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そのまま離婚して大丈夫? 専業主婦が確認しておきたい「お金」のこと

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更新日:2022年08月30日  公開日:2019年10月31日
そのまま離婚して大丈夫? 専業主婦が確認しておきたい「お金」のこと

専業主婦が離婚する場合、経済的な理由からなかなか離婚に踏み出せないケースも多々あります。しかし離婚の意志が固いのであれば諦める必要はありません。

事前にお金に関する確認や準備をすることで、不利益を受けないように備えましょう。

今回は、専業主婦が離婚を考えたときに知っておきたい「お金のこと」や「離婚の進め方」について弁護士が解説いたします。

1、専業主婦の離婚では、しっかり離婚給付を取り決めておくことが重要

専業主婦の方は仕事をしていないので収入がありません。そこで離婚の際、特にお金に関するリスクが高くなります。
離婚後の生活に困らないためには、子どもの養育費や財産分与、慰謝料などの離婚給付金についてしっかりと取り決めを行い、お金を確保する必要があります。熟年離婚のケースなどでは年金分割も重要となってきます。

2、専業主婦が離婚準備で確認しておくべき8つのお金のこと

専業主婦が離婚準備するとき、具体的にどのようなお金の問題があるのか見てみましょう。

  1. (1)離婚時に必要な費用

    まずは離婚前に多額の費用がかかる可能性があります。
    たとえば夫と別居するケースでは、引っ越し費用や賃貸住宅を借りる費用、当面の生活費などが必要です。調停をする場合には調停費用も必要ですし、弁護士に依頼する際は弁護士費用もかかってきます。

  2. (2)離婚後にかかる生活費

    専業主婦が離婚するときには、離婚後のお金も必要です。日々の生活費や子どもの学費などにどのくらいかかるか計算しましょう。
    そして自分が就職した場合の給与や相手からもらえる養育費などを計算し、やっていけるかどうか検討しておきます。離婚準備として、就職に有利になるような資格の取得などを検討するのも良いでしょう。

  3. (3)別居後離婚までの婚姻費用

    専業主婦が夫と別居した場合、離婚するまでの間は生活費を払ってもらえます。これを「婚姻費用」と言います。
    婚姻費用の金額は、夫婦それぞれの年収や子どもの有無、人数や年齢などによって決まります(家庭裁判所の定める基準があります)。離婚後の養育費より高額になりますが、それだけでは生活費が不足するケースも多々あります。
    離婚準備事項として、別居後にどのくらいの婚姻費用をもらえるのか、不足する分をどのようにして補って生活していくのか検討しておきましょう。

    参考:あなたはいくら受け取れる? 婚姻費用計算ツールはこちら

  4. (4)不倫やDVなどによる慰謝料

    夫が不倫していたり、DV事案で妻が暴力を振るわれたりモラハラを受けていたりした場合、専業主婦だった妻は夫に慰謝料を請求することができます。また相手から生活費をもらえていない場合にも「悪意の遺棄」として慰謝料を請求することができます。

    慰謝料の金額は、ケースによって異なるため一概には言えません。相手にどのくらいの慰謝料を請求できるかは弁護士に相談し、把握することが良いでしょう。

    参考:浮気・不倫による慰謝料の請求をしたい方へ

  5. (5)財産分与

    離婚するときは、夫婦がともに築いてきた財産を2分の1ずつに分け合うことが原則です。これを「財産分与」と言います。たとえば住宅や預貯金現金、株式や車、生命保険などが財産分与の対象です。専業主婦だったからと言って、取得分の割合が低くなることはありません

    離婚準備としては、夫婦にどのような財産がありそれぞれがどのくらいの評価額になっているのか調査して、資料を集めておきましょう。住宅の評価では住宅ローンの残額も確認しておく必要があります。
    また専業主婦だった妻が離婚後生活に困窮することが明らかであれば、別途「扶養的財産分与」としていくらかのお金や財産を求めることも考えられます。

    夫が不倫していた場合などでは、慰謝料的な意味合いを含めた「慰謝料的財産分与」を求めるケースもあります。

    参考:財産分与についてもっと知りたい

  6. (6)子どもの養育費

    離婚後、専業主婦が親権者になる場合、元夫から子どもの養育費を払ってもらえます。離婚準備事項として、自分の収入と相手の収入をあてはめて、どのくらいの金額が養育費の相場になっているのか確認しておきましょう。
    ベリーベスト法律事務所では子どもの人数や年齢、収入によってどれくらいの養育費がもらえるか計算できる「養育費計算ツール」をウェブサイトで用意しています。ぜひご利用ください。

  7. (7)年金分割

    専業主婦が離婚するとき、夫が公務員や会社員であれば年金分割の請求をできます。平成20年4月以後に婚姻した場合には年金分割に相手の合意は不要ですが、それ以前から結婚していた場合には合意が必要です。
    また合意が不要なのは婚姻期間中ずっと専業主婦だった場合であり、婚姻当初は妻も仕事をしていた場合には、やはり相手の合意が必要です。

    年金分割でどういった手続きが必要かわかりにくい場合、年金事務所や弁護士に相談しましょう。また年金分割を行う場合、離婚準備として年金事務所から「年金分割情報通知書」という書類を入手しておく必要もあります。

    参考:離婚時の年金分割について

  8. (8)助成金や手当

    離婚後専業主婦が親権者となって、母子家庭になるケースなどでは、児童扶養手当などの行政からの給付金や各種手当を受給できます。資格を取得するための教育訓練を受けるための助成金制度もあります。
    また専業主婦だった妻が離婚して小さい子どもを引き取り生活ができない場合、生活保護を受給することも可能です。 離婚準備として、自分がどういった給付や援助を受けられるのか、役所に行って相談してみることをおすすめします。

3、専業主婦が夫に離婚を切り出すタイミングは?

専業主婦の妻が離婚したいと希望したとき、どのようなタイミングで夫に離婚を切り出すべきか迷う方が多いものです。
夫と同居しているケースと、すでに別居しているケースに分けて、対応方法をご紹介します。

  1. (1)別居していない場合

    現在夫と同居している場合には、なるべく穏便に離婚協議を進めることが望ましいです。 離婚準備が整った段階で、夫婦がリラックスしている時間を見計らって離婚を切り出しましょう。
    たとえば休日で特に予定がない場合や食後でゆっくりしているときなどに話をするのが良いでしょう。忙しいときや相手がイライラしているときなどに離婚を切り出すと、まとまるものもまとまらなくなるので注意が必要です。
    相手が離婚することに同意すれば、離婚条件について話し合い取り決めていきます。

  2. (2)すでに別居中の場合

    すでに別居している場合には、相手から「聞いてない」と言われないように、形に残る方法で離婚を切り出すのが良いでしょう。 たとえばメールやLINEで連絡をするのも良いですし、手紙を送ってもかまいません。

    当初に送る文書には、希望する詳細な離婚条件(財産分与や慰謝料など)について書く必要はなく「離婚の話し合いがしたい」という程度でかまいません。メールや手紙などを送っても相手が無視するようであれば、電話をかけましょう。
    相手が離婚に応じる場合、手紙やメールでやり取りを続けたり、カフェなどの公共の場所で会ったりして協議を重ねます。

4、話し合いがまとまったら離婚協議書を作成する

夫婦が別居しているケースでも同居のままでも、話し合いによって離婚に合意ができて離婚条件がまとまったら、協議離婚できます。
協議離婚は「離婚届」を作成して役所に提出すれば手続き的には可能ですが、現実にはそれだけでは足りず「離婚協議書」を作成しておくことをおすすめします。
離婚協議書とは夫婦で話し合った離婚条件をまとめた書面で、夫婦間の契約書のようなものです。具体的には、以下のような事項を書き入れましょう。

 
    ●離婚に合意したこと
    夫婦双方が離婚に合意した事実を記載します。
    ●誰が離婚届を提出するか
    離婚届は夫婦のどちらが提出しても構いません。ただ、妻側は離婚後も婚姻時の姓を名乗るかどうか決定したり、戸籍をどうするか(実家の籍に戻るか新たな戸籍を作成するか)決めたりしなければならないため、妻が提出するケースも多いようです。
    ●親権者
    夫婦のどちらが親権者になるか明らかにします。
    ●養育費
    養育費の金額や支払い方法、支払い終期などを記載します。
    ●財産分与
    基本的には夫婦の共有財産を2分の1にする清算的財産分与の方法を明らかにします。夫婦のどちらがどの財産をもらうのか、その際相手に代償金を支払うのか、支払う場合にはいくら払うのかなどを書きます。
    扶養的財産分与や慰謝料的財産分与を行う場合には、それらの内容についても記載します。
    ●慰謝料
    夫の不倫やDVなどによって結婚生活が破綻した場合には、夫に慰謝料請求できます。協議離婚書には慰謝料の金額と支払い方法を書いておきましょう。
    ●面会交流
    離婚後、夫と子どもとの面会交流を実施する場合には、その方法や頻度などを記載します。
    ●年金分割
    特に合意分割の方法で年金分割を行うときには、協議離婚書にその旨書いておくべきです。  


以上のように離婚協議書が完成したら、それを公証役場に持ち込んで公正証書化しておきましょう。
公正証書にすると、後日相手が養育費や財産分与、慰謝料などの支払いをしなくなったときに、すぐに差し押さえることができるからです。公正証書がない場合、まずは調停や訴訟をしなければならず、手間がかかります。

参考:離婚協議書の作り方とポイント

5、話し合いがまとまらなければ離婚調停、離婚裁判へ

専業主婦の方が勇気を出して離婚の話を切り出しても、夫が離婚に応じなかったり離婚条件が整わなかったりする可能性もあります。
その場合には、家庭裁判所で離婚調停や離婚裁判をしなければなりません。 いきなり離婚裁判はできないので、まずは離婚調停を申し立てましょう。

調停では、調停委員が夫とあなたの間に入って離婚の話し合いを進めてくれます。専業主婦の場合、調停委員から離婚後の生活を心配されるかもしれません。しかしきちんと離婚準備を整えていて将来のプランも明確であれば、調停委員も味方してくれるでしょうし、子どもの親権も取得できます。

調停でも相手が離婚に合意しない場合や離婚条件について争いがある場合には、調停は不成立になり、引き続いて離婚訴訟を提起する必要があります。
訴訟では裁判官が法定離婚理由の有無を検討し、あれば離婚を認めますし、なければ離婚が認められません。また相手が不倫していた証拠やDVを受けていた証拠などを提出すると、裁判官が相手に対して慰謝料の支払い命令を出します。相手が判決に従わない場合には、差し押さえも可能です。

6、まとめ

専業主婦のあなたが離婚を考えたなら、綿密に離婚準備を進める必要があります。お金のことも重要ですし、子どものことも忘れてはなりません。

ベリーベスト法律事務所には専業主婦の方からの離婚相談も多数寄せられています。離婚準備のための相談も承っておりますので、ひとりで抱え込まずに、まずは一度お気軽にお問い合わせください。弁護士があなたのお悩みが解決できるよう、力を尽くします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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