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障害を持つ子どもがいる夫婦が離婚を考えたときに知っておきたいこと

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更新日:2022年06月15日  公開日:2018年07月20日
障害を持つ子どもがいる夫婦が離婚を考えたときに知っておきたいこと

障害を持った子どもがいる夫婦の場合、一般的に離婚率が高いと言われています。なぜ、障害を持った子どもがいると離婚に至りやすいのでしょうか?

離婚を避けるための工夫や方法から、どうしても離婚を避けられない場合、知っておいていただきたい情報や注意点について弁護士がご紹介します。

1、障害を持った子どものいる夫婦の離婚率が高い理由は?

  1. (1)障害がある子どもがいると、離婚率が高くなりがち

    夫婦が子どもを授かったとき、その子どもに障害があるケースがあります。
    たとえばダウン症や発達障害、知的障害や自閉症スペクトラム障害、身体的な障害など、いろいろな症状があるでしょう。

    こうした場合、夫婦が子どもを守るため、結束が強まるケースもありますが、反対に離婚に至る家庭も多いと言われています。

    一般的に、どのような夫婦であっても、性格の不一致や不倫浮気、DVなどによって離婚する可能性はありますが、障害を持つ子どもがいると、そうでない夫婦よりも離婚に至りやすいと言われるのは、どういった理由によるものでしょうか?

  2. (2)親の生活に制限がかかる

    1つ目の理由として、親の生活に大きく制限がかかることが挙げられます。
    たとえば、子どもの病院や施設、幼稚園などへの送り迎えや何かあったときの対応は、すべて親が行わなければなりません。フルタイムで働いていると、対応が非常に困難となり、就労が大きく制限されます。

    実際、近年は共働きの夫婦が増えており、高収入な既婚女性も多くなっていますが、障害を持つ子どもがいる夫婦の場合、妻の就業率やフルタイムで働く人の割合は、非常に少なくなっています。

    また、子どもの側としても、集団行動が難しい場合、幼稚園や保育園への入園入所を断られてしまうケースもあります。何とか小学校に上がっても、学童保育に受け入れてもらえないケースもあります。

    障害児に向けたさまざまな社会制度も、まずは親が自力で対応することが前提となっているので、子どもの障害が重ければ重いほど、親にかかる負担が重くなります。

  3. (3)夫婦の価値観のズレ

    次に、障害を持つ子どもがいると、夫婦の価値観にズレが生じやすいという問題もあります。
    たとえば、父親が子どもを通常の小学校に入れて育てたいと希望していても、母親は養護学校に入れたいと思っているケースがあります。
    また、療育手帳をもらうかどうかについて、父母の意見が合わないこともあります。

    母親は、父親にもっと子どもと関わりを持ってほしいと希望することがありますが、父親の方は、子どもとはあまり接する機会を持たない、無関心というケースも見られます。

    このように、障害を持った子どもがいると、さまざまな場面や対応において、夫婦の考えの違いが明らかになってしまうので、だんだんとお互いの気持ちが離れてしまいがちです。

  4. (4)父親が子どもを理解しようとしない、受け入れない

    特に父親に多いと言われていますが、障害を持った子どもを理解できない、あるいは受け入れられない方もいらっしゃいます。

    母親は、子どもを妊娠して出産するまでの10か月間に、子どもに強い愛着を抱くようになり、子どもが生まれたときには既に「お母さん」となっています。子どもが障害を持っていても、そうでない子どもの場合と同じように、受け入れやすい傾向にあります。

    一方、父親は、子どもが生まれたときにはまだ父親になっていません。子どもと一緒に成長して、父親になっていくものです。
    ところが、子どもに障害があることがわかると、その時点で現実を受け入れることができなくなってしまったり、子どもを理解しようという気持ちが失せてしまったりするのです。
    すると、「母親」として子どもを守ろうとする妻と、子どもを受け入れず、どう接して良いかわからない父親との間に溝が生まれてしまいます。

  5. (5)親にストレスがかかる

    子どもが障害を持っていると、単純に大きなストレスがかかります。
    頭では分かっていても「どうしてこの子はできないのか」「どうして他の子どもと違うのか」という思いが溢れて辛くなります。

    そんなときに、配偶者が少しでも理解のないような言動をすると、許せないという気持ちになってしまうのです。ストレスにより、心に余裕がなくなって、相手を受け入れることができなくなります。

  6. (6)相手を信用できなくなる

    子どもに障害があると、さまざまな困難な問題に対応しなければなりません。
    しかし、親同士の考え方や感じ方、対応が異なることも多いものです。

    そんなとき、相手の様子や態度、言動を見て、自分の考えとのあまりの違いに、信用できなくなってしまうことがあります。すると、夫婦の気持ちが離れて離婚を希望するようになります。

  7. (7)家庭の外に癒しを求めてしまう

    子どもに障害があると、父親はなかなか受け入れられないことがあると説明しました。 また、妻は、障害を持った子どもの養育や対応にいっぱいで、夫をかまう余裕がなくなります。そうなると、夫の関心は、家庭外に向かってしまいがちです。
    つまり、夫が家庭外で浮気や不倫をしてしまうのです。もちろんすべてではありませんが、そういった例も少なくありません。

    以上のように、子どもに障害があると、夫婦間に亀裂が入って離婚につながりやすいといわれています。

2、障害児を持つ夫婦が離婚する場合に知っておきたいこと

子どもに障害がある場合、配偶者と離婚する際にどのようなことに注意すべきなのでしょうか?
以下では、障害を持つ子どもがいる夫婦が離婚するときに押さえておきたい重要なポイントをご紹介します。

  1. (1)子どもの障害を理由に離婚できるか?

    そもそも、子どもの障害を理由として離婚できるのか、という問題があります。

    日本では、離婚するためには基本的に夫婦双方の合意が必要です。
    夫婦が両方とも離婚に応じるのであれば、離婚は可能です。その場合、離婚届に必要事項を記入して、夫婦それぞれが署名押印すれば離婚できます。

    相手が離婚に応じない場合には、離婚調停をします。調停は、裁判所で行う手続きですが、双方の合意を目指す手続です。離婚調停でも、相手が合意すれば離婚ができます。

    最後まで相手が離婚に応じない場合には、離婚訴訟が必要となります。 訴訟になると、「法定離婚事由」がないと、離婚できません

    法定離婚事由は、以下の5つです。


    • 不貞
    • 悪意の遺棄
    • 配偶者の3年以上の生死不明
    • 配偶者の回復しがたい精神病
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由

    子どもの障害は、始めの4つに該当しないことは明らかです。5つ目の「婚姻を継続し難い重大な事由」は、基本的に「夫婦間の問題」である必要がありますから、やはり、これにも該当しません。

    よって、離婚裁判になったときには、「子どもに障害がある」というだけでは離婚できません。むしろ、裁判所は、障害を持った子どもの養育状況の悪化を懸念して、離婚を認めない可能性もあります。

    以上より、子どもが障害を持っていて、それを理由に離婚したい場合には、訴訟に持ち込まず、できる限り話し合いで離婚することを考えるべきです。

  2. (2)離婚後、ひとりで障害児を育てていく場合の懸念点

    未成年者の子どもがいる夫婦が離婚するときには、子どもの親権者を決めなければなりません。
    相手が親権者となり子どもを養育するのであれば、自分は養育費を支払うだけで済みますが、自分が親権者となる場合には、多大な負担がかかることへの覚悟が必要です。

    たとえば、仕事に行っている間、誰が子どもの面倒をみるのかという問題があります。祖父母などの助けを借りられないなら、フルタイムで働くことは難しくなる可能性が高いです。
    仕事を思うようにできず、収入が低いにもかかわらず、子どもの生活費や学校、施設の費用など、お金の心配もあります。
    行政から給付をもらえると言っても、それだけでは十分ではないケースが多いのです。

    離婚して障害のある子どもを引き取るのであれば、こういった現実的な問題への対処方法も、しっかり検討しておかねばなりません。

  3. (3)離婚慰謝料が発生するケースについて

    障害のある子どもがいる夫婦が離婚する際、相手に慰謝料請求できるのでしょうか?

    慰謝料とは、婚姻関係を破たんさせる原因を作った側が支払うべきものですから、どのような事案でも必ず発生するものではありません。「子どもに障害がある」というだけでは慰謝料は支払ってもらえません。

    離婚の際に、相手に慰謝料請求できるのは、以下のような場合です。


    ●配偶者が不貞した場合
    たとえば、夫が別の女性と不倫関係になったことが原因で離婚にいたるケースでは、慰謝料請求できます。

    ●配偶者に悪意で遺棄された場合
    たとえば、家庭生活に嫌気がさして、家を出てしまったり、お子さんに払うお金がもったいないと言って、家に生活費を入れなくなったりしたケースでは、慰謝料請求できます。

    ●配偶者からDV、モラハラを受けた場合
    たとえば、夫が妻に対し、継続的に暴力を振るったり暴言を吐き続けたりしたケースです。
    子どもに関連することでもそうでなくても、DVや言葉の暴力があれば、慰謝料請求できることがありますし、状況が酷く婚姻を継続し難いと認められれば、離婚原因となります。

  4. (4)離婚を考えたときの相談先は?

    もしも障害を持つ子どもがいて離婚しようと考えたら、一人で決めてしまうのではなく、さまざまな相談機関を利用することをおすすめします。

    ●児童相談所、保険所、市役所
    まずは、子どもの養育などに関し、児童相談所や保健所、市役所で相談を受けられます。 相談にのってくれるのは、医師や児童心理士、ケースワーカーなどです。
    いきなり離婚に突き進むのではなく、まずは子どもに関して専門家によるアドバイスや指導を受けてみると、気持ちも落ち着くかもしれませんし、必要な支援制度を紹介してくれることもあります。

    ●福祉事務所
    市町村の福祉事務所でも、子どもの障害についての相談に乗ってくれます。

    ●夫婦カウンセラー
    こうした相談窓口を利用しても、相手と修復することを考えられない場合には、夫婦カウンセラーに相談をする方法があります。
    カウンセラーに相談することで、自分たちの関係を見つめ直し、やり直せることもあります。

    ●弁護士
    どうしても離婚する気持ちが変わらないならば、弁護士に相談することをおすすめします。障害を持つ子どもへの影響を最小限にとどめ、離婚後に安心して生活できるようにするには、法律の専門家による援助が不可欠だからです。

    配偶者が離婚に応じるかどうかの問題もありますし、離婚後の生活に困らないよう、きっちり養育費や財産分与の取り決めをしておく必要があります。

    自分自身で交渉すると、適切に権利を実現できない可能性もあります。離婚を考えているのであれば、できるだけ早めに相談してみましょう。

  5. (5)離婚する時の手順・方法は?

    障害を持つお子さんがいる夫婦が離婚する際、どのような手順で進めていけば良いのか、簡単にご説明します。

    ①離婚の話し合いをする
    離婚をするときに、まずは旦那さんや奥さんに離婚したいことを切り出し、自分たちで話し合いをしましょう。このとき、子どもの養育費や財産分与、慰謝料、解決金などの離婚条件についても、一緒に取り決めておくべきです。

    話がまとまったら、合意した条件を離婚合意書にまとめて公正証書にしましょう。 そして、市町村役場から離婚届の用紙をもらってきて記入し、役所に提出すれば成立します。

    ②離婚調停を申し立てる
    協議離婚による方法が不可能な場合には、家庭裁判所で、離婚調停を起こす必要があります。調停では、調停委員が間に入って夫婦間で離婚の話を進めます。

    ただ、障害がある子どもがいる場合、調停委員から離婚を思いとどまるよう説得される可能性もあり、注意が必要です。

    ③離婚訴訟を起こす
    調停が不調になると、離婚裁判によって離婚を認めてもらうしかありません。

    当初に説明したように、離婚訴訟では「法定離婚事由」がないと離婚できないので、子どもに障害があるというだけでは離婚が認められません。配偶者に不貞や悪意の遺棄、DVやモラハラなどの問題がある場合には、離婚できる可能性があります。

3、障害を持つ子どもを持つ夫婦が離婚する前に試すべきこと

障害を持つ子どもがいる夫婦が離婚を考えたとき、いきなり離婚をするよりも、先に試していただきたいことがあります。

  1. (1)父親のサポートが足りないと感じたときの対処方法

    障害のある子どもがいると、母親が、「父親によるサポートが足りない」と感じ、不満を持つことがあります。
    このような場合、まずは、他の障害者のいる子どもがいる家庭から話を聞いて、夫に聞かせましょう。夫婦で一緒に話を聞かせてもらうのも良いです。

    先輩夫婦からうまくやっていくコツを教えてもらったら、それを参考に自分たちの関係も改善することができるかもしれません。

  2. (2)相手に具体的に説明する

    障害のある子どもがいる場合、父親が、子どものことを理解できないために、夫婦の気持ちが離れてしまうケースが多いです。
    そのようなときには、母親が積極的に、父親に対し説明をしましょう。なるべくコミュニケーションを取り、父親自身に子どもと関わってもらうようにして、「父」としての自覚を持てるように促すと良いでしょう。

  3. (3)親や親戚を頼る

    自分たちでは飽和状態になり、対応が困難になっているなら、両親や親族を頼るのも1つの方法です。
    夫婦のお互いのストレスや余裕のなさが原因で関係がぎくしゃくしているならば、少し余裕ができると改善できる可能性があります。

  4. (4)障害児専門保育園などの施設を利用する

    子どもを受け入れてくれる保育園や幼稚園が見つからない場合、こうした専門施設で受け入れてもらえる可能性があります。

  5. (5)地域の療育活動に参加する

    地域活動は、土日開催のものが多いのですが、一時的にでも預けることができれば、その間に家のことや自分のことに時間を使うことができます。
    また、子どもの方も、いつもと違った場所で遊ぶことができますし、他の障害児を持つ家族とのつながりができて、情報交換も行えます。同じ悩みを持つご家族との交流は、自分たち家族がやり直すきっかけにもなりやすいです。

  6. (6)障害児の支援制度を活用する

    行政や民間団体などによる、各種の障害者支援制度は最大限に利用しましょう。
    たとえば、子どもでも児童デイサービスや放課後デイサービスを利用できるケースがありますし、保育所の訪問支援が行われていることもあります。

    福祉型や医療型の障害児入所施設などもあるので、どうしても家で生活するのが難しければ、そういった場所に相談をしてみることも考えられます。

    障害のあるお子様の育児は大変ですが、離婚に至らない方法で解決できるならそれに越したことはないので、一度こういった方法も検討してみてください。

まとめ

今回は、障害を持った子どもがいる夫婦の離婚問題について、解説しました。
子どもに障害があると、どうしても夫婦のすれ違いが起こり、結婚生活の継続が難しくなることがありますが、突発的に離婚を切り出すのではなく、まずはさまざまな支援を利用して、家族を維持することも1つの選択肢です。

それでもどうしても離婚を避けられない場合には、法律の専門家である弁護士に相談をして、離婚後に困らないように、適切な方法で離婚を実現しましょう。
子どもに障害があって離婚を考えておられるお母さん、お父さん、まずは一度ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
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