『夫婦の危機』がやってきた!? 離婚する夫婦の特徴【弁護士解説】
生涯の愛を誓い合い、ふたりで選んだ結婚。しかし、結婚生活の日々を重ねていくうちに、互いのよい部分だけでなく、悪い部分も見えてくるものです。
気が付いたら、「夫(妻)と会話のない冷え切った夫婦になっている」「夫婦関係も破綻していて結婚生活に疲れた」なんて事態に陥っている夫婦もいるでしょう。
このような夫婦の危機的状況から、「離婚したい」と考えてしまうのも無理はありません。
厚生労働省が公表する「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」によると、47万4741組結婚した夫婦がいる一方で、18万3814組の夫婦が離婚を選択しているようです。
実のところ、多くの離婚相談をうける弁護士から見ると、離婚する夫婦にはある『特徴』があります。
本コラムでは、離婚する夫婦の行動パターンや傾向、「離婚したい」と考える離婚理由、離婚後の生活などについて、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
目次を
1、一番多い「離婚の理由」とは?
おそらくもっとも気になることが、離婚を選択した夫婦の離婚理由でしょう。協議離婚の際、提出する離婚届には、離婚する理由を書く欄はありません。よって、一般論から想像するほかないように思えますが、公的機関により「離婚したい理由」をまとめた資料が存在します。
それは、家庭裁判所が発行している司法統計です。
家庭裁判所では、話し合いで離婚話がまとまらなかった夫婦のために、調停制度を設けています。多くのケースでは、離婚を希望する人がこの調停を申し立てますが、そのとき、離婚したい理由について、「その他」を含む13個の選択肢から選んで記載しなければなりません。
調停の申立書に選択肢として掲載されている離婚したい理由は、以下のとおりです。
男女ともに共通してもっとも多い離婚したい理由は、「性格が合わない」です。ここは誰もが納得できるのではないでしょうか。
しかし、以降の順位には男女差が現れていて、夫は「異性関係」という方や「浪費する」が上位に入ってきます。また、精神的なDVの被害者となっている方も少なくないようです。
一方妻側は、生活費の問題や精神的・肉体的な虐待、暴力が上位に入っていることがわかります。相対的に、女性の場合は生活や精神、命に危険を感じたからこそ、離婚を希望する方が多いのかもしれません。
2、離婚危機を迎えやすいのは結婚何年目?
一般的に「若い夫婦ほど離婚する」と言われがちですが、実際のところはどうなのでしょうか。婚姻期間と離婚の関係についても、政府統計があります。
令和5年度の 「人口動態統計(確定数)の概況」には、「年次別にみた同居期間別離婚件数及び百分率並びに平均同居期間」というデータが掲載されています。同居期間とは、結婚から離婚に至るまでの年数と考えてよいでしょう。
令和5年度は、約18万4000組が離婚していますが、そのうちもっとも離婚件数が多い同居期間は、「5年未満」、そして次点は「5年以上10年未満」そして3番目は「10年以上15年未満」という結果になっています。
この統計は昭和22年から継続してデータが取られていますが、平成14年以降、現在1~2位となっている同居期間「5年未満」と「5年以上10年未満」の離婚数は減少傾向にあります。
一方で、「10年以上15年未満」については、多少の増減はあるものの一定の数で推移している状況です。
統計情報から紐解くと、離婚危機はまず、結婚から5年以内にもっとも高まりますが、その危機は、結婚してから15年未満まで継続すると言えるでしょう。
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3、離婚無料相談の現場で弁護士は見た! 離婚する夫婦に共通する特徴4つ
ベリーベスト法律事務所では、離婚・男女問題に関する初回相談を無料(60分まで)で相談することが可能です。その中でご相談者さまがおっしゃる内容としては、離婚理由でもっとも多い「性格が合わない」。
いわゆる性格の不一致がもっとも多く、将来を誓い合った夫婦とはいえ、育った家庭環境も違い一人ひとり異なる人間ですから、多かれ少なかれ性格の不一致というものはあるものです。
もちろん「似たもの夫婦だからずっと仲がいい」という方もいらっしゃいます。しかし、「自分と価値観が違うから楽しい」というご夫婦もいらっしゃるのもまた真実で、性格が合わないというだけですぐに離婚してしまうわけではありません。
また、「子はかすがい」と言われますが、データ上、子どもの有無と離婚回避の関係性は見られません。実際に、令和5年は18万3814組の夫婦が離婚していますが、未成年の子どもがいる夫婦の離婚は全体の51.4%と過半数以上を占めています。
[引用元:政府統計 人口動態統計(令和5年)]
多くのご相談を伺ってきた弁護士という立場から見ると、実のところ、離婚に至ってしまうご夫婦にはとある共通事項があります。
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(1)コミュニケーションが足りない
圧倒的に多いのが、コミュニケーションが足りないと思われるケースです。
法律では、第731条から第771条にかけて、婚姻から離婚に至るまで、さまざまな効力や要件を定めています。代表的な一文が「同居、協力及び扶助の義務」を定めた民法第752条でしょう。「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と明文化されています。
互いに協力するということは、「言わなくてもわかるだろう」と一方的に判断してしまうことではありません。一昔前は「妻が夫の家庭に入ることこそが結婚」と考えられていたようですが、今は違います。全く異なる生活環境で生き、育ってきた者同士が、互いに支え合い、思いやり、ふたりにしかつくれない新たな家庭を築いていくことこそ「結婚」なのです。絆の強い夫婦になるためには、密なコミュニケーションが欠かせないと言ってもよいでしょう。
しかし、離婚してしまう夫婦の場合は、コミュニケーションを取れていないように見受けられるケースがほとんどです。多くの人が長時間労働を強いられているという時代的な背景もあるかもしれませんが、恋人同士だった頃はいかがでしたでしょうか?
互いを理解し合うため、ある程度の時間をかけてきたはずです。
家族になったとはいえ、そもそもが他人同士なのですから、互いの主義主張はもちろん、生活リズムや考え方、物事の捉え方が「違う」ことが当たり前のことです。まずは恋人同士だった頃よりも、「違う」ことを前提にして、密なコミュニケーションを取り、さらに深く理解し合う必要があります。
特に男性は、「言わずとも伝わるはず」と考え、自分が置かれている状況や気持ちなどを言葉にしないことが多いようです。妻に心を許し、甘えているのかもしれませんが、妻はあなたのママではありません。その結果、「釣った魚に餌をやらない」と受け取られても仕方がないような言動をしているケースを数多く目にしてきました。
一方、女性は、要望を具体的に口に出さず「気づいてくれてもいいのに」と考えたり、引っかかることがあってもひたすら我慢を重ねたりした末、爆発してしまうケースが少なくないようです。不満や要望があるのであれば、その場できちんと伝えるべきです。また、伝えるときは、感情を伝えるのではなく、「どうしてほしいのか」を具体的に伝えましょう。思うだけでは伝わらないのです。
コミュニケーションとは、「ふたりなりの家庭を新たにつくっていくために、互いに思いやり、協力し合うこと」です。互いのウイークポイントを非難し、傷つけ合うことではないことに注意してください。
密なコミュニケーションこそが、離婚を回避し、絆が強い夫婦となるために欠かせない、最大の秘訣であると言えるでしょう。 -
(2)親との親密度が高すぎる
夫婦同士で仲がよく、コミュニケーションを取っていても、互いの親族関係の介入により仲がこじれ、離婚に至ってしまう夫婦は少なくありません。
本来結婚は、夫婦ふたりの問題です。しかし、夫側から離婚を希望するケースにおいて、離婚事由の上位に「家族親族との折り合いが悪い」が入ってくることもあります。そのため、親族との関係性は特に重要視されているポイントであると言えるでしょう。家庭によっては今もなお、嫁という文字のごとく「結婚とは女が家に入るもの」と考えているケースがあるのです。
もちろん、親族同士の仲がよいことは悪いことではありません。しかし、自分の親族ばかりを優先していると、配偶者をないがしろにしてしまう結果になることもあります。
これは、夫だけではなく、妻も自身の親と仲が良すぎるときにも起こり得ます。夫婦となったふたりが家族となるプロセスで最重要事項とも言える「夫婦はふたりで助け合い協力し合う」ことが、二の次になってしまうためです。
親族が絡んだ何らかの問題が発生したときは、まずは配偶者の声に耳を傾けるべきでしょう。あなたが今、もっとも大切にしなければならない家族は、親ではなく配偶者なのです。 -
(3)どちらかが相手を見下している
何らかの上下関係ができている夫婦もやはり、離婚に至りやすいように見受けられます。
たとえば、なにか問題が起きたときに、いわれのない理由をつけて相手を罵ってはいないでしょうか。また、明らかに自分が悪いときに自身を正当化して「相手のせいでそのような行動をした」と主張する……といったやりとりに心当たりはありませんか?子どもや友人、親族の前で相手の悪口を言うケースもここに当てはまります。
夫婦で互いに違うところがあるのは当然ですし、人間ですから、得意なこと不得意なことがあるのは普通のことです。それをあげつらい、非難し、否定する言葉を一方的に投げつけることは、精神的な暴力であると言ってもよいでしょう。
よって、日常生活で自然に上下関係ができてしまったような関係の夫婦ほど、どちらかに不満がたまりやすく、離婚に至りやすいと言えます。 -
(4)双方の経済力が高いか低い
結婚とは、つまり生活です。生活にはお金が必要ですから、お金の問題が引き金となって離婚してしまうケースは多々あります。妻側から離婚を希望した理由で「生活費を渡さない」が2位となるほど、ポピュラーな離婚原因であるとも言えます。
特に女性は正社員であっても、男女雇用機会均等法の施行から20年以上経過している今もなお、年間所得は男性に比べて大幅に少なく、共働き世帯でも収入格差があるケースは少なくありません。それでも「共働きだから生活費はいらないだろう」と生活費をもらえなかったというケースも増えています。
また、逆に、妻のほうが収入が多いケースや、夫が無職で働かない、夫の浪費が激しいなどのケースも、離婚しやすい夫婦であると言えるでしょう。コミュニケーションも取れず、家事にも協力しない夫と、生涯を共にする理由はないためです。離婚したほうが生活に困窮する可能性も低くなるため、離婚への決断が早くなります。
かつては、離婚事由として「専業主婦なのに生活費をもらえない」というケースが多くを占めていました。その一方で、経済力がないため、たとえDVを受けていたとしても離婚できない……という方も少なくなかったようです。過去を省みると、妻も人間としての尊厳を守るため、経済力をつけておくほうがよいのかもしれません。
4、気になる! 離婚してからの生活どうなる?
もし離婚に至ったとして、一般的な女性の「その後の生活」はどうなるのでしょうか。これは、子どもの有無と、もともと就労していたかどうかで大きく異なります。
まず、経済状況は、もともと正規雇用として就労していて、その状態が継続できるのであれば、苦しくともある程度は安定するはずです。しかし、もともと専業主婦だった場合は、就労に苦労する可能性が高くなります。
子どもを引き取った場合は、貧困に陥ってしまうケースが少なくありません。残念ながら母子世帯の貧困率は非常に高く、非正規雇用の場合における平均年間就労収入はたったの125万円という調査結果もあるほどです。
いずれにせよ、お子さんがいる場合は、離婚するときに父親にしっかり養育費を払ってもらえるよう、手続きしたほうがよいでしょう。養育費がいくらになるかは、夫婦の収入状況によりますが、養育費で生活が賄えるほどの金額ではありません。しかし、チリも積もれば山になります。ないよりはずっと安定した生活を送れますし、子どもの学費の準備もしやすくなるでしょう。また、ひとり親家庭支援制度をフル活用することをおすすめします。
近年、婚姻件数は減少傾向があるものの、再婚の件数は年々増加していて、婚姻年齢だけでなく再婚年齢も上昇傾向にあります。もし再び家族を持ちたいと願うのであれば、あきらめずチャレンジするのもひとつの手です。
参考①:【離婚前にチェック】専業主婦が知っておくべきポイント
参考②:いくらもらえる? 養育費計算ツール|ベリーベスト法律事務所
5、弁護士からのメッセージ
離婚する夫婦の特徴や離婚後の生活を知り、この先、どうしていくべきかをしっかりと考えるのは大事なことです。
夫婦愛は不思議なもので、離婚相談中に復縁に至るケースも少なくありません。実際、離婚率は増えているように感じるかもしれませんが、平成14年(2002年)をピークに減少に転じています。
残念ながら、夫婦ふたりきりでは解決できない、行き詰まってしまうような問題が起こることもあるのが『人生』です。
法律に絡んできそうな問題は、こじれてしまう前に弁護士に相談してみるのもひとつの手でしょう。法律に絡むかどうか判断できないときは、お住まいの自治体の夫婦問題に関係する相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。
すでにパートナーとの離婚を決断している方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。有利な条件で離婚が成立するように、離婚専門チームの知見・経験豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。
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