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不倫を理由に慰謝料を請求された…まず「考えるべきこと」とは

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更新日:2022年08月16日  公開日:2019年01月11日
不倫を理由に慰謝料を請求された…まず「考えるべきこと」とは

不適切なことだとはわかっていても、不倫をしてしまい、相手の夫や妻(以下、「請求者」といいます。)から慰謝料を請求されてしまった。
しかし、とても支払えるような額ではない。あるいは、全く身に覚えがないのに不倫をしたと非難され、慰謝料を請求されており、どうしたらいいかわからない。

突然不倫慰謝料を請求された場合も、まずは冷静になって、請求内容などをしっかりと確認し、慎重に対処する必要があります。
今回は、慰謝料を請求された場合の適切な対応方法について、弁護士が解説します。

1、不倫慰謝料を請求されたとき、考えるべきこととは?

不倫慰謝料を請求されたとき、まず考えなければいけないことがいくつかあります。

  1. (1)不倫関係はなく、請求者側の誤解である

    請求者は不倫(不貞)関係があったと思って慰謝料請求をしているけれども、実際には不倫関係がなく、請求者側の誤解だったというケースです。

    不倫関係がなければ不倫慰謝料を支払う必要はありませんので、この場合にはきちんと不倫関係がないことを説明し、慰謝料の支払いを拒絶しなければなりません。当然、請求者は不倫を直接的に証明する証拠を収集することができないので、たとえ裁判を起こしたとしても、基本的には請求が棄却される可能性が高いです。

    ただ、二人でホテルに入室したこと自体は覚えがあるなど、客観的に見て不倫関係が存在したと裁判官が考えるような状況が存在する場合には、裁判上不利になる可能性があります。

    また、このケースでは請求者の誤解を解くことが重要ですが、不倫関係があったと勘違いされるような言動をしていると、誤解を解くことができずに解決まで長引いてしまう可能性がありますので、自身の言動や相手との関わり方などには注意をするようにしましょう。

    なお、このケースの場合であっても、たとえば「4、(2)解決金という名目で少額の支払いを行ったケース」のように、不倫関係は存在しないが、不倫関係があったと勘違いさせるようなことをしてしまったことに対して、解決金という名目のいわば迷惑料を支払って解決するという方法もあります(この場合の支払額は、不倫慰謝料よりも低額になることが多いです)。
    メリットとしては、早期に解決できることがあげられます。

  2. (2)相手が既婚者だとは知らなかった

    相手が既婚者だと知らなかった場合には、不法な行為だと認識している故意がなかったことになります。さらに、相手が既婚者だと認識できるような事情もなかったといえる場合には、過失もないことになりますので、基本的に慰謝料を支払う必要はありません。

    ただ、既婚者だと知らなかった事実を請求者に理解してもらえるように説明することは難しい場合も多く、場合によっては請求者を怒らせてしまい、事態を長引かせてしまうことにもなりかねないので注意が必要です。
    この場合も、既婚者だとは知らなかったが不快な思いをさせてしまったことについて迷惑料を支払うというような交渉をすることも考えられますが、上記のとおり請求者を怒らせてしまう可能性があるため、交渉になれた弁護士に依頼することを検討されてもよいかもしれません。

    また、交渉でも同様のことがいえますが、裁判になった場合に特に、ただ単に相手が既婚者だと知らなかったと主張するだけではなく、相手が既婚者だと知らなかったことについて過失がなかったということもいえなければなりません
    たとえば相手が結婚指輪を身に着けていた事実などがあると相手が既婚者だと認識し得たことを示す事情のひとつになりますので、あなたにとって不利になる可能性があります。交渉が長引きそうな場合やうまくいかない場合には、たとえ裁判になる前であっても、相手が既婚者だとは認識できなかったことを示す客観的事情を説明する準備などを弁護士に依頼することを検討してもよいと思います。

  3. (3)不倫関係が始まった時点で婚姻関係が破たんしていた

    確かに不倫をしてしまったが、不倫関係が始まった時点ですでに相手と請求者の婚姻関係が破たんしていた、というケースがあります。
    相手と請求者が不倫を原因として離婚をしてしまった場合、一般的に不倫慰謝料は高額になりますが、不倫関係が始まった時点で婚姻関係が破たんしていたのであれば、不倫関係と相手と請求者の婚姻関係の破たんに因果関係はないことになりますし、請求者がそのことによって精神的苦痛を受けたとはいえない場合もありますので、慰謝料額が減額され、さらには慰謝料請求自体が認められない可能性があります。

    この場合、婚姻関係が破たんしていたかどうかの判断は難しいですし、婚姻関係が破たんしていたとはいっても請求者がすんなり納得してくれるとは限りませんので、事案の分析や交渉について弁護士にご依頼されることをおすすめします。

  4. (4)慰謝料請求権の時効は完成していないか

    慰謝料請求権には「時効」があります。

    慰謝料請求権は不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)ですので、請求者が「損害及び加害者」を知ってから3年間で時効消滅します(民法724条)。
    そのため、請求者が不倫関係を知ってから3年が経過している場合、時効援用によって慰謝料支払いを拒絶することができる可能性があります。

    ただし、この場合であっても、たとえばあなたが3年経過後に慰謝料の支払いを約束した場合や慰謝料の一部を支払った場合などは、時効消滅を主張できない場合があります。詳しいことは弁護士までご相談いただければと思います。

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2、慰謝料が高額だと感じた場合に行うべきこととは?

もしも慰謝料請求をされて高額だと感じた場合には、以下のような対処方法が考えられます。

  1. (1)慰謝料の減額交渉

    もし、請求者から請求された慰謝料が高額であると感じた場合、まずは減額交渉をすることが考えられます。
    基本的に交渉段階においては、慰謝料の金額の多寡は、それぞれ請求者の気持ちによります。そのため、請求者の気持ちを納得させることができれば、減額をしてもらえる可能性があります。

    また、「1、不倫慰謝料を請求されたとき、考えるべきこととは?」で述べたように、相手が既婚者だとは知らなかった場合や不倫関係が始まった時点で婚姻関係が破たんしていた場合など、うまく請求者に事情や法律的な考え方を納得してもらえれば、慰謝料額を減額してもらえる可能性もあります。

  2. (2)減額交渉の注意点

    ただし、慰謝料の減額交渉をするときには、注意点があります。それは、請求を受けた本人があまり強気に減額を主張すると、請求者の怒りが増幅し、かえってトラブルが悪化する可能性があるということです。

    上記のとおり、慰謝料の金額の多寡は、それぞれ請求者の気持ちによります。あなたが高額だと思ったとしても、請求者はそれだけの気持ちを抱えているからこそ、それだけの金額を請求しているのです。
    たとえ、あなたが、請求について理由がないと考えたとしても、請求者に対する対応は誠意をもって行う必要がありますし、請求に身に覚えがあるのであれば、なおのこと気をつける必要があります。

    慰謝料の請求者は、相手に対して反省を求めていることが多いです。それにもかかわらず「高すぎる」「払えないから減額してほしい」ということばかりを主張されると、反対に、減額する気など一切無くなってしまいますし、たとえ法律的には減額できる事情があったとしても、相手に納得してもらえず交渉が長引いたりうまく解決できなかったりする可能性があります。

    慰謝料の減額交渉をするときには、まずは誠意をもって謝罪を行い、その上で、粘り強く話し合いを続けることが大切です。
    また、自分で交渉すると相手が感情的になりやすいですし、減額できる客観的な事情をうまく説明できない場合もありますので、できれば専門家である弁護士に交渉を任せる方が、スムーズかつ効果的な減額につながります。

  3. (3)慰謝料の分割払いの交渉

    慰謝料を一括では払えないケースでは、分割払いをお願いする方法も考えられます。

    たとえば100万円の慰謝料を一度には支払えないけれど、毎月10万円や5万円ずつなら支払えるということもあるでしょう。請求者によっては、分割払いでいつまでも請求相手との関係が続くことを好まない方もいますが、かといって本当に一括では支払えない場合はやむを得ないと考えてくれることもありますので、分割払いをお願いしてみてはどうでしょうか。

    また、このように慰謝料の分割払いの約束をするときには、月々の支払いが一度でも遅れてしまった場合に、「強制執行」を行うという条件を設けるケースが多々あります。強制執行がなされると、残りの慰謝料全額を一括で支払わなければならなかったり、給料から強制的な引き落としをされてしまったりすることになるため、注意が必要です。

  4. (4)調停・訴訟で減額を主張する場合

    慰謝料の額について、請求者と交渉をして折り合いがつかなかった場合、請求者から慰謝料請求訴訟をされる可能性があります。ただ、訴訟になったとしても、必ずしもそれだけで不利になるとは限りません。

    訴訟の段階になれば、これまで積み重なってきた裁判例を考慮して、裁判官が慰謝料の額を判断するため、慰謝料額が請求者の請求額よりも低額になる可能性があります。訴訟の途中で和解して、慰謝料を現実的な金額に減額できたり分割払いの取り決めができたりすることもあります。

    また、相手が訴訟を起こす前に、あなたから調停を起こして話し合いを行うこともできます。
    調停とは、家庭裁判所が提供する話し合いの場です。男女各1名の調停委員がいる部屋へひとりずつ呼び出され、それぞれの主張を行います。調停委員はその主張をもとに、話し合いの落としどころを提案してくれる制度です。ここで決まったことは調停調書と呼ばれる公的な書類にまとめてくれます。ただし、調停で結論を出せないときは裁判を行うことになります。

    場合によってはあなたが希望するよりも高額な慰謝料の請求を認める判決が出てしまったり、あなた自身が裁判所で証言することを求められたりする場合がありますので、注意が必要です。

    訴訟で争うことが得策かどうかについては、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

3、一度決めた慰謝料額を、支払いの途中で減額してもらいたい場合

慰謝料の取り決めをしても、なんらかの事情で、途中で支払いができなくなる状況に陥るケースがあります。
たとえば、交渉時には十分な支払い能力があり、毎月10万円などの慰謝料支払いの約束をしたけれども、その後、怪我や病気、リストラや失業などの事情によって、経済力が落ちてしまった場合などです。

  1. (1)必ず連絡をする

    どうしても支払いができないときには、支払いを放置するのではなく、まずは請求者に連絡をする必要があります。
    月々の支払いが一度でも遅れてしまった場合に、残りの債務全額を一括で支払わなければならないという条件(強制執行など)を設けていた場合、支払えない状況だからといって支払わずにいると、一括で残りの慰謝料全額を請求される可能性があるため注意が必要です。

  2. (2)自己破産をする

    「一時的に支払えないだけ」という状態であれば、カードローンなどを使って何とか支払う方法も考えられます。しかし、借金をして慰謝料を支払ったとしても、返済が難しくなってしまう可能性が少なくありません。

    そこで、状況によっては、自己破産を検討する必要もあるかもしれません。しかし、慰謝料を支払えない理由が浪費やギャンブルなどの場合は、自己破産が認められないこともあります。自己破産が認められれば、不倫の慰謝料については支払い義務を免れることができるでしょう。

    ただし、養育費については、親として果たすべき責任のひとつです。よって、自己破産をしても支払い義務が残ることになるため、支払い続ける必要があります。

4、慰謝料を請求された場合の解決事例

  1. (1)慰謝料を減額できたケース

    【解決事例】不倫慰謝料請求300万円減額

  2. (2)解決金という名目で少額の支払いを行ったケース

    【解決事例】不倫慰謝料について、大幅な減額での合意が成立した事案

5、「高額である」という主張だけでは納得してはもらえない

慰謝料請求額が高額であると感じたとき、請求者に対して「高額である」という主張を繰り返したとしても、それだけでは解決できないことがほとんどです。

支払えないと主張するだけでは請求者は納得しませんし、請求者がそれだけの慰謝料を請求してきたということは、それだけの気持ちを抱えているということです。
誠意をもって対応し、請求者に減額を納得してもらう必要があります。交渉で解決ができず、訴訟を起こされたとなると、さらに解決には時間を要します。

6、自分が払えない場合、代わりに親が慰謝料請求される可能性はある?

そもそも慰謝料とは、あなた自身が行った不法行為(不貞行為など)によって受けた損害を相手に賠償するために支払うものです。つまり、請求できる相手は、不法行為をした本人だけに限られます。

また、親には未成年の子どもを扶養したり、子どもの行動に対して責任をとったりする義務がありますが、多くの場合が成人しているはずです。よって、すでにあなたの親には、あなたが行った不法行為の責任をとらなければならない義務はありません

つまり、あなたが請求された慰謝料を支払えない、支払わないと宣言したとしても、相手は「あなたの親に慰謝料を請求することはできない」ということになります。

ただし、話を聞いたあなたの親があなたの代わりに勝手に慰謝料を支払ってしまうケースがあることも否定できません。もしあなたが身に覚えのない理由で慰謝料請求されているときは、あなたの親には支払いをしないように連絡しておく必要があるでしょう。

7、まとめ

いきなり慰謝料を請求されて対応に困っているときには、弁護士に相談すると、適切な対処方法をとることができ、慰謝料の減額を含めてうまく話がまとまる可能性があります。

他方、自身で対応すると、適切な対処方法を適切なタイミングで行うことができない場合もありますので、不安があるならば、法律の専門家である弁護士に早めに法律相談をすることをおすすめします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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