「フィリピン人との離婚手続き」進め方や相手が行方不明の場合の対処法
フィリピン人配偶者との離婚を考えている場合、離婚はできるのか、日本だけでなくフィリピンでの手続きも必要となるのかなど、さまざまな不安を抱えていらっしゃるかもしれません。
国際離婚の場合、取りうる法的手段だけではなく、配偶者の国の法律にも注意する必要があります。
今回は、フィリピン人配偶者と離婚するための手続きや、フィリピン人配偶者が行方不明の場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、日本在住の日本人は、フィリピン人配偶者と離婚できる?
フィリピン人配偶者と結婚している日本人の方は、ご自身が日本在住である限り、日本法に従って離婚を成立させることができます。
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(1)日本在住であれば、日本法に基づく離婚が可能
日本の法律上、国際離婚についてどの国・地域の法律が適用されるかは、「法の適用に関する通則法(略称:通則法)」によって決まります。
通則法第27条ただし書きは、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚について日本法が適用される旨を定めています。したがって、日本在住の日本人がフィリピン人配偶者と離婚したい場合、日本法に従って離婚を成立させることが可能です。 -
(2)フィリピンに「離婚」の制度はない - ただし外国で成立した離婚は承認することが可能
日本法上は離婚が成立したとしても、フィリピン法上の取り扱いは別途問題となります。
そもそもフィリピンには『離婚』という制度がなく、婚姻を解消するためには、婚姻無効または取り消しの訴訟によらなければならないのが原則です。
しかし、外国で成立した離婚については、フィリピン国内の地方裁判所に民事訴訟を提起することで、離婚の承認裁判を受けることができます。
2、フィリピン人配偶者と離婚するための手続き
日本在住の日本人がフィリピン人配偶者と離婚する場合、日本法に基づく離婚を成立させる必要があります。日本法に基づく離婚手続きの方法は主に3つありますが、日本人同士が離婚をする方法と同様です。
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(1)協議離婚
夫婦は、お互いの合意があれば離婚できます(民法第763条)。
夫婦が話し合って離婚を成立させることを「協議離婚」と言います。協議離婚のメリットは、迅速かつ低コストで離婚を成立させられる点です。
まずは財産分与・慰謝料・婚姻費用・子どもに関する事項(親権・養育費・面会交流)などを話し合って、夫婦間での離婚に関する合意を目指しましょう。
話し合いの結果、双方が離婚に合意できたら、合意内容をまとめた離婚協議書を作成し、場合によっては公正証書を作成します。
協議離婚の場合、双方が証明した離婚届を役所に提出することによって離婚が成立します。 -
(2)調停離婚
離婚協議では合意に至らない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
離婚調停では、調停委員が夫婦双方の主張を聞き取りながら、双方に対して離婚合意の成立に向けた働きかけを行います。最終的に調停官が提示する調停条項に夫婦双方が同意すれば調停が成立し、離婚は成立します。 -
(3)裁判離婚
離婚調停でも離婚の合意に至らない場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することができます。
離婚訴訟は、『ただ離婚したい』という理由だけでは、離婚は認められないので注意が必要です。離婚を主張する側が「法定離婚事由」のいずれかがあることを、主張立証しなければなりません(民法第770条第1項)。- ① 不貞行為
- ② 悪意の遺棄
- ③ 3年以上の生死不明
- ④ 強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
いずれかの法定離婚事由の存在が認定された場合、家庭裁判所は離婚を認める判決を言い渡します。判決において、離婚が認められれば離婚は成立します。
3、フィリピン人配偶者が行方不明の場合の手続き
フィリピン人配偶者と離婚したいものの、配偶者が勝手に帰国したなど、行方不明となってしまっているケースもしばしば見られます。
配偶者が行方不明の場合、公示送達によって訴訟書類を送達し、訴訟を通じた離婚の成立を目指しましょう。
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(1)離婚手続きは訴訟に限られる
フィリピン人配偶者が行方不明の場合、協議・調停を通じた離婚の話し合いを行うことは一切できません。
そのため、行方不明のフィリピン人配偶者との離婚を成立させる方法は、日本国内での離婚訴訟に限られます。 -
(2)公示送達によって訴訟が可能
離婚訴訟を提起する場合、訴訟書類を被告である配偶者に送達しなければなりません(民事訴訟法第138条第1項)。また、訴状の送達は、被告に対して直接交付する方法で行うのが原則です。
しかし、被告である配偶者が行方不明の場合には、直接交付することはできません。このような場合には、「公示送達」の方法によって訴訟書類を送達することが認められています。
● 公示送達が認められる場合(民事訴訟法第110条)- ① 当事者の住所・居所その他送達をすべき場所が知れない場合
- ② 書留郵便等に付する送達(付郵便送達)ができない場合
- ③ 外国においてすべき送達について、その国の管轄官庁や駐在大使・公使・領事に嘱託して送達することができない場合
- ④ 『③』の嘱託を発した後6か月を経過しても、その送達を証明する書面の送付がない場合
公示送達は、裁判所書記官が訴状を保管し、いつでも交付できる旨を裁判所の掲示場に掲示して行います。
掲示開始から2週間(外国においてすべき送達については6週間)が経過すると、公示送達の効力が発生し、訴訟書類を配偶者へ送達したものとして取り扱われます。 -
(3)離婚には法定離婚事由(民法)が必要
前述したように、離婚訴訟では離婚を求める側が「法定離婚事由」のいずれかを立証しなければなりません。
フィリピン人配偶者が行方不明になってから3年以上経過している場合は、「3年以上の生死不明」、または「婚姻を継続し難い重大な事由」によって離婚が認められる可能性があります。
どのような事柄であれば法定離婚事由として認められるのかを、個人で判断するのは難しいため、弁護士にご相談いただいたうえで対応を検討されることをおすすめします。
4、まとめ
外国人配偶者との離婚は、日本人同士の離婚に比べて手続きが複雑になる傾向があります。
特に、フィリピンと日本では婚姻制度が全く異なるため、フィリピン人配偶者との離婚を目指す場合には、国際法務を取り扱う弁護士へのご依頼をおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所は、国際離婚に関するご相談を随時受け付けております。
離婚手続きや在留資格に関する論点整理など、フィリピン人配偶者との離婚を円滑に成立させるため、幅広い観点からサポートします。
フィリピン人配偶者と離婚問題を抱えている方は、ぜひベリーベスト法律事務所にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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