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離婚時の財産分与に時効はある? 先延ばしにするリスクも解説

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更新日:2024年10月09日  公開日:2020年01月30日
離婚時の財産分与に時効はある? 先延ばしにするリスクも解説

「とにかく早く別れたい!」という気持ちが強く、離婚の成立を優先させ財産分与を後回しにしてしまうケースがあります。

落ち着いてから話し合おうと考えていても、別れてしまうと話し合う機会を持ちにくくなりがちです。また、相手が話し合いに応じてくれないケースもあり、先延ばしになってしまうことも少なくありません。

ここで気になるのが、いつまで財産分与請求が可能なのか、ということです。
本コラムでは離婚後に財産分与を請求できる期限について、弁護士が解説します。

1、財産分与とは

まず財産分与について、基礎知識を確認しておきましょう。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与請求権は、離婚するときに相手に対して「夫婦の共有財産の清算」を求める権利です。
    婚姻期間中は夫婦の預貯金や不動産などの財産が「共有」でも、特段問題はないでしょう。しかし、離婚すると共有のままにしておくと不都合が生じるので、分割する必要が生じます。その手続きが財産分与です。
    離婚の際、夫婦はお互いに「財産分与請求権」を行使して、相手に財産の清算や引き渡しを求めることができます。

  2. (2)財産分与の対象になり得る財産

    財産分与の対象になるのは、夫婦が協力して婚姻中に築いた財産のみです。どちらかが独身時代から持っていた財産や、実家から相続・贈与を受けた財産などは対象になりません
    具体的には、以下のような財産が対象です。


    • 現金・預貯金
    • 不動産
    • 株式や投資信託、債券
    • 動産類
    • 保険(積立型のもの)
    • ゴルフ会員権
    • 各種の積立金、積み立て資産


    なお、特に注意したいのが銀行口座です。相手が隠し口座を持っている可能性もあります。
    相手が開示した財産内容において腑に落ちない点がある場合などは、弁護士会照会などで調査すると判明する場合もあります。弁護士へ相談すると良いでしょう。


    「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

    適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

2、離婚後も財産分与は可能|離婚後の財産分与における注意点

離婚する際に財産分与の取り決めができなかった場合は、離婚後に財産分与を請求できます。
ただし、離婚後に財産分与請求をする場合は、相手が話し合いに応じないといったケースも想定されます。どのような点に注意しながら、請求を進めるべきなのかを確認していきましょう。

  1. (1)対象財産を把握する

    離婚成立前であれば、郵便物や自宅に保管している書類などから、比較的スムーズに共有財産を把握することができます。ところが離婚後は、別居して生活がバラバラになるため、財産を把握しにくくなります。

    元配偶者が、任意での財産開示に応じない場合や、開示された内容に疑問がある場合には、弁護士会照会制度裁判所の調査嘱託(ちょうさしょくたく)によって、相手方の財産に関する情報を取得することが検討できます。

    弁護士会照会は、弁護士法第23条の2に基づく制度で、弁護士は依頼を受けた事件に関する情報や証拠の調査、収集を弁護士会に対して求めることができます。申し出が認められると、金融機関や勤務先に情報の開示を請求でき、口座や給与などを確認することが可能になります。
    ただし、弁護士会照会は弁護士しか行うことはできないため、弁護士に依頼する必要があります。

    調査嘱託は、裁判所から情報の開示を求める制度です。弁護士会照会とは異なり、調停や訴訟に進んだ場合に利用できる制度であり、話し合いの段階では利用することはできません。

  2. (2)財産の価値を適切に評価する

    離婚後に限ったことではありませんが、財産分与では、対象財産の価値を適切に評価することが大切です。
    特に離婚した後は、手元に対象の財産がないというケースも想定されます。相手が申告してきた額が適正なのか判断がつかなければ、話し合いがこじれてしまうおそれもあります。

    そのため、たとえば不動産であれば、お互いが納得した専門業者に査定を依頼するなど、足並みをそろえていく必要があるでしょう。

  3. (3)手続きを早急に進める

    財産分与には請求できる期限が定められています。そのため、離婚後に財産分与請求をする場合には、財産分与の手続きを早急に進める必要がありますし、話し合いがうまく進まない場合には早期に調停を申し立てておく方が良いでしょう。

    離婚後、金銭的に苦しくなったときに相手に請求しようと思っていたとしても、いざ請求しようとしたときには、請求権がないといったことも起こり得るため注意が必要です。

3、離婚後に財産分与を請求できる期限

離婚後も、一定期間は離婚した元配偶者へ財産分与を請求することができます。しかし、前述したように請求には「期限」があるので要注意です。

離婚後の財産分与の請求期限は「離婚成立後2年間」です。
離婚時に財産分与についての取り決めをしなかった場合は、「離婚成立後2年以内」に相手に財産分与請求を行わなければ、請求権を失ってしまいます。

なお、離婚前に別居していたケースでも、財産分与の請求期限は「離婚成立時」からカウントします。「別居時から」ではないので注意しましょう。


「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与について詳しく解説しています。ぜひご参考ください。

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4、財産分与を請求できる期限=時効ではない? 除斥期間とは

民法は権利行使の期間制限として、「時効」と「除斥期間」の2種類をもうけています。離婚後の財産分与請求に適用される期間制限は、「時効」ではなく「除斥期間」です。
では、「時効」と「除斥期間」では何が違うのでしょうか。

  1. (1)時効とは

    時効とは、一定期間が経過することによって権利が失われたり(消滅時効)、あるいは権利を取得したり(取得時効)する制度です。たとえば、借金の請求を忘れていた場合、一定期間が経過すると請求する権利(貸金請求権)がなくなりますが、これは消滅時効による効果です。

    時効には「完成猶予」、「更新」があります。
    「完成猶予」とは、時効の進行を一時的にストップすることをいい、「更新」とは、進んでいた時効期間が一定の事由によってリセットされてまたゼロからスタートすることをいいます。

    時効期間中に内容証明郵便等で請求する(催告)と、6か月間時効の完成が猶予されます。なおこの場合、時効の更新をするためには訴訟を提起して判決等を得る必要があります。
    時効期間の進行中に裁判を起こして判決が下されると、時効は更新されますので、進行していた時効はリセットされ確定判決時から時効期間を改めてカウントし始めることとなります。時効については、支払い義務者が時効を援用して初めて請求権が消滅します。

  2. (2)除斥期間とは

    除斥期間とは、期間の経過によって当然に権利が失われる制度です。期間が経過したら絶対的に権利が失われます。時効のような完成猶予や更新はありません。
    除斥期間中に裁判外で請求をしたとしても、除斥期間の完成猶予はできず、期間経過後に訴訟などで請求を行うことはできません。

    除斥期間については、支払い義務者が援用する必要はなく、期間の経過により当然に請求権は消滅します。

  3. (3)財産分与の請求期限は「除斥期間」

    「時効」と「除斥期間」は一見すると類似した内容に感じるため、離婚後の財産分与請求の請求期限を「時効」であると勘違いしている方もいらっしゃいますが、離婚後の財産分与請求権の請求期限は除斥期間です。除斥期間は途中で中断させることはできないので、必ず2年以内に請求しなければなりません

    ここで気になるのが、たとえば相手が協議に応じてくれず、請求期限の2年の終わりが近づいてきてしまった場合です。そのようなケースではどのようにすればよいのでしょうか。次の章で詳しく解説します。

5、除斥期間中に財産分与の話し合いがまとまりそうでない場合

離婚後の財産分与の請求期限は2年です。当事者間で話し合いを始めても、財産分与方法などについて合意できないケースや、相手がこちらの請求を無視するケースもあります。

  1. (1)財産分与請求調停を申し立てる

    財産分与について話ができないまま2年の請求期間を過ぎそうなときには、2年が経過する前に、家庭裁判所で「財産分与請求調停」を申し立てましょう
    2年が経過してしまうと調停を申し立てることもできなくなりますので、早期に行う必要があります。

    調停とは、裁判所の調停委員会を介して、当事者が話し合いを進める手続きです。裁判官と2名の調停委員が間に入って話を進めてくれるので、相手が無視したり、払わないと強硬な態度を取ったりしている事案でも、解決できる可能性があります。

  2. (2)調停が不成立になると審判になる

    調停委員会による仲介があっても話し合いが成立しない場合には、調停が不成立となり審判手続に移行します。審判になると審判官(裁判官)が財産分与の方法を決定し、相手に支払い義務がある場合は、支払うよう命ずる内容の審判を下してくれます。

    相手が命令に従わない場合は、相手の財産を強制執行(差し押さえ)することができます

    財産分与調停を申し立てれば、調停や審判の進行中に除斥期間が過ぎたとしても、それによって手続きが終了することはありません。相手との話し合いが難しい場合やもめそうな場合は、早めに財産分与調停の申し立てに踏み切るのが得策です

6、除斥期間を過ぎても、財産分与を行えるケース

ここまで説明したように、離婚後に財産分与を請求するには、原則として2年の除斥期間が経過する前に手続きを終える必要があります。
しかし、以下のようなケースであれば、離婚後2年が経過しても財産の分与を受けられる可能性があります。

  1. (1)お互いが合意する場合

    当事者が共に財産分与に合意すれば、2年を過ぎていても財産分与を行えます。除斥期間は「財産分与請求権が法律的に失われる」制度ではありますが「除斥期間が経過したら財産分与をしてはいけない」制度ではないからです。

    たとえば、離婚後2年が経過してから離婚した配偶者に財産分与請求をしたとき、元配偶者が分与に納得して財産分与方法について合意ができれば、不動産や預貯金等の財産分与を受けられます。

    ただし、通常の財産分与であれば贈与税がかかりませんが、離婚から2年が経過した後の「財産分与」については、税務上、財産分与と認められない可能性があります。この場合には贈与税等がかかりますので、ご注意ください。

  2. (2)相手が悪質な財産隠しをしていた場合

    相手が悪質な財産隠しをしていた場合には、不法行為に基づく損害賠償請求として実質的には財産の分与を受けられる可能性があります。

    2年を過ぎている場合には、悪質な財産隠しがあったとしても財産分与を請求することはできませんので、これは財産分与ではありません。あくまで不法行為に基づく損害賠償請求であり、その中で、本来受けられたであろう財産の分与を実質的に得ようとするものです。

    財産分与を行うときには、夫婦共有の財産をすべて開示し合います。仮に夫婦共有財産を一方の配偶者が隠し、「ないもの」として相手をだまして少額な財産しか渡さなかった場合は、だました配偶者には不法行為が成立する可能性があります

    不法行為に基づく損害賠償請求権は「損害と加害者を知ったときから3年」の時効か、「不法行為の時から20年」の除斥期間により消滅します。この期間の中であれば、相手の悪質な財産隠しを不法行為として損害賠償請求を行うことが可能です。ただし、請求が認められるためには証拠が必要ですので、まずは弁護士にご相談ください

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7、財産分与を請求する際に知っておきたいこと

離婚後に財産分与を請求する場合には、請求期間以外にも押さえておきたいポイントがあります。

  1. (1)住宅ローンが残っている住宅(不動産)を売却する場合

    婚姻期間中に購入したマイホームは、名義にかかわらず財産分与の対象になります。

    不動産は、物理的に分割することができませんので、夫婦のどちらかが取得するか、売却して売却益を分けることになります。売却する際、住宅ローンが残っている場合は注意が必要です。

    住宅ローンの残債よりも高い金額で売却できた場合(アンダーローン)は、住宅ローンを返済することができ、余剰分を分割すれば良いため問題は少ないでしょう。

    一方、住宅ローンの残債よりも低い金額でしか売却できなかった場合(オーバーローン)は、住宅ローンを完済することはできません。残債分を補てんできるだけの資力がない場合は、財産がマイナスになってしまいます。
    この場合、住宅は売却せずに一方が住み続けて住宅ローンを返済していくなど、対応を検討する必要があるでしょう。

    マイホームを売却することを考えている場合は、まずは住宅の評価額を調査し、その金額とローンの残債を確認したうえで、どのようなかたちで分与するのかについて検討するべきといえます。

  2. (2)退職金の取り扱い

    定年退職が近く、退職金が支払われることが決まっている場合には、退職金が財産分与の対象となるのか気になるところでしょう。退職金は、賃金の後払いという性質があるため、給与と同じく財産分与の対象となり得ます。

    すでに退職金が支給されている場合や、支払われることがほぼ確実といえる場合には、財産分与の対象となる可能性は高くなります

    一方、働き始めてから数年しかたってない場合や、退職予定が10年以上先で将来退職金を受け取れるのか不明瞭な場合には、退職金の分割は認められないこともあります。
    また、そもそも退職金制度がない会社の場合は、退職金は支払われないため、会社の制度なども確認しておくべきといえます。

    なお、退職金が財産分与の対象になるときでも、満額が対象になるとは限りません。
    財産分与は、夫婦が協力して婚姻中に築いた財産のみを対象とするものです。そのため、退職金についても、婚姻期間中に形成された部分のみが対象になります。
    たとえば40年間勤務したうち、最初の10年間は独身時代、その後の30年間が婚姻期間ということであれば、30年分に対応する退職金のみが財産分与の対象になります。

  3. (3)慰謝料と財産分与は異なる

    離婚時に配偶者に金銭請求できる権利には「慰謝料請求権」もあります。財産分与と慰謝料を混同しないよう、違いを理解しておきましょう。

    慰謝料は、相手による不法行為によって受けた精神的苦痛について発生する、損害賠償金です。たとえば相手が不貞(不倫)した場合や、暴力を振るった場合(DV事案)、生活費を払ってくれなかったケースなどで慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料は、夫婦に財産があるかどうかは関係なく、相手の不法行為が認められた場合に発生します

    一方、財産分与請求権は夫婦に共有財産があることによって発生します。たとえば、相手が不貞をしていたとしても関係ありませんし、仮にあなたが離婚原因をつくった側だったとしても、財産分与請求はできます

    このように、財産分与請求権と慰謝料請求権は発生する根拠も内容も全く異なります。相手に請求したいのはどちらなのか、また請求権があるのかといった点が分からない場合は、弁護士へ相談するのが得策です。

8、円満な財産分与を行うためのポイント

離婚後の財産分与は、トラブルになることも少なくありません。円満に行うためには、どうすれば良いのでしょうか。

  1. (1)相手の性格や状況を考えて対応する

    円満な財産分与を行うためには、相手の性格や状況に合わせた対応をすることが大切です。

    たとえば、怒りっぽく感情的になりやすい相手であれば、当事者だけでなく第三者を交えて話し合う、合理的な考え方をする相手であれば、弁護士などから裁判で争うことになったときの見込みを伝えるなど、それぞれにあった対応策を考えると良いでしょう。

    また、離婚後は、それぞれが新しい生活をスタートさせているので、状況が大きく変わっていることも考えられます。主張はしっかりと伝えつつも、相手の状況に応じて柔軟に対応する姿勢をみせることで、円満な財産分与を実現できる可能性は高まります。

  2. (2)弁護士のサポートを得る

    離婚成立前は、離婚成立後に比べて夫婦の共有財産を把握しやすく、相手との連絡も取りやすい状況であるのが一般的です。また相手が離婚成立を急ぐときには、有利な条件で財産分与を行えることもあります。ところが離婚をしてしまうと、連絡が取りにくくなるだけではなく、相手側が財産分与を望まなければ、のらりくらりと対応を先延ばしにされる可能性もあり得ます。

    そのため、離婚後に財産分与を請求する場合は、弁護士のサポートを得ることをおすすめします。
    弁護士は代理人となれるので、元配偶者への連絡や交渉などを任せることが可能です。弁護士が代理人となり、法的根拠に基づき財産分与を請求することで、相手が交渉に応じるケースも少なくありません。また、相手が財産情報を開示しない場合は、弁護士会照会などによって財産情報を収集することも検討できます。

    このように、個人では対処法が分からずあきらめてしまうような事態にぶつかった場合も、弁護士のサポートを得ることで解決できる可能性があります。適切な財産分与を実現させるためにも、離婚問題の対応実績が豊富な弁護士に依頼すると良いでしょう。

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9、まとめ

離婚後については財産分与や養育費など、離婚する相手と決めなければいけないことは多数あります。その中でトラブルが発生するケースも少なくありません。

弁護士に相談すれば、あなたにどのような権利があるのかが正確に分かりますし、適切に請求していくことができます。
婚姻費用や慰謝料などの離婚問題を抱えている方、離婚後の財産分与請求でお悩みの方は、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所までご連絡ください。離婚専門チームの弁護士が、権利を実現させるために尽力します。

参考:財産分与についての基礎知識

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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