夫が家出を繰り返すのは「悪意の遺棄」? 証明と離婚する方法
「夫が同居を拒絶して、しょっちゅう家出をする」「夫が生活費を入れてくれない」こういった状況ならば、「悪意の遺棄」と評価されるかもしれません。
悪意の遺棄は裁判上の離婚原因のひとつとなっているもので、悪意の遺棄を理由に離婚する場合には、配偶者への慰謝料請求をすることもできます。
とはいっても、悪意の遺棄は日常生活ではなかなか耳慣れない言葉です。どのような行為が悪意の遺棄に該当し、またその証明はどのようにしたらよいのかとお悩みの方は少なくありません。
本コラムでは、悪意の遺棄に当てはまる行為や悪意で遺棄されたときの対応方法、悪意の遺棄を証明する方法について、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
1、法的に「夫婦」が負っている義務とは
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(1)夫婦が互いに負っている法的義務
結婚している夫婦には、法的にいろいろな義務が発生します。
・同居義務
夫婦は基本的に同居しなければなりません。ただし単身赴任や親の介護など、事情があって同居できない場合にはその限りではありません。
もし正当な理由なく家出を繰り返したり同居を拒絶したりすると、同居義務違反となります。
・協力義務
夫婦は生活面などにおいて互いに協力する必要があります。
・扶助義務
夫婦は、互いに相手を経済的に養う必要があります。基本的に収入がある方(収入が高い方)が相手方を扶養します。夫婦の扶養義務は、「相手にも自分と同等の生活をさせる」という生活保持義務です。余裕のあるときに相手方を援助すれば良い、というものではありません。
夫が家出をしたり、生活費不払いなどをして妻を見捨てる行為は、上記の夫婦の義務に違反しています。 -
(2)裁判上の離婚原因についてて
法律は、裁判上の離婚原因を定めています。それは以下の5つです。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病
- その他婚姻関係を継続し難い重大な事由
このように「悪意の遺棄」は、裁判で強制的に離婚することができる「法定離婚事由」のひとつとされています。相手が同居義務に違反して家出を繰り返したり同居を拒否したり、扶助義務に違反し生活費を渡さなくなったりしたら、裁判を起こして離婚請求できるということです。
2、悪意の遺棄に当てはまる行為とは
具体的にどのような行為が「悪意の遺棄」に該当するのか、みていきましょう。
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(1)そもそも悪意の遺棄とは?
悪意の遺棄とは、正当な理由なく上記の同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。これらの義務を履行しないことが、積極的であるか消極的であるかは問題になりません。
悪意の遺棄に該当するかどうかは、以下のような点が考慮されます。
・正当な理由があるか
家出をしたとしても、「相手の暴力(DV)から逃れるため」などの正当な理由があれば悪意の遺棄になりません。単身赴任などの「別居」のケースでも悪意の遺棄は成立しません。
・夫婦間での合意があるか
お互いに合意の上で家を出たり生活費を払わなかったりしたのであれば、悪意の遺棄になりません。夫婦が合意して「別居」する場合、生活費が支払われている限り悪意の遺棄は成立しません。ただし別居後、約束していた生活費を支払ってもらえなくなったら悪意の遺棄と評価される可能性があります。
・生活費を送金しているか
生活費を送金しなかったり、生活の面倒を見ない場合には、扶助義務に違反することになります。配偶者を家に置き去りにして、長期間生活費を送金しないような場合には、「悪意の遺棄」と判断される可能性があります。
・別居期間がどの程度か
別居期間が長期になれば、同居義務に違反し、相手の生活状況も顧みないということにつながります。たとえば、病気の配偶者のもとを去り、10年以上にわたって同居の努力をしないような場合には、「悪意の遺棄」と判断される可能性があります。 -
(2)悪意の遺棄の具体例
- 正当な理由なく家出を繰り返す
- 配偶者を家から追い出す
- 正当な理由なく同居を拒絶する
- 自分の実家に戻り、夫婦の自宅に帰ってこない
- 突然、行方不明になる
- 専業主婦が家事を放棄する
- 健康なのに働かない
- 収入がないのに生活費を渡してくれない
- 単身赴任や別居後に生活費をくれなくなった
離婚裁判で上記のような事実があったと証明すれば、多くのケースで「悪意の遺棄」と評価され、判決で離婚が認められ、慰謝料も払ってもらえるでしょう。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
3、悪意の遺棄を証明する方法
悪意の遺棄を理由にして離婚や慰謝料請求をするには、悪意の遺棄と評価されるだけの事実があったと「証明」しなければなりません。具体的に、悪意の遺棄の証明にはどのような証拠が必要となるのかを見ていきましょう。
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(1)悪意の遺棄を証明するための証拠
悪意の遺棄を証明したいなら、以下のような証拠を集めましょう。
- 生活費が支払われなくなったことがわかる通帳(給与振込口座を変えられた場合には以前の給与入金先の通帳、相手から生活費の振り込み送金を受けていた場合には入金が途中で止まっている通帳)
- 相手からのメール、手紙など(戻ってきてほしいと言っても「戻らない」と言われたり、無視されたりした際のやりとりなど)
- 相手から最後に届いた手紙やメールなど、別居の原因や時期がわかる資料
- 相手から無視や放置されたことを詳しく書いている日記
- 相手が住民票を移動させたことがわかる住民票の記録
- 相手が別の場所に賃貸住宅を借りたときの賃貸借契約書
自身のケースで悪意の遺棄の証明方法がわからない場合、弁護士にご相談いただければアドバイスいたします。
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(2)悪意の遺棄による離婚の流れ
相手の悪意の遺棄を理由に離婚する場合の一般的な流れは、以下の通りです。
① 証拠を集める
悪意の遺棄によって離婚をしたいならば、まずは悪意の遺棄を証明するための証拠を集めるべきです。証明できなければ、裁判をしても負けてしまうおそれがあるからです。上記で挙げた資料を中心に、「悪意」や「遺棄」を示すことのできる証拠を手元に集めましょう。
② 相手と話し合いをする
悪意の遺棄を証明できる資料がそろったら、相手に離婚を持ちかけて話し合いをします。悪意の遺棄をした相手方は有責配偶者となるので、あなたは相手に慰謝料請求も可能ですし、夫婦に共有財産があれば、財産分与もしてもらえます。未成年の子どもがいたら、親権や養育費の問題も取り決めましょう。
③ 離婚協議書を作成する
離婚条件について合意できたら、合意内容をまとめた「離婚協議書」のような書面に残すとよいでしょう。このとき慰謝料や財産分与、養育費などの支払いといった重要な事柄については、将来、不払いがあったときに速やかに回収するため、公正証書にしておきましょう。
④ 離婚届を提出する
離婚協議書ができたら、離婚届に署名押印して役所に提出します。これで離婚が成立します。その後はきちんと約束通り、慰謝料などを払ってもらいましょう。
⑤ 離婚調停を申し立てる
話し合いをしても合意できない場合には、家庭裁判所で離婚調停を申し立てる必要があります。調停では、調停委員が間に入って離婚の話し合いを仲介してくれます。調停で合意ができれば裁判所で調停調書が作成されます。
⑥ 離婚訴訟を起こす
調停でも合意できない場合には、離婚訴訟によって解決するしかありません。裁判では、証明された事実しか認められないので、事前に集めておいた証拠を使って相手の悪意の遺棄を証明しなければなりません。
きちんと証明できれば、裁判所が離婚を認めるとともに、相手に離婚慰謝料の支払い命令も出してくれるでしょう。 -
(3)生活費を入れてくれない場合は婚姻費用の請求をする
相手から悪意の遺棄をされて離婚協議や調停を進めるとき、離婚が成立するまでの間の生活費を払ってもらえない事例が多々あります。その場合、相手に対して「婚姻費用分担請求」をすることができます。婚姻費用とは、生活費のことです。
夫婦には相互に扶助義務があるので、離婚までの間、相手はあなたに生活費を支払わなければなりません。
相手に任意で支払いを求めても婚姻費用を払ってくれない場合、家庭裁判所で「婚姻費用分担調停」を申し立てると、裁判所で生活費の金額を決めることが可能です。相手が合意しなくても、審判によって相手に支払い命令を出してもらえます。
なお婚姻費用分担調停を進める際、相手とあなたの収入を証明するための資料(源泉徴収票など)が必要となるので、用意しておきましょう。 -
(4)他の離婚原因で離婚が認められるケースについて
悪意の遺棄の証明は簡単ではないので、悪意の遺棄を理由としては離婚できないケースもあります。
その場合には、「他の離婚原因」によって離婚できる可能性があるので、それを見据えて証拠集めをしておくのが良いでしょう。
たとえば相手が不倫相手の家に住んでいるなら、「不貞行為」があったはずであるとして離婚できるでしょう。また、一方的な別居期間が長くなっていれば「その他夫婦関係を継続し難い重大な事由」が認められる可能性があります。
それぞれの離婚原因の証明方法については個別的な判断が必要なので、詳しくは弁護士に相談してみてください。
4、悪意の遺棄で離婚した場合の慰謝料の相場は?
相手配偶者による悪意の遺棄によって離婚する場合、慰謝料の相場がどのくらいになっているのかみてみましょう。
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(1)悪意の遺棄の慰謝料相場
悪意の遺棄の慰謝料の相場は、ケースにもよりますがだいたい50万~300万円です。
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(2)悪意の遺棄の慰謝料が高額になる場合
悪意の遺棄の慰謝料が高額になるのは、以下のような事情がある場合です。
- 相手が不倫している(不倫相手の家で同棲している)
- 別居期間(同居義務違反の期間)が長い
- 生活費不払いの期間が長い
- 夫が妻を遺棄した理由が身勝手なものである(給料を自分のために使いたい、不倫相手のために使いたいなど)
- 相手に対して、何度も「戻ってきてほしい」と言ったのに無視し続けた
- 遺棄された配偶者が困窮して病気になった
- 遺棄された配偶者が子どもを育てている
悪意の遺棄が行われるときには「不貞」が絡んでいるケースがあります。その場合、不倫を証明することにより、高額な慰謝料を払わせることが可能となります。
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5、まとめ
ある日突然、夫が生活費を支払わなくなったら、妻や子どもは生活をしていけなくなってしまいます。また夫婦のどちらかが一方的に家出をしたり同居を拒んだりしたときにも、夫婦生活が壊れてしまい、見捨てられた配偶者はとても傷つくことでしょう。
ただ、どのようなケースで悪意の遺棄が成立するのか、その解釈は難しいものですし、慰謝料がどのくらい認められるのかもなかなか判断しにくいものです。
悪意の遺棄を証明していくとなると、それはさらに困難なことであり、どのような証拠を集めたらよいかわからない方が多いでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、弁護士による離婚専門チームを組成しており、離婚訴訟では原告側にも被告側にも代理人として就任し、相談者に有利な結果を獲得してきた実績があります。
悪意の遺棄やその証明方法、離婚のことなどでお悩みの場合には、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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