離婚裁判で負ける理由は何? その対策も解説
離婚をする場合には、まずは話し合い(協議)や調停という手続きをして、お互い納得して離婚できる妥協点を探ります。しかし、協議や調停で離婚の合意が得られない場合には、最終的に離婚裁判によって決着をつけることになります。
しかし、離婚裁判は、協議離婚や調停離婚のような話し合いの手続きではなく、裁判所が離婚の可否を判断する手続きです。仮に裁判所が離婚を認めるような事情が存在するとしても、適切な主張立証を行わなければ、離婚裁判で負ける可能性もあります。離婚裁判で負けるのを回避するには、しっかりと対策を講じることが重要です。
今回は、離婚裁判で負ける理由と離婚裁判で負けるのを回避するための対策について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、離婚裁判で負ける理由とは
以下では、離婚裁判に関する基本事項と離婚裁判で負ける理由について説明します。
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(1)離婚裁判をするには離婚調停の手続きが必要
離婚をしようと決断して話し合いをして、それが決裂した場合でも、すぐに離婚裁判を起こせるわけではありません。日本の離婚制度では、「調停前置主義」といって、原則として、離婚調停を行ってからでなければ、離婚裁判を起こすことができない制度になっています。そのため、夫婦の話し合いで離婚の合意に至らなかったときは、まずは、離婚調停を申し立てる必要があります。
そして、離婚調停が不成立となって時に初めて離婚裁判を行うことができます。 -
(2)離婚裁判まで発展するのは少数
厚生労働省が公表している「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、令和2年の離婚の種類別構成割合は、以下のようになっています。
- 協議離婚……88.3%
- 調停離婚……8.3%
- 審判離婚……1.2%
- 和解離婚……1.3%
- 判決離婚……0.9%
このように、夫婦が離婚する方法の約9割が協議離婚であり、圧倒的多数を占めています。家庭裁判所に離婚裁判を起こした場合には、和解による解決(和解離婚)および判決による解決(判決離婚)の2通りがありますので、離婚裁判で決着する割合としては、全体の約2%しかありません。
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(3)離婚裁判で負ける主な理由
離婚裁判で負ける主な理由には、以下の4つの理由があります。
① 法定離婚事由に該当しない
離婚裁判は、裁判所が離婚の可否を判断する手続きになります。裁判所が離婚を命じるには、夫婦に以下のような法定離婚事由があることが必要です。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
たとえば、性格の不一致や価値観の相違という理由は、よくある離婚原因の代表的なものです。もちろんその具体的な内容にはよりますが、離婚裁判になった場合には、性格の不一致や価値観が違うという理由だけでは、上記の法定離婚事由のいずれにも該当しない可能性が高いです。いずれにも該当しないのであれば、裁判でも離婚は認められず、負けてしまいます。
② 離婚は適切ではないと裁判所が判断した
法定離婚事由に該当する事情があったとしても、直ちに離婚が命じられるわけではありません。離婚を判断するのは裁判所ですので、裁判所が夫婦関係を継続した方がよいと判断する場合には、離婚裁判で負けることになります。
たとえば、配偶者が強度の精神病にかかっており回復の見込みがないという場合にも、離婚によってその配偶者が生きていけなくなるという場合には、裁判所が離婚は相当ではないと判断して、離婚を認めないということも可能です。
③ 自分が有責配偶者であった
有責配偶者とは、離婚に至る原因を作りだした配偶者のことをいいます。たとえば、自らDVをした人や不貞行為をした人などが代表的なケースです。
このような有責配偶者からの離婚請求は、信義則(信義誠実の原則の略。相手に誠意をもって行動をするという民法上の原則)に反するという理由から原則として認められません。例外的に有責配偶者からの離婚請求も認められるケースもありますが、非常に厳しい条件ですので簡単には認められません。
④ 十分な証拠がなかった
法定離婚事由に該当する事情があることは、離婚を請求する原告の側で主張立証していく必要があります。裁判では、証拠によって事実を認定していきますので、法定離婚事由に該当する事情があることを証明できる証拠を提出できなければ裁判に負けてしまいます。
2、離婚裁判に負けないための対策① 弁護士に依頼し、綿密な準備をする
離婚裁判で負けないための対策の1つ目は、弁護士に依頼して、綿密な準備をすることです。
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(1)弁護士であれば、法定離婚事由の有無の判断が可能
配偶者との離婚を決意したときは、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがありますが、法定離婚事由の有無によって、どのような方法で進めていくかが変わっていきます。今後の方針を明確にし、より確実に離婚をするためには、弁護士のアドバイスが不可欠といえます。そのため、まずは弁護士にご自身の状況を説明し、法定離婚事由に該当するかどうか確認をしましょう。 -
(2)有利に離婚を進めるための証拠収集
裁判離婚をするには、離婚請求をする側において、法定離婚事由の存在を主張立証していく必要があります。そのためには、証拠が不可欠です。また、配偶者に対して慰謝料請求をする場合や財産分与を求める際にも証拠が必要になります。
このように有利に離婚を進めるためには、証拠が必要不可欠となりますので、相手に離婚を切り出す前にしっかりと証拠を集めることが大切です。弁護士であれば、どのような証拠が必要になるか、適切に証拠を集めるにはどうしたらいいのか、といったことに関するアドバイスが可能です。 -
(3)自分が譲れない離婚条件を弁護士と整理する
離婚する際には、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流、年金分割といった離婚条件の話し合いが必要になります。離婚裁判になったときも、希望する離婚条件があるときは、しっかりと裁判所に伝えていかなければなりません。
当初から話し合いをスムーズに進めるためにも、あらかじめ弁護士と相談をして、希望する離婚条件を明確にしておくことが大切です。離婚条件には、相場となる金額や決め方のルールがありますので、それに沿って離婚条件を考えていくのがよいでしょう。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
3、離婚裁判に負けないための対策② 協議や調停で離婚できるようにする
離婚裁判で負けないための対策の2つ目は、協議や調停での離婚を目指すことです。
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(1)協議離婚や調停離婚であれば柔軟な解決が可能
離婚裁判では、裁判所が離婚の可否を判断しますので、白か黒かをはっきりと決めることができます。しかし、裁判所の判断は、あくまでも法律に従った判断となりますので、グレーな判断はできず、柔軟性の欠ける解決方法といえます。
これに対して、協議離婚や調停離婚であれば、基本的には話し合いの手続きになりますので、お互いの合意が得られれば、柔軟な解決も可能です。また、離婚裁判のように、法定離婚事由は必要ありませんので、明確な法定離婚事由がないときでも協議離婚や調停離婚であれば離婚が可能です。
明確な法定離婚事由がない、法定離婚事由を立証する証拠が不十分というケースでは、離婚裁判で負ける可能性もありますので、協議離婚や調停離婚での離婚成立を目指すのがおすすめです。 -
(2)弁護士に依頼したときの協議離婚や調停離婚の進め方
離婚手続きをひとりで進めるのが難しいと感じる方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
協議離婚であれば、本人に代わって弁護士が相手との交渉を行うことができますので、相手と顔を合わせて話し合いをしなければならないというストレスから解放されます。また、弁護士が法的な部分を相手に説明することができますので、希望する条件で離婚できる可能性が高くなるでしょう。
調停離婚では、弁護士が家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。実際の調停期日にも弁護士が同行して、調停委員への説明などを行うことができます。慣れない離婚調停だと不安や緊張から言いたいことも言えずに終わってしまうこともありますが、弁護士がいればそのような心配もありません。
4、離婚裁判に負けないための対策③ 裁判になってしまったら、和解も視野に入れる
離婚裁判で負けないための対策の3つ目は、和解も視野に入れることです。
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(1)離婚裁判では、判決以外にも和解による解決もある
離婚裁判では、裁判所の判決によって離婚の可否が判断されますが、実は、判決以外にも若いという解決方法も準備されています。
和解とは、お互いに譲歩することにより紛争を解決する方法です。裁判上の和解によって離婚をすることができれば、早期に離婚に関する争いを解決することができ、その内容も柔軟に決めることができます。裁判が進んでいくと、裁判官から事件に関する心証が開示されますので、判決になれば自分に不利になる可能性がある場合には、和解による解決も積極的に検討する必要があります。
裁判で負けてしまうと、不利な条件での離婚となることもありうるので、勝ちにこだわるのではなく、なるべく有利な条件で和解するのも検討すべきでしょう。 -
(2)判決内容に不服がある場合には控訴も可能
和解による解決を選択しなかった場合には、その後も裁判手続きが進行し、最終的には、裁判所による判決が言い渡されます。判決内容が請求棄却となれば、すべての請求が認められず裁判に負けたことになります。また、離婚が認められたとしても、希望する離婚条件ではなければ全面的な勝訴判決とはいえず、負けたと考える方もいるでしょう。
このように裁判所の判決内容に不服がある場合には、判決正本の送達を受けた日の翌日から2週間以内であれば控訴することができます。控訴することで、高等裁判所において改めて審理してもらうことが可能です。
5、まとめ
離婚裁判になると法定離婚事由の有無や主張立証の内容によって、裁判での勝ち負けが決まります。裁判手続きは、非常に複雑かつ専門的な手続きになりますので、適切に訴訟を進めていくためには、弁護士のサポートが不可欠です。離婚裁判で負けないためには、弁護士への依頼が最重要ポイントとなります。
配偶者が離婚に応じないときは、離婚裁判も視野に入れて行動していかなければなりませんので、早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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