離婚協議書を公正証書で作成する場合、費用はいくらかかる?
夫婦間の話し合いによって離婚をする「協議離婚」の場合、取り決めた条件等をまとめた離婚協議書を「公正証書」として作成しておくと、後々のトラブル防止に役立ちます。
ただし、公正証書を作成するにあたっては、費用(公証人手数料)がかかるため、作成するかを迷われる方もいらっしゃるでしょう。
では、公正証書を作成するには、どの程度の費用がかかるのでしょうか。また、離婚協議書を公正証書として作成することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
本コラムでは、離婚公正証書を作成する際に必要となる費用、公正証書を作成するメリットや注意点、弁護士等の専門家に依頼すべきかについて解説します。
1、離婚公正証書の作成にかかる公証人手数料とは?
公正証書とは、「公証人」という法務大臣が任命した公務員に作成してもらう公文書です。一般には、遺言書や離婚協議書を公正証書にするケースが多いです。
公正証書を作成する際には、公証人に対して支払う費用(手数料)が発生します。離婚に際し公正証書を作成するときも例外ではなく、一定金額の費用を払わねばなりません。
公正証書作成にかかる手数料の金額は「公証人手数料令」によって定められており、具体的には「目的の価額」によって異なります。
目的の価額とは、遺言の対象となる遺産額、離婚で請求する慰謝料や財産分与、養育費の額などです。公正証書で定める金額が大きくなるほど手数料額も上がると考えましょう。
●法律行為に係る証書作成の手数料(公証人手数料令 第9条)
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万7,000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 2万3,000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 2万9,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3,000円に対し、5,000万円超過するごとに1万3,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5,000円に対し、5,000万円超過するごとに1万1,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9,000円に対し、5,000万円超過するごとに8,000円を加算した額 |
なお、法務省令で定める縦書きの証書が4枚(横書きの場合は3枚)を超えると、1枚ごとに250円の費用がかかります。
また年金分割の合意を公正証書にする場合、別途1万1,000円の費用が発生するので注意しましょう。
2、公正人手数料を支払うタイミングと作成における注意点
公正証書を作成する基本的な流れを確認しつつ、支払いのタイミングと注意点について解説していきます。
-
(1)公正証書作成の流れと支払い
①公正証書とする内容について話し合い固める
公証人は、内容について相談に乗ってくれたり、調整したりはしません。
当事者間やその代理人において、離婚の際に公正証書を作成するのであれば、離婚に際しての条件について話し合い、内容を固めたうえで、公証役場での手続きに進みます。
②必要書類を用意する
本人確認書類のほか、戸籍謄本や財産関係資料、不動産の登記簿謄本、年金手帳などが必要になります。実際に手続きを行う公証役場によって、必要となる書類が異なりますので、詳しくは、手続き予定の公証役場に確認しましょう。
③公証役場へ申し込む
お近くの公証役場へ「離婚給付等契約公正証書」の作成を申し込みます。公証人が決まったら、合意内容を伝えましょう。自分たちで作成した離婚協議書を渡すとスムーズに進みます。
④公正証書を完成させる
準備が整うと公証役場から連絡が入ります。指定された日にちに公証役場へ行くと、公証人が公正証書を用意してくれていますので、当事者である夫婦で内容等を確認し、署名押印すると公正証書が完成します。
当事者には正本又は謄本が交付されるので、大切に保管しましょう。
⑤手数料を支払う
公正証書が完成したら、その場で手数料を支払います。 -
(2)作成途中でキャンセルした場合の費用
公正証書の作成を途中でキャンセルすると、作業状況等にもよりますが作業手数料を請求される可能性があります。
キャンセルしなければならなくなった場合には、なるべく早く連絡しましょう。 -
(3)公正証書の作成にかかる費用は夫婦どちらが負担する?
公正証書の作成費用を、夫婦のどちらかが負担するべきという決まりはありません。2分の1ずつとすることが多いですが、どちらか一方のみが強く作成を希望している状況であれば、作成したい側が全額負担することも検討すると良いでしょう。
3、公正証書は作成するべき? 離婚協議書との違いやメリットとは
離婚の際、わざわざ手数料を支払っても公正証書を作成する必要があるのでしょうか?
双方の合意をとることが目的であれば、離婚協議書(離婚契約書)だけで良いのではないかと考えるかもしれません。公正証書にするメリットについて、見ていきましょう。
-
(1)契約内容を明確にできる
離婚協議書の場合、相手が後に「自分が作成したものではない」、「合意したつもりはない」などと言い出し、契約内容の撤回などを求めてくる可能性も否定できません。
公正証書であれば、当事者が確認した上で公証人が作成するため、後に、契約締結自体やその内容についてトラブルになるリスクを未然に防ぐことができます。 -
(2)原本が公証役場で保管される
自分たちで協議離婚書を作成した場合、自己責任で保管する必要があります。紛失の危険がありますし、相手に書き加えられるリスクもあります。
公正証書であれば、原本を公証役場で保管してもらえます。紛失するおそれがないのにくわえ、変造や偽造のリスクもありません。 -
(3)支払いを確実に受けやすくなる
個人で作成した離婚協議書には「強制執行力」はありません。そのため、たとえば養育費や慰謝料の支払いに応じないといった場合は、調停や訴訟を起こして「債務名義」を入手しなければ、財産を差し押さえることはできません。
一方、執行認諾文言付き公正証書があれば、公正証書自体を「債務名義」として、訴訟をせずに強制執行として、相手の給料や預貯金等の資産を差し押さえることができます。
また、相手にしてみると「滞納すると差し押さえを受けるかもしれない」というプレッシャーがかかるので、そもそも滞納自体をしにくくなる効果も期待できるでしょう。
養育費や財産分与、慰謝料などの支払いを受ける場合には、執行認諾付き公正証書を作成することをおすすめします。関連記事
4、公正証書は自分で作成できる?
公正証書の作成を、当事者で進めることは可能です。
まずは夫婦で話し合って離婚条件を決めて、お近くの公証役場を調べて申し込み、離婚条件を伝えましょう。その上で必要書類をそろえて公証役場へ行けば、作成してもらえます。
ただし、当事者で手続きを進めるのは大きな手間と感じられるかもしれません。
まず、正しい内容で公正証書を作成するために、公証役場に対して離婚条件を正確に伝えなければなりません。内容に応じて必要書類も異なるため、それらの確認や収集も必要です。苦労して必要書類を集めても、不備があればやり直しになってしまいます。
また、作成してもらう日には夫婦そろって公証役場へ行く必要があります。相手と顔をあわせなければいけないのはもちろんのこと、公証役場は平日の日中しか開いていないので、仕事も休む必要があるかもしれません。
当事者で作成手続きを進めてみたものの、意外と大きな労力がかかるので、途中で作成を諦めてしまう方も少なくありません。
一方で、弁護士へ作成を依頼すると費用はかかりますが、手間を軽減できるだけではなく、さまざまなメリットがあります。
5、公正証書案の作成を弁護士に依頼すべき理由と費用(報酬)の相場
公正証書案の作成を依頼できる専門家には、弁護士以外にも行政書士や司法書士が存在します。これらの各士業は「権限の範囲」が異なるので、サポート内容も違います。
それぞれの違いや費用の相場を確認しましょう。
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(1)行政書士・司法書士・弁護士ができることの違い
行政書士、司法書士、弁護士は「対応できる範囲」が異なります。
●行政書士にできること
行政書士は、基本的に「文書作成」のみサポートできます。依頼できるのは文書案の作成のみです。
たとえ内容でもめたとしても、行政書士に内容の調整は依頼できないので注意しましょう。
●司法書士にできること
司法書士にも基本的に本人の代理権がありません。文書案の作成は依頼できますが、もめてしまった場合の交渉の代理は依頼できません。
ただ司法書士には不動産登記の権限が認められているので、財産分与等で不動産を移転する場合には、依頼するメリットがあるでしょう。
●弁護士にできること
弁護士には「本人の代理権」があり、離婚協議書の作成だけではなく、離婚条件の協議でもめてしまった場合の代理交渉を依頼できます。
その他、公証役場への申し込み、公証人との折衝、代理人としての出席など、ほとんどすべての手続きを依頼できるので、時間と労力を大きく省けるでしょう。
また、弁護士は法的なトラブルを解決する専門家なので、将来のトラブルを見越した対応が可能です。
自分たちで作成した離婚協議書を元に公正証書を作成した場合、自身に不利な箇所があったり、後々トラブルに発展しかねない内容があったりしたとしても、気が付くのは難しいでしょう。
その点、弁護士に依頼すれば、内容をチェックし、トラブルになりにくい内容に修正してもらうことができるので、リスクを軽減できます。
離婚後、実際に養育費の未払いなどのトラブルが生じたときにも、協議内容を理解している弁護士であれば、早期の解決が期待できます。トラブル予防や解決への対応は行政書士や司法書士には難しく、弁護士に依頼した場合にのみ得られるメリットといえるでしょう。 -
(2)費用の相場
行政書士、司法書士、弁護士は、それぞれできることが異なるので費用(報酬)の相場も違ってきます。
一般的に行政書士がもっとも安く、次が司法書士、弁護士の順で高くなる傾向があります。求める対応の範囲にもよりますが、各士業のメリットを理解した上で依頼することが望ましいといえます。
ただ、弁護士にしか認められていない行為も多いので、離婚協議から公正証書の作成までのすべてを依頼したい場合は、弁護士へ依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼した際にかかる費用は、弁護士事務所によって異なります。ベリーベスト法律事務所では、公正証書案の作成にかかる費用の目安や、サービス・費用についてホームページ上に公開しています。
なお、実際にご依頼いただく際は、費用についてもご納得いただけるまで説明いたします。不安を抱えたまま、進んでしまうことはありませんので、ご安心ください。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
6、まとめ
協議離婚をするときは、将来のトラブルを防ぐためにも公正証書を作成することが大切です。
作成にあたり費用はかかりますが、特に養育費支払いについて取り決めがある場合や、財産分与や慰謝料の支払いを分割で行う内容で合意する場合には、公正証書が果たす役割が大きくなります。
どのように作成を進めるべきか、そして内容をどうするべきか迷った場合は、弁護士へ相談されることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、離婚専門チームが公正証書の作成はもちろんのこと、離婚成立まで徹底的にサポートします。後悔しない離婚を実現し、新しい生活をスタートさせるためにも、まずはお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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