離婚の際に取り決めたことを、高い法的効力をもつ公正証書にしておくことにより、大きなメリットを得られます。ここでは、公正証書作成までの手順や費用について解説します。
もし、離婚の際に条件は決めたけれど、その内容に不安がある場合や、公正証書を作成するために足を運ぶ時間がないという場合には、公正証書の作成に関して、ぜひ弁護士に相談してください。あなたの代理人として責任をもって、公正証書が作成され、無事離婚が成立するまでサポートします。
公正証書作成のために必要な準備
まずは、夫婦の話し合いによって公正証書に記載する内容を決定します。一般的には以下の項目について話し合います。
(1)子供に関すること
- 親権者の決定
- 養育費の金額、支払い方法、支払期間
- 子どもとの面会交流についての取り決め
(2)お金に関すること
- 財産分与の割合や内訳
- 慰謝料の金額や支払い方法
- 年金分割に関する事項
これらの項目を漏れなく取り決めるだけでなく、適正な条件で取り決めなければなりません。慰謝料の金額は妥当かどうか、養育費は双方の収入に応じて適正なものになっているのかなどを的確に判断する必要があります。特に、離婚する際は、金額が大きくなる養育費や財産分与について、妥協することなく交渉を進めなければなりません。養育費については、月々の金額だけでなく、支払期間も重要です。成人までにするのか、大学進学までにするのかを前もって話し合っておく必要があります。
話し合いがうまく進まない場合は、弁護士に交渉を一任してもよいでしょう。
協議で上記の項目が決定したら、決定したことをまとめておきます。それが、公正証書のたたき台となりますので、正確に記載しておきましょう。書式は、契約書等の書式になっている必要はなく、契約条件が網羅されている箇条書きで問題ありません。
公証役場での手続・費用について
公証役場で公正証書を作成する場合に必要な書類や費用、手続の方法について説明します。
公証役場に行く前に準備すべきもの
公証役場で公正証書を作成するためには、以下の書類等が必要です。
本人確認書類
以下の①~⑤の書類のうち、いずれかの書類が必要です。
- 印鑑証明書と実印
- 運転免許証と認印
- マイナンバーカードと認印
- 住民基本台帳カード(写真付き)と認印
- パスポート、身体障害者手帳又は在留カードと認印
戸籍謄本
公正証書作成後に離婚する場合は、現在の家族全員が掲載されている戸籍謄本が必要です。すでに離婚している場合は、当事者双方の離婚後の戸籍謄本が必要となります。
不動産に関する書類
離婚に伴い、財産分与として不動産の所有権を移転する場合は、以下の①及び②の書類が必要です
- 不動産の登記簿謄本
- 固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
年金手帳等
離婚する際、年金分割を行う場合は、公正証書に年金番号を記載しなければなりません。夫婦それぞれの年金番号がわかる年金手帳等を用意しておきましょう。
離婚に関する合意書(離婚協議書等)又は合意した内容の書かれたメモ等
公証役場によっては協議離婚書等が必要となります。事前に手続をする予定の公証役場に確認しましょう。
その他、公証人が指定する書類
上記の書類以外にも、財産の金額等を証明する書類の提出が求められることがあります。たとえば、住宅ローンの契約に関する書類が求められることが考えられます。わからないことは、公証人に確認しておきましょう。
公証役場へ公正証書の作成を申込む
(1)公証役場への連絡
まずは、公証役場に公正証書の作成を申込みます。公証役場によって、申込みの手順は異なりますが、まずはあなたが足を運びやすい場所の公証役場へ電話し、離婚の公正証書を作成したい旨を伝えましょう。離婚に伴い作成する公正証書の正式名称は、「離婚給付等契約公正証書」です。
公証役場の営業時間は、公証役場によって異なります。事前に手続をする公証役場に確認しましょう。
(2)公証役場に行く
公証役場に必要な書類を持って行くと、法律の専門家である公証人が書類や決定事項を確認したうえで、公正証書作成の準備に入ります。公正証書を弁護士に依頼せず自分で行う場合は、離婚する当事者がそろって参加する必要があります。
なお、公正証書の作成の申込みから完成までにかかる時間は、公正証書を作成する夫婦ごとに様々です。
(3)公証役場で完成した公正証書を受け取る
公正証書を完成させる準備が整ったら公証役場から連絡が入りますので、受取日時の予約を入れます。予約の日時には、契約者本人が公証役場に赴かなければなりません。離婚に伴い作成する「離婚給付等契約公正証書」における契約者とは、離婚する夫婦二人になります。つまり、あなたと、(元)配偶者です。
それぞれが公正証書に署名捺印することで、公正証書が完成します。そして、費用を支払うことで、公正証書の正本が債権者に交付されます。また、公正証書の謄本が債務者に交付されます。
公正証書にかかる費用
公正証書の作成のためには費用が必要です。手数料は、原則として、公正証書の正本等の交付のときに現金で支払うことになります。手数料は、政府が定めた「公証人手数料令」という政令により定められています。
手数料は、途中で事情が変わり、公正証書の作成が途中で終了しても、一定の場合には支払う必要があるので注意が必要です。具体的には、公証人が、証書の作成等に着手した後、公正証書の作成を公証役場に嘱託した嘱託人の請求、又は嘱託人等の責めに帰すべき事由により、これを完了できないときは、それまでの所要時間に従い、公証人手数料令第26条の規定の例により算定した額の手数料を支払う必要があります(同令第33条)。
弁護士による公正証書作成のサポート
公証役場には、法律の専門家である公証人が在籍しており、彼らがたたき台を基に、公正証書を作成します。公証人には、一定の試験に合格した後、6か月以上公証人見習いとして実地修習を行った者(公証人法第12条)や裁判官(ただし、簡易裁判所判事を除く。)、検察官(ただし、副検事を除く。)、又は弁護士の資格を有する者等が任命されるので(同法第13条)、法的知識は確かです。法的に問題がある内容の公正証書は作られませんし、形式として誤りがあるおそれはほとんどないといえます。
しかし、決定事項がこれから離婚するあなたにとって適正かどうかを判断したりアドバイスをしたりすることはありません。したがって、法的に有効かつ適正な契約内容にしたいと考えるのであれば、弁護士による離婚相談や公正証書作成サポートサービスを受けることをおすすめします。
さらに、弁護士に依頼することで、契約内容の協議の段階で代理人となって交渉してもらうことができます。弁護士が離婚の協議段階から介入していれば、不利な契約内容になる心配から解放されることでしょう。
また、あなたの代理人として依頼を受けた弁護士は、公証役場での作成依頼や、完成等の手続を代行することができます。平日の日中に時間が取れないという方にとっても弁護士による公正証書作成サポートは有益です。