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妻と定年離婚をする前に、夫として準備しておくべき5つのこと

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更新日:2023年06月13日  公開日:2019年11月28日
妻と定年離婚をする前に、夫として準備しておくべき5つのこと

長年連れ添った夫婦が熟年離婚するときには、妻側から「もう離婚しましょう」と切り出す事例が多いイメージがあるかもしれません。

しかし最近では、夫である「男性側」から離婚を切り出すことも増えているようです。熟年離婚のなかでも、定年を機に離婚を希望するケースは「定年離婚」ともいわれます。

今回は、妻と定年離婚する際に夫として準備しておくべきことや、定年離婚の手順などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、定年離婚される妻……考えられる原因はなに?

夫が定年離婚を検討するとき、何が原因になっているのでしょうか? よくある定年離婚の理由をご紹介します。

  1. (1)妻が夫に愛情を持たないでATM扱いする

    定年離婚の理由として多いのは、妻が夫に家族としての愛情を持たず「家にお金を入れてくれたらそれだけでいい」とATM扱いにすることです。「仕事を辞めても、妻の関心の対象が会社の給料から年金に変わるだけで、ATM扱いは変わらないだろう」と思ったとき、夫は何のために妻との結婚生活を送っているのかわからなくなり、定年離婚を考えてしまいます。

  2. (2)妻が夫を強くしつこく責める

    妻が昔の出来事などをいつまでも覚えていてしつこく夫を責めたり「あなたのせいで私は人生やキャリアを諦めた」「子育ても一人でやった」などと言ったりするケースがあります。
    夫は妻に対応するのに疲れて定年離婚を考えてしまいます。

  3. (3)家に居場所がない

    夫が仕事人間だった場合、家が完全に妻の居場所になっていて夫の居場所がないケースがあります。専業主婦の妻が家事や掃除を完璧にしており、夫が何かしようものなら邪魔者扱いするケースも多々あります。夫は自分の家なのに好きなこともできず、退職後の老後の生活を妻と一緒に過ごす意味がないと感じて定年離婚を考えます。

  4. (4)何でも思い通りにしないと気が済まない妻

    女性の中には、何でも自分の思い通りにしようとする方がいます。たとえば夫に対して家事を手伝うように言うけれど実際に手伝ったら文句を言う、夫が外に遊びに行くときに交友関係にいちいち口を出す、気に入らない人とつきあわないように言う、飲み会に行ったり帰りが遅かったりしたら文句を言う、などで夫は年中束縛されている気分になります。
    定年後の人生をずっと妻と一緒に過ごすなんて、一体どうなるのか?」と不安に感じ、夫婦生活の継続を考えられなくなって、定年離婚を考えます。

  5. (5)価値観が合わない

    完全に妻と価値観が合わず、夫が何をしても文句を言われたりばかにされたりすることもあります。あまりに価値観が合わないと老後の介護なども心配です。
    それならば定年後の人生は別々に生きた方が良いだろうと考えて、夫は定年離婚を考え始めます。

2、妻と定年離婚をする前に準備しておきたいこと

夫が妻との定年離婚を考えるなら、以下のような準備をしておきましょう。

  1. (1)今後の生活のこと

    離婚後の生活費についてきっちり計算しておく必要があります。定年になったら基本的に収入は年金のみになるので、できるだけその範囲で生活しなければなりません。企業年金や個人年金などがあればそういったものもの加算できますが、財産分与の対象財産になるため全額は手元に残らない可能性があります。
    また定年離婚では妻に対する年金分割もそれなりに高くなるので、厚生年金や共済年金は、思ったより受給額が少なくなる可能性もあります。
    もしも財産も収入もなかったら、離婚後相手や自分が生活保護受給者になってしまうおそれもあります。

  2. (2)相手の財産がいくらあるのかを確認する

    定年離婚では婚姻期間中に形成した資産も多額になる例が多いので、財産分与が大きな問題となります。妻が家の財産を管理している場合、妻がどのような財産を管理しているのか把握しておかねばなりません。定年離婚を切り出す前に、自宅に保管してある通帳や不動産の権利証、生命保険証書などを確認して、家にどのような資産がいくらあるのか把握しましょう。将来離婚協議や調停、裁判になったときのことを見越して、預貯金通帳や生命保険証書のコピーなど、資料も手元に収集しておくべきです。

  3. (3)財産分与を試算する

    財産の資料を集めたら、財産分与で相手にどのくらい渡さないといけないのか試算してみましょう。法律上、財産分与割合は2分の1です。不動産は不動産会社に査定を出して評価をもらって金額を調べ、生命保険は解約返戻金の金額を調べて計算します。
    基本的に退職金や企業年金も財産分与の対象として考慮される財産になります。

  4. (4)年金分割について

    あなたが会社員や公務員の場合、年金分割制度についても考えておく必要があります。
    年金分割制度とは、婚姻中の厚生年金や共済年金の払込保険料を按分して年金受給額を調整する制度です。適用されるのは厚生年金と共済年金のみであり、国民年金には影響しません。
    年金分割では、完全に年金が半額ずつになるのではなく結婚期間中に払い込んだ保険料に応じて年金事務所が金額を調整して両者へ支払います。年金事務所に問い合わせをして情報開示を行うと年金分割した場合のシミュレーションの金額を教えてもらえるので、妻に離婚を切り出す前に受取見込み額を調べておきましょう。

  5. (5)慰謝料の請求について

    あなたや妻が婚姻期間中に不倫していた場合には、離婚慰謝料が発生します。もしも妻が不倫していたなら、妻の不倫の証拠を集めましょう。そうすれば離婚の際に慰謝料を請求できます。反対にあなたが不倫していて妻がその証拠を握っていたら、離婚時に慰謝料を支払わないといけなくなります。慰謝料額はさまざまな事情が考慮され決まっていきますので一概には言えないものの、50万円~300万円ほどが一般的です。ただし、定年離婚の場合はこれ以上の金額になる可能性もあります。

    参考:離婚に伴う慰謝料

3、定年離婚すると退職金の扱いはどうなる?

定年離婚の場合、退職金はどのような取り扱いとなるのでしょうか?
退職金は、財産分与の対象となり得るケースとならないケースがあります。
財産分与の対象になり得るのは、以下のような場合です。

  • 退職金支給時期が近い
  • 退職金が支給される蓋然(がいぜん)性が高い

退職までの年数が10年以下で、上場企業や公務員など退職金が支給されることがほとんど確実な場合には、退職金が財産分与の対象となり得ます。その場合、退職金見込み額の2分の1の金額を相手に渡すか、実際に退職金が入ってきたときに分け合う必要があります。

ただし在職中にずっと婚姻していたわけではない場合には、在職期間を婚姻期間で按分した金額に調整します。
たとえば退職金が2000万円で婚姻期間が30年、在職期間が40年だったら、財産分与対象額は2000万円×4分の3=1500万円分となります。これを夫婦で2分の1ずつに分けます。

すでに退職金を受け取り済みで預貯金口座に入金されている場合には、全額が財産分与の対象になり得ます。

4、定年離婚の手順について

男性が夫婦関係を終わらせるために定年離婚を希望するとき、どのように進めていけば良いのでしょうか?以下で手順をご紹介します。

  1. (1)離婚協議をする

    離婚するとき、まずは相手と話し合って「協議離婚」を目指しましょう。協議離婚なら、相手が離婚に応じて未成年の親権者さえ決めれば離婚が成立します。ただし財産分与や慰謝料、年金分割などの離婚条件、未成年の子どもの養育費についてもきちんと取り決めて「協議離婚合意書」を作成しておきましょう。
    離婚条件を取り決めておかないと、定年離婚後に相手から財産分与請求調停などを起こされてトラブルになる可能性があります。

  2. (2)離婚調停をする

    定年を機に「離婚したい」というと、妻が強く拒絶するケースも多々あります。その場合には家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚調停)」を申し立てて、調停手続き内で話し合いを続けていく必要があります。

  3. (3)離婚訴訟をする

    調停で話し合いをしても合意できない場合には、離婚訴訟によって決着をつける必要があります。ただし訴訟では「法律上の離婚原因」がないと離婚が認められません。
    相手が不倫している場合、相手が家出して戻ってこない場合、相手がモラハラ行為をしている場合、長期にわたって別居期間が継続している場合などでは離婚を認めてもらえます。

    離婚原因を証明できなければ訴訟を起こしても棄却され、戸籍上の夫婦関係が続きますし離婚が成立するまでの婚姻費用(生活費)の支払いも必要になります。

5、定年離婚を考えた際の相談先は?

定年離婚したいと考えたとき、自分一人では結論を出せないこともあるでしょう。そのような場合、以下のような相談先を利用してみてください。

  1. (1)離婚すること自体を悩んでいる

    そもそも離婚するかどうか悩んでいるなら「離婚カウンセラー」を利用してみることをおすすめします。
    離婚カウンセラーは、あなたの気持ちを解きほぐして、本当は何を望んでいるのか一緒に探してくれます。「離婚したい」というもやもやした思いを抱えていても、実は妻に「変わってほしい」と思っているケースや漠然とした定年への不安を抱えている場合もあります。
    もしも定年離婚せずに解決できるなら、そちらの方がスムーズに幸せな老後を過ごせる可能性があるので、一度相談してみましょう。

  2. (2)定年離婚は決意しているが、なるべく損したくない

    定年離婚すると心に決めて迷いはないけれど、離婚条件でなるべく損をしたくない方もおられます。その場合には、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。弁護士が資料集めや交渉の方法をアドバイスしたり離婚協議、調停、訴訟などを代行したりして、可能な限り有利な形で離婚を実現させていきます。

  3. (3)相手が離婚に同意してくれない

    夫が定年離婚を切り出したところ、妻がかたくなに応じない場合にも早めに弁護士に相談すべきです。弁護士が代理人として妻に連絡を入れると、離婚したいという本気度が伝わり、妻も諦めて離婚に応じるケースがあります。また離婚原因を明らかにして訴訟を提起し、判決で離婚を勝ち取ることも可能です。

  4. (4)男女問題を抱えている

    自分が不倫していて離婚時に妻にバレたくない場合や、反対に妻が不倫しているので慰謝料請求したい場合には、具体的な話し合いを開始する前に弁護士に相談すべきです。
    自分で中途半端な動きをしてしまうと、相手につけいる隙を与えて不利になってしまう可能性が高まるためです。

6、まとめ

最近は「卒婚」と言って「結婚生活を卒業し、自分の人生を取り戻したい」と希望する男性が増えています。定年退職後には新たにビジネスを興し、第二の人生を送りたい方もおられるでしょう。
定年離婚を真剣に考えてみるのも悪いことではありません。

定年離婚に際し、財産分与や年金分割がどのくらいになるのか相談したいと思われているときは、まずは一度、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。離婚問題に知見のある弁護士が、親身になってお話をうかがいます。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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