審判離婚が利用されるケースとは? 手続きの特徴や注意点を解説
厚生労働省が発表している『令和4年度 離婚に関する統計の概況』によれば、令和2年の離婚件数は、約19万3000件でした。このうち、裁判所の手続きを利用した離婚は11.7%で、夫婦が話し合いで離婚する協議離婚は88.3%です。
裁判所の手続きを利用する離婚のうち、「調停離婚」や「裁判離婚」は耳にしたことがあるかもしれません。一方で、「審判離婚(しんぱんりこん)」という手続きは、知らない方が多いのではないでしょうか。
審判離婚は、家庭裁判所の調停で離婚自体には合意できているにもかかわらず、親権や養育費などで折り合いが付かず調停が不成立となりそうなときに、裁判官が調停に代わる審判という手続きに移行し、離婚の審判を下すことをいいます。
これまで、離婚全体に占める審判離婚の割合は、平成28年は0.3%と極めて少なかったのですが、年々増加傾向にあり令和2年には1.2%の夫婦が審判離婚を選択しています。
今回は、審判離婚の概要や流れ、メリット・デメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、離婚には6種類の方法がある
離婚は、協議離婚、調停離婚、裁判離婚、審判離婚、認諾離婚、和解離婚の6種類の方法があります。これらを大きく分割すると、当事者の話し合いによる離婚と、裁判所の手続きによる離婚に分けられます。
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(1)当事者の話し合いによる離婚
夫婦の話し合いで決定する離婚を「協議離婚」といいます。
必要な手続きは離婚届の提出だけですが、未成年の子どもがいる場合、親権者を定めなければなりません。その他、離婚に伴う諸条件も夫婦の話し合いによって決めます。
決まった離婚条件については、離婚協議書や執行認諾付きの公正証書など、書面化しておくことが大切です。 -
(2)裁判所の手続きによる離婚
夫婦間の話し合いがまとまらなかった場合は、裁判所の手続きに移行し離婚成立を目指すことになります。順を追って、それぞれの手続きの違いを確認していきましょう。
- 調停離婚 裁判所で、調停委員会(裁判官1名、調停委員2名)の仲介により話し合いを進めます。まとまれば、調停成立となり、調停調書が作成され離婚成立となります。調停調書には確定判決と同じ効力があり、その中で合意した養育費に未払いが生じれば、強制執行も可能です。
- 審判離婚 調停で話し合いを進めていたところ、些細な条件の相違から調停が成立しない場合や、一方が遠隔地にいるため双方の出席ができないという場合に、裁判官が判断をする離婚をいいます。
- 裁判(判決)離婚 調停で離婚が成立しない場合に、離婚訴訟を提起して裁判所に離婚の成否を決定してもらいます。
なお、裁判所の手続きによる離婚は、基本的には「調停」から行う必要があります(調停前置主義)。調停をせずに審判を求めることや訴訟を提起することは、原則としてできません。
判決で離婚が認められるためには、民法第770条第1項各号に掲げられている以下の事由が一つ以上認められる必要があります。
【法定離婚事由】- ① 配偶者が不貞行為をしたとき
- ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
- 認諾離婚 離婚訴訟中に、判決を待たずに原告の離婚請求を認めて離婚することを意味します。
- 和解離婚 離婚訴訟中に、判決を待たずに和解(当事者双方が条件に合意)し離婚をすることをいいます。
認諾離婚は、離婚を成立させることのみが争点となり、親権や養育費などの離婚条件等を定めることはできません。
実務上、認諾離婚はほとんどありません。
和解離婚の場合には、離婚成立だけでなく、親権、養育費、子どもとの面会交流、慰謝料など様々なことについても合意することができます。
2、審判離婚の流れ
審判離婚になるのは、調停手続きで離婚には合意しているにもかかわらず、離婚以外の事情で合意できないために調停が不成立になる場合です。
このようなケースで、離婚することが適切と認められるときには、裁判官は職権で調停に代わる審判を行い、必要な事項を定めて離婚させる審判離婚を行うことができます。
もっとも、審判離婚がなされるケースは非常に稀です。
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(1)審判離婚になるケース
審判離婚に移行するのは、具体的には次のようなケースが代表的です(いずれも、離婚自体には合意していることが前提です)。
- 当事者の一方が、行方不明や入院などで調停の期日に出頭できないケース
- 当事者の一方が、調停を成立させないためにわざと出頭しないケース
- 感情的な理由だけで調停が成立していないケース
- 当事者双方が調停に代わる審判への移行を求めたケース
なお、上記はあくまで代表例となるため、実際にはケース・バイ・ケースで判断されます。
実際には、条件面で合意できない場合に使われることはほぼありません。調停成立のためには双方の出席が必要ですが、感染症対策で遠隔地での調停に参加することが難しいことも多く、その場合に、調停に代わる審判により離婚が成立することが近年増えています。 -
(2)審判離婚の流れ(審判を受けるまで)
当事者が審判離婚をしたいと考えても、審判を行うかどうかは裁判官の判断です。そもそも、いきなり審判手続きを受けることはできず、審判は必ず調停手続きから移行します。
したがって、審判離婚に至るまでの流れは、次のようなステップを踏むのが一般的です。- ① 当事者同士(夫婦)で話し合いがまとまらず、協議離婚不成立
- ② 家庭裁判所に離婚調停を申し立てる
- ③ 調停手続きで離婚自体や条件についても合意できているが、一方が遠隔地に住んでいるため、双方出席で調停を成立させることができないなどの理由で調停成立ができない
- ④ 裁判官が、調停に代わる審判への移行を決定する
- ⑤ 審判が下される
3、審判離婚のメリット・デメリット
離婚することに合意さえできていれば、審判離婚は有効な手続きといえます。では、なぜあまり利用されていないのでしょうか。審判離婚のメリットとデメリットについて、確認していきます。
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(1)メリット
- 早期解決を図ることができる 協議離婚も調停離婚も、話し合いがまとまらなければ離婚は成立しません。また、調停が不成立となり離婚訴訟に移行した場合、離婚成立まで約1年~1年半かかります。
- 裁判を避けられる 調停が不成立となり離婚訴訟に移行すれば、夫婦の間の感情的な対立が激しくなり、訴訟における応酬も激化することが一般的です。紛争の長期化だけでなく、精神的な負担も非常に大きくなるでしょう。
- 法定の離婚原因がなくても離婚が成立する 前述したように、離婚訴訟の場合、民法が定める離婚事由のいずれかに該当しなければ離婚は認められません。
この点、審判離婚では、話し合いの結果を無駄にすることなく、調停の内容を踏まえて審判を受けることができます。また、離婚訴訟に移行した場合と比べて、早期解決が実現するというメリットもあります。
調停でおおむね合意ができている場合には、離婚訴訟を避けるために、裁判官に対して審判への移行を求める方が適切であることも少なくありません。
しかし、審判離婚の場合には、双方が離婚に合意していますので、法定の離婚原因に該当しない場合、たとえば性格の不一致などが離婚理由であったとしても離婚は認められます。
このように、審判離婚では夫婦の事情に応じた柔軟な結論を導くことが可能です。 -
(2)デメリット
- 審判結果は異議申し立てによって失効する 審判の結果に対しては、告知を受けた次の日から2週間以内であれば、異議申し立てを行うことが可能です。異議申し立てがなされれば、審判の結果は効力を失います。
- 自分が思ったとおりの結論とならないことがある 調停は話し合いですから、双方が全てに合意しない限り成立はしません。
審判の結果が失効した場合、紛争を解決するための次の手段は離婚訴訟しかありません。
しかし、審判離婚は裁判官の判断となるため、自分の主張が認められず、思ったとおりの結論にならない場合もあり得ます。
ただし、この点は、離婚訴訟の場合にも当てはまることのため、どのような手段を採るのが良いかは、状況に応じて検討することになります。
4、審判離婚が成立した後に必要な手続き
審判離婚が成立した場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。注意点とあわせて解説します。
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(1)届け出をしなければ罰則が科せられる
審判離婚で、異議申し立てがなされずに審判の結果が確定すれば、その日から10日以内に、市町村役場に離婚届を提出しなければなりません(戸籍法 第77条)。
正当な理由なく届け出をしなかった場合には、5万円以下の過料に科せられることがあるので注意が必要です(戸籍法第137条)。さらに、10日の届け出期間を過ぎ、役所から届け出の催告を受けたにもかかわらずこれも無視した場合には、10万円以下の過料に科される可能性があります(戸籍法第138条)。 -
(2)必要な書類
市町村役場への提出が必要とされる書類は、次のとおりです。
なお、提出前にお住まいの市町村役場に確認したうえで、書類を用意するようにしましょう。- 離婚届
- 審判書謄本(家庭裁判所で取得)
- 審判確定証明書(家庭裁判所で取得)
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に離婚を届け出る場合のみ)
5、まとめ
離婚の約90%は協議離婚ですが、当事者同士の話し合いで解決できなければ、裁判所の手続きによって離婚成立を目指すことになります。
裁判所の手続きに移行するケースでは、関係性が悪化していることが少なくありません。また手続きの準備など慣れない事柄も多いため、弁護士に委任し適正な条件で早期に紛争の解決を目指すことが望ましいといえます。
ベリーベスト法律事務所では、離婚のお悩みを抱えている方を全力でサポートしております。弁護士が全面的に窓口にたつので、相手方と会わずに離婚成立を目指すことも可能です。離婚の進め方、ご希望の条件など、しっかりとお話を伺ったうえで進めてまいりますので、ぜひ安心してベリーベスト法律事務所にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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