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離婚しても苗字を変えない方法とは? 手続きと注意点を解説

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更新日:2023年12月21日  公開日:2021年11月08日
離婚しても苗字を変えない方法とは? 手続きと注意点を解説

婚姻時に苗字の変更をした方にとって、離婚に伴い旧姓に戻すのか、そのままの苗字を利用するのかは重要な選択です。
特に子どもがいる場合には、自分のことだけでなく、子どもへの影響も配慮したうえで判断する必要があります。

離婚後もそのままの苗字を利用することはできますが、後日、旧姓に戻したいと思っても、容易に変更することはできません。そのため、離婚後の苗字をどうするのかという問題は、慎重に判断することが必要です。

本コラムでは、離婚後の苗字に関する手続きや注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、離婚をしても旧姓に戻さない方法はあるのか?

離婚をしたあとにも、婚姻中の苗字を利用することは可能です。
以下では、離婚後にも婚姻中の苗字を利用する方法について説明します。

  1. (1)離婚時に苗字を変えることのデメリットは?

    離婚後には、旧姓に戻すことを選択する方もいます。しかし子どもについては苗字を変更せず、母親と子どもの苗字が異なると、母子が同じ戸籍に入ることができないというデメリットがあります。

    その他にも、離婚後に苗字を変更することには、以下のようなデメリットがあるのです。

    ① 子どもに精神的な負担を与える可能性がある
    離婚をした母親が旧姓に戻したとしても、何も手続きをしなければ子どもの苗字はそのままです。そのため、母親が子どもの親権を獲得して、一緒に生活をしていたとしても、母親の苗字と子どもの苗字が違うことになります。
    社会生活を送るうえで「苗字を名乗る」という行為はさまざまな場面で必要とされますが、子どもの年齢によっては、自分の苗字と母親の苗字が違うことに違和感を抱いて、そのことで精神的な負担が生じる可能性があるでしょう。

    ② 周囲に離婚の事実が伝わってしまう
    離婚によって旧姓に戻した場合には、職場などには報告をしなければなりません。「離婚をしたことを秘密にしたい」と思っていても、突然、苗字が旧姓に戻ったら、「離婚をした」という事実が周囲に伝わることを止めるのは難しくなってしまいます

    ③ 名義変更などの手続きが面倒
    離婚をした苗字を変えた場合には、免許証、クレジットカード、キャッシュカード、携帯電話などの名義変更を行わなければなりません。
    婚姻期間が長いと、変更しなければならない契約が多くなりますので、離婚後も名義変更の手続きが発生して、時間がとられることになります。

  2. (2)離婚をしたら苗字を変えなくてはならない?

    結婚したときに苗字を変更した方は、原則として、離婚をすると婚姻前の苗字に戻ることになります。逆に言えば、苗字を変えたい場合には、離婚届を提出するだけで、自動的に旧姓に戻ることができるのです。

    もっとも、離婚後に旧姓に戻ることには、上記で挙げたようなデメリットもあります。そのため、「離婚後も引き続き婚姻中の苗字を名乗っていきたい」という方もおられるでしょう。
    そのような場合には、「婚氏続称制度」を利用することによって、例外的に、離婚後も婚姻中の苗字を使用し続けることができるのです。

    婚氏続称制度を利用する場合には、離婚の成立の日から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を届出人の本籍地または住所地の市区町村役場に提出することになります。
    詳しい手続きについては、後述します。

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2、離婚をすると子どもの苗字はどうなる?

離婚をしたあとの子どもの苗字の扱いと、離婚後に子どもの苗字を変えることのデメリットについて、解説します。

  1. (1)離婚してもそのままでは子どもの苗字は変わらない

    夫婦が離婚をしたとき、婚姻によって苗字が変わった側は、特別な手続きをしなければ、自動的に旧姓に戻ることになります。しかし、子どもの場合は、そうではありません。
    旧姓に戻った母親が子どもの親権を獲得し、一緒に生活をしていたとしても、そのままでは、子どもの苗字は父親の苗字のまま変わらないのです。

    また、母親が子どもの親権を取得したとしても、自動的に親権者の戸籍に入るわけではありません。特別な手続きをしなければ、離婚前の配偶者の戸籍(父親の戸籍)に残ったままになります。

  2. (2)子どもの苗字を変える方法は?

    離婚後に旧姓に戻った母親が子どもの苗字を自分と同じものに変更するためには、家庭裁判所に、「子の氏の変更許可の申立て」をしなければなりません。母親は、自動的に旧姓に戻りますが、子どもの苗字を母親の旧姓に変えるためには、家庭裁判所の許可が必要になるのです。

    ただし、許可を得るにあたって、特別難しいことはありません。家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立書」を提出すれば、原則として許可を得ることができるのです。
    子の氏の変更が許可された場合には、市区町村役場の窓口で入籍の届出をすることによって、子どもが母親の戸籍に入ることができるとともに、戸籍上も子どもの苗字が母親の旧姓に変更されます。

  3. (3)子どもの苗字を変えることのデメリットは?

    前述したように、母親と子どもの苗字が異なることで、子どもが精神的な負担を感じるおそれはあります。しかし、子どもの苗字を変えた場合にも、子どもに精神的な負担が生じる可能性があるため、注意が必要です。

    苗字が変更になると日常生活においても変更後の苗字で生活していかなければなりません。子どもの場合には、突然に苗字が変わると、学校で友人から詮索されたり、からかわれたりすることで、ストレスを抱く場合があります。また、それがエスカレートすると、いじめに発展するおそれもあるのです。

    もっとも、最近では、離婚をする夫婦も増えてきていますので、苗字が変更するということも昔に比べたら珍しいことではなくなってきています。以前に子どもの周囲の友人が離婚で苗字が変わったという経験があれば、子どもとしても、自分の苗字が変わることを受け入れやすくなるでしょう。

3、苗字を変えずに離婚するための手続き

離婚後も婚姻中に名乗っていた苗字を使用するためには、「婚氏続称制度」を利用する必要があります。以下では、婚氏続称制度を利用する方法について解説します。

  1. (1)婚氏続称制度の利用方法

    婚氏続称制度を利用して、婚姻時に使用していた苗字を引き続き使用するためには、「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村役場の窓口に提出します。提出先は、届出人の本籍地または住所地の市区町村役場です。
    「離婚の際に称していた氏を称する届」は、市区町村役場の窓口で入手することができます。また、市区町村によっては、ホームページ上にひな形を掲載しているところもあります。記入事項自体はとくに難しいものではないため、記入例などを参考にして記入することができます。

    なお、本籍地以外の市区町村役場に提出する場合には、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が添付書類として必要になることがあります。あらかじめ準備しておくようにしましょう。

  2. (2)婚氏続称制度の期限

    婚氏続称制度を利用する場合には、「離婚の際に称していた氏を称する届」を、離婚した日の翌日から3か月以内に提出しなければなりません。「離婚の際に称していた氏を称する届」の届出は、離婚届と一緒に提出することもできます。また、離婚後に旧姓に戻ったとしても、3か月以内であれば、婚氏続称制度を利用することができるのです。

    婚氏続称の期限である3か月を経過してしまったという場合には、婚氏続称の手続きではなく、家庭裁判所に対して氏の変更許可の申し立てをしなければなりません。氏の変更の許可を受けるためには、「やむを得ない事由」が必要とされるため、どのような場合でも認められるわけではありません。そのため、婚氏続称を考えている方は、婚氏続称の届出期間である3か月以内に手続きを終えるようにしてください。

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4、婚氏続称を選択した場合、時間が経ってから旧姓に戻すことはできるか?

婚氏続称制度を利用して、婚姻中の苗字を名乗ることにしたとしても、その後に事情が変わり、「旧姓に戻したい」と考える可能性もあります。
婚氏続称制度を利用したのちに、旧姓に戻るための手続きについて、解説します。

  1. (1)婚氏続称から旧姓に戻るには家庭裁判所の許可が必要

    離婚時に自らの意思によって婚氏続称を選択した以上は、原則として、旧姓に戻すことはできません。
    しかし、「子ども精神的負担を考慮して婚氏続称を選択したが、子どもが大きくなったため、旧姓に戻したい」など、さまざまな理由で旧姓に戻ることを希望する方もします。
    そのような場合には、家庭裁判所に氏の変更許可の申し立てをして、家庭裁判所の許可を得ることによって、例外的に旧姓に戻ることが可能です。ただし、氏の変更許可の申し立てによって旧姓に戻るためには、「やむを得ない事由」が必要になります。

  2. (2)氏を変更する「やむを得ない事由」とは

    氏の変更許可の申し立てにあたって、必要とされる「やむを得ない事由」とは、氏の変更をしなければ、社会生活において著しい支障が生じる場合をいいます。そのため、「単に苗字が気に入らない」「姓名判断でよくないと言われたから」などの理由では、氏の変更は許可されません。

    ただし、婚氏続称から旧姓に戻る場合には、通常の氏の変更の場合に比べて、要件が緩やかに解されていますので、比較的認められやすいです。

5、まとめ

離婚後も婚姻中の苗字を引き続き利用する場合、子どもの精神的負担の問題であったり、その後に旧姓に戻すとなれば家庭裁判所への申立てなどの手続き上の負担が生じたりすることになります。

そのため、離婚時に旧姓に戻すか、そのままの苗字を名乗り続けるかは、将来の生活なども想像しながら念入りに検討することが重要です。

離婚後の苗字の問題について不安がある方は、ベリーベスト法律事務所にまでご相談ください。苗字のことだけでなく、財産分与や養育費、親権の問題などもご相談いただくことが可能です。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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