国際離婚は弁護士に依頼するべき? よくあるトラブルと弁護士の選び方
外国人配偶者との国際離婚の場合、夫婦の国籍の違いから、日本人同士の離婚とはやや異なった法律や諸制度が適用されます。
それにより、弁護士のように国際離婚に関する知見と問題解決に豊富な実績と経験を持つ専門家と相談しながら進めないと、思いもよらないトラブルに遭ってしまう可能性もあります。
本コラムでは、国際離婚において生じやすいトラブルや注意点、そして円満に離婚を成立させるうえで重要なパートナーとなり得る弁護士の選び方について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、国際離婚の原因は?
離婚に至る原因は、夫婦それぞれです。
以下では、国際離婚においてよくある離婚原因についてご紹介します。
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(1)言語の違い
お互いに相手方の言語に十分精通していない場合、意思疎通の難しさがストレスになるばかりか次第に夫婦間のコミュニケーションが希薄になり、国際離婚につながることもあります。
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(2)カルチャーの違い
価値観の違いということも可能でしょう。日本人どうしの結婚であっても、お互いの価値観の違いから破局に至る夫婦は少なくありません。
ましてや夫婦それぞれの生まれ育った国やカルチャーが異なる国際結婚の場合だと、その傾向は出やすいものです。 -
(3)子育て観の違い
子育てにどのように関わっていくか、子どもをどのように教育していくかということは、夫婦それぞれの生まれ育った国のカルチャーが出やすいものです。
お互いに大事な子どもですから、子育て観に違いが生じてしまうことで、夫婦の価値観を共有することが難しくなってしまうケースもあります。 -
(4)金銭感覚の違い
日本人同士でも同様ですが、貯蓄に励むタイプ人と目の前のお金はすぐに使ってしまうタイプの人が夫婦になると、夫婦間でお金の使途をめぐるもめ事が絶えないようになり、結果として国際離婚になってしまうことがあります。
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(5)異国でのストレス
人によりますが、何年も異国に住んでいると望郷の念や異国での生活により生じるストレスがたまるようになり、それが国際離婚のきっかけになることもあります。
2、国際離婚におけるトラブルや問題点について
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(1)どちらの国の法律が適用される?
国際私法の基本法である「法の適用に関する通則法(以下、通則法)」第25条および第27条の規定により、国際離婚で適用される法律は配偶者の居住地がどの国なのかで異なります。以下でパターン分けしてみましょう。
- 日本国内で外国人配偶者と国際離婚する場合:日本の法律が適用
- 日本人配偶者が日本に居住し、外国人配偶者が外国に居住している場合:日本の法律が適用
- 日本人配偶者と外国人配偶者が、それぞれの母国と異なる外国に居住している場合:居住国の法律が適用
準拠法が日本法であれ外国法であれ、国際離婚は法律が関係してくるものです。したがって、国際離婚に臨むにあたっては弁護士と相談しながら進めることをおすすめします。
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(2)国際離婚のステップは?
日本では、離婚の種類は家庭裁判所による介入の有無および介入の方法によって、4つに分けられます。
- 協議離婚…夫婦間の話し合いによる離婚。
- 調停離婚…夫婦間で離婚に向けた話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の調停委員が間に入って話し合いをまとめる離婚。
- 審判離婚…夫婦双方が調停において離婚することについて合意しているものの、離婚条件がわずかに折り合わないなどで最終的な合意に至らないとき、家庭裁判所が条件を定めたうえで行う離婚。
- 裁判離婚…家庭裁判所、さらには高等裁判所や最高裁判所が離婚の是非や離婚条件を定める離婚。
国際離婚では日本国内での離婚手続きと併せて、外国人配偶者の本国においても離婚手続きを行う必要があります。
具体的には、外国人配偶者の本国の在日日本大使館に、日本の離婚届受理証明書などを提出することになります。ただし、裁判による離婚しか認めていない国もあるため、その際は日本で離婚裁判を行い、その判決文を用意しなければなりません。
なお、日本国外で国際離婚する場合、現地の日本大使館で日本における離婚手続き、あるいは帰国後に市町村役場で同様の手続きを取ることが必要です。その際に必要な書類は、現地の離婚裁判の判決文か離婚証明書(いずれも和訳付き)、および日本の離婚届出書です。 -
(3)戸籍はどうなる?
外国人は日本で独自の戸籍を持つことができませんので、国際結婚時は日本人配偶者を筆頭者として戸籍が作成されています。
したがって、あなたが日本人であればあなたを筆頭者とした戸籍に離婚の事実が記載されるだけで、特段の手続きが必要となるわけではありません。 -
(4)名字はどうなる?
民法第767条第1項では、「婚姻によって氏を改めた夫または妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する」と規定しています。離婚したあとは、名字を旧姓に戻すことが民法の基本的な考え方なのです(復氏の原則)。
ところが日本人同士の離婚と異なり、国際離婚の場合は戸籍法第107条第3項の規定により離婚後3か月以内に市町村役場に届け出でないと元の名字に戻ることはありません。この3か月を経過してしまうと、元の名字に戻るためには裁判所へ氏の変更許可の申し立てを行う必要があります。 -
(5)子どもの親権はどうなる?
通則法第32条によりますと、「親子間の法律関係は、子の本国法が父または母の本国法と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による」と定めています。つまり、たとえば子どもの国籍が日本であれば日本の法律が適用され、子どもの国籍が両親いずれとも異なる場合は相当期間居住している国の法律が適用されるのです。
なお、通則法第38条第1項の規定により、子どもが二重国籍の場合は相当期間居住している国の法律が適用され、相当期間居住している国がない場合は子どもと最も密接な関係のある国の法律、二重国籍の内いずれかが日本国籍の場合は日本法が適用されることになります。
では、国際離婚において子どもに日本法が適用されるときの親権はどうなるのでしょうか。
民法第818条第3項では、婚姻期間中の親権は父母が共同して行使する「共同親権の原則」を定めています。この例外として、民法第819条では離婚するときは父母のどちらか一方しか子どもの親権者になることができないと定めています。また、協議や裁判によらず子どもの親権者を確定させないと、離婚することができません。そして親権は、先述した協議・調停・審判・裁判のいずれかのステップで決定することになります。
なお、国際離婚において親権は、子どもの生活基盤を安定・保護する目的で締結されたハーグ条約を考慮する必要があります。ハーグ条約が成立した背景は、国際離婚した夫婦の一方が子どもを一方的に自国へ連れて帰り、相手方の配偶者と面会できないようにするという事例が多発したことが問題視されたものです。
したがって、もし子どもの親権を得たとしても子どもが外国に居住している場合は、日本へ連れて帰ることが難しくなってしまっているのです。参考:ハーグ条約とは
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(6)子どもの国籍はどうなる?
子どもが生まれた国が日本の場合、父母のいずれかが日本国籍を有していれば子どもは日本国籍を有することになります。ただし、配偶者の母国の法律次第では子どもが海外で出生するとその時点で当該国の国籍が付与されるため、出生時に戸籍法第49条および国籍法第12条に基づき日本国籍も取得していた場合、その子どもは二重国籍となっています。
二重国籍の状態は、相手方の国の法律にもよりますが父母が国際離婚したあとも継続します。そして、子どもが22歳に達するまでに国籍法第14条の規定により子ども自身でいずれかの国籍を選択することになります。 -
(7)慰謝料は請求できる?
国際離婚においても、DVや浮気など不法行為のあった配偶者へ慰謝料を請求することができます。ただし、通則法第17条「不法行為によって生ずる債権の成立および効力は、加害行為の結果が発生した地の法による」の規定により、DVや浮気など不法行為のあった国の法律が、損害賠償請求を行うための準拠法となるのです。
3、国際離婚は弁護士に依頼するべき?
国際離婚を弁護士に依頼することは、以下のようなメリットがあります。
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(1)面倒な手続きを任せることができる
国際離婚では日本での手続きに加えて、配偶者の国籍によっては配偶者の母国における手続きも行わなくてはなりません。
裁判など配偶者の母国における手続きが必要な場合、どのような手続きが必要なのか調査することや慣れない外国語を読み書きしたり話さなければならないこともあるでしょう。その点、弁護士に依頼すれば必要な手続きの調査や実際の手続きを任せることができます。 -
(2)相手方と交渉することができる
国際離婚において弁護士ができることは、離婚手続きや事務の代行や法律相談だけではありません。あなたの代理人として配偶者に離婚に向けた交渉することができます。
特に国際離婚において配偶者と冷静な話し合いが難しい場合は、あなたに代わって弁護士が配偶者と国際離婚に向けた交渉を行います。また、話し合いがまとまらず調停や裁判に移行した場合でも、弁護士はあなたに代わって裁判所に出席することが可能です。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
4、国際離婚をする際に弁護士を選ぶポイント
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(1)国際離婚に実績があるか
先述のとおり、国際離婚は日本人どうしの離婚とは異なる法律や諸制度が適用されたり、場合によっては配偶者の母国、つまり外国の法律や諸制度が適用されることもあります。
したがって、国際離婚を依頼する弁護士を選ぶときは、国際離婚に注力しており経験と実績を持つ弁護士にすることをおすすめします。 -
(2)外国語に堪能か
国際離婚では、日本語が母国語ではない配偶者との交渉や配偶者の母国語で書かれた書類に対処しなければならないこともあります。もしそのようなことが必要であると考えられる場合は、あらかじめ配偶者の母国語に通じている弁護士を選ぶ必要があります。
5、まとめ
繰り返しになりますが、国際離婚では実績と経験があり、配偶者の母国語に通じた弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所にはアメリカ弁護士や中国弁護士が所属しておりますので、国際離婚でお悩みのことがあれば、ぜひベリーベスト法律事務所までご相談ください。円満な国際離婚の成立に向け、ベストを尽くします。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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