子連れ離婚を決意したら? やることリストで手順をチェック
子連れで離婚をする場合には、決めておくべき離婚条件が多岐にわたるほか、たくさんの準備や手続きが必要になります。
子連れでの離婚後の生活が困窮しないように、「やることリスト」を作成して、漏れなく準備や対応を進めるようにしましょう。
本記事では、子連れ離婚を決意した場合にやるべきことや手続きの内容について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、子連れ離婚を決意したらやるべきことは?
子連れ離婚を決意した場合には、離婚の方法や流れについて調べたうえで、離婚に向けてやるべきことを整理して、リスト化するようにしましょう。
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(1)まずは離婚の方法や流れを知る
離婚の種類は、主に「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つです。
① 協議離婚
夫婦間の話し合いにより離婚条件を決定し、双方の合意に基づいて離婚を成立させる方法です。
② 調停離婚
家庭裁判所で行われる調停手続きのなかで、調停委員の仲介を受けながら、離婚条件について話し合い、合意して(調停成立)、離婚を成立させる方法です。
③ 裁判離婚
裁判所の判決により、強制的に離婚を成立させる方法です。
夫婦双方の合意があれば成立する協議離婚・調停離婚とは異なり、裁判離婚が成立するためには、法定離婚事由(民法第770条第1項各号)が存在することが必要となります。 -
(2)子連れ離婚に向けてやるべきことのリスト
離婚をする際には、やるべきことのリストを事前に作成しておけば、離婚に向けて必要な手続きや準備に抜けや漏れが生じるのを予防しやすくなります。
以下に、やるべきことのリストの一例を掲載しております。
ご自身やお子さまが置かれている状況に合わせて、適宜必要と思われる対応を追加しながら、リストをご活用ください。<子連れ離婚のやることリスト>
① 子どもと暮らすための準備- 新しい住居を確保する
- 転校先を決めて手続きを行う
- 親権を獲得する
- 面会交流の方法を取り決める
② お金の不安を減らすための準備- 仕事を確保する
- 配偶者に婚姻費用を請求し、支払いを受ける
- 配偶者に養育費を請求し、支払いを受ける
- 配偶者から財産分与を受ける
- 配偶者から慰謝料の支払いを受ける
- 年金分割の手続きを行う
2、子連れ離婚でやるべきことの具体的な手順
子連れで離婚をする場合には、離婚条件についての協議と合わせて、生活資金を確保することが重要な課題になります。
子連れ離婚でやるべきことについて、おおまかな内容について順番に解説します。
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(1)別居する場合は住居や収入源の確保が先決
離婚前に配偶者と別居する場合には、当面の生活を支えるための住居や収入源を確保することが最優先となります。
住居については、実家に戻れるようであれば一時的に実家に戻るという方も多いです。そこで生活しながら賃貸物件を探します。最初から賃貸物件を探す場合は、別居後の収入を考えて適切な賃料をよく検討しましょう。
また、これまで家族で持ち家に住んでおり、子どもと一緒にそのまま住み続けたいと希望する方もいらっしゃるかと思います。財産分与の際に家を手放すことになる可能性もありますので、その点は考えておきましょう。
収入については、これまで専業主婦(主夫)だった方は、仕事を探す必要があります。
また、パート収入があるものの不十分だという場合にも、正社員としての転職や、副業により収入の増加を目指す必要があるでしょう。
ひとり親への行政による支援もありますので、不安な場合は市区町村役場に事前に相談されることをおすすめします。
なお、配偶者とすぐに別居しない場合には、住居や収入源を直ちに確保する必要はなくなります。
しかし、今後の協議の展開次第では、まずは別居するという結論になる可能性もあるでしょう。そのため、別居することが決定していない場合でも、準備や心構えをしておくことが大切です。 -
(2)離婚条件について配偶者と話し合う
子連れ離婚をする際には、次のような項目について配偶者と取り決めをします。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
もし離婚前に別居する場合、生活費を確保するために、上記に加えて「婚姻費用」についても話し合っておきましょう。話し合いでは合意できない場合には、すぐに調停を申し立てましょう
婚姻費用とは、夫婦双方が収入等に応じて分担する、婚姻期間中の生活費のことです。原則として、収入の少ない側や子どもと同居する側が、相手に対して請求できます。
婚姻費用についての合意ができていれば、別居中の生活への不安が小さくなるでしょう。
それ以外の項目については、離婚協議を進めるなかで徐々に決めていきましょう。
そのなかでも、特に養育費については、離婚後の生活を見据えて十分な金額を請求することが大切です。
また、もし相手が支払いを滞らせた場合に備えて、離婚条件について記載した離婚公正証書を作成し、そこに「強制執行認諾文言」を記載しておきましょう。
強制執行認諾文言とは、債務不履行が発生した場合に、直ちに強制執行に服する旨の債務者の陳述を記載した文言です(民事執行法第22条第5号)。これを作成しておくことによって、相手が支払いを滞らせた時に、新たに裁判手続きをすることなく、直ちに強制執行をすることができます。 -
(3)子どもの名字(姓、氏)について考えておく
離婚をすると、戸籍の筆頭者ではない側が戸籍から抜けることになります。戸籍から抜けた側は、新たに戸籍をつくるか、親の戸籍に戻るかを選択しなければいけません。子どもと自分の戸籍を同じにしたい場合には、親の戸籍には戻ることはできません。新しい戸籍を作成しましょう。
また、離婚の際には、原則として旧姓に戻ることになりますが、離婚から3か月以内に市区町村役場に婚氏続称届を提出することで、婚姻中の名字を引き続き使用することができます。
このとき、注意しなければいけないのが、子どもの名字と戸籍の関係です。何も手続きをしなければ、子どもは婚姻時の戸籍に残ります。また、名字も婚姻時のままです。たとえ、親権があったとしても、自動的に親権者の戸籍に入ったり、名字が変わったりすることはありません。
子どもと同じ戸籍にするためには、まず、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立て、子どもの名字を変えます。そのうえで、市区町村役場に入籍届を提出して自分の戸籍に子どもを入れます。
3、子連れ離婚に当たり必要な手続きのリスト
離婚に伴って、配偶者とは世帯が分かれることになるため、役所でのさまざまな手続きが必要になります。
また、転居を伴う場合には住民票の異動届や転校等の手続きも必要になります。名字を婚姻前のものとする場合にも、その手続きを行わなければなりません。
以下に、子連れ離婚の際に必要となる各種手続きについてリストにまとめました。リストを活用しながら、漏れのないように手続きを進めていきましょう。
なお、各手続きの詳細については、自治体や取扱機関にご確認ください。
① 必ず行わなければならない手続き
- 離婚届の提出
② 転居する場合に必要となる手続き
- 住民票の異動届
- 印鑑登録の廃止、新規登録
- 各種登録情報の変更(免許証・パスポート・預貯金口座・保険など)
③ 社会保険に関連する手続き
- 国民健康保険や職場の健康保険への新規加入
④ 名字(氏)に関連する手続き
- 婚姻中の名字を引き続き使用する場合には、婚氏続称届の提出
- 子どもについて、家庭裁判所に対する氏の変更申し立て
- 婚姻前の名字とする場合には、各種登録情報の変更(免許証・パスポート・預貯金口座・保険など)
⑤ 財産分与に関する手続き
- 車や不動産の名義変更(スムーズに手続きを進めるため、財産分与の方法を公正証書で取り決めておきましょう)
⑥ 金銭的な援助に関する手続き
- 児童手当
- 児童扶養手当
- ひとり親家庭等医療費助成
- こども医療費助成
- 児童育成手当
- 就学援助
- 各種税金の免除、猶予申請
4、子連れ離婚について弁護士に相談するメリットとタイミング
子連れ離婚には、煩雑な手続きが必要となり、決めておくべき離婚条件も多岐にわたります。
そのため、子連れ離婚をする際には、事前から弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)子連れ離婚を弁護士に相談する主なメリット
弁護士であれば、子連れ離婚を検討されている方の具体的な状況に合わせて、やるべきことを整理することができます。
また、離婚協議においても、相場をふまえながら交渉を行うことができます。そのため、理不尽な離婚条件を押し付けられることを予防できるのです。
弁護士は相手方との交渉を代行することができますので、配偶者との関係が険悪な場合、DVやモラハラの被害に遭っている場合などにも安心して協議を進められます。
もし離婚協議がまとまらず、調停や裁判に発展したとしても、法律の専門家である弁護士なら適切な対応ができます。 -
(2)子連れ離婚は協議段階から弁護士に相談するのがおすすめ
子連れ離婚をご検討中の場合、離婚協議の段階から弁護士にご依頼いただくことをおすすめいたします。
離婚協議では、夫婦双方の間で感情的な言い争いになってしまうことが多々あります。
法的な論点を整理しないままに離婚協議を行うと、議論が空回りして、いたずらに時間だけが過ぎてしまう可能性が高いのです。
離婚協議の段階から弁護士に依頼すれば、決めておくべきことや意見が食い違っているポイントを整理しながら、協議を進めることができます。
順番に論点を解消していくことで、着実に離婚条件の妥結へと近づくことができるのです。
弁護士がサポートすることで、調停や訴訟に発展することなく、協議で離婚条件をまとめていくこともできます。
ご自身が納得できる条件で、円滑に子連れ離婚を成立させるためには、ぜひ弁護士へのご依頼をご検討ください。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
5、まとめ
子連れ離婚をする際には、決めておくべき離婚条件や必要な手続き・離婚準備が多岐にわたります。
そのため、やることリストを作成して、漏れのないように対応を進めましょう。
ベリーベスト法律事務所では、離婚に関するご相談を随時お受けしております。
子連れでの離婚をする方が、少しでも余裕を持って今後の生活を送っていただけるように、弁護士が誠心誠意サポートいたします。
離婚をご検討中の方は、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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