離婚をするということは、戸籍を変えるということです。場合によっては、姓、つまりは名字が変わることもあるでしょう。
つまり、多くのケースにおいて、離婚した際、市区町村の戸籍課へ足を運ぶ必要があります。手続きの内容によっては、お住まいの市町村の戸籍課では、処理ができないことも発生します。
離婚前に、どのような書類や手続きが必要となるのか、その後どうなるのかも含め、知っておきましょう。
離婚したら、戸籍はどうなる?
戸籍にバツはつかない!
雑誌などを読んでいると、離婚歴のある人のことを「バツがついている」と表現されることがあります。これは、かつての戸籍において、離婚などを理由に該当の戸籍から外れる「除籍」とよばれる手続きが完了すると、除籍した人の名前欄に×印がつけられていたことが由来です。かつての戸籍はすべて手書きによる紙の書類でつくられ、管理されていたため、明確な区別をつけられるよう、×印をつけていました。
しかし、ITの進化により、戸籍そのものが電子化された書類となった今、電子化済みの戸籍に×印はつきません。その代わり、「除籍」という文言が追加されます。
あなた自身が筆頭者である場合の戸籍は?
一般的に、婚姻届を提出したときに、夫を筆頭者とする戸籍をつくっているケースが多数を占めます。あなた自身が戸籍の筆頭者で、離婚届を提出すると、離婚後の戸籍はどうなるのでしょうか。
まず、あなた自身の戸籍そのものはそのまま継続することになります。そして、元配偶者の欄には、元配偶者の戸籍はどこへ移動したのかが記され、名前欄の前に「除籍」と明示されます。
同時に、あなた自身の欄に、「○年○月○日 妻(もしくは夫)◇◇と協議離婚」という追記がなされます。協議離婚ではなく、調停離婚や審判離婚である場合は、上記の「協議離婚」部分が内容に即して書き換えられます。
あなた自身が婚姻時、配偶者の戸籍に入っていた場合の戸籍は?
もしあなたが、婚姻中、相手の戸籍に入っていた場合は、離婚後の戸籍をどうするかを決めなければなりません。一般的に妻が夫を筆頭者とする戸籍に入っているケースが多く、そのほかのケースでは夫が妻の実家の婿養子に入っていたなどのケースがこれに当てはまります。
離婚後、あなたが選択できるのは以下の2パターンです。
- 自分自身が婚姻前にいた戸籍に戻る(復籍)
- 自分自身を筆頭者とする新たな戸籍をつくる
特に手続きを行わない場合、原則として、自身の親など、元の戸籍に戻ることになります。
新しい戸籍をつくるケースとしては、以下の3つが考えられます。
婚姻前の戸籍そのものが除籍されているとき
「すでにあなた自身の両親が他界している」、「以前の離婚により自分個人の戸籍を持っていたものの、婚姻により除籍してしまった」、などの理由で、すでに戻るべき戸籍がないというケースです。新たにあなた自身を筆頭者にした戸籍をつくる必要があります。
婚姻前の姓に戻し、子どもと同じ戸籍に入りたいとき
戸籍法では、一つの戸籍には親子2代までしか入れません。そのため、あなた自身の親を筆頭者にした戸籍にはあなたの子どもを入れることができません。また、姓が異なる場合は血縁関係があっても同じ戸籍に入ることもできないことになっています。新たに戸籍をつくり、子どもの姓をあなたの旧姓に変更するなどの手続きが必要になります。
婚姻後の姓を名乗り続けたいとき
姓が異なる場合は、親子関係があっても同じ戸籍に入ることができません。また、旧姓と婚姻中の姓が同じでも、新たな戸籍をつくる必要が出てきます。つまり、たとえば婚姻前の名字が「鈴木」で婚姻中の名字が全く同じ「鈴木」だとしても、新たに「鈴木」の戸籍をつくる必要があるということになります。
離婚したら、姓はどうすればいい?
名字が変わらない場合
離婚しても、あなたの戸籍に配偶者が入ったケースでは、あなたの姓は変わりません。
引き続き、同じ姓を使い続けることになります。
名字が変わる場合
結婚したとき、あなたの名字が変わった、もしくは配偶者の戸籍に入った場合、姓は自動的に旧姓へ戻ることになります。
もしあなたが配偶者の両親と養子縁組を結んでいた場合で、養子縁組も解消したい場合は、離婚時に合わせて養子縁組関係を解消する「離縁」の手続きが必要となります。離婚しただけでは離縁は行われないので注意が必要です。離婚と離縁、両方の手続きを行うと、名字も旧姓に戻ることができます。
名字を変えたくない場合
婚姻時、配偶者の戸籍に入っていた場合は自動的に旧姓に戻りますが、仕事や子どもの学校、戸籍の問題など、社会的に婚姻中の名字を名乗り続けたいという方も少なくありません。その場合も、婚氏続称制度により、婚姻中の姓を名乗り続けることが可能です。
その場合は、市区町村の戸籍課で「離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)」を提出します。手続きを行う際は、必ずあなた自身を筆頭者にした戸籍を新たにつくる必要があります。
離婚したら、戸籍上、どんな手続きが必要?
あなた自身が戸籍の筆頭者だった場合
これまでの戸籍から特に変更がなければ、離婚届の提出により、自動的に戸籍も修正されます。特別な手続きは不要です。
婚姻時、相手の戸籍に入っていた場合
多くの女性がこのケースに当てはまります。
前出のとおり、離婚する前に戸籍や名字をどうするかを決めておきましょう。離婚届には、婚姻前の戸籍に戻るのか、新たな戸籍をつくるのかを記載する欄があります。
名字を旧姓に戻し、元の戸籍に戻る
原則、離婚届の提出により、自動的に婚姻前の戸籍に戻ることとなります。
これを復籍とよばれています。
もし、あなたの婚姻中に、あなたの戸籍がもともとあった親の戸籍が、離婚や結婚によって別の戸籍へ移動(転籍)している場合は、転籍後の戸籍へ入ることとなります。
名字も自動的に、旧姓へ戻ることになります。
名字を旧姓に戻し、新たな戸籍をつくる
名字は離婚届の提出とともに旧姓に戻ります。
新たな戸籍をつくる場合は、「新戸籍編製の申し出」を行うことになります。
離婚届に記載する「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄には「新しい戸籍をつくる」のチェック欄があります。ここを忘れずにチェックしておきましょう。「新戸籍編製の申し出」を忘れると、自動的に元の戸籍へ戻ることになります。
また、新たな戸籍を作成する際には、新たな本籍地が必要です。多くのケースでは新居の住所とすることが多いようですが、本籍地となる住所を決めておきましょう。
名字を婚姻時のまま継続させ、新たな戸籍をつくる
名字を旧姓に戻し、元の戸籍に戻るにも記載したとおり、離婚届の提出時には、「新しい戸籍をつくる」へのチェックを忘れずに行ってください。
離婚後も、婚姻時の元配偶者の姓を名乗り続ける場合には、市区町村の戸籍課で「離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)」の手続きが必要となります。本籍地以外の市区町村で届け出をする場合は、届出人の戸籍謄本が必要です。
子どもの戸籍と姓はどうなる?
子どもの戸籍や姓は、何もしなければ変わらない!
両親が離婚しても、原則、子どもの戸籍や姓は変わりません。
つまり、婚姻中の名字のまま、婚姻時に入っていた戸籍に入ったままとなります。
婚姻中から戸籍の筆頭者があなたで、かつ名実ともに子どもの親権者となっていれば問題はありません。戸籍周りの手続きは不要です。離婚届の提出とともに変更される事項はないため、本籍地の移動などが必要でない限りは、戸籍や姓に関して手続きすべきことは特にありません。
しかし、あなたが、子どもの親権者となり、離婚により除籍して転籍する場合は、今後、戸籍などが必要となったときに不便を感じるかもしれません。また、名字が違う親子は同じ戸籍に入れないという制約もあります。
子どもの姓や戸籍の変更を行うためには、以下のような手続きが必要です。以下の手続きは子どもが15歳以上の場合は子ども本人が、15歳未満の場合は親権者が行います。
子どもの姓を変えたい場合に必要な手続き
あなたが親権を得て、「自身の名字を旧姓に戻すと同時に、子どもを自分と同じ戸籍に入れたい」と考えた場合は、以下の2つの手順を踏む必要があります。
- 子どもの名字をあなたが名乗ることとなる旧姓に変更する。
- あなた自身が新たな戸籍をつくり、同じ名字となった子どもを戸籍に入れる。
なぜならば、「親子関係があっても姓が異なると同じ戸籍に入れない」という制約と、戸籍法6条に定められている「戸籍には親子2代までしか入れない」という制約があるためです。
まずは、子どもの姓をあなたの旧姓に変更するためには、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して民法791条に基づいた「子の氏の変更許可」を申し立てる必要があります。
必要書類は以下のとおりです。
- 申立書
- 子どもの戸籍全部事項証明書
- 父・母の戸籍全部事項証明書(離婚の記載のあるもの)
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なるので金額は要確認)
- 届出人の印鑑(シャチハタ以外、認印可)
家庭裁判所で「子の氏の変更の許可」が下りても、あなたを筆頭者とした新たな戸籍をつくらなければ、子どもの姓は変わりません。許可が下りたら速やかに市区町村の戸籍課へ足を運び、子どもの戸籍を移動させる手続きを行いましょう。
子どもの戸籍を自分の戸籍へ移動させる手続きは、次の項をご覧ください。
子どもの戸籍を移動させたい場合に必要な手続き
あなた自身が婚姻時の名字を使い続けたいと決めた場合、離婚時にあなたを筆頭者とした新しい戸籍をつくることになります。この場合は、子どもの名字は変わりませんので、そのまま子どもの戸籍を自分の戸籍へ入籍させる手続きを行います。
また、あなた自身が旧姓に戻し、子どもの名字の変更許可が家庭裁判所から降りたときも、同じ手続きを行うこととなります。
子どもの戸籍を自身の戸籍へ入籍させるためには、お住まいの市区町村の戸籍課で手続きを行います。
必要書類は以下のとおりです。
- 入籍届
- (本籍地以外に届け出をする場合)子の戸籍全部事項証明書および入籍する親の戸籍全部事項証明書
- 届出人の印鑑(シャチハタ以外、認印可)
- 子の氏変更許可審判書謄本(子どもの名字を自身の旧姓に変えた場合)
戸籍や姓に関する届け出のリミットは?
新たな戸籍をつくったり、旧姓ではなく婚姻中の名字を使い続けたりするためには、これまで記載したとおり、それぞれ手続きが必要になり、変更できる期限が限られています。
戸籍に関する手続きは、原則として離婚届を行う際、一緒に行います。自動的に手続きがなされることもあるので、離婚届を記入するときは、チェックを忘れないようにしましょう。
婚姻中の名字を継続して使い続ける場合、離婚後3か月以内に必ず手続きを完了させてください。期限を過ぎると、名字の変更を行うために、家庭裁判所の許可が必要となります。場合によって変更できなくなったり、時間がかかったりするケースもあります。離婚後、あわただしいときですが気を付けましょう。
これらの手続きは、離婚届を提出するとき、できる限りまとめて行ってしまえば、あとから何度も役所へ足を運ばなくても済みます。できる限り離婚前に決めておき、まとめて手続きが行えるよう、準備しておくとよいでしょう。