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財産分与で家を分ける方法とは? 名義やローンなど注意点も解説

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更新日:2021年08月31日  公開日:2021年08月31日
財産分与で家を分ける方法とは? 名義やローンなど注意点も解説

マイホームを所有している場合、離婚時の財産分与で家(不動産)をどのように分けるのかが問題になることがあります。
家は、名義をどうするのかだけでなく、住宅ローンや保証人の問題などもあるため、慎重に話し合いをすすめる必要があるでしょう。

本コラムでは、離婚時の財産分与において家を分ける方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、離婚時に家(不動産)を財産分与するときの基礎知識

離婚時に家(不動産)を財産分与することになった方のために、まずは、財産分与に関する基礎知識について説明します。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を離婚時に清算することをいいます。

    財産分与は、お互いの資産形成・維持に対する貢献度に応じて財産を分ける制度ですが、婚姻生活における貢献度は、基本的には等しいものと考えられていますので、財産分与の割合についても2分の1の割合が原則とされています。これは、一方が専業主婦(主夫)であったとしても変わりません。

  2. (2)財産分与の対象となる財産

    財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦が築いた共有財産に限られます。
    共有財産の判断にあたっては、夫婦どちらの名義であったかではなく、婚姻期間中に夫婦の協力によって築いたものかどうかがポイントになります。

    具体的には、次のような財産が共有財産に含まれることになります。

    • 現金、預貯金
    • 株式や投資信託などの有価証券
    • 不動産
    • 保険の解約返戻金
    • 退職金 など


    これに対して、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産および婚姻中自己の名で得た財産」については、『特有財産』として財産分与の対象から除外されています(民法762条1項)。

    具体的には、次のような財産が特有財産に含まれることになります。

    • 結婚前にためた現金・預貯金
    • 相続した財産
    • 住宅購入時に親から受けた援助金
    • 別居後に取得した財産
    • 浪費やギャンブルのための借金 など
  3. (3)不動産を財産分与する場合の一般的な方法

    現金や預貯金などであれば、財産分与割合に応じて容易に分割することができます。しかし、不動産は現金や預貯金のように、物理的に分割することができません。では、どのような分割方法があるのでしょうか。

    ① 現物分割
    現物分割とは、不動産をどちらか一方の配偶者が譲り受け、もう一方の配偶者は、それ以外の共有財産を譲り受けるという分割方法です。
    現に存在する共有財産を振り分けるだけなので、手続きとしては簡単ですが、不動産の評価額に相当する他の財産がない場合には、現物分割は困難になります。

    ② 代償分割
    代償分割とは、現物分割では不動産の評価額に相当する他の資産がないような場合に、不動産を取得する配偶者が他方の配偶者に対して、一定の金銭を支払う分割方法です。
    代償分割をするためには、不動産を取得する側の配偶者に代償金を支払うだけの資力があることが必要になります。

    ③ 換価分割
    換価分割とは、不動産を売却して、その売却代金を分割する方法です。
    どちらも不動産を取得することを希望しない場合や現物分割・代償分割が困難な事情がある場合には、換価分割が選択されます。不動産を手放さなければならなくなりますが、売却代金を分割すれば良いだけなので、公平な分割が可能になります。

  4. (4)不動産を財産分与する場合の財産分与の流れ

    不動産を財産分与する場合には、次のような流れで行います。

    ① 協議
    まずは、不動産をどのように分割するかについて夫婦で話し合いを行います。財産分与の方法について夫婦間で合意ができた場合には、その内容を書面に残しておくようにしましょう。

    ② 調停
    夫婦間の話し合いによって解決しない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます。離婚と同時に話し合いをするのであれば、夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てます。すでに離婚した後に財産分与を請求するのであれば、財産分与請求調停を申し立てます。
    調停では、調停委員が夫婦の間に入って調整をしてくれますので、当事者同士の話し合いに比べて冷静に進むことが期待できます。

    ③ 裁判(審判)
    離婚調停が不成立となった場合には、最終的には離婚裁判を起こして、財産分与についても離婚の裁判と一体的に解決を図ることになります。なお、財産分与請求調停が不成立になった場合は自動的に審判手続きに移行しますので、特別な申し立てはいりません。
    裁判や審判では、裁判官が当事者の主張や証拠などから相当と考える財産分与の方法を決定します。

2、家を財産分与する際の話し合いで押さえておきたいポイント

家を財産分与する際には、ポイントを押さえて話し合いを進めるようにしましょう。

  1. (1)不動産の名義

    不動産を財産分与することになった場合には、まずは、不動産の名義が誰になっているのかを確認します。
    婚姻期間中に購入した不動産であれば、夫婦の共有財産として扱われますので、名義が夫と妻のどちらであっても特に問題はありません。しかし、夫婦どちらかの親との共有名義であったような場合には、財産分与の方法が変わってきます。
    そのため、名義がどうなっているかを確認することが重要です。

  2. (2)住宅ローンの名義と残額

    次に、家を建てるときに金融機関で住宅ローンを組んだという場合には、住宅ローンの名義と住宅ローンの残高を確認するようにしましょう。
    住宅ローンの金額が不動産の評価額を上回っている場合には、当該不動産は価値がないものとして財産分与の対象から除外されることになります。そのため、住宅ローンの残高を確認することは、不動産を財産分与の対象に含めるかどうかを判断するために必要となります。

    また、財産分与にあたっては連帯保証人に影響が及ぶ可能性もありますので、住宅ローンの名義を確認する際には、連帯保証人が誰になっているかも併せて確認するようにしましょう。

  3. (3)不動産の評価額

    不動産の評価額がわからなければ、適切な財産分与の方法を検討することができません。
    預貯金などであれば、基準時の残高がそのまま評価額になりますので非常に簡単ですが、不動産の場合には、固定資産税評価額、路線価、不動産会社の査定、不動産鑑定士による鑑定など、さまざまな評価方法があります。
    どの評価方法を採用するかによって不動産の評価額は大きく変わってきますので、不動産の評価額を計算する際には注意が必要です。

3、家を売却しない場合に注意したい『名義』

財産分与の方法として、家をどちらかが取得することになった場合には、『名義』に注意が必要です。

  1. (1)家の名義の確認方法

    家の名義については、最寄りの法務局において「登記事項証明書」を取得することによって確認することができます。また、インターネット上の「登記情報提供サービス」を利用すれば、法務局に行かなくても家の名義を確認することができます。

  2. (2)家の名義はどうするべきか

    家の名義については、可能な限りどちらか一方の単独名義にすることをおすすめします

    財産分与の方法として、不動産を共有名義にすることもありますが、不動産を共有名義にした場合には、将来トラブルになる可能性があります。たとえば、何らかの事情で家を売却しようと思ったとしても、どちらか一方だけでは家を売却することができず、必ず共有者の同意が必要になってきます。離婚をしてから時間がたつと、元配偶者と連絡を取ること自体が難しいこともあり、いざ連絡が取れたとしても売却に協力してくれないこともあります。
    そのため、家の名義は、単独名義にしておくことが望ましいでしょう。

  3. (3)家の名義を変更する方法

    財産分与によって家の名義を変更する場合には、法務局に所有権移転の登記申請をすることによって可能です。
    もっとも、住宅ローンが残っている不動産の名義を変更する際には注意が必要です。一般的に住宅ローンを借りる際の契約において、不動産の名義変更をする場合には事前に金融機関の同意を得ることが条件になっていることが多いといえます。そのため、金融機関の同意を得ることなく名義変更を行ってしまうと、契約違反とみなされて住宅ローンの一括返済を求められる可能性もあります
    したがって、住宅ローンが残っている場合には、金融機関とよく話し合いをしてから名義を変更するようにしましょう。

  4. (4)名義が異なる家に住む場合の注意点

    財産分与によって、たとえば、夫名義になっている家に妻と子どもが引き続き居住するという方法がとられることもあります。
    このような場合には、住宅ローンの負担をどちらが行うのか、いつまで居住するのか、ローンの支払いが難しくなった場合にどうするのかなど、居住にあたって取り決めをきちんと行っておくことが必要です。

    なお、住宅ローンが残っている場合には、契約者が居住しないことで契約違反とみなされるおそれもあります。契約書を確認する、金融機関に直接問い合わせるなどで確認しておくようにしましょう。

4、財産分与にあたり家を売却する場合

財産分与にあたって家を売却することになった場合には、家の評価額が住宅ローンを上回る(アンダーローン)場合と、下回る(オーバーローン)場合で方法が異なってきます。

  1. (1)アンダーローンの場合

    家の評価額が住宅ローンを上回る場合には、不動産会社に仲介を依頼して売却を行い、住宅ローンの残額や手数料などを控除した残額を夫婦で分けることになります。
    アンダーローンの場合には、オーバーローンの場合に比べて金融機関とのやり取りが少なくて済みますので、スムーズに売却ができるといえます。

  2. (2)オーバーローンの場合

    家の評価額が住宅ローンを下回る場合には、家を売却することができたとしても借金が残ってしまいます。また、住宅ローンの残高を一括で返済することができなければ、金融機関は設定している抵当権を解除してくれませんので、売却が困難になる可能性があります。
    このような場合には、任意売却によって金融機関と交渉をしながら家の売却を進めていかなければなりません。

5、家を財産分与する際の注意点

家を財産分与する際には、次のような点に注意が必要です。

  1. (1)住宅購入時の頭金に特有財産が含まれている場合

    婚姻後に購入した家については、原則として共有財産として取り扱われ、財産分与の対象となります。しかし、家の購入時には、頭金として一定の金額を支払うことが多く、その際に独身時代にためたお金や、親からの援助によって得たお金から支払いをすることがあります。
    このように、家の購入資金の一部に特有財産が含まれている場合には注意が必要です

    家は、購入してから時間がたつとその価値が変化していきますので、単純に現在の時価から特有財産部分を控除すると不公平な結果になることがあります。そこで、購入時の特有財産割合を計算して、現在の時価から控除するという方法が一般的にとられています。

    たとえば、4000万円の家を購入した際に1000万円を特有財産から頭金として支払ったとします。この場合の特有財産割合は、25%となります。現在の家の時価が3000万円であったとすると、財産分与の対象となる評価額は2250万円という計算になります。

  2. (2)家の財産分与と税金の関係

    財産分与によって家の名義が移転することになった場合、贈与税や不動産取得税が課税されるのではと心配される方もいるかもしれません。

    財産分与は、夫婦の財産関係の清算を目的とするものであり、新たに財産を取得するものではありません。そのため、形式的には財産の移転があったとしても、過大な財産分与をしたと評価できない限りは、贈与税や不動産取得税が課税されることはありません。
    ただし、名義変更にあたっての登録免許税や毎年の固定資産税は、支払う必要がありますので注意しましょう。

  3. (3)財産分与請求権の期限

    離婚と同時に財産分与をする場合には、特に財産分与の期限はありません。しかし、財産分与の話し合いがまとまらないため、先に離婚だけを成立させたような場合には、注意が必要です。
    財産分与の請求権は、離婚時から2年で除斥期間となり、それ以降は一切請求することができなくなります。時効とは異なり、内容証明郵便などで請求をしたとしても、時効の完成が猶予されたり、更新されたりすることはありません。
    そのため、離婚をしてからもうすぐ2年が経過するという方は、すぐに財産分与請求調停、または審判を申し立てる必要があります。急いで弁護士に相談したほうが良いでしょう。

6、まとめ

財産分与の対象に、家(不動産)が含まれる場合には、財産の評価、財産分与の方法、住宅ローンの負担などの複雑な問題が多数絡んできますので、特にトラブルが生じやすいといえます。
弁護士に依頼をすることによって、複雑な財産分与の問題を適切に処理するためのアドバイスを得ることができます。そのため、財産分与をはじめとした離婚問題を抱えている場合は、弁護士のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、財産分与についてお悩みの方からのご相談を承っております。一日でも早く、新しい生活をすっきりとした気持ちでスタートできるよう、弁護士とスタッフが一丸となりサポートします。
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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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