離婚によって子どもが受ける影響は? 統計からみる傾向と対策
厚生労働省が公表する「令和3年(2021)人口動態統計(報告書)」によると、未成年の子どもがいる離婚は、令和3年で全離婚件数のうち57.1%を占めました。
子どものいる夫婦が離婚するとき、「離婚が子どもに与える影響はどのようなものだろう」と不安に思う夫婦は少なくありません。
離婚が子どもに悪影響を及ぼすと考える方は非常に多いものですが、当然ながら、それは離婚状況や子どもの年齢などによって異なります。また、事前に適切な対策を行うことによって、子どもへの影響を最小限に抑えられるのならば、しっかりと対策していきたいとお考えになる方もいるでしょう。
本コラムは、夫婦の離婚が子どもに及ぼす影響について、令和3年に公表された「未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務報告書」の統計データを踏まえつつ、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
1、統計からみる、離婚が子どもに及ぼす影響
本報告書の回答者は、未成年期に両親が離婚、もしくは別居した家庭で育った20代から30代の男女1000名です。調査を受けた方のうち、両親の別居時の年齢で最も多いのは3~6歳の就学前で19.9%ですが、3歳未満で11.9%、小学1~3年で15.7%、小学4~6年で16.7%、中学生で13.7%、中学卒業後で22.1%と、両親の別居が始まった年齢の割合は同程度です。
また、この調査を受けた方のうち67.2%の方が「父母の別居前の家庭内の状況について覚えている」と回答しています。
実際に離婚を考えている方にとって、子どもがどのように離婚をとらえ、どう感じるのかはとても気になるポイントでしょう。この調査結果を見ることで、両親の別居や離婚を経験した子どもたちがどのように感じ、どのように対処してきたかを知ることで、ご自身の別居や離婚の際の参考にされるとよいでしょう。
(出典:「未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務報告書」(公益社団法人商事法務研究会))
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(1)子どもに悲しみやショックを与える可能性がある
まず、父母の別居時の状況について覚えていると回答した609人の方を対象に、当時どのような気持ちだったかについて質問しています(Q13_2)。
選択肢を複数選択する方式で回答を募っています。結果は以下のとおりです。どのような気持ちだったか 各回答の選択率(%) 悲しかった 37.4 ショックだった 29.9 状況が変わることが嬉しかった 11.0 ホッとした 14.3 怒りを感じた 9.5 割り切れなかった 10.2 自暴自棄になった 6.1 将来に不安を感じた 16.1 経済的な不安を感じた 11.2 恥ずかしかった 7.4 その他 2.6 特になし 18.2
ネガティブな感情が圧倒的多数を占めると考える方は多いかもしれません。もちろん、「悲しかった(37.4%)」「ショックだった(29.9%)」と当時を回想された割合が最も多いものの、意外にも全体の半数にすら届かない結果となりました。
他方で、「ホッとした(14.3%)」、「状況が変わることが嬉しかった(11%)」と、ポジティブな感情を抱いた子どもが一定数いることは見逃せないでしょう。
また、「将来に不安を感じた(16.1%)」「経済的な不安を感じた(11.2%)」の割合も少なくなく、比較的冷静に現実をとらえている子どもは少なくないという様子がうかがえます。 -
(2)生活水準・経済状況が苦しくなる傾向がある
同報告書では、父母の別居によって金銭面の生活状況に生じた影響についてもアンケートが行われています(Q18)。
こちらの回答は、あてはまるものを一つだけ選択された結果です。金銭面の生活状況に生じた影響 回答率(%) 別居により、生活水準・経済状況は苦しくなった 20.4 別居により、生活水準・経済状況は若干苦しくなった 20.1 別居により、生活水準・経済状況はほとんど変わらなかった 24.4 別居により、生活水準・経済状況はむしろ好転した 7.3 わからない 27.8 (出典:「未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務報告書」(公益社団法人商事法務研究会))
「苦しくなった(20.4%)」「若干苦しくなった(20.1%)」を合わせると、4割程度の子どもが、両親の別居によって生活水準・経済状況が苦しくなったと回答しています。
ひとり親家庭の子どもが苦しい経済状況に置かれる傾向があることは、ニュースなどでも頻繁に報道されています。離婚後、同居していない親は子どもの生活費として養育費を支払う義務があります。
しかし、両親が養育費を支払う約束をしていたかどうかについて知っていた方のうち半数以上が取り決めがなかったと回答しています(「わからない」と答えた方は45.6%、「取り決めはなかった」と回答した方は29.8%)。
さらに、離婚・別居後の支払い状況について尋ねた質問には、「支払い状況はわからない(43.5%)」「全く支払われていなかった(18.9%)」と続きます。きちんと支払われていたと認識している方はたったの16.8%にすぎないという結果となっています。 -
(3)別居親との交流が断絶するケースが多い
同報告書では、別居直後と別居から2、3年経過後の各時点において、子どもが別居親と自由に連絡をとることができたかどうかについても聞いています(Q23_1、Q23_2)。
<別居直後>別居親と自由に連絡をとることができたか 回答率(%) いつでも連絡をとれた 35.8 同居親に言えば、連絡がとれた 16.3 自由に連絡をとることはできなかった 19.5 連絡をとりたくなかった 28.4
<別居から2、3年後>
別居親と自由に連絡をとることができたか 回答率(%) いつでも連絡をとれた 35.1 同居親に言えば、連絡がとれた 16.8 自由に連絡をとることはできなかった 18.7 連絡をとりたくなかった 29.4 (出典:「未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務報告書」(公益社団法人商事法務研究会))
連絡をとれていた方と連絡を取ることができなかった方は半々くらいです。
なお、面会交流について取り決めがあったと答えた122名を対象にした、面会交流について自分の意見を伝えたかどうかという質問については、「本心を伝えた(37.7%)」「伝えたが、本心ではなかった(27.9%)」、「意見・希望はあったが、伝えていない(16.4%)」という結果が出ています。
本心を伝えられた子どもと同じぐらい、いずれかの親に配慮して本心を伝えられなかった子どもがいるということになります。離婚の際に面会交流の取り決め内容を検討する親としては、注意が必要な部分でしょう。 -
(4)子どもの精神面が不安定になることがある
さらに、父母の離婚・別居後に子どもが生活面で経験した事柄について、どのような変化があったかについても質問しています(Q30_2)。
どのような変化があったか それぞれの回答率(%) 家族関係を周りに話すのが恥ずかしかった 19.3 家族でのイベント(旅行等)がなくなった 12.0 生活のリズムに乱れが生じた(昼夜逆転) 8.5 不良仲間と遊んだ 4.2 悪いことをした 6.7 自殺を図った 4.1 ひきこもり 5.7 不登校(学校や保育園などに行けなくなった) 7.9 家庭内暴力(家族にあたり散らす) 3.2 精神的に強くなった 7.2 自立心・独立心が強くなった 12.3 人付き合いがうまくなった 5.5 困難なことがあっても挫けなくなった 6.7 その他 1.0 いずれもなし 48.0 (出典:「未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務報告書」(公益社団法人商事法務研究会))
「いずれもなし(48.0%)」を選択した方が最も多い結果が出ています。
次点で、「家族関係を周りに話すのが恥ずかしかった(19.3%)」、「自立心・独立心が強くなった(12.3%)」と続きます。ただし、少数ではありますが「生活のリズムに乱れが生じた(昼夜逆転)(8.5%)」「不登校(学校や保育園などに行けなくなった)(7.9%)」となった方もいます。
なお、両親の離婚・別居を経験したあとの健康面での経験についての質問に対しても、「いずれもなし(60.8%)」が最も多く、次点に「精神的不安定(20.1%)」が続く結果でした。
家庭の状況や子どもの性格などによっても異なる部分かと思いますが、不安定な状況に陥ってしまうケースがあるため、親としては繊細に注意する必要があるでしょう。 -
(5)想像以上に子どもは事実を冷静にとらえている
子どもには離婚のことはわからないと思うかもしれません。しかし、実際のところそうではないことがこの調査からもわかります。
たとえば、父母の別居時の状況について覚えていると回答した609名に対して、「あなたは、父母が別居をした時に、何が起こっているのかを理解していましたか」という質問をしたところ、「意味は分かっていた」と答えた割合は66.3%でした(Q13_1)。
さらに、父母の別居前の家庭内の状況について覚えていると回答した672名に対してなされた「父母が別居を開始する前に、父母が不仲であることを知っていましたか」という質問(Q8_1)に対しては、「知っていた(42.3%)」、「薄々感じていた(38.5%)」と答えていることから、多くの子どもは自らの両親の不仲について感知していることが多いようです。
また、「父母の離婚・別居について、今振り返ってみると、どのように思いますか。」という質問(Q34)に対しては、以下のような結果が出ています。振り返ってみて思うこと それぞれの回答率(%) 父母にも自分にもよかった 28.3 父母にも自分にもよくなかった 9.3 父母にとってはよかったが、自分にとってはよくなかった 14.0 父母にとってはよくなかったが、自分にとってはよかった 3.7 特になし 44.7
振り返って考えてみたときには、両親の離婚についてネガティブな感情を持っている方のほうが少ないという結果になっています。
2、年齢別 - 離婚に関する子どもの捉え方の変化
両親の離婚に関する捉え方は、子どもの年齢によっても変わってきます。
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(1)乳幼児 - 友達との違いになんとなく寂しさを感じる
就学前の乳幼児の場合、「両親が離婚した」ことをよく理解できないケースが大半です。
しかし、保育園や幼稚園の友達には両親がいるのに対して、自分には親がひとりしかいないことに漠然とした寂しさを覚えることはよくあります。
また、知的発達が早い子であれば、両親の離婚を自分なりに受け止めた結果「良い子」として振る舞おうとするなど、子どもに負担をかけてしまうこともあります。 -
(2)小学生 - 両親がいる家庭との違いを意識し始める
小学生になった子どもは、「両親が離婚した」という事実を正しく理解できるようになってきます。その分、両親がいる家庭と自分の家庭との違いを、徐々に強く意識するようになります。
小学生の子どもは自我も発達してくるため、別居親に対して反抗・軽蔑・怒りなどを表現したり、父母の顔色をうかがったりして、精神的にストレスを抱え込むことがある点に注意が必要です。 -
(3)中学生 - ひとり親であることを強く意識しがち
中学生は感情的にデリケートになりやすい時期であり、特に両親の離婚を経験した子どもは、ひとり親家庭であることを強く意識することがあるかもしれません。
親の離婚を自らのせいだと思い込んだり、親からの愛情がないと感じたりした場合、非行に走ってしまう可能性もあります。不安定な状況に陥ってしまいそうなときは、学校の先生などとも協力しつつ、子どものサポートに努めましょう。 -
(4)高校生 - 親の離婚を冷静に受け止められるようになる
高校生になると、子どもは人格的にだいぶ成長し、親の離婚を冷静に受け止められるようになる場合が多い傾向があります。
ひとりの自立した人間として子どもに接する中で、離婚当時の事情や感じたことなどを子どもに話してみるのもよいでしょう。
3、離婚による子どもへの影響を最小限に抑えるには?
両親の離婚によって子どもに生じる影響を軽減するために、別居や離婚の際には以下の点に気を付けるとよいでしょう。
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(1)離婚の理由を丁寧に説明する
離婚はあくまでも親の都合で行われるものであり、子どもは当事者ではありません。しかしながら、離婚によって子どもにも大きな影響を与えます。
子どもが両親の離婚をうまく消化できるように、離婚の理由を丁寧に説明して子どもの疑問を解消することは両親の務めです。特に別居・離婚後に子どもと一緒に過ごす同居親においてはこの点に留意しておく必要があるでしょう。
子どもの年齢に応じた伝え方を検討する必要はあるものの、いずれにしても真摯に子どもと向き合い、離婚の理由も丁寧に説明すべきであると言えるでしょう。 -
(2)財産分与や養育費により、経済的な安定を確保する
子どもを養育するに当たっては、経済的な安定を確保することも重要です。
特に収入が少ない方は、離婚協議などを進める中で、財産分与や養育費などの経済条件をきちんと取り決め、離婚後の生活を安定させられるように努めましょう。 -
(3)別居親との面会交流のルールを取り決める
子どもの人格的な成長の観点からは、別居親が子どもに対して暴力を振るうなど、面会交流を行うことが子どもの利益にならない場合を除いて、離婚後も別居親と定期的に交流することが望ましいです。
子どもや両親にとって無理のない範囲内で、離婚後の面会交流のルールを取り決めておきましょう。 -
(4)第三者への相談も検討する
両親の離婚について、子どもがうまく消化できずに悩んでいる場合には、親族やカウンセラーなどの第三者に相談することもひとつの選択肢です。
同居親がサポートして、子どもにとっても信頼できる相談相手を見つけてあげると、子どものストレスを軽減すること、ひいては非行などを防ぐことにつながります。
4、離婚を考えたとき弁護士に相談するメリット
配偶者との離婚を検討するときは、弁護士へのご相談をおすすめします。とにかく離婚したいという気持ちが先走り、養育費や財産分与、面会交流などの条件を決めずに離婚を成立させてしまうと、離婚が子どもに与える影響が大きくなる傾向にあります。
法律上、離婚したあとに養育費や財産分与、面会交流などの条件について話し合って決めることは可能です。しかし、離婚が成立してしまうと、離婚前に話し合うよりも話し合いが難しくなる場合が多く、離婚の際に話し合わずにいると、取り決めを行うのが大変になることもあります。
離婚を検討した段階で相談いただければ、子どもの将来の生活や成長も考慮して、専門的・第三者的な視点からよりよい解決策をアドバイスすることが可能です。
依頼を受けた弁護士は、子どもと安定した生活ができるよう、離婚条件などの交渉をあなたに代わって行えます。あなた自身が相手と顔を合わせないようにして、離婚を進めることができるのです。
また、弁護士は調停や裁判になった場合でも引き続きサポートできるため、話し合いで解決しなかった場合も、離婚後の生活を見据えた条件での離婚を目指すことができます。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
5、まとめ
配偶者と離婚する場合、子どもの心情や生活などに何らかの影響を及ぼすことは避けられません。しかし、前述したとおり、両親の別居を受けた感情として、「状況が変わることが嬉しかった」「ホッとした」と回答した方も少なくなく、子どもにとって離婚が必ずしもネガティブに働くものではないのです。
離婚に際して子どもへの配慮は当然必要ですが、離婚することは子どもにとって良くないと決めつける必要はなく、「子どものために離婚をしない」と子どもに伝えてしまうことも避けたほうがよいでしょう。
子どもへの影響を最小限に抑えるためには、子どもとよくコミュニケーションをとることや、金銭的に十分な離婚条件を獲得すること、適切な面会交流の実施などが大切になります。
ベリーベスト法律事務所では、離婚に関する法律相談を随時受け付けております。子どもへの悪影響を最小限に抑えて離婚したいとお考えであれば、お早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
ご来所が難しい方のために、Zoomなどを活用したオンライン相談も受け付けています。
- 所在地
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- 2010年12月16日
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