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離婚したい専業主婦が知っておきたい準備と手順

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更新日:2022年08月16日  公開日:2018年03月09日
離婚したい専業主婦が知っておきたい準備と手順

結婚生活を続けるなかで「離婚したい…」と思ったことのある方は少なくないと思います。
では実際にどのような手順で離婚するのが良いのでしょうか。

離婚したい気持ちはあるものの、離婚後の生活を考えると離婚に踏み切れない。そんな悩みを抱えていませんか?

今回は、離婚するメリットやデメリット、離婚に向けてしておくべき準備などについて、弁護士が詳しく解説します。離婚して新しい生活を送りたい方や離婚を迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

1、専業主婦が離婚したらどうなる?

専業主婦が離婚したらどうなる?

結婚をしていない恋人同士であれば、二人が別れるのに法律上の手続は必要なく、二人の共同の財産もないことがほとんどのため、トラブルにまで発展ケースはあまり多くありません。

しかし、結婚をしている夫婦の場合には話が異なります。
たとえ子どもがいなくても、離婚届の提出等法律上の手続が必要になるほか、二人で共同生活を営んでいることがほとんどのため共同の財産を巡る争いに発展することにもなり得ます
そこでまずは、専業主婦の方が離婚することのメリットとデメリットについて知っておきましょう。

  1. (1)離婚のメリット

    離婚することの最大のメリットは、身も蓋もないことですが『夫と赤の他人になれること』に尽きるでしょう
    現在、あなた自身が夫からDVやモラハラをされているなど、何らかの被害を受けている場合はなおさらです。離婚することそのものが、事態改善の最善策になるといっても差し支えありません

    離婚をすれば、独身に戻ることになります。よって、あなた自身が恋愛することも自由になりますし、民法733条によって離婚した女性に課されている100日の再婚禁止期間さえ過ぎれば、再婚するのも自由です。
    自分で稼いだお金を自分のためだけに使ったりすることも可能となります。どこに住むのか、どんな生活をするのかも、あなたひとりで決めることのできる生活を手に入れることができます

  2. (2)離婚のデメリット

    離婚のデメリットもまた、「夫と赤の他人になること」となります
    先ほど離婚のメリットとして挙げている「恋愛や経済面での自由な生活」ですが、裏返せば、これまでは夫婦で分業していた「仕事をして生活するためのお金を稼ぐ」ことと、「家事をする」こと、「重大な出来事の判断を下す」ことのすべてを、あなたひとりで責任をもって担っていく必要があるということです。自由には責任が伴うことを忘れてはなりません。

    専業主婦であった期間が長ければ長いほど、再就職は厳しく、経済的な面で大きなハードルとなりがちです。
    実家に戻ることができれば、住む場所にはとりあえず困らないかもしれませんが、生活していくためには継続した収入は欠かせません。また、ひとりでイチからやり直す場合は、生活費の前に、まずは居住地の確保などでお金がかかります。

2、離婚を夫に告げる前にしておくべき準備

離婚を夫に告げる前にしておくべき準備

先に挙げました離婚のメリットとデメリットを読んで、メリットのほうが大きいと感じた場合は、離婚のための準備をしておきましょう。しっかり準備をしておくことで、憂いなく離婚後の新生活を送ることができます。

この準備は、できるだけ「離婚したい」と伝えてしまう前にしておくことをおすすめします。準備ができる前に離婚したいという意思が相手に伝わってしまうと、相手が阻止や警戒をし、準備が進めにくくなってしまうこともあるからです。

  1. (1)離婚しなければならない理由は?

    当事者双方の合意による離婚を協議離婚といいます。協議離婚をするためには、相手の合意が必要になりますが、逆の言い方をすると、相手方が離婚に合意さえすれば離婚することができます。
    もし話し合いが難航してしまった場合は、まずは調停手続を利用することになりますが、この場合にも離婚成立のためには当事者間の合意が必要になることは協議離婚の場合と同様です。そのため、当事者間に離婚に関する合意がある場合には、離婚の理由を問われることはありません

    他方で、相手方がどうしても離婚したくないと主張し離婚を拒む場合には裁判手続を利用し裁判上の離婚を求めることになります。この場合には以下で述べるような「法定離婚事由」が必要になります。

    民法770条1項の1号から5号には、以下のような定めがあります。

    1. 不貞行為
    2. 悪意の遺棄
    3. 3年以上の生死不明
    4. 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
    5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があること

    したがって、夫婦間で離婚するという合意が成立する場合には離婚の理由は問われませんが、相手方が離婚を拒んだ場合には「法定離婚事由」が認められる必要があるため離婚の理由が問われることになります。

    相手方が離婚を拒んだ場合にも一方的に離婚することができるのか否かという点に関しては専門的な判断が必要になりますので、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

  2. (2)経済的自立の準備をしておきましょう

    離婚の際も別居をするための費用などが必要となるケースは多いものです。
    また、専業主婦であれば、離婚後は定期的な収入がなくなることになります。そのため、まずはあなた自身の名義の通帳などに貯蓄をしておくことをおすすめします。

    さらに、離婚後の生活設計もあらかじめ考えておきましょう。毎月いくらぐらい必要なのか、どのように収入を維持するのか、どこで生活していくのかなど、あらかじめ調べておき、具体的な準備を進めておく必要があります。
    そのため、離婚する前に就職先を探しておくなど経済的に自立した生活のための基礎を作っておくことが大切になってきます。

  3. (3)請求可能なお金は?

    離婚の際、夫から受け取ることができるお金は、家庭の状況や資産、離婚の理由などによって異なります。できる限り受け取ることができるものは請求し、新しい生活をより安定してスタートできるように準備しておく必要があります。

    また、専業主婦であったことから、「俺が稼いだお金だ」と夫から支払いを拒否されるケースもあります。しかし、民法上、基本的に、婚姻期間中に築かれた財産は、夫婦の共有の財産だと扱われます。これは、「専業主婦として家事などに従事してきたからこそ、夫が働くことに専念できた」のであり、婚姻期間中の財産は二人で築いた財産であると考えられるからです。

    具体的な請求項目は以下のとおりです。具体的なご状況によっては他にも請求できる項目があるかもしれませんので、詳しくは弁護士に相談してみてください。



    <専業主婦が請求できるお金一覧>

    • 財産分与
      婚姻後に貯蓄したお金、購入した不動産、株など「共有財産」については、基本的に、財産分与として2分の1ずつで分割し、分け合うことになります。ただし、夫が独身のときに得た株や不動産、貯蓄、夫が親族から相続した資産などは「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象とはならない点には注意が必要です。
    • 婚姻費用
      離婚前に別居した際も、離婚が成立するまでに生活費を受け取ることができます。婚姻費用についても忘れずに請求しましょう。
    • 慰謝料
      夫が不倫をしていた場合やDVをしていた場合には、夫に慰謝料の請求ができる可能性があります。逆に、そういった事情がこちら側にある場合には相手方から慰謝料の請求がなされることもあるので、その点には注意が必要です。
    • 年金分割
      夫が正社員で厚生年金に加入している場合には、年金分割の制度を利用することができることがあります。
  4. (4)離婚交渉に必要な書類

    先ほど述べたとおり、双方の合意による協議離婚の場合には、市区町村の役所でもらってきた離婚届に双方合意の上で署名捺印をし、離婚届を役所に提出するだけで手続は完了します。

    しかし、協議離婚の場合にも、何の取り決めもせずに離婚をすれば、後々新たな紛争が生じたり、その後の生活に金銭的に苦労したりすることが予想されます。そのため、協議離婚の場合にも離婚条件についてはきちんと交渉をしておく必要があります
    離婚交渉に必要な書類の例としては、以下のようなものが考えられます。



    <離婚交渉に必要な書類の例>

    • 通帳のコピーや不動産の登記簿など、現在あなたの家庭で保有している資産がわかる書類
    • 不貞相手とのメールのやり取りや興信所の調査内容等不貞に関する証拠
    • DVによる怪我の診断書等DVに関する証拠

    最終的に裁判になった場合には証拠の有無が非常に重要になることはもちろん、交渉であっても証拠がある場合には交渉をスムーズに進められることもあります。
    相手が財産を隠したり、不貞などの証拠を消したりしてしまう前に、しっかり手元に残しておきましょう。先ほども述べたとおり、夫が警戒して証拠を隠滅することを防ぐには、「離婚したい」と告げる前に準備を進める必要があります。

  5. (5)離婚後受けられる支援を知っておく

    離婚に伴い公的な支援を受けられるケースもあります。そのため、離婚をする前に公的な支援に関する知識を身につけておくことも大切です。

    支援の詳細は、お住まいの市区町村によって異なります。離婚後お住まいになる予定の自治体が実施している支援を、ホームページなどで確認しておきましょう。



    <離婚後受けられる支援の一例>

    • 生活保護
    • 再就職支援

3、確実に離婚するための手順とは?

確実に離婚するための手順とは?

準備が整ったら、さっそく離婚に向けて実際に行動していくことになります。
ここでは、確実に離婚するための手順等について説明したいと思います。

  1. (1)まずは話し合いで離婚を目指す

    先ほど述べたとおり、離婚には、話し合いでお互いに合意して離婚する「協議離婚」、裁判所で開催される調停制度を利用して離婚する「調停離婚」(この場合にも当事者間の合意が必要になります。)、裁判手続によって相手方が離婚を拒む場合にも一方的に離婚をすることができる「裁判離婚」があります。

    このうち、「裁判離婚」の場合には、「協議離婚」や「調停離婚」と比較してどうしても時間とお金がかかってしまいます。

    そこで、時間やお金をかけないためには、話し合いが重要になってきます。ここで離婚をするかどうかだけでなく、離婚の際受け取ることができるお金についてもしっかり話し合い、互いに納得して離婚できれば、問題の長期化を避けることができます。

    当事者間の話合いにおいては、事の性質上どうしても感情的になってしまいがちですが、冷静に落ち着いて話し合いを進めることがなにより重要です。

    スムーズに交渉をしたい、相手が話し合いに応じないなど、少しでも悩む点があるようでしたら、ぜひ弁護士に相談してみてください。第三者である弁護士を介して話し合いを行った方が冷静に交渉を進めやすいといえますし、相談をするだけでも有益な情報が得られるはずです。

  2. (2)離婚協議書を必ず作っておくべき理由

    もし話し合いだけで、スムーズに離婚できることになっても、離婚届けを提出する前に、もう一つ作っておくべき書類があります。それは、離婚協議書です。

    離婚協議書は、財産分与の内容、婚姻費用に関する定め等、離婚に付随する問題について双方の合意内容を記載する書面です。これを作成することによって、離婚条件について証拠化することができ、後日、夫がそんな約束はしていないなどと主張してくることを予防することができます。

    離婚協議書は互いのサインだけでも問題ありませんが、強制執行認諾条項付きの公正証書として作成しておけば、夫が離婚協議書に定めた金銭を支払わなかった場合などに、夫の財産から強制執行という手続によって強制的に金銭の回収をすることも可能になります。
    離婚協議書の内容や作成方法等について迷った場合には、弁護士に相談してみましょう。

    参考:離婚協議書の作り方

  3. (3)話し合いが難しければ調停や裁判へ

    相手が話し合いを拒否する場合や、いつまでたっても話し合いが平行線で事態が進展しない場合は、いきなり裁判を起こすわけではなく、まずは調停手続を行うことになります。
    離婚問題の場合、調停前置主義といって、裁判手続の前にまずは調停手続において話し合うよう、法律で定められているためです。

    調停で離婚が成立した場合は、話し合いの結果をまとめた調停調書がもらえるため、離婚協議書を別途作成する必要がありません。
    調停で話し合いがまとまらなかったときは、裁判へ移行することになります。調停手続や裁判手続に関してもご自身で対応することも可能ですが、法律に関する専門知識が必要となりますから、手続の前に一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

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4、まとめ

まとめ

今回は、専業主婦の方が離婚したケースにおいて想定できるメリットやデメリット、離婚に向けた準備、さらに離婚後受けられる支援などについて解説しました。
離婚は結婚よりも気力や体力が必要だと言われていますが、それはお子様がいらっしゃらないご夫婦の場合でも変わりはありません。

もし離婚に関して迷われている場合には、離婚問題に詳しいベリーベスト法律事務所に、ぜひご相談ください。あなたの未来がよりよいものになるよう、アドバイスいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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