妻に離婚したいと言われたときの対応ガイド【弁護士が解説】

妻から離婚したいと言われたとき、どう対応したらよいのか、戸惑いを隠せない男性も少なくないでしょう。
頭と心が混乱した状態で妻と向き合ったとしても、話がうまく進んでいかず、こじれていく可能性があります。そのため、急な離婚宣告を受けた際は、まずは冷静になることが大切です。
本コラムでは、妻から離婚したいと言われたときの対処法やNG言動などについて、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
目次を
1、妻に離婚したいと言われた後はどうすればいい?
離婚は、基本的に、一方の意思だけで成立することはありません。妻から突然離婚を突き付けられて、不安、焦りを感じている場合、まずは一旦落ち着きましょう。
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(1)離婚したくなければ拒否し続けていればOK
あなたに離婚の意思がないのであれば、「離婚はしたくない!」と拒否しましょう。
上でも触れたように、夫婦のどちらか一方だけの意思だけでは、基本的に離婚は成立しませんので、ひとまず安心してください。
もし、妻が勝手に離婚届を出してしまう恐れがある場合は、「離婚届不受理申出」の手続きをおすすめします。
離婚届不受理申出制度とは、離婚届が役所に提出されても受理されない制度のことです。住所地か本籍地の役所にて、離婚届不受理申出の用紙と印鑑だけで簡単に手続きをすることができます。 -
(2)「法定離婚事由」がある場合は離婚裁判に要注意
ただし、あなたに「法定離婚事由」がある場合、話は変わってきます。
法定離婚事由とは、次の4つのことです。- 配偶者に不貞な行為があったとき(浮気・不倫)
- 配偶者から悪意で放棄されたとき(生活費を渡さないなど)
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
これらに該当する場合、離婚裁判まで至れば、裁判官から「離婚」という判決が出る可能性があります。その場合、あなたの意思とは無関係に離婚せざるを得ません。
あなたは浮気をしていませんか? きちんと生活費を入れていますか? その他、DVやモラハラ、金銭的問題、性的問題などがある場合、4つ目の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することもあります。
結婚生活を維持できないほどパートナーを苦しめているかもしれない原因があなたにあるのだとしたら、いますぐにその原因を解消するようにしてください。
2、離婚危機を乗り越え、夫婦で幸せになるための大事な心構え
法定離婚事由がない場合、拒否し続ければいいのかといえば、そういう問題でもないことは理解されていることでしょう。
「妻自身があなたと別れたがっている」という事実は変わりなく、その状態は果たして、あなたにとって、また妻にとって幸せと言えるのかは、疑問が残るものです。
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(1)「離婚が成立しなければ幸せ」というわけではない
あなたの目指すゴールは、生活の実態はどうあれ「ただ離婚しないこと」なのでしょうか。おそらく違いますよね。妻にも、この結婚生活を充実したものと感じてもらってこその結婚生活です。そうでなければ、何のために結婚生活を続けるのでしょうか。
婚姻継続によってあなたや子どもの世間体が保たれたとしても、ひとりの女性(妻)の人生を無視しているのであれば、それは大変罪なことであると感じてください。
離婚を拒否するのであれば、ぜひ夫婦の関係を見直し、夫婦が幸せに暮らすことを目指して欲しいと思います。 -
(2)夫婦として幸せに暮らすには、妻を理解し、受け入れることが必要
夫婦として幸せに暮らすには、まずは、「妻を理解すること」です。
妻がなぜ離婚したいのか、知っていますか? 理解はできた、もしくは以前から理解はしているという場合、次にすべきは「妻を受け入れる」ということです。「妻の要望はわかったけど、それはできない…」という状態のままで、前には進みません。
まずは、なぜできないのか、妻が理解できるように事細かな説明をすることが必要です。ただ、離婚を考えている妻にとって、万が一あなたの状況を理解できたとしても、おそらく「時すでに遅し」でしょう。
あなたの事情をわかってもらうことは必要ですが、それですべて自分の要求が通ると思ってはいけません。離婚したくないのであれば、たとえ一部でも妻の気持ちを受け入れることが大切なのです。
「自分が正しい」と思うがあまり、妻の一部でも受け入れることができないのであれば、それはあなた側からしても離婚したい状況なのではないでしょうか。なぜならば、まさしく「性格の不一致」が生じているからです。
今まで妻が我慢していたからこそ保たれていたかもしれませんが、妻が離婚の口火を切ったからには、もう妻の我慢に甘えているわけにはいきません。
3、【原因別にチェック】 離婚したいと言ってきた妻の心理
なぜ妻が離婚したいと言っているのか、妻が離婚したくなる原因を見ていきましょう。いずれにせよ、結婚しているメリットよりもデメリットのほうが大きい状態になっています。
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(1)夫に原因があるケース
たとえば、浮気・不倫、わがまま、DV、モラハラ、酒乱、浪費癖など、夫に原因があって離婚を考える人は少なくありません。
婚姻を関係を続けることで苦労が増え、幸せどころか不幸にしか感じない状態は、圧倒的に結婚のデメリットしかありません。
夫の言動に対し、改善を求めてきたのにまったく改善の兆しが見えない場合、三行半を突き付けられた状態といえます。 -
(2)妻に原因があるケース
妻の親が夫を嫌っている、旦那以外に好きな人ができたなど、妻側に原因があって離婚を切り出すこともあります。
上記のような理由を明確にして離婚を切り出してくることもありますが、妻が浮気・不倫をしている場合は、はっきりと理由を言わないというケースもゼロではありません。
離婚理由がうやむやになっているのであれば、しっかりとヒアリングをし、何が原因なのかを根気強く探っていきましょう。 -
(3)夫婦である意味を見出せなくなっているケース
夫婦である意味は、人それぞれ違うかもしれません。妻にとっての「夫婦ならこう」は、何でしょうか? 知っていますか。
たとえば、妻が仕事もしながら家事も育児も一手に担っていて、さらに夫の世話までしなければならない場合はどうでしょう。もともと世話好きな女性なのかもしれませんが、あまりの負担の多さに「なんでこの人と一緒にいるんだろう」と考えても無理はありません。
家族をもつということは、独身よりも制約が増えるのがセオリーです。起きる時間も、何を食べるかも、お風呂の時間も、休日に何をするのかも、家族と暮らすということは、自由に制限がかかります。
しかし、この制約・制限を一方だけが感じていたら、どうでしょうか。制約・制限を感じているほうは、この結婚になんら意味を見出さなくなることでしょう。
4、【原因別にチェック】 離婚を回避するための対処法
妻の離婚したい理由がどのようなものであっても、離婚を回避するには、妻にとっての結婚のメリットを大きくすることです。何をメリットと感じるかは妻が決めることであって、「おれはこんなにも稼いでいるのに!」といった、夫側の一方的なメリットの押し付けは的外れです。
まずは「妻のメリット」を最大限に理解すること。そのためには、夫婦のコミュニケーションは欠かせません。
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(1)夫に原因があるケース
夫に原因がある場合、まずは真摯に謝罪し、原因を取り除くことが大切です。
浮気・不倫、浪費、借金など原因はさまざまだとは思いますが、妻がこれまでも改善を求めてきていたことが理由である場合は、もう堪忍袋の緒が切れた状態です。謝罪だけでは、関係の修復は難しいでしょう。
大切なのは、今後どのように自分が対応していくかの提示と実行です。
浮気・不倫であれば、不倫相手との連絡は一切断つ、二度と会わない旨の念書を書くなど、そしてもっとも大切なのが、これらを継続して実行していくことです。口だけではいくらでも言えます。
妻はあなたの行動を見ています。一時しのぎではなく、長期的に自分の行動を律する覚悟が必要です。 -
(2)妻に原因があるケース
妻に離婚を切り出した原因がある場合は、夫の努力によって妻の結婚のメリットを大きくすることは難しいかもしれません。しかし、離婚したい理由を詳しく探っていくと、夫に改善出来ることがある可能性もあります。
たとえば、妻に好きな人が出来た場合、多忙な夫とのすれ違いから話を聞いてもらえないといった不満や寂しさが発端となっている場合も考えられるでしょう。このような根本的な理由をいかにくみ取れるかが、離婚を避けるカギとなります。 -
(3)夫婦である意味を妻が見出せなくなっているケース
妻が、夫の必要性を感じられなくなっている場合、「どのようなポイントで夫婦でいる意味がないと感じているのか」をしっかりヒアリングしましょう。
妻が夫に求めているポイントは人それぞれです。愛情表現(気持ち)なのか、お金なのか、行動なのか。ただ、これらはすべて連動していることを理解しておきましょう。
「もっと稼いでよ!」と言われたからといって、「俺は金を稼いでくればいいんだろう!」と、残業やダブルワークをがむしゃらに行った結果、あなたが疲労で倒れてしまえば目も当てられません。
まずは、妻が夫に求めるポイントについて、しっかりコミュニケーションを取って理解することが大切です。
5、妻から離婚の申し出に、夫が取ってはいけない言動とは?
何ごとも「初期対応は大切」といわれますが、これは妻が離婚を切り出してきたときも当然に当てはまります。
準備が完璧に整ってから離婚の申し出をする妻もいますが、実は離婚を切り出したときの夫の反応次第で離婚に進むか、関係修復に進むか、とある意味賭けの気持ちで切り出している妻もいます。そのため、初期対応は、今後を左右する非常に大切なポイントです。
ここからは、妻から離婚宣告を受けた後に夫が取ってはいけない言動について、理由とともに4つご紹介します。
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(1)軽くあしらう
夫婦喧嘩の延長だと思い、「はい、はい。怒りが治まればそのうち落ち着くでしょう。」と妻の宣言をスルーしていませんか? もっともやってしまいがちな反応ですが、危険なNG対応です。
普段から夫婦喧嘩の際に「離婚」の文言が飛び交う夫婦であれば、いつものこととしてスルーするのが事を荒立てない策として成立するのかもしれませんが、普段「離婚」というワードを口にしない妻から出た場合は要注意です。
妻にとってスルーされるということは「真剣に取り合ってくれていない」、「自分の気持ちをまったく分かっていないどころか、分かろうとすらしない」ということを意味します。初期の段階できちんと向き合わないと、妻は「この人に言っても無駄だ」と確信し、水面下で粛々と離婚準備に入る可能性が高いため、なぜ離婚したいか、理由をしっかりヒアリングしましょう。 -
(2)「勝手にしろ!」などと逆切れする
せっかくの話し合いの機会を失うような言動は、やってはいけません。
冷静に考えても、妻が離婚したいと言っているのに、さらに怒鳴りつけるといった嫌われる行為をしては、ますます妻の離婚の意思は強固になるばかりです。
自分の立場が悪くなると怒鳴ったり機嫌が悪くなったりすることで、相手を威圧し自分の言うことを聞かせようとする夫の姿勢自体にも嫌気が差すことになるため、注意しましょう。 -
(3)自分に原因がある可能性があるにもかかわらず妻を責める
たとえば、あなたが浮気・不倫をしていた場合、経緯はどうあれ、非があるのはあなたです。そうであるのにも関わらず、「妻であるお前が子どもにかかりっきりで俺に構わないから不倫したんだ!」など責任転嫁する方もいます。
離婚を回避したいのであれば、まずは自分の非を認め、謝罪してください。簡単なようで難しいですが、自分の非を認めて謝るのはとても大切なことです。全面的に悪いのは自分であるのは前提として、「寂しかった」など自分の気持ちを話すのがベターでしょう。
また、自分に原因がある場合は、謝罪だけでなく今後どのような対応をしていくかというプランを提示することが離婚回避に繋がります。 -
(4)即座に自分の両親に相談する
離婚は、夫婦の問題です。内容もセンシティブなものであることが多く、それをまずは自分の中で理解し解決しようとするのではなく、自分の両親に真っ先に相談するのはNGです。
妻からの了承も得ていないのに、夫婦の話し合いの際に自分の両親を同席させたりしようとしていませんか? あわよくば自分の両親から説得してもらえば、「妻も離婚の意思を曲げざるを得ないだろう」などと思っていませんか?
自分の親に即相談すること自体もNGですが、普段から他力本願な姿勢や、妻がモノを言いにくい相手を挟んで意思を封じ込める姑息な方法をとる夫に嫌気が差し、さらに離婚の意思が固くなる恐れがあるため、すぐに親を介入させるのはやめましょう。
6、妻からの離婚宣告を弁護士に相談するメリット
弁護士への相談は離婚が決まってからと思いがちですが、実は離婚の話が出た段階で相談もできます。離婚を回避するために、初期の段階で弁護士に相談することのメリットを4つご紹介します。
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(1)円満調停のアドバイスがもらえる
円満調停とは、夫婦関係円満調停と呼ばれる家庭裁判所で行われる話し合いの場です。
調停委員2名が夫婦それぞれから個別に、このような事態になった原因やこれまでの生活について聞き取りをし、解決策や打開案を考え夫婦関係の修復を目指します。
第三者が入ることによって、お互い冷静になれる場合もあるため、2人ではしっかりと話し合いが出来ない場合に利用をすすめられるかもしれません。
弁護士に相談することで、この円満調停の利用の流れや申し込み方法など詳しいアドバイスを受けることが可能です。 -
(2)妻からの別居の申し出にどう反応すべきかアドバイスがもらえる
妻からすでに別居の申し出がある人は、この時点で弁護士に相談することをおすすめします。
なぜなら、民法では夫婦の同居義務が定められていますが、あなたが別居に合意すると双方同意となり、同居義務違反ではなくなります。要するに「妻が一方的に出ていき、同居義務違反である」と言うことが出来なくなるのです。
また、別居期間が長くなると「夫婦として破綻している」とみなされるケースもあり、あなたが離婚をしたくない場合は、別居が不利に働く場合もあります。さらに、仮に別居をした場合には、婚姻費用を請求される場合もあります。たとえ別居中であっても、夫婦である限りは配偶者の扶養義務があるからです。
弁護士に相談することで、同居義務や破綻との兼ね合い、また婚姻費用の妥当性など、ケースバイケースでアドバイスを求めることが出来るため、安心です。 -
(3)妻が離婚調停に踏み切ったときに迅速に対応できる
妻が離婚に向けて裁判所に調停を申し立てていた場合、ある日突然、あなたのもとに裁判所から「調停期日呼出状」という書面が送られてきます。
いきなりのことにパニックに陥る人も多いようですが、あらかじめ弁護士に相談しておくことで、最悪の場合の流れやそうなったときの対処法を事前に頭に入れておくことができ、冷静に対処することが可能です。 -
(4)万が一離婚になった場合、親権や財産分与などについてのアドバイスがもらえる
離婚になった場合、夫婦間で決めることがたくさんあります。
まずは子どもがいる場合は、親権をどちらかに決めます。子どもが複数の場合はきょうだい不分離が原則となり、面会の取り決めも必要です。必ず法的な知識が必要となるため、できれば弁護士からのアドバイスは受けたほうが良いでしょう。
また金銭面においても、決めごとはたくさんあります。財産も半分に分け(=財産分与)、将来にわたり養育費を支払い続けなければならず、夫に非がある場合は慰謝料が発生する可能性もあります。
これらを仕事をしながら自分ひとりの判断で、しかも離婚という精神的にも大きなダメージを受けているときに決めていくのは非常に大変です。そういったときこそ、法的な知識や事務的な流れをアドバイスしてくれる存在は非常に心強いもの。
また夫側の味方になって考えてくれるのため、少しでも不利にならないようアドバイスをくれる存在が弁護士であると言えるでしょう。
お悩みの方はご相談ください
7、弁護士からのメッセージ
妻が何を求めていて、あなたに何が不足していたかを理解しなければ、仮に今回は離婚を回避できたとしても、問題が再発してしまう可能性があります。
そのため、妻から離婚したいと言われたときは、「そう思った理由」をしっかりと聞くようにしましょう。
突然の離婚宣告に対して「どうしたらよいのか、何を考えるべきなのかが分からず不安」「後悔しないようにベストな動きを知っておきたい」というような方は、弁護士に相談することも視野に入れましょう。
離婚危機は、なるべく早めの段階で弁護士に相談しておくと、対応が後手後手にならず、先回りしてどうすべきか考えることができます。精神面でのゆとりを確保するという点でも、おすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、離婚専門チームを編成しており、知見・経験豊かな弁護士が在籍しています。弁護士相談については、お近くの事務所で対面もしくはZoomを活用したオンライン上で行うことが可能です。
離婚問題でお悩みの際は、まずはお気軽に当事務所へご相談ください。

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