精神的苦痛が理由で離婚するとき慰謝料はもらえる? 相場はいくら?
「結婚後、家族になってから、暴力や暴言などに怯える生活をしている」
「配偶者に話しかけても無視されて、生活費も入れてくれないようになった」
このように、結婚生活を始めてから夫や妻の態度・関わり方などが変わり、精神的苦痛を感じて「離婚したい」と考えている方は少なくありません。
この場合、精神的苦痛を理由として、離婚に伴う慰謝料を相手に請求することはできるのでしょうか。
本コラムでは、精神的苦痛が理由で離婚をする場合に慰謝料はもらえるのかどうか、慰謝料の相場はいくら位なのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、離婚するとき、精神的苦痛で慰謝料請求できるケースと相場
精神的苦痛を感じたからといって、すべてのケースで慰謝料請求が認められるわけではありません。以下では、慰謝料の有無や金額を決めるための要素や、精神的苦痛を理由に慰謝料請求ができるケースと、できないケースに分けて説明します。
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(1)慰謝料の有無や金額に関係する要素とは
慰謝料の有無や金額は、以下のような要素を勘案して考えられています。
精神的苦痛は目に見えない損害ですので、損害算定の具体的な計算方法などがあるわけではありません。したがって、裁判となった場合には諸要素を踏まえて、裁判所が妥当な慰謝料額を認定することになります。- ① 有責行為の程度・割合・態様
- ② 背信性
- ③ 精神的苦痛の程度
- ④ 婚姻ないし婚姻破綻に至る経過
- ⑤ 婚姻生活の実情
- ⑥ 当事者の年齢、社会的地位、支払能力、親族関係
- ⑦ 子どもの有無、子どもの数、親権・監護権の帰属、非嫡出子の出生および認知の有無
- ⑧ 離婚後の生活状況
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(2)慰謝料請求ができるケースと相場
離婚に伴う慰謝料が認められる典型的な例は、以下のとおりです。
これはあくまでも一例ですので、裁判となった場合には、さまざまな要素を勘案して慰謝料の有無や金額が決まる、ということにご注意ください。
●不貞行為があったとき
配偶者の不貞行為が原因で離婚をする場合には、慰謝料請求できる可能性があります。この場合には、不貞行為の期間・回数、どちらが主導的であったか、夫婦の婚姻期間などの要素を考慮し、慰謝料額が判断されます。
不貞行為を原因とする慰謝料の相場は、50万円~300万円といわれています。
なお慰謝料は、不倫をした配偶者とその相手、どちらに対しても請求をすることができます。しかし、たとえ2人を訴えたとしても、受け取ることができる慰謝料額が2倍になるわけではありません。慰謝料は、重複して受け取ることはできない点に注意しましょう。
●DV、モラハラ
配偶者によるDVやモラハラで離婚するなら、慰謝料の請求ができる場合があります。DVやモラハラを原因とする慰謝料の金額は、DVやモラハラの回数、程度、期間などの事情で変わってきます。
DVやモラハラを原因とする慰謝料の相場は、50万円~300万円といわれています。
●悪意の遺棄
「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく同居義務や、協力・扶助義務といった結婚後の配偶者としての義務を果たさないことをいいます。代表的な例としては、同居を拒否する、生活費を入れないといったことです。
悪意の遺棄を原因として慰謝料を請求する際には、別居期間、婚姻期間、子どもの有無、悪意の遺棄にあたる具体的な事実などを総合的に考慮し、慰謝料額が判断されます。
その場合の慰謝料の相場は、50万円~150万円といわれています。
●性交渉がない
性交渉がないというケースで慰謝料を請求するためには、単に性交渉がなかったというだけでは足りず、性交渉を求めたものの、相手配偶者が正当な理由なく拒否をし続けたということが必要になります。
性交渉がないことを原因に慰謝料の金額は、性交渉がない期間、性交渉がなくなった原因など、個別の事情により変わってきます。
性交渉がないことを原因とする慰謝料の相場は、50万円~100万円といわれています。 -
(3)慰謝料を請求できないケース
加害行為が証拠上認められない場合や不法行為の要件を満たさない場合には、慰謝料の請求はできません。また、精神的苦痛を被った原因が以下のような場合には、慰謝料の請求は難しいといえるでしょう。
- 性格の不一致
- 信仰上の対立
- 健康上の問題
- 配偶者の親族との不和
2、慰謝料請求ができた実際の裁判例を解説
以下では、離婚に伴う慰謝料の請求が認められた裁判例を、いくつかご紹介します。
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(1)不貞行為とDVが原因で慰謝料300万円が認められた事例
夫による不貞行為、DV、悪意の遺棄があったとして、妻が夫に対し離婚と慰謝料を請求した事案で、裁判所は夫の不貞行為とDVを認め、離婚慰謝料として300万円を認めました。(東京地判平成17年1月31日)
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(2)悪意の遺棄が原因で慰謝料150万円が認められた事例
約12年間の同居期間の後、約40年間の別居期間がある夫婦で、夫は妻に対し別居後40年間何らの経済的支援をしていなかったという事案で、裁判所は離婚慰謝料として150万円を認めました。(東京高判平成元年11月22日)
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(3)DVが原因で200万円の慰謝料が認められた事例
夫による浪費、悪意の遺棄(生活費を渡さない)、DV・モラハラがあったとして、妻が夫に対して離婚と慰謝料などを請求した事案で、裁判所は夫のDVや浪費などの事実を認め、離婚慰謝料として200万円を認めました。(東京地判平成16年7月5日)
このように、個別の事例によって、慰謝料の金額はさまざまです。ご自身が請求できる金額について知りたい方は、まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
3、精神的苦痛を理由に慰謝料請求できるのは、なぜ?
精神的苦痛を理由に慰謝料請求できるのはなぜでしょうか? 以下では、慰謝料請求の根拠について解説します。
離婚に伴う慰謝料請求の根拠は、民法709条(不法行為による損害賠償)および710条(財産以外の損害の賠償)です。
●民法709条と規定しています。この「財産上の損害」には、精神上の苦痛も含まれます。これが、精神的苦痛を理由に慰謝料請求ができる根拠です。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
●民法710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない
これらの法律によって、違法な権利侵害行為をした者は、それによって精神的苦痛を被ったものに対して、慰謝料を支払う義務を負うことになります。
4、慰謝料を受け取るまでの流れを解説
それでは、慰謝料を請求する場合にはどのように進めていけばよいのでしょうか? 以下では、慰謝料請求にあたって準備することや具体的な請求の流れについて説明します。
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(1)慰謝料請求には証拠が必要
慰謝料を請求するためには、請求する相手に有責性(不貞行為、DVなど)があることを証明しなければなりません。そのため、まずは、有責性を証明するための証拠を収集する必要があります。
具体的なケースによって収集すべき証拠は異なりますが、代表的な証拠としては、以下のものがあります。
●不貞行為
- 調査会社の報告書
- 浮気相手とのメールやLINE
- 浮気相手との性行為の動画や写真
- 配偶者や浮気相手が浮気を認めた会話の録音
●DV
- 暴力でできたアザや傷の写真
- 医師の診断書
- カルテ(診療記録)
- 日記
- 録音データ
●悪意の遺棄
- 住民票(別居の証拠として)
- 預貯金通帳の写し(生活費をもらっていない証拠として)
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(2)慰謝料受け取りまでの流れ
離婚に伴う慰謝料を請求する流れは、以下のとおりです。
●協議
離婚に伴う慰謝料を請求する前提として、まずは夫婦で話し合いをしなければなりません。離婚の話し合いの中では、慰謝料のみならず、親権、養育費、財産分与、年金分割、面会交流などについて決めなければなりません。
話し合いによって、離婚慰謝料が決まった場合には、必ず書面に残しておくようにしましょう。そして、書面に残す場合には、公正証書にしておくのが安心です。公正証書にしておくことで、将来相手が慰謝料の支払いを怠ったとしても、裁判手続きを経ることなく、財産の差し押さえをすることが可能になります。
また、話し合いの段階から弁護士に依頼をすることで、相手との交渉を一任することができ、離婚協議書や公正証書の作成までサポートしてもらうことができます。
●調停
協議によって解決ができない場合には、家庭裁判所の離婚調停を申し立てることになります。
離婚調停の申し立てに必要な書類は、以下のとおりです。- 申立書およびその写し
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書) また、離婚調停の申し立てに必要な費用は、以下のとおりです。
- 収入印紙代 1200円
- 連絡用の郵便切手(金額と組み合わせについて申し立てをする裁判所に確認)
調停では、男女2人の調停委員が、当事者双方から話を聞き、妥結を図ります。調停当日は基本的に、当事者は別々に話を聞かれることになりますので、直接相手と会うという心配はありません。
調停は話し合いの手続きであるとはいっても、決めなければならない事項が多くあります。おひとりですべて対応するのは、精神的に負担が大きいでしょう。
弁護士に依頼すれば、代理人として調停に同行してもらうことができますので、精神的な負担もいくらか和らぐでしょう。
また、法的観点から、依頼者に不利にならないように、サポートしてもらうこともできます。
●裁判
離婚調停で解決することができなければ、最終的に離婚裁判を起こすことになります。
裁判になると、法律上の離婚原因がなければ、離婚を認めてもらうことができません。また、自分に有利な主張を認めてもらうためには、それを裏付ける証拠を提出しなければなりません。
このように裁判では法的知識と経験がなければ適切に手続きを進めることは困難ですので、弁護士に依頼することをおすすめします。
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5、精神的苦痛を解決するための相談先
離婚に伴う精神的苦痛を解決する方法としては、慰謝料請求が挙げられますが、そのほかにも以下の方法があります。精神的苦痛を解決しようとする目的などに応じて、必要な相談先を選択するとよいでしょう。
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(1)医師やカウンセラー
配偶者からのDV・モラハラや不貞行為を受けた方は、心に大きな傷を負っていることがあります。離婚手続きを進めることは、さらに精神的苦痛を伴うものですので、心の傷を少しでも和らげるために、医師やカウンセラーに相談してみるとよいでしょう。
医師やカウンセラーに相談をした事実は、離婚に伴う慰謝料請求の証拠となることがありますので、後々の慰謝料請求の場面でも有益となるでしょう。 -
(2)警察や行政機関
配偶者からDVを受けたという場合には、警察や行政機関(配偶者暴力相談センターなど)に相談をしましょう。
日常的にDVを受けていると、DV被害者は、DVを受けるのは自分にも原因があると思い込んでしまうこともあり、自ら助けを求めることができないという状況になることも多いようです。しかし、DVは、身体や生命に危険のある行為ですので、一刻も早く警察や行政機関などに助けを求める必要があります。
なお、警察や行政機関に相談をしたという記録は保管されていますので、配偶者からDVを受けたという証拠として、慰謝料請求の際に利用できます。 -
(3)弁護士
配偶者から精神的苦痛を受け、慰謝料請求を考えている方は、弁護士への相談もおすすめします。
離婚に伴う慰謝料を請求する際には、慰謝料だけでなく、離婚に関するさまざまな条件を取り決めなければなりません。慰謝料を請求しようとしているということは、配偶者の行為によって何らかの精神的苦痛を受けているはずです。そのような精神的苦痛を被った状態で、相手と対等に話し合いをするということはなかなか難しいでしょう。
弁護士に依頼をすることで、離婚慰謝料だけでなく離婚に関する交渉すべてをまかせることができますので、相手と話し合いをしなければならない、という精神的負担から解放されます。
また、慰謝料の算定については、さまざまな要素を考慮して個別具体的に判断することになります。具体的な計算方法があるわけではないため、同種事案の各種裁判例などを参考にしながら、妥当な請求額を算定しなければなりません。
しかし、このような作業を法律の専門家ではない方が正確に行うのは困難といえます。適切な慰謝料額を算定し、請求するためには弁護士に相談をするとよいでしょう。
さらに、慰謝料の請求をしたとしても、有責性のある配偶者は自分の非を認めないことが多く、調停や裁判まで発展することがあります。交渉の時点から弁護士に依頼をしていれば、その後の手続きもすべて一任できます。法的な手続きについてはすべて弁護士にまかせることで、別居や就職活動などに集中できるでしょう。
6、まとめ
夫や妻との結婚生活において精神的苦痛を被ったからといって、すべてのケースで慰謝料を請求することができるわけではありません。
慰謝料を請求するためには、配偶者による有責な行為があったということが必要になりますし、その有責性を基礎づける証拠も必要となってきます。そのため、離婚に伴う慰謝料を適切に請求するためには、弁護士によるサポートが不可欠です。
離婚に伴う慰謝料の請求をしたいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお早めにご相談ください。
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