歯科医師が離婚するときの必須知識。財産分与・親権・慰謝料はどうなる?
歯科医師が離婚する場合、財産分与や慰謝料はどのように考えていけばよいのでしょうか。
また、歯科医師といっても、自分が開業している医院に妻がスタッフとして勤務している、妻の実家の歯科医院に勤務しているなど、さまざまなケースがあります。また、開業医であれば後継者のことを考慮し、親権を獲得するにはどういった手順を踏めばよいのかといった点も気になるところでしょう。
本コラムではベリーベスト法律事務所の弁護士が、歯科医師の方が離婚する場合に注意すべきポイントを「財産分与・養育費・親権・慰謝料」などの項目別に解説します。
1、歯科医師が離婚するための基礎知識
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(1)法定離婚事由とは
離婚には、夫婦の話し合いで成立する協議離婚、家庭裁判所の調停委員を介して離婚する調停離婚、裁判の判決によって離婚を成立させる裁判離婚の3種類があります。
日本では、約9割の夫婦が話し合いだけで離婚をする、いわゆる協議離婚が多数を占めています。協議離婚は、当人同士が互いに合意すれば、離婚の理由や財産分与、養育費の内容などに制限がありません。
しかし、話し合いだけでは協議がまとまらず、その次のステップである離婚調停でも合意ができなかった場合は、裁判になります。裁判になった場合には、一定の理由が必要であると法律で定められおり、この離婚原因のことを法定離婚事由といいます。
法定離婚事由は民法770条1項で以下の5つが定められています。
- 不貞行為(不倫など)
- 悪意の遺棄(夫婦の義務である相互扶助を正当な理由なく拒否する行為)
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続しがたい重大な事由(DV・ギャンブル癖など、裁判所が個別の状況に応じて判断)
ただし、これらの事由があったとしても、このまま婚姻関係を継続すべきだと裁判所が判断した場合は、離婚請求が棄却される場合もあります。裁判に進みそうなケースは、離婚問題の実績がある弁護士へ相談することが重要といえるでしょう。
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(2)不貞行為をしてしまった場合は不利?
協議離婚が多数を占める日本でも、スムーズな話し合いが期待できない場合があります。それは、夫が婚姻中に不貞行為をして妻にばれてしまったケースです。不貞行為は配偶者を傷つけ、信頼関係が崩れます。協議離婚は夫婦の話し合いで進めるものですから、信頼関係が崩れると話し合いを進めづらくなります。また、冷静な話し合いをしにくくなることも多いでしょう。
もし協議離婚をあきらめて離婚裁判に進んだ場合でも、不貞行為を働いた側は不利な立場に置かれます。不貞を行った配偶者は離婚の原因をつくった有責配偶者とみなされます。有責配偶者からの離婚請求は、特別な事情がない限り、原則として認められないというルールがあります。したがって、不貞行為が相手に知られた場合は、スムーズに離婚することが非常に難しくなります。
さらに、夫が歯科医師であり高所得者であるケースでも、財産分与などをめぐって争いが激化しがちです。子どもがいる場合には親権や養育費などの問題も同時に発生しますので、離婚成立までの道のりは険しくなる可能性があります。 -
(3)妻の実家に養子縁組で入っていた場合は?
妻の実家が歯科医院などを営んでおり、そこに婿養子縁組をして医院を継いでいるケースもあります。夫が妻の実家に養子縁組をして入っていた場合は、通常の離婚手続きに加えて、妻の両親との間で、養子縁組の解消手続きが必要となります。養子縁組の解消は、離縁手続きと呼ばれます。離婚とはまったく別の手続きなので、並行して準備を進める必要があります。
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(4)開業している歯科医師が離婚を進めるために重要なこと
歯科医師で開業している場合、離婚の際に、財産分与の額でもめる可能性が高くなります。さらに自分自身の不貞行為などがある場合は、通常の離婚協議よりもさらに話し合いが難航するケースもあるでしょう。確実に離婚手続きを進めるためには、妻が納得する形で、しっかりと財産分与の取り決めをすることが大切です。財産分与については次項から詳しく解説します。
2、歯科医師の財産分与
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(1)財産分与の割合は原則2分の1ずつ
離婚手続きにおいて避けて通れないのが財産分与です。財産分与とは、婚姻期間中に築いた財産は夫婦の共同資産であるという考えのもと、離婚時にそれぞれの貢献割合に応じて財産を分割することをいいます。
財産分与の割合は、一般的には2分の1ずつとされています。しかし、財産分与は法律上必ず行わなければならないものではありませんし、財産分与の割合も明確に規定されているわけではありません。したがって、実際の財産分与は夫婦のケースごとに異なり、必ずしも半分ずつとなるわけではないことを知っておきましょう。
財産分与には、以下の3つの性質があります。- 清算的財産分与
- 扶養的財産分与
- 慰謝料財産分与
です。
清算的財産分与とは、財産分与の核となる考えで、婚姻期間の財産を夫婦の共有財産として、それぞれの貢献度に応じて分割するというものです。この考え方によると、離婚の原因に関係なくお互いに財産分与を請求することが可能です。
扶養的財産分与とは、離婚によりどちらかが生活に困窮する場合、あるいは年齢や病気などの理由で働けない場合に、生活費の支払いという目的で行われる財産分与です。
また、慰謝料的財産分与とは、不貞行為やDVなど離婚原因となった配偶者が慰謝料の支払いとして多めに財産分与を行うものです。 -
(2)財産分与は寄与分も影響する
財産分与の割合は、2分の1ずつが基本ですが、夫婦それぞれの財産形成への寄与度が影響するケースがあります。たとえば歯科医師の場合、夫の専門技能があってこそ財産がつくられたと認められれば、夫の取り分が多くなることもあります。
特に、夫が結婚前に医師免許を取得し、苦労してインターン生活などを経て医院を開業したような場合には、夫の婚姻前の努力が婚姻後の財産形成に大きく寄与したとして、夫の取り分を多くする主張が認められる可能性が高くなります。 -
(3)寄与分の具体的ケース
開業医の離婚時にトラブルになりやすいケースについて、代表例をいくつかご紹介します。
●妻や妻の実家から開業の資金援助があった場合
開業時の資金援助は、開業医への貸し付けなのか医療法人への出資か、あるいは贈与なのか性質があいまいです。この場合の争点は、配偶者の実家からの資金援助が実質的に夫婦の経済状況に影響を与えたかどうかです。その影響が認められた場合には財産分与の対象となる場合もあります。
●妻がスタッフとして勤務していた場合
歯科衛生士など、妻が特別な資格を有して働いていた場合、寄与分に影響が出る可能性があります。
なお、妻がずっと専業主婦だった場合、夫側が2分の1の分与に納得できず話し合いが難航することがあります。しかし裁判においては、妻が専業主婦であった場合も、家庭生活を維持するのに貢献したとして2分の1の分与が認められることが多いでしょう。 -
(4)歯科医師の財産分与の範囲と注意点
婚姻期間中に夫婦が共同で形成してきたものはすべて財産分与の対象となります。たとえば、現預金や株などの金融資産、土地や住宅などの不動産、生命保険の解約返戻金などがその代表例です。
一方で、婚姻前から個人名義で所有していた資産や、婚姻期間中であっても相続や贈与で得た財産は財産分与の対象とはなりません。また、医療法人および医療法人名義の資産は財産分与の対象とはなりません。
ただし、開業医の場合、医院が自宅を兼ねているなど、個人資産と医療法人資産が混在している場合があります。その場合は、個人資産を法人資産に移し替えているとみなされて、財産分与の対象となる可能性もあります。なお、医院併用住宅の場合、不動産に関しては一般的には共有財産なのですが、医院と居住地の割合や推定時価などを考慮して財産分与とするかどうかを決定します。
「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。
3、歯科医師が離婚するときの養育費と親権
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(1)父親が親権をもつ割合は11.9%
財産分与と並んで争点になるのは、子どもの親権についてです。開業医の場合、跡取りのことを考慮し親権を取りたいと考える方もいらっしゃるでしょう。
ただし、一般的には母親が親権をもつことが多く、調停や審判において父親が親権を獲得した割合は2018年度においては約11.9%にすぎません。(出典:人口統計資料集2020)父親が親権を取りにくい理由は、フルタイムの勤務が多く子どもの面倒を見づらい、離婚までの期間に母親が面倒を見てきた実績が評価される、そして、子ども自身が母親を選ぶことが多いなどの理由が挙げられます。 -
(2)父親が親権を取るためのポイントとは
一般的には難しいとされる父親の親権獲得ですが、最も重要な観点は子どもの幸せです。フルタイムで残業がある勤務形態が親権獲得の上でマイナスと見られるのは、それによって子どもの面倒が見づらくなり、結果として子どもの福祉が害されるからという考えに基づいています。そのため、祖父母や叔父叔母が面倒を見る体制が整っていたり、シッターを雇う経済力を示したりすることで親権に有利に働く可能性があります。
父親が親権を獲得するためには、父親に親権があるほうが子どもにとって幸せであると判断されることが何より重要です。子どもの親権争いにおいては、ここに焦点をあてて主張していくことが鍵となります。 -
(3)母親が親権をもつ場合の養育費
養育費は、子どもが成人して自らの生計を立てられるようになるまで必要とされる費用です。そのため、母親の就労状況や子どもの学校が公立か私立かなどによって大きく変わります。一般的な相場は、子どもの数、子どもの年齢、養育費を支払う側の年収などによって、裁判所が公表している算定表をもとに決定されます。
以下の養育費計算ツールから、母親が親権をもつ場合の相場を概算することができます。参考:養育費計算はこちら
なお、算出可能な範囲は年収2000万円以内、自営業は1567万円以内です。対象以上の年収であれば、まずは弁護士へ相談されることをおすすめします。
4、歯科医師が離婚するときの慰謝料
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(1)慰謝料は必ずしも払う必要はない
慰謝料とは、自分の落ち度で相手に精神的な損害を与えた場合、その精神的苦痛に対して支払う損害賠償です(民法第710条)。ただし、慰謝料は必ずしも払わなければならないものではなく、精神的に損害を受けた側が慰謝料を請求しない場合は、慰謝料は発生しません。
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(2)慰謝料の支払いが必要になるケースとは
慰謝料の請求が可能な代表例は、配偶者に不貞行為があった場合や、配偶者から故意に扶養を拒絶された場合、DVなどで精神的・肉体的に傷つけられた場合です。不貞行為は不法行為の代表例ですので、もし不貞行為があった場合は、慎重な対応が求められます。
5、歯科医師が離婚するときに弁護士に相談したほうがよい理由
歯科医師は高額所得者であるケースが多いため、財産分与や慰謝料において話し合いが困難となることが少なくありません。特に、夫側に不貞がある場合、子どもの親権を父親が獲得したい場合などは、さらに難航することが予想されます。歯科医師の離婚には、弁護士が介入することでスムーズに問題が解決する可能性が高まります。ここでは、弁護士に相談するメリットについて3つご紹介します。
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(1)財産分与について適切な寄与分が主張できる
まず一点目は、財産分与において適切な主張ができることです。保有資産も多い歯科医師は財産分与においてなかなか合意に至らないケースが多くあります。弁護士に相談することで、法的根拠に基づいた適切な寄与分の主張ができます。たとえば一般的には2分の1とされている分割割合も、高額な収入の礎となっている特殊技能が婚姻前の医師本人の努力によるものであるとして、医師の寄与割合を高められるケースもあります。
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(2)親権争いを有利に進めるためのアドバイスがもらえる
開業医の場合、後継ぎとして子どもの親権を獲得したいとお考えの方も多いでしょう。しかし、日本では一般的に母親が親権を獲得することが多いのが現状です。しかし、親権問題の実績が豊富な弁護士に相談することで、父親が親権獲得した際のメリットを洗い出し、裁判において有利な交渉を進められる可能性が高まります。
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(3)慰謝料・養育費等について適切な金額で交渉してもらえる
慰謝料は必ず支払わなければならないものではありませんが、不貞行為など離婚に至る明確な事由がある場合には、注意する必要があります。慰謝料の金額については明確な基準がないため、離婚事由の内容やその期間、社会的地位などによって大きく異なります。医師の場合、比較的高額になりがちな慰謝料ですが、弁護士に相談することで、適切な金額で交渉することができますので一度弁護士へご相談ください。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
6、まとめ
本記事では歯科医師の離婚について、その流れや注意点などについて解説しました。開業医の離婚は財産分与や親権争い、慰謝料などを中心に特に協議が難航しがちです。生活と仕事が密接な場合が多く、離婚調停の停滞がそのまま仕事に悪影響を及ぼすことも少なくありません。
もし離婚を検討しているなら、なるべく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。歯科医師の離婚事件について経験豊富な弁護士が、交渉のやり方や押さえておくべき点などを法的根拠に基づいてサポートいたします。ベリーベスト法律事務所の弁護士が、納得できる結果にむけて全力を尽くします。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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