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アメリカ人との国際離婚……手続きや親権はどうなる?

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更新日:2020年02月21日  公開日:2020年02月20日
アメリカ人との国際離婚……手続きや親権はどうなる?

アメリカ人と国際結婚しているとき、相手と離婚するにはどういった方法で手続きを進めていけば良いのでしょうか?

国際結婚するときの手続きが大変だったことを思い出すと、国際離婚の際にはなおさら大変なのではないかと不安に思われるかもしれません。確かに国際離婚の場合、日本人同士とは異なる手続きが必要になるケースも多く、さまざまな注意点があります。

今回は国際離婚の中でもアメリカ人との離婚にフォーカスして、注意点を弁護士が解説します。

1、離婚の方法は国によってさまざま

結婚や離婚の制度はほとんどの国にありますが、離婚の方法は国によって違います。
日本では大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類の方法が認められていますが、協議や調停による離婚方法が存在しない国もあります。

協議離婚…夫婦が裁判外で話し合って合意することによって成立する離婚
調停離婚…夫婦が家庭裁判所で話し合って合意することによって成立する離婚
裁判離婚…裁判所で離婚訴訟を行うことによって成立する離婚


国際離婚の場合、日本国内で離婚手続きをすれば済むとは限りません。
相手国でも離婚の手続きをしておかないと、日本国内では離婚が成立していても相手国では離婚できていない状態になり、相手国で「重婚」状態となってしまうおそれがあります。

2、アメリカ人との国際離婚の方法は?

離婚手続きは国によって異なるので、国際離婚で必要な手続きも配偶者の本国によって違う可能性があります。
ここではアメリカ人との離婚の場合どうすればよいのかご説明します。

  1. (1)適用される法律について(準拠法)

    アメリカ人と国際離婚する場合、日本とアメリカのどちらの国の法律が適用されるのかを確定しなければなりません。
    国際離婚で日本法が適用される条件は、以下の4つです。

    • 夫婦の一方が日本人で日本に居住している
    • 夫婦の国籍がどちらも日本
    • 夫婦が常に日本に居住している
    • 夫婦に密接な関係のある国が日本


    相手がアメリカ人でも夫婦で日本国内にて生活している場合や、あなたが日本人で日本に居住している場合には日本の法律に従って離婚できます。ただし、アメリカでは協議離婚を認めない州が多いため、アメリカで離婚の効力を有効とさせるためには、調停離婚や裁判離婚にて離婚をする必要があるため注意が必要です。

    そのほか、アメリカ人配偶者とアメリカ国内で生活している場合や第三国に居住している場合、日本法が適用されない可能性があります。
    アメリカに住んでいるならアメリカ法が適用されるケースが多数ですが、アメリカでは州ごとに法律が違います。その州の法律に詳しい弁護士に相談し、離婚手続きを依頼する必要があります。

  2. (2)どこの裁判所で手続きをするか(国際裁判管轄)

    国際離婚の場合、「どこの裁判所で離婚手続きを行うか」も問題になります。国際的なケースでどこの裁判所に管轄が認められるかという問題を「国際裁判管轄」といいます。
    国際離婚の裁判管轄は、原則として「被告の住所地国」に認められます。

    アメリカ人配偶者が日本に居住していれば日本の裁判所、アメリカに帰ってしまっていたらアメリカの裁判所で裁判をする必要があります。
    ただし以下のケースでは、例外的に「原告の住所地国」の裁判所にも管轄権が認められます。

    ●原告が遺棄された場合
    アメリカ人配偶者によって日本人が見捨てられた場合、日本の裁判所で調停や訴訟を利用できます。

    ●被告が行方不明の場合
    アメリカ人配偶者が行方不明の場合にも日本の裁判所で手続きが可能です。

    ●その他これに準ずる場合
    上記に準じるケースでは日本の裁判所で離婚手続きできる可能性があります。

3、国際離婚の場合、子どもの親権はどうなる?

  1. (1)親権に関する制度は日本法とアメリカ法で大きく異なる

    アメリカ人と国際離婚する場合、子どもの親権者に注意が必要です。親権については日本とアメリカで大きく取り扱いが異なるからです。
    日本では離婚後の親権が「単独親権」となりますが、アメリカでは「共同親権」です。
    単独親権とは父親か母親の一方にしか親権が認められない制度で、共同親権とは父母の双方に親権が認められる制度です。
    日本法が適用される場合には父母どちらかを親権者として指定しなければなりませんが、アメリカ法が適用される場合には離婚後も父母が共同親権者となります。

  2. (2)親権者の判断に適用される法律

    もしもあなたがアメリカ人配偶者との国際離婚後に子どもの単独親権を獲得したいなら、日本法を適用する必要があります。
    基本的に「子どもが日本国籍で父母のどちらか一方が日本国籍」なら、日本法が適用されます。日本では子どもが20歳になるまで日本国籍が留保されるので、あなたが日本人なら日本法が適用される可能性が高いといえます。

  3. (3)日本法で親権者を判断する基準

    日本法によって親権者が判断される場合、以下のような要素が考慮されます。

    • これまでの養育実績
    • 現在の子どもの環境
    • 現在の父母と子どもの関係性
    • 離婚後の子どもの養育環境
    • 父母の養育方針
    • 健康状態や経済状態


    これまであなたが主として子どもの養育を行ってきて、子どもが日本で大きくなってきたような場合には、あなたが引き続き単独親権者になれる可能性が高いといえるでしょう。

  4. (4)国際離婚で親権者を決めるときの注意点

    アメリカ人との国際離婚で親権者を決めるとき、以下の点に注意が必要です。

    ●子どもの国籍は親権には関係ない
    ひとつは、子どもの国籍と親権の関係です。「子どもが日本国籍なら日本人である自分に親権が認められるだろう」あるいは「子どもがアメリカ国籍なら不利になるのでは?」と考える方が多いのですが、「子どもの国籍と親権者の判断には基本的に関係がありません」。
    子どもがアメリカ国籍でもあなたが親権をとれる可能性がありますし、日本国籍でも相手に親権をとられる可能性があります。
    親権を獲得したければ、日本の裁判所の判断の枠組みを押さえた上で適切な対応が必要です。

    ●アメリカで決定があっても、日本では自動的には効力を発揮しない
    アメリカの裁判所で離婚裁判が行われ、離婚や親権について決定されてしまったとしても、当然には日本で効力を発揮しません。外国の裁判が日本で有効になるためには所定の承認手続きが必要です。
    承認されるには以下の4つの要件を満たす必要があります。

    • 判決を下した裁判所に管轄がある
    • 訴状が有効に送達されている
    • 判決が公序良俗に反しない
    • 相互に外国判決承認の保証がある


    外国で判決が出ても承認されず無効になるケースは少なくないので、アメリカで国際離婚の判決が出てしまって納得できない方は、一度弁護士までご相談ください。

  5. (5)子どもを連れ去られた場合

    あなたが親権者・監護者になったにもかかわらず子どもをアメリカに連れ去られた場合、「ハーグ条約」にもとづく返還請求が可能です。日本の外務省のハーグ条約局に援助申請を出し、アメリカの裁判所でハーグ条約に基づく返還申し立てを行います。
    おひとりで対応するのは困難でしょうから、この連れ去り被害に遭ったときにはすぐに弁護士までご相談ください。

    参考:ハーグ条約について

4、アメリカ人との国際離婚で気を付けるべきこととは?

アメリカ人との国際離婚では、特に以下のような点でトラブルになりがちなので要注意です

  1. (1)アメリカでは不貞慰謝料が発生しない

    アメリカ人夫と日本人妻のカップルで、アメリカ人夫が不倫したために離婚するケースを考えてみてください。日本人の感覚なら、不倫されたら慰謝料請求できると考えるのが通常です。
    しかし、アメリカでは多くの州において不貞慰謝料の規定がありません。アメリカ人配偶者に不倫されても慰謝料を払ってもらえない可能性があるのです。

    協議離婚する場合にも、アメリカ人配偶者は「不倫したからといって慰謝料を支払う必要はない」と考えているため、日本人女性との認識の違いからもめごとに発展するリスクが高くなっています。

  2. (2)アメリカでは協議離婚が認められない

    日本では9割近くの割合で「協議離婚」が行われています。夫婦が話し合い、合意をして離婚届を提出するだけで離婚が成立します。
    しかし、アメリカでは協議離婚は認められず、必ず「裁判手続き」が必要です。上述の通り、日本で協議離婚を成立させてもアメリカでは離婚が認められない可能性が高くなります。

    すると、アメリカ国内ではあなたと配偶者との婚姻関係がずっと続いてしまいます。
    日本法が適用されるケースでも協議離婚だけで済ませるのは危険です。

  3. (3)アメリカ人との国際離婚では、離婚調停を利用しよう

    アメリカ人との結婚生活を終わらせ国際離婚するなら、離婚調停を申し立てて離婚を成立させましょう。
    ひとつには、アメリカでも「調停離婚」であれば正式な離婚として認めてもらえる可能性が高いからです。協議離婚は、アメリカでは離婚として認められない可能性があり危険です。

    もうひとつは、調停調書があれば相手が養育費や財産分与などのお金を支払わなかったとき、相手の資産等を差し押さえて取り立てられるからです。
    相手が海外居住の場合、日本人相手のケースよりもさらに離婚時の約束が果たされなくなりがちです。せめて法的な強制力を持って取り立てる権利を獲得するため、調停調書くらいは入手しておきたいところです。

    以上のようにアメリカ人をはじめとして外国人配偶者と離婚するときには、日本人同士の離婚とは比較にならないほど複雑で困難な問題を伴うケースが多々あります。 安全かつスムーズに離婚を成立させるには、国際離婚の対応が可能な弁護士に相談すべきといえるでしょう。

5、まとめ

あなたがアメリカ人と国際離婚しようとしているなら、「どうすれば良いのだろう」と不安になり、いろいろと情報収集をされている最中かもしれません。
しかし、おひとりで調べきれる情報には限界がありますし、自己判断で行動すると間違いが起こる可能性も高まります。国際離婚には弁護士によるサポートが最善です。ベリーベスト法律事務所で、弁護士がアメリカ人との国際離婚を万全の体制で支援しますので、お困りの際にはぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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