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生活費をくれない「経済DV」 離婚を考える際に知っておきたいこと

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更新日:2023年07月06日  公開日:2018年11月27日
生活費をくれない「経済DV」 離婚を考える際に知っておきたいこと

夫婦は経済的に互いに助け合う義務を負うため、配偶者に生活費を渡す義務があります。しかし、生活費を払ってくれない「経済DV」というケースも少なくありません。

妻が専業主婦で収入がほとんどなかったりする状態で夫から生活費を払ってもらえないようでは、子どもとの生活も脅かされてしまいます。その場合、婚姻費用の請求や、悪意の遺棄として離婚請求することも検討しましょう。

本コラムでは、生活費を払ってくれない旦那との離婚を含めた対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、なぜ旦那が生活費を払ってくれないのか、その理由は?

旦那が働いて妻が働いていない場合、旦那が生活費を支払うのは夫婦関係における当然の義務です。
それでもなぜ旦那が生活費をくれないのか、考えられる理由を挙げてみます。

●浮気をしている
浮気・不倫(法律的には「不貞」と言います)していると、不倫相手を優先して、生活費を払ってくれなくなる旦那が非常に多くいます。

●自分の稼ぎなので自分の好きにお金を使いたいと思っている
たとえば単身赴任が長くなった場合や家族に対する気持ちが薄らいだ場合、お互いの生活がすれ違ってしまった場合など「もう生活費を払うこともないだろう」などと勝手に判断して、生活費をくれない旦那がいます。

●ギャンブルや借金をしている
旦那がギャンブルにはまったり借金したりして、生活費を払う余裕がなくなり払ってくれないケースがあります。

●実はリストラに遭って仕事を辞めている
家族には言えないけれど、実はすでに、旦那がリストラに遭ったり仕事を辞めたりして収入がなくなっているために、生活費をくれないパターンもあります。

「不倫」や「自分のためにお金を使いたい」など、旦那が勝手な理由によって生活費をくれない「経済DV(経済的DV)」のケースでは、離婚理由があると判断される可能性は十分にあり、慰謝料の発生原因にもなります

2、離婚を決意する前に、生活費を支払ってもらうため妻ができること

「旦那が生活費をくれないなら離婚した方が良い」と考える妻も多いでしょう。ただし、離婚する前に生活費をもらうため、やっておいた方がいいことがあります。

  1. (1)説得・話し合い

    まずは、生活費をくれない旦那に対し、生活費を払うように要求して話し合いましょう。子どもや妻に生活費を渡すのは旦那の法的な義務ですし、支払いをしてくれないなら家庭裁判所で調停や審判をして強制的に支払わせるほかないことを伝えて説得しましょう。

  2. (2)内容証明郵便での請求

    旦那と別居して話し合いがスムーズに進まないケースでは、内容証明郵便を使って生活費を支払うよう請求しましょう。内容証明郵便が届くと相手もプレッシャーを感じて支払いに応じてくる可能性があります。

  3. (3)婚姻費用分担調停の申立て

    任意の話し合いでは生活費を払ってくれない場合、家庭裁判所で「婚姻費用分担調停」を申し立てましょう。調停をすると、家庭裁判所の調停委員に間に入ってもらって生活費の金額や支払い方法を決めることができます。
    また収入があるにもかかわらず旦那が生活費をくれない場合、家庭裁判所が「調停に代わる審判」によって、旦那に対し生活費の支払い命令を出してくれるでしょう。

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3、離婚を決意した場合の離婚までの流れと離婚の成立条件

旦那がどうしても生活費を払ってくれない場合には、今後の生活のため、真剣に離婚を考える必要があります。準備しておきたいことと、離婚の流れ、離婚の成立要件を確認します。

  1. (1)離婚前にしておいた方がいい準備

    離婚前には、以下のようなことを準備しておきましょう。

    ●子どもの親権者について考えておく
    自分が親権者になるのか旦那が親権を持つのか、どちらが子どもにとって良い環境を作れるのか、考えておきましょう。自分のためではなく「子どものために何がベストか」という視点から検討することが大切です

    ●財産や有責性についての証拠の収集・保全
    財産分与や慰謝料請求のため、夫婦共有財産や、旦那の有責性を証明するための証拠が必要です。預貯金通帳や不動産登記簿、登記識別情報通知、自動車の車検証や査定書、生命保険の証書や解約返戻金証明書などを集めましょう。住宅ローンについても調べておくことが望ましいです。
    また、旦那が不倫をしていたら、メールや写真などの証拠を集める・探偵事務所に依頼して調査報告書を作成してもらう、などのことを行いましょう。

    ●お金(離婚費用)を用意する
    離婚にはいろいろお金がかかるので、手元にお金を用意しておくべきです。夫婦共有財産の預貯金でも良いですし、へそくり、生命保険の解約金、親からの援助などでもかまいません。

    ●夫の収入の把握
    夫がどのくらい収入を得ているのか、給与明細書、源泉徴収票や市民税・県民税の課税証明書を取得して調べましょう。

    ●夫に請求する内容について考える
    慰謝料や財産分与、養育費など、離婚の際、旦那に何をどのくらい請求できるのか、検討しておきましょう。

    ●離婚後の家計のシミュレーション
    離婚後は旦那が生活費をくれないので、自分と子どもがどうやって生活していくのか、具体的な家計のシミュレーションをしておく必要があります。

  2. (2)夫婦間の話し合いのみで離婚する場合は「協議離婚」

    離婚するとき、一般的には、夫婦が話し合いによって協議離婚するケースが多いです。この場合、お互いが離婚することに合意して離婚届を作成し、役所に提出すれば離婚が成立します。
    協議離婚する場合には、慰謝料や財産分与、養育費などの条件を取り決めて「協議離婚合意書」にまとめておきましょう

  3. (3)夫婦間で条件の合意ができない場合は「調停離婚」や「裁判離婚」

    旦那が離婚に応じてくれないケースや養育費、親権などの条件で折り合わない場合には、家庭裁判所で離婚調停を行って話し合いをする必要があります。調停でも離婚できなければ、「離婚訴訟(離婚裁判)」によって裁判官に強制的に離婚を認めてもらう必要があります(裁判離婚)。

  4. (4)法定離婚事由とは

    裁判で離婚するには、以下の法定離婚事由のいずれかが必要です。

    ●不貞
    夫が肉体関係を伴う不倫や浮気をしているケースです。

    ●悪意の遺棄
    生活費不払いや理不尽な家出などです。

    ●3年以上の生死不明
    夫が3年以上生死不明な状態が続いていたら、離婚できます。

    ●回復しがたい精神病
    夫が重度の統合失調症や認知症などで、妻がこれまで献身的に看護をしてきた事情があり、夫の離婚後の生活も保障されているケースでは離婚が認められやすいでしょう。

    ●その他婚姻を継続し難い重大な事由
    上記以外でも、何らかの理由で夫婦関係が完全に破綻していると裁判所が判断した場合には、離婚が認められます。

4、夫が生活費をくれないのは悪意の遺棄に該当する

旦那が妻に生活費をくれない場合、法定離婚理由の「悪意の遺棄」にあたる可能性が高いと言えます。具体的にどのような場合に「悪意の遺棄」と評価されるのか、みてみましょう。

  1. (1)悪意の遺棄と認められるケースの具体例

    • 生活費をくれない(単身赴任中のケースを含む)
    • 合理的な理由なく同居を拒絶する
    • 合理的な理由のない家出、浮気相手の所への家出
    • 妻を虐待して追い出す
    • 実家に帰ったまま、夫婦の自宅に戻らない
    • 健康な夫が働かない
    • 妻も働いているのに家事を全く手伝わない


    本記事で取り上げている「生活費不払い」は、もっとも典型的な悪意の遺棄の例です。

  2. (2)悪意の遺棄で慰謝料を請求できる

    旦那が理由なく生活費をくれないので「悪意の遺棄」が成立する場合、旦那は「有責配偶者」です。そのようなとき、離婚に際して妻は旦那に慰謝料請求することも可能です。
    慰謝料の相場は50万~200万円程度となります。ただし旦那が不倫しているケースでは、不倫の点も併せて300万円以上になることもあります。

5、専業主婦が離婚する場合に気を付けておきたいこと

専業主婦が生活費をくれない旦那と離婚するときには、いくつか注意すべき点があります。

  1. (1)離婚時に受け取れるお金を知っておく

    離婚すると旦那の収入に頼れなくなるので、ひとりで生きていかなければなりません。特に子どもを引き取ると、離婚後に経済的に苦しくなる方が多くいます。

    そこで離婚するときに財産分与、慰謝料など、旦那からどのくらいのお金を支払ってもらえるのか事前に調べておきましょう。子どもを引き取る場合には、養育費の相場も確認しておくべきです。慰謝料の相場など、自分では見込み額が分からない場合には一度、弁護士に相談してみるといいでしょう

  2. (2)離婚後の生活準備や就職活動

    離婚後、どのようにして生活をしていくのか具体的なめどを立てておくべきです。
    離婚したからといっていきなり就職できるものでもありませんので、離婚前からどんな仕事があるのか調べたり資格を取得したり就職活動を行ったりして、経済的に自立するための準備を進めましょう。

  3. (3)シングルマザーへの助成金

    子どもを引き取ってシングルマザーとなった場合には、さまざまな助成金を受けられます。以下のようなものが適用される可能性があるので、役所に相談に行きましょう。

    ●児童扶養手当
    児童を扶養しているひとり親家庭に給付されます。

    ●児童育成手当
    ひとり親家庭を対象とした手当で、ひとり月額1万3500円が支給されます。

    ●児童手当
    ひとり親に限らず子どもがいる家庭に給付されますが、婚姻中は世帯主である夫宛てで支給されている家庭が多いです。そのため、離婚と同時に受給者を母親に切り替えておきましょう。

    ●母子家庭の住宅手当
    お住まいの自治体が制度を設けていれば、申請することで一定金額まで住宅手当を支給してもらえます。

    ●医療費助成
    子どもがいる場合、自治体から医療費の助成を受けられることがあります。

    ●保育料の減免
    ひとり親家庭は優先的に保育所を利用できたり保育料を減免してもらえたりします。

    ●水道料金や粗大ゴミ等処理手数料の減免
    上下水道の料金や粗大ゴミなどの手数料を減免してもらえる自治体が多いです。

    ●生活保護
    最終的にどうしても生活していけない場合には、生活保護を頼りましょう。

    離婚の際、旦那とスムーズに話が進まず調停や裁判が必要になったりして、費用がかかるケースもあります。生活が困窮してしまいそうなときには、一時的に両親に頼るのもひとつの選択肢です。
    「親には迷惑をかけたくない」という方もいますが、本当に困ったときに遠慮しすぎるとかえって心配をかけます。子ども(親にとっては孫)のこともありますので、勇気を出して相談してみましょう。

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6、まとめ

夫から生活費をもらえない「経済DV」に対しては、なかなか自分ひとりで解決策を見出せないケースも多くあります。

このようなケースでは、まずは弁護士に相談をして、調停や審判、訴訟などを上手に利用しながら、なるべく高額の支払いを受けましょう。

ベリーベスト法律事務所では、離婚や経済DVの問題などに対して、初回無料で相談をお受けしております(内容次第では、一部有料)。

「旦那が生活費をくれない…」とお困りの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。知見のある弁護士が話を伺いながら、最適な解決策をご提案いたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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