺らぐことはないと確信できる場合でなければ、別居することは考え直した方がよいかもしれません。
2、離婚前に別居することにはメリットもある
これまで述べたようなデメリット・リスクはあるものの、離婚が決定的になっているような状況では、離婚前に別居することのメリットもあります。
特に、精神的に追い詰められている場合には、早い段階で離婚前の別居を検討してみてもよいかもしれません。
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(1)精神的に落ち着きを取り戻すことができる
険悪になった配偶者と同居していると、精神的に大きなストレスがかかってしまいます。
感情的な言い争いも絶えず、離婚について冷静に考える機会も持ちづらいでしょう。
配偶者と別居をすれば、いったん精神的な落ち着きを取り戻し、今後の離婚の進め方についてじっくりと考える機会を得ることができます。
別居している間に、弁護士に相談するなどして、離婚協議等に向けた準備を整えておきましょう。 -
(2)DVやモラハラから逃げることができる
配偶者によるDVやモラハラの被害に遭っている場合には、できるだけ早く別居することをおすすめいたします。
DVやモラハラを行う配偶者に対しては、言葉での説得は通用しないケースがほとんどですので、とにかく逃げるのが先決です。
別居してご自身の身を守り、それから離婚請求や慰謝料請求などを検討しましょう。 -
(3)長期間の別居により、離婚が認められやすくなる
相手が離婚を拒否しており、かつ不貞行為などの法定離婚事由がない場合には、とりあえず別居の事実を作ってしまう方法に出ることも考えられます。
相手が離婚を拒否している場合には、最終的には離婚訴訟を行う必要がありますが、そこで離婚が認められるためには民法770条第1項に定められている法定離婚事由がなければなりません。
不貞や悪意の遺棄など明確な原因がなくても、別居が長期間にわたると、同項第5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められるようになります。
したがって、性格の不一致から離婚したいと考えている場合など法定離婚事由がない場合に離婚するためには、別居を開始して継続していけばよいということです。
別居の継続が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると判断されるには、通常3~5年程度の別居の継続が必要ですが、離婚を請求する側が有責配偶者の場合には十数年の期間が必要であると判断されたものもあります。
そのため、婚姻を継続した状態での別居が長期間にわたることを覚悟しなければなりません。
3、離婚前の別居は弁護士に相談を|弁護士ができるサポート内容
離婚前に別居することのメリット・デメリットを適切に比較して、最良の判断を行うことは、当事者であるからこそなかなか難しい部分があります。
弁護士にご相談いただければ、別居前後で離婚に関するさまざまなサポートを受けることができますので、判断に迷った際にはぜひ弁護士へご相談ください。
離婚前に別居する方に向けて、弁護士ができる主なサポートの内容は、以下のとおりです。
なお、精神的な面でのケアが必要な場合には、離婚カウンセラーへの相談も有効ですので、弁護士への相談と併せてご利用ください。
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(1)代理人として、相手と代わりに話し合いをする
配偶者と別居した後は、離婚に向けた話し合いをする必要があります。
しかし、険悪な状態で別居に至っている配偶者と直接話し合いをすることは、精神的に大きなストレスになるでしょう。
弁護士に依頼すると、配偶者との離婚の話し合いを任せることができます。
ご自身で直接話し合いをする必要がないので、精神的なご負担を大きく軽減できます。 -
(2)適正な離婚条件を求めて交渉を進められる
離婚協議では、財産分与・慰謝料・年金分割・婚姻費用・親権・養育費・面会交流など、さまざまな離婚条件について交渉を行う必要があります。
弁護士にご依頼いただければ、裁判例等を踏まえつつ、各離婚条件につき、適正な内容にて配偶者に請求を行うことが可能です。 -
(3)証拠収集についてアドバイスを受けられる
財産分与・婚姻費用・養育費などを請求する際には、相手の収入を把握する必要があります。
また、相手が離婚を拒否している場合には、不貞行為等の法定離婚事由(民法第770条第1項)に関する証拠を集めなければなりません。
弁護士は、これらの情報収集・証拠集めに関しても知識と経験を有していますので、ご状況に合わせて適切な対応策をアドバイスできます。
4、離婚前に別居をする際、事前に準備すべきこと
離婚に向けて、いざ別居を決断したら、今後の生活や離婚協議などにおいて不利益を被らないように、以下の準備を整えておきましょう。
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(1)収入と住居の目処を付けておく
別居後は、配偶者とは家計が別になりますので、生活費と住居の目処を付けておくことが大切です。
収入面では、専業主婦(主夫)の方は仕事を見つける、パートなどで収入が少ない方は、正社員としての就業先や副業収入を模索するなどの対応が必要になるでしょう。
また、可能であれば配偶者との間で話し合いを行い、婚姻費用として毎月一定額を支払ってもらう約束を取り付けましょう。話し合いでうまくいかなければ、別居後に婚姻費用分担請求調停を申し立てます。
住居については、多少不便になったとしても、極力家賃を抑えて資金に余裕を持たせることをおすすめいたします。
転居先によっては、子どもの転校が必要になる場合もありますので、スムーズに転校の手続きを進めるため、早めに必要書類などを集めておくとよいでしょう。 -
(2)離婚協議などで使う証拠を集めておく
家を出て別居した後では、配偶者が住んでいる家の中で、離婚協議などで使う証拠を収集することは困難になります。
財産分与や養育費の話し合いに備えて、預金通帳や源泉徴収票など資産や収入に関する資料を探しておき、別居する前にコピーをとっておきましょう。
5、まとめ
離婚前に別居することには、メリットとデメリットの両面が存在します。
本当に別居した方がよいのか、別居する際の注意事項は何かといった点については、弁護士にご相談いただくことで、客観的・専門的な視点からアドバイスを受けられます。
そのため、もし判断に迷う部分があった場合には、早めに弁護士へご相談いただくのがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、配偶者との離婚を検討している方のために、離婚協議などの代理や、その他離婚を目指すにあたってのアドバイスを随時承っております。
離婚事件に関する経験豊富な弁護士が、依頼者のご希望やご状況に合わせて、円滑に離婚を実現するため親身になってサポートいたします。
配偶者と一日も早く別居・離婚したいとお考えの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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