離婚前後に受けられる公的支援とは

離婚したくても、経済的な面ではもちろん、物理的・精神的に生活していくことが難しいと考えていませんか? 特に子どもがいる方、DVなどを受けている方はそう思われるかもしれません。

お悩みの場合は、まずお住まいの市区町村のサイトをチェックすることや、役所で相談してみることをおすすめします。行政では、金銭的な部分だけでなく、住居や法律、精神面への支援も行っています。

安心して離婚に向けた行動を起こすためにも、あらかじめ離婚前後に、どのような支援を受けられるのかを知っておきましょう。

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公的支援を申し込む前に気をつけるべきこと

公的支援は、国民の生活を助けるためのものですが、どのような条件下においても受けられるという性質のものではありません。私たちの財布の中身に限りがあるように、自治体の財力やマンパワーにも限りがあるためです。
まずは、次のような制約があることをあらかじめ知っておきましょう。

支援内容はお住まいの市区町村などによって異なる

国が実施している公的支援であれば、どこに住んでいても受けられますが、市区町村が主体となり実施している支援は、自治体によっては受けられないことがあります。そのため、お住まいの市区町村で受けられる支援を、あらかじめ確認しておきましょう。
新天地で再スタートを切るのであれば、支援が充実している市区町村に引っ越しをするのも一案です。

多くの公的支援は自ら申し込む必要がある

何もせず自動的に受けられる支援は、ほとんどありません。離婚届の提出時や住民票を移したときなど、役所の方が案内をしてくれる支援もありますが、なかには申込期限が限られていたり、自ら申し出なければ受けられなかったりする支援もあります。知らないということで損をしないよう、自らアンテナを張り、情報をキャッチできるよう準備しておく必要があります。

ほとんどの支援で即日対応は難しい

経済的支援は、数ヶ月に1度など支払日が決まっていることが多いです。
また、子どもの学校に関する支援の場合は、金銭の支給という形ではなく、必要な金額を自治体が直接学校に支払うという支給方法もあります。つまり、すぐにお金を貸してくれる、出してくれるというわけではありません。
ある程度の下調べと計画性が必要になるだけではなく、最低限、現金の準備はしておいた方が安心です。

ほとんどの経済的支援で所得制限がある

支援を申請する際、自らの所得を証明するよう求められることがあります。
必要書類は自治体や内容で異なりますが、世帯ごとの所得を見るケースが多いようです。あなた個人の所得が少なくても、同居家族の所得が多いときは受けられない支援もあります。また、当然ですが、生活費を誰かから受け取りながら、公的な経済支援を受けることはできません。うそをついて支援を受ければ、罰せられることを覚えておきましょう。

離婚前に受けられる公的支援

種類はさほど多くないですが、離婚する前でも受けられる支援はあります。
DVを受けているなど、難しい状況にあるときに受けられるサポートもあるので、勇気を出して問い合わせてみてください。力になってくれることでしょう。

離婚にまつわる悩み、法律の相談窓口

離婚できるか否かはもちろん、慰謝料、養育費、戸籍、財産分与など、法律が関わる可能性が高い悩みは、やはり専門家に相談することが一番の近道です。最近は多くの法律事務所が無料相談を行っていますが、敷居が高いと感じられたら、公的機関が主催する法律相談へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

法テラス

法テラスとは、国が設立した法的トラブル解決の総合案内を行ってくれる機関です。
離婚問題など、法的な悩みを抱えている場合、まずは法テラスへ問い合わせてみるとよいでしょう。場合によっては弁護士の紹介も行ってくれます。また、経済的な余裕がない方でも、無料法律相談を紹介してもらえます。

市区町村で実施されている法律相談

市区町村のサイトや広報誌などで、相談窓口の案内がされています。常時開催されているわけではなく、多くのケースで日時などが限られていますが、無料で利用できることが多いでしょう。予約が必要なこともあるので、あらかじめ問い合わせて確認してください。

公的財団などで実施している相談窓口

夫婦関係や離婚、DVなどの家族の問題について、電話や面談を通じて相談ができる機関があります。誰にも相談できない、悩みすぎてつらいというときは、相談することで新たな糸口が見つかるかもしれません。面談相談については要予約のケースがほとんどです。必ずサイトなどで確認してください。

国が委託している相談機関

養育費に関するお悩みや就業に関する支援を専門的に行っている相談機関があります。それぞれ相談できる範囲は異なりますので、掲載されている情報をしっかりと確認したうえで、状況に適した機関に相談するとよいでしょう。

DV相談、シェルターなど

配偶者からDV被害にあい命の危険を感じていても、自分が悪い、逃げることはできないと考えていませんか? 経済的にも精神的にも孤立させられ、誰にも頼ることができないと思い込んでしまう前に、まずは公的機関に頼ってみましょう。

DVにまつわる電話相談

暴力を振るわれている、逃げたいけどどうすればよいかわからない、というときに相談できる窓口があります。電話、メールでも相談可能です。
ただし、命の危機を感じる場合や緊急時は、最寄りの警察署や交番に駆け込んでください。

DV被害者の保護施設(DVシェルター)

あなたがDV被害を受けている場合、DV加害者である配偶者から避難する目的で、婦人保護施設や母子生活支援施設など、シェルターと呼ばれる場所で身柄を保護してもらうことができます。もちろん、子どもと一緒に避難することもできますし、避難した状態のまま離婚を進めて、新しい生活を始める準備をすることもできます。
ただし、誰でもいきなり利用できるわけではありません。まずはお住まいの市区町村にある婦人相談所、女性センター、福祉事務所、配偶者暴力相談支援センターへ相談してみましょう。

ひとり親家庭が受けられる公的支援

離婚後の心配事はいくつもありますが、特にひとり親家庭となる場合は、経済的な面はもちろん、再就職や子育てに関する不安も抱えることになります。多くのケースで公的な支援を受けられるので、必ずチェックしておきましょう。
なお、市区町村によって受けられる内容は異なります。ここからは東京都で受けられる支援を中心にご紹介します。

経済的支援

手当関連

各手当には所得などの制限があります。まずはお住まいの市区町村の役所にお問い合わせください。

児童手当

中学3学年修了までの児童を養育している家庭に支給される手当です。ひとり親家庭だけではなく、所得などの条件に適していれば支給されるので、離婚協議中や別居中でも受け取ることができます。

児童育成手当

ひとり親家庭、または父または母に重度の障がいがある場合に、18歳になってから最初の3月31日までの児童を養育していると支給される手当です。支給額は世帯の状況や所得によって異なります。

児童扶養手当

離婚後、ひとり親家庭で、18歳になってから最初の3月31日までの子ども(障害児の場合は20歳未満)を養育している親に支給される手当です。支給額は世帯の所得によって異なります。

特別児童扶養手当、児童育成手当(障がい手当)、障がい児童福祉手当

20歳未満で心身に障がいをもつ子どもを養育している場合に支給される手当です。手当によって支給条件などは異なります。

金銭援助・貸与

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

離婚後、あなた自身の経済的自立と生活意欲の助長、扶養している子どもの福祉を増進することを目的とし、お金の貸し付けを行う制度です。使用目的や家庭状況に応じて、無利子、もしくは少ない利息で貸し付けを行っています。お住まいの市区町村にお問い合わせください。

税金の控除

控除とは、税金を計算する基本の収入から特定の金額を差し引くことを意味する用語です。控除されることにより、税計算上の年収額が減るため、あなたが支払うことになる税金が少なくなり、結果的に経済的な負担が減ります。
収入状況などによって、税金の控除を受けられる可能性があるので、お勤めの場合は勤務先の経理の方に、自営業やアルバイトの場合はお近くの税務署に確認してみましょう。

扶養控除

離婚してあなたが世帯主となった後、16歳以上の子どもや、あなたの両親など、扶養家族がいる場合に受けられる控除です。

寡婦(夫)控除

離婚して世帯主となった後、再婚をせず、年収38万円以下の子どもを扶養家族としているか、自身の所得が年収500万円以下の場合に受けられる控除です。

生活支援

家事などの補助・援助

ホームヘルパーの派遣

ひとり親家庭で、仕事や病気などで家事や育児などが難しいとき、ホームヘルプサービス(ホームヘルパーサービス)を受けられる制度があります。使用条件は、自治体によって異なります。

サポートセンター等

地域のボランティアの協力により、一定の料金を支払うことで家事労働などを代行してくれるサービスを実施している自治体もあります。

住居の提供、貸し付け、手当など

公営住宅への入居の優遇

希望者が多く、入居が難しいケースが多い自治体が運営する住宅へ申し込みするとき、条件によって優遇し、入居できる可能性を高めてくれる制度です。ただし、必ず入居できるものではないので注意が必要です。また自治体によっては、入居後の家賃を減額してもらえるケースもあります。

母子生活支援施設

離婚後、さまざまな事情により、18歳未満の子どもの養育が十分にできなくなってしまった場合、母子で入所できる児童福祉施設です。

生活全般で利用できる支援

ひとり親家庭休養ホーム事業

ひとり親家庭の親と18歳までの子どもであれば、特定の日帰りレジャー施設を無料もしくは低価格で利用できる制度です。

地域交通機関の無料パス

児童扶養手当を受けている場合、地域の交通機関を無料で利用できる乗車券が交付されます。東京都では都営交通などが無料になります。

JR通勤定期の割引

児童扶養手当を受けており、出勤にあたりJRを使用している場合は、定期券の購入割引制度を利用できます。

水道・下水道料金の減免

一定の要件に当てはまる場合、水道料金の一部を減免してもらえる制度です。ご自身で水道局へ申請する必要があります。

粗大ゴミの処理手数料の減免

本来であれば有料処理となる粗大ゴミの処分を無料で対応してもらえる制度です。必要に応じ、地域のゴミ収集センターに問い合わせて利用します。
なお、家電リサイクル法で定められた家電の処分には使えないので注意しましょう。

子育て支援

医療費に関する支援

ひとり親家庭等医療費助成

ひとり親家庭等であり、一定の所得に満たない場合に受けられる医療費助成です。マル親(ひとり親)医療証が発行され、医療費の1割相当額の負担で病院にかかることができます。

乳幼児医療費助成制度

あなたの子どもの年齢に応じ、乳幼児医療証(マル乳)または子ども医療証(マル子)が発行されます。対象の年齢や負担軽減額は、お住まいの市区町村によって異なります。地域によっては、18歳まで無料となることもありますので、必ず手続きを行いましょう。

子どもの保育費や学費に関する公的支援

自治体によって実施内容や利用条件が異なります。必ずお住まいの市区町村の窓口にお問い合わせください。

保育料の減額制度

「病気になった」、「世帯で生活保護を受けることになった」など、一定の条件に合致した場合は、必要に応じて保育料が減額または免除されます。

修学・結婚・就学支度・就職支度援助など

子どもの進学や就職に必要なお金が足りないときは、まずは市区町村の窓口に相談してみてください。母子及び父子福祉資金の貸付制度を利用すれば、無利子、もしくは低金利でお金を借りることができます。

子育てが難しいときの支援

子育て支援事業(短期入所生活援助/夜間養護等)

身体上・精神上・環境上の理由などで、子どもの面倒を見るのが難しくなったとき、一時的に乳児院や児童養護施設などで子どもを預かってもらえる制度です。預かり期間や条件は自治体によって異なる他、実施している施設も限られるため、事前に問い合わせが必須となります。

就業・自立支援

ひとり親家庭を対象とした就業支援

ひとり親家庭就労支援プログラム策定事業

離婚後の就労が難しい場合、自治体がハローワークと連携しサポートしてくれる制度です。お住まいの市区町村の役所または福祉事務所へ問い合わせてみましょう。

自立支援教育訓練給付金

ひとり親家庭の父、もしくは母が、就労するために必要な教育訓練を受けることを支援する給付金です。対象の教育訓練を受講し修了した場合、学費の60%(1万2000円を超えない場合は対象外)が支給されます。就学年数などに応じて、支給額には上限があります。
対象教育訓練や詳細は、お住まいの市区町村の役所に問い合わせましょう。

高等職業訓練促進給付金等事業

対象の資格を取得するために養成機関で修業する際、修業期間中の生活の負担を軽減するために給付金を支給してもらえる制度です。支給内容や対象者は、区市によって異なる場合があるため、お住まいの地区の役場、福祉事務局に確認してください。

ひとり親家庭はもちろん、それ以外でも受けられる公的支援

経済的支援

国民年金保険料・国民健康保険の減免

国民年金料や国民健康保険料が支払えないときは、市町村役場の窓口に申し出てください。所得が一定の基準以下であるなどの要件を満たした場合、一定期間、減額もしくは免除されます。ただし、年金の免除や減額を行うと、老後の受取時の金額も減ってしまうので注意が必要です。なるべく早く所得を安定させ、正規の料金を支払えるよう努力しましょう。

生活保護

病気で仕事ができないなどの事情により生活することが困難になったときに、最低生活を保障する制度です。持ち家がある場合は利用できない、家賃に上限があるなど、さまざまな制約があります。
どうしても困ったときは、一時的に助けを求めることも大切なことです。

就業・自立支援

女性福祉資金の貸し付け

配偶者がいない女性であれば、条件次第で自立に必要なお金を、無利子、もしく低金利で借りることができる制度です。自治体主体の支援のため、それぞれ条件が異なります。まずはお住まいの市区町村の役所で問い合わせてみてください。

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